私たちには納税の義務があります。
知らず知らずのうちに払っている税金、申告納税しなければいけない税金など様々です。
そこで、本日は消費税に関して考えてみたいと思います。
ただ、これが言葉で発する以上にややこしいのですが(笑)
私たちがモノやサービス、役務の提供などの対価、つまり広い意味での消費に対して支払っている税金が消費税です。
現在の税率は10%であり、新聞は大いに議論の余地はありますが「生活必需品」に対しては軽減税率である8%が課せられます。
普通、消費者はその税率をひとくくりで捉えていますが、実際は国税と地方消費税とに分かれています(消費税及び地方消費税と表現します。)
当初の税率である3%時代は国税のみでした。
1997年の橋本政権時に5%となり、このとき初めて地方消費税が導入されました。
地方消費税は税率5%当時、国税の25%にて算定されていました。
どういうことかといいますと、10万円の取引に対して課せられる消費税は税率5%で5000円です。
ですが、ダイレクトに10万円×5%で5000円と算出するのではなく、10万円×4%=4000円という計算をまず行います。
その4000円が国税です。
そうして、地方消費税はその4000円×25%=1000円として算定します。
国税4000円+地方消費税1000円=5000円が10万円の取引に対する消費税額となるわけです。
8%の時はどうであったかといえば、10万円の取引に対して6.3%の6300円が国税で、1.7%の1700円が地方消費税でした。
そして、現在の10%では7.8%が国税で、2.2%が地方消費税です。
軽減税率に関しては、国税6.24%、地方消費税1.76%となります(8%を10%に換算すれば、それぞれ7.8%と2.2%となります。)
ただし、このような話は消費者の立場では意識する必要のないところです。
では、消費者から消費税を受け取る(正確には預かる)事業者の立場ではどうでしょう。
小さな会社なら計算はシンプルです。
簡易課税方式という簡単な計算で申告納税額を割り出せるからです。
ですが、大きな会社になれば簡易課税方式は使えませんので、様々な取引を個別に分解・分析し、申告納税額の算定をしなければなりません。便宜上これを個別計算方式と呼ぶことにします。
個別計算方式を少々深堀解説します。
例えば建物賃貸借契約の場合、月額賃料と契約期間が定められ、途中で条件変更などできる余地のないカチッとした長期間契約となれば、契約を締結した時点の旧税率を引き継ぐことになりますので、最悪5%、8%、10%の税率の取引を常に管理することになります。
※ただし、物や構造物ではなく更地を貸し借りする契約、すなわち土地賃貸借契約は非課税取引となる
更に、軽減税率が加われば上述の税率と合わせて4種類の税率の取引を同時並行で管理しなければなりません。
従って、大会社の申告納税は非常にややこしいのです。
4種類それぞれの売上消費税(預かり消費税)を把握し、4種類それぞれの課税売上額を把握し、非課税売上額(受取利息や土地賃貸収入など)も把握し、トータルの売上(収入)のうち課税売上が何%を占めるかという「課税売上割合」を掴まなければなりません。
一方、仕入や経費、設備投資(税務上はこれらを包括して仕入と表現します)に対しての仕入消費税(仮払消費税)も同様に各税率ごとに把握しなければなりません。
それを把握しなければならない深い理由が、
各々の税率ごとに、売上消費税-仕入消費税=未払消費税(申告納税額)を算定する必要があるからです。
※ただし、小規模事業者が用いる簡易課税方式では、売上消費税の一定割合(業種によって割合は異なる)を簡便的に仕入消費税と見立て、差引額を未払消費税として申告納税すればいい
売上消費税から仕入消費税を差し引いて未払消費税として申告納税することを「仕入税額控除」といいます。
少し詳しい方なら聞いたことがあるのではないでしょうか。
「事業者にとっての未払消費税」は、下流に位置するお客様(消費者)から預かった消費税から、上流である取引先や納入業者に支払った消費税(預けた消費税)を差し引いたものなのです。
つまり、事業者にとっては「未払消費税」残高が税務署への申告納税額となります。
事業者が多段階を経て消費者にモノやサービスを提供する点を考慮すると、
消費税の負担者は最終的に末端の消費者となるよう、原料の生産者⇒製造業者⇒卸売業者⇒小売業者は順々に「売上消費税(預かった消費税)-仕入消費税(預けた消費税)」の計算をし、それぞれの段階で差額を未払消費税として申告納税しているのです。
