娘の人生で、

こんなことが起きるなんて思いもよらなかった出来事が、

ここから始まります。

 

推し活仲間に誘われ、

招待という形でメンズ地下アイドルのライブに参加した娘。

 

メン地下には「招待」という制度があり、

招待した側やされた側にポイントや特典があるようです。

 

私も最初は詳しく知りませんでしたが、

娘のことで色々と調べるうちに、

少しずつその世界のことを知るようになりました。

 

そして、その招待で行ったライブで、

娘はメン地下の距離の近さや独特の空気感に楽しさを覚えたようです。

 

そこにはチェキ撮影など、

アイドルの推し活をしている人にとっては夢のような体験がたくさんありました。

 

最初に通い始めたメン地下は、

密着型ではなく、

パーテーションで仕切られたチェキ撮影だったようです。
しかし、メン地下繋がりのSNSで知り合った子から別のメン地下を教えてもらい、

そこでは密着型のチェキ撮影が行われていました。

 

娘はアイドルの推し活もしながら、

メン地下を二つのグループ掛け持ちし、

あちこち遠征していたようでした。

 

さぞかし楽しくて、

浮かれていたことでしょう。

 

ですが、娘がSNSにアップしていたチェキの写真を見たとき、

私は正直、馬鹿らしいと思ってしまいました。

 

もちろん、すべてがそうだとは思いません。


ですが、メン地下の世界には、

やはり独特の闇のようなものを感じます。

 

あの世界は、

ある程度の動員がなければ成り立たない世界だと思います。
だからこそ、チェキ撮影の時には、

相手が喜びそうなポーズや言葉を投げかける。

 

それが自分だけに向けられたものではないと分かっていても、

「自分だけに言ってくれている」と感じてしまう。
そして、その瞬間をSNSにアップする。

 

そのために、チェキを何枚も、

何十枚も撮るようになるのです。

 

アイドルのコンサートよりも、

メン地下のライブの方が公演回数も多く、

自然と時間もお金も奪われていきます。

 

そりゃ、お金もなくなるし、

大学に行く時間もなくなるはずですよね。

 

そして娘は、借金地獄に陥り、

大学を休学することになります。

 

ただ、このことについては、

実はいまだに娘と本当の意味で話し合うことができていません。

 

当時、娘はLINEでこう言いました。

 

「嘘でもいいから、愛が感じられる場所が欲しかった」

 

愛が感じられる場所?

 

では、親からの愛はどうだったのか。
娘は何も感じていなかったのか。

 

その言葉を読んだとき、私はとてもショックでした。

 

だから、なぜ娘がメン地下にここまでハマったのか、

本当の理由は今でもはっきり分かりません。

 

楽しくて通っていたのだろう、ということは理解できます。
ですが、少し冷たい言い方かもしれませんが、

この出来事を娘は一生後悔すればいいと、思ってしまう自分もいます。

 

そして、このことをきっかけに、

我が家は崩壊へと向かっていくことになります。

平気で嘘がつけるようになった娘は、

どんどん推し活にのめり込んでいきました。

 

今の時代、

SNSで簡単に人と繋がれることが、

良くも悪くも人生に大きな影響を与えていると私は思います。


娘の推し活のエスカレートも、まさにその一つでした。

 

一人の人が、大量のグッズをSNSにアップする。
それを見た別の人が、「私も同じことをしよう」と思う。

すると、その人も大量にグッズを購入してSNSに投稿する。
そしてまた、それを見た誰かが同じことをする。

 

そんな連鎖が続いていきます。

 

もし「同担拒否」などの気持ちがある場合、

そこには見えないバトルのようなものも生まれてきます。

 

「あの子より、私の方がたくさんお金を使って応援している」

そんな感覚です。


そもそも「お金を使ってあげている」という考え方自体、

私は少し違うのではないかと思います。

 

さらに、その売り上げが推しに還元される、

という認識もあるようですが、

正直なところ、そこにも疑問を感じています。

 

娘も、そんなSNSの世界の「見えない競争」に、

いつの間にか参加していたのだと思います。

 

そして、気づけばその競争に勝とうとしていました。

 

同じグッズを三桁購入する。


正直、私には信じられない世界です。

 

しかも娘は一人暮らし。
自由を手に入れたと勘違いして、

「バレなければ何をしてもいい」と思ってしまったのかもしれません。

 

そして皮肉なことに、

その事実が発覚したのも、娘自身のSNSでした。

 

私たちはSNSに強い世代ではありません。
ですが、娘のアカウントを教えてくれた知人がいたおかげで、

隠されていた事実が少しずつ明らかになっていきました。

 

SNSは、使い方によってはとても便利なものです。
知らなかった情報を知ることもできます。

 

ですが一歩間違えれば、

人を大きく動かしてしまう力を持ったものでもあると、私は思います。

 

娘の推し活をここまで加速させたのは、

紛れもなくSNSでした。

 

この先に、

さらに大きな闇が待っていることも知らずに…。

今回から、娘のことをしっかり考え、

向き合ってみようと思います。

 

まずは、高校生の頃の出来事です。


娘が大学受験の大事な時期に、

嘘をついて東京のイベントへ行ったあの出来事。

 

なぜ娘は、あの時嘘をついてまで東京へ行ったのか。

 

行きたい気持ちは、分からなくもありません。
好きなものに会いに行きたい、

そんな気持ちは誰にでもあると思います。

 

ただ問題は、「嘘をついたこと」です。
そして、何よりその時期でした。

 

