とはいえ就任後は試練の連続。コロナ禍で需要が落ち込み、さらに米ナイキの厚底シューズ旋風に圧倒され、21年の箱根駅伝ではアシックス着用者がゼロになる屈辱も。
どん底からの巻き返しで力を入れたのが、ブランド力の源泉であるトップアスリートとの関係強化だ。今年1月の大阪国際女子で前田穂南選手が19年ぶりにマラソン女子の日本記録を更新したが、快走を支えたのがアシックスのシューズだった。
なぜ新参のトップが未曽有の危機を克服できたのか。まずは初動の構えとして「新天地なので接地面積をなるべく広げようと心がけた」という。飲み会の類いや社長ブログを通じて多くの社員や取引先と接点を持った。
そのうえで「組織の三菱」で体得した経営の規律をアシックスに移植した。本社と販売会社の意識のズレを埋めるための組織再編など反発覚悟で改革を実施。こうして組織の地力を引き上げながら、トップ直轄でナイキ対抗の開発チームを立ち上げた。
今年の箱根駅伝でアシックスを選んだ選手は全体のほぼ4分の1の57人(文春オンライン)。先頭のナイキとはまだ差があるが、その背中は徐々に大きくなってきた――。実況中継風にいえば、そんなレース展開だろうか。