そうして最終的に末端消費者が全ての消費税を負担する仕組みとなっています。
これが消費税法の基本的な考え方です。
中間に入っている事業者は、売上から仕入や経費、設備投資等を差し引いた部分に対してのみしか消費税を納税していないということになるのです。
そこでややこしくなってくるのが上述した「課税売上割合」です。
数年前まで、課税売上割合が95%以上であれば、仕入税額控除は全額受けることができました(95%ルール)が、数年前の税制改正によって、仕入消費税を控除できる上限額は、「課税仕入消費税+(共通対応仕入消費税×課税売上割合)」となったのです。
要すれば以下の通りです。
消費者や顧客などへの「課税売上」を生じさせるための仕入であれば、その仕入に対して支払った消費税、わかりやすいものでは、商品仕入代や広告物などの販売促進費などですが、そういうものの支出に際して支払った消費税は全額「仕入税額控除」ができますが、多くの一般管理費にかかった消費税は「課税売上と非課税売上の両方を得るために支払った消費税」(共通対応分)という認識があり、それら費用に対して仮払計上した仕入消費税に関しては、課税売上割合を乗じて算定した金額しか仕入税額控除ができないのです。
少し噛み砕きます。
ある会社が顧客から預かった消費税の総額が年間1億円あったとします。
そして、その会社のその年度の課税売上割合が95%だったとします。
その会社が、課税売上を得るために取引先から仕入れ、それに対して支払った消費税が年間で5000万円、共通対応分が年間で3000万円とした場合はどうなるか。
1億円-5000万円-(3000万円×95%)=2150万円
2150万円を申告納税しなければならないのです。
ですが、税制改正前の95%ルールが健在だったころは、1億円-8000万円=2000万円
2000万円の申告納税でよかったのです。
解りにくいマニアックな税制改正を行うことで、実質的に国や地方の取り分が増えたのです。
このあたりに財務省の狡猾さを感じます。
ここで話を海外に向けてみます。
欧州のVATは欧州版消費税と考えられていますが、正確には「付加価値税」であり、企業や事業者が創出する付加価値に対して課せられる税なので、厳密には消費に対して課税される日本の消費税とは根本原理が異なるのですが、上の例のように事業者の仕入税額控除を一部認めないとなると、消費税ではなく、むしろ付加価値税ではないか?そんな疑問がわいてくるのです。
更に、地代収入などの「非課税売上」を得るための経費に対して課せられ支払った、例えば仲介手数料などに加算されている消費税に至っては、「非課税売上対応分」として全く仕入税額控除ができないのです。
基本的に末端の消費者に全額税負担をさせるのが消費税の考え方ですが、段階的にそうではなくなってきているところに悪意を感じます。
当然ながら、このようなことを事業者に要求すれば、事業者の支払う税額は増えますし、事務負担は膨らむばかりです。
ミスも起きやすくなるでしょう。
このあたりの政府の観点はどうでしょうか。
消費税を管轄する財務省は強い力を持っていますが、歴史ある一流企業の集まりである経団連の意向をよく汲みます。
なんせ、政府にとって経団連は大切なスポンサーですから。
法人税率の引き下げを進める一方で、その対案として消費税増税と、細かなところの改悪を段階的に進めます。
経団連に属する多くの企業はいわゆる一流企業で、大部分が名だたる製造業です。
製造業は消費税増税の影響による直接的な税負担増のダメージは少なく、むしろ法人税減税の恩恵を大きく受けやすいのですが、中長期的に見れば、消費税増税が国民の消費活動を鈍化させ、最終的に自社の業績低下につながるとは考えないのでしょうか?
無理なんでしょうね。
経団連に属する会社の経営層は10年、20年先を見ないのでしょう。
「自分が責任ある地位にいる間だけ良ければいい」
陰謀論めいてきましたが、そのように考えているのではないか?と勘繰りたくもなります。
マスコミもこのように踏み込んだところまで税の仕組みをわかっていないので、「国の借金1100兆円、国民一人当たり・・・万円」、「将来世代に我々のツケを残してはいけない」という国民の不安を煽る財務省のプロパガンダをそのまま垂れ流すばかりです。
国の借金の仕組みに関しては、気が向けば別の機会で愚痴りたいと思いますが、税金の仕組みと運用、このところの動きを見ていると、とにかくいろいろ狂ってきていると感じずにはいられません。
皆様はどのようにお感じでしょうか?