大学受験を控えた大事な時期。
やりたいことをやるだけでは、

ただのわがままになってしまいます。
我慢するべき時には、

やはり我慢することも必要なのではないかと、

私は思っています。

 

そしてもう一つ大きな問題は、

その出来事を娘が反省しなかったことです。

 

もしあの時、親と喧嘩になり、

叱られ、自分のしたことをきちんと理解できていたなら、
「自分の行動は間違っていた」と、

少しは反省したのではないかと思うのです。

 

ですが娘は、この東京イベントの遠征を約一年半も隠していました。
そして、それが発覚した時、

娘にあったのは反省ではなく、ただの反発でした。

 

やはりこの時点で、
「自分の行動は間違っていた」と、

ほんの少しでも感じてくれていたなら…。

 

この後に起きた出来事も、

もしかしたら違う形になっていたのかもしれない。
そう思うと、なんとも言えない切なさを感じてしまいます。

 

人生って、

時々とてもむなしいものですね。

大学生活をスタートするためには、

まず学費が必要になります。

入学金はもちろん、

入学式用のスーツやバッグ、パンプスなど、

準備するものもたくさんあります。

 

毎日のように、

お札に羽が生えたかのようにお金が飛んでいきました。

 

そんな中で、娘との生活費についても話し合いをしました。

 

家賃は親が支払う。
普段の生活費は、バイト代でやりくりする。

 

ただ、それだけで生活できるとは思っていなかったので、

大学で必要なものは親が支払い、食料品や日用品は毎月送る。
いわゆる「仕送り」という形でサポートすることにしました。

 

これなら何とかやっていけるのではないか、

と親子で納得していました。

 

ですが、娘はもともとお金の使い方が少し荒いところがあります。
以前、郵便局留めで大量のグッズを購入していたこともありました。

 

そのため、私も少し気をつけてはいました。

 

「毎月のお金の流れをLINEで教えてね」

 

そう伝えていたのですが、

娘から送られてくることは一度もありませんでした。

 

しびれを切らして
「どうなってるの?」とLINEを送ると、

 

「ちゃんとやってます」

 

返事は、いつもそれだけでした。

 

私は、「ちゃんとしてます」や

「ちゃんとします」という曖昧な言葉が

あまり好きではありません。
……少し余談ですね。

 

本題に戻ると、

本当はもっとしっかりお金のことを聞きたかったのです。
でも、娘は教えてくれない。
これ以上聞けば、きっと揉めてしまう。

 

そう思い、

私はそれ以上踏み込んで聞くことをやめてしまいました。

 

つまり、私が先に耳を塞いでしまったのだと思います。

 

これも、私の反省点です。

 

その結果、娘は使えるだけお金を使うようになり、

そのお金はアイドルの推し活へ。
そして、やがてメン地下へと流れていくことになります。

 

お金については、私なりに小さい頃から説明してきたつもりでした。
ですが、それがきちんと伝わっていなかったのだとしたら、

それもまた私のミスだったのだと思います。

 

ただ、この「お金の問題」は、

これからの娘の人生を大きく左右する出来事になっていきます。

 

この話については、次の章で、

もう少しじっくりと紐解いていこうと思います。

 

お金って、本当に大切ですよね。

娘にとっても、

そして親である私たちにとっても、

大学進学は大きな人生の分かれ道となりました。

 

地元の大学ではないため、

娘は都会へ出ていくことになります。

 

推薦入試で合格した人たちが、

先に学生マンションや学生寮の契約をしていきます。
おそらく、

どこの大学でも同じような状況なのではないでしょうか。

 

そのため、一般受験の合格発表の頃には、

条件の良い物件はほとんど埋まってしまっています。

 

地方から進学する場合、

内覧もできないまま物件を決めることも少なくありません。
我が家もまさにそうでした。

 

「ここはいいかもしれない」と思っていた物件も、

押さえることすらできず、

結局、合格発表後でなければ契約ができない状況でした。

 

家賃の問題、治安の問題、大学への通いやすさ。
考えることはたくさんありましたが、

やはり一番心配だったのは、女の子の一人暮らしという点でした。

 

しかも娘の場合、

同じ高校からその大学へ進学する人は一人もいません。
知り合いが誰もいない環境に飛び込むことになります。

 

だからこそ、

学生マンションや学生寮を希望していたのですが、

残念ながら空きは一つもありませんでした。

 

その結果、私たちは別の条件にこだわることになります。

 

家賃は少し高くても、
大学に通いやすい場所。
交通の便が良いこと。
そして治安が良いこと。

 

そんな条件を優先して物件を選びました。

 

さらに娘は、

大学を卒業したあともその地域で就職したいような話をしていたため、

「そのまま住めるように」と家具や家電も一通り揃えてしまいました。

 

そして、オートロック、2階以上といった条件も付けました。
すべては、親である私たちが安心したかったからです。

 

ですが結果的に、私たちは娘に
「快適で自由な一人暮らし」をプレゼントしてしまったのかもしれません。

 

これは、私にとって大きな反省点です。

 

もし、ここまで自由度の高い一人暮らしではなかったら…

 

娘は、もう少し普通の大学生活を送っていたのではないか。
たまに推し活を楽しむ程度で、

あそこまで無茶な推し活をすることも、

メン地下にのめり込むこともなかったのではないか。

 

もちろん、本当のところは分かりません。

 

それでも、二度も休学するような事態にはならなかったのではないかと思うと、
あの快適で綺麗なマンションを選んだことを、今でも後悔してしまいます。