任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
ヴェルンヘル・ラウル
エルネア王国 現国王
「女癖が悪くなければいい国王なのに」と一定の評価をされつつ残念に思われている。
彼に擦り寄る女性は数知れず。
国民を大切にし、老若男女に愛される国王。
先日旅人女性を酒場の部屋に連れ込み、機嫌を損ねて怪我を負う。国民は呆れているが一部ではそこがまたいいと謎の好感度が上がる。妻にはビンタされて妻からの好感度は下がりまくってしまった。
ろくでもない国王だなぁ…
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
日が暮れた頃、酒場は常連客で賑わっていた。その中に武術職の一団が酒を嗜んでいる。
酒場にあまりこないイマノルが今日は珍しくやってきていた。同じテーブル席に着くのは魔銃師会のメンバー、ガブリエルと魔銃導師のティアゴだった。
ティアゴ
「嘘だろうな」
ティアゴがポツリと呟いた。
イマノル「何のこと〜?」
ティアゴ
「陛下の言ってたことのほとんどが」
イマノル
「旅人のきれーなおねえさんに手を出そうとしてしっぺ返しくらったってやつ〜?」
イマノルは可笑しそうに笑った。
ガブリエル
「ちょ……… 声大きいってイマノル」
ガブリエルはキョロキョロと周囲の視線の気にした。
ティアゴ
「妙なんだよなぁ…旅人の出国の記録はないし、門はあの日開門されていない……」
女の行方が分からないことにティアゴは疑問を抱いているようだった。
ガブリエル
「まだこの国にいるのかな…」
イマノル
「鳥みたいに飛んで逃げたんじゃない?魔法使いって奴らはなんでもできるんじゃないかなー」
よく知らないけどね!とイマノルはヘラヘラとしている。
ティアゴ
「それだったらミアラさんの魔法網に引っかかるはずなんだよなぁ……」
ティアゴは眉を顰めた。
ウィアラ、ミアラこの両名に悟られることなくこの国を行き来することはなぜかできない。それについては深く考えてはいけない。
ヴェルンヘル国王が危険な目にあったというのに、解明されていないことが多すぎる。ティアゴはそれで友人に意見を求めてこうして酒場で一緒に飲んでいるのだが、相手が悪かった。
ガブリエルとイマノルのとんちんかんと頭のネジが外れてる奴らでは
イマノル
「情事の最中に怒らせるってさ〜なにしたらそんなに怒るのかなー?」
こうやって話が逸れてしまうのだ。
男たちは顔を見合わせた。
ガブリエル
「う〜ん。ムードを台無しにするような発言をした?」
イマノル
「ガブリエルは何を言って奥さんを怒らせてんのー?」
ガブリエル
「最中に怒らせるようなこと言わないよ」
ヴェルンヘル自身が「事の運びが早かった」と言っていたが、国王の情事の詳細を言う訳にもいかずティアゴは沈黙を選択した。
ティアゴはゴホンと咳払いをして自分の考えを述べた。
ティアゴ
「陛下の怪我は相手を怒らせた程度とは思えない。相手の女は、陛下のお命を狙った賊だと考えるべきだろう」
イマノル
「どうして陛下はそれを黙ってるのさ」
至極当然な疑問をイマノルは口にする。
命を狙われたなら、ヴェルンヘル陛下はそれを臣下に言い、その者を捕らえるべきなのだがなんの沙汰もなかった。
女の逃げた痕跡もなく、その姿を騒動のあとに見たものが1人もいないというのが実に奇妙だった。
ティアゴ
「それが、分からないんだよなぁ……」
そう言って首を捻るティアゴの様子にイマノルは珍しいなぁと感じた。ティアゴは自分なりに結論を持って話していると思ったが違うようだ。
ガブリエル
「ただの女好きなだけだって……」
普段から国王のモテぶりを見ていると、今回はただヴェルンヘルがしくじったと考えるのが自然に思えた。
あの出来事に裏があるなんて、国王が旅人女にうつつを抜かして怪我をしたと思いたくない人たちが言う空想にしか思えない、ガブリエルはそう考えた。
イマノル
「リンゴとはこの話した?」
ティアゴ「……いや……」
ティアゴは酒を一口飲み少し思案してから口を開いた。
「……リンゴはだめだ……今回のことを冷静に見ることが出来ない」
少しでもヴェルンヘルへの信頼があればあの怪我を見てヴェルンヘルの話を聞けば違和感を覚えたのかもしれないが、リンゴはヴェルンヘルに女関係の信頼は皆無だったらしい。
あの言葉を真に受けて、ヴェルンヘルを平手打ちして去ってしまった。その後2人の関係がどうなっているのか、想像するのは難しくない。
ガブリエル「リンゴさん……💧」
イマノル
「ふ〜ん……まあ、冷静にってリンゴには難しいよなぁ……」
感情豊かなリンゴはそこが魅力でもあるが、一度怒りの炎がつくとなかなか消えない。
ヴェルンヘルは普段から女癖が悪くそこに疑う余地など持ち合わせてはいないのだろう。
ガブリエル
「国王夫妻が不仲って本当なんだ…」
知りたくなかったような顔をしていた。
ティアゴ
「……そうかな」
酒を一口飲みながら静かに言った。ガブリエルは怪訝そうにティアゴを見る。
ティアゴ
「相手を嫌いだったり、興味がなければ女を作ろうがそこまで怒ったり冷静さを欠けたりはしないだろう。……少なくとも、王妃は陛下を好きな気持ちを持ち続けているよ」
淡々と言うティアゴをイマノルは意外そうに見ていた。
ガブリエル「ふ〜ん…」
イマノル
「陛下もちゃんとリンゴのこと大事に思ってると思うよー」
ガブリエル「本当かなぁ……」
あの女好きの陛下が?とガブリエルは冷ややかだ。
イマノル
「リンゴがいるといつっつもジロジロ身体みてるし、あれは絶対エロい気持ちで……」
ガブリエル
「リンゴさんスタイルいいもんねぇ」
バカなことを言ってる2人に呆れた顔をしながらティアゴは周囲を見回した。この時間、リンゴが酒場に現れてもおかしくはない。話を聞かれたら軽蔑の眼差しを向けられることだろう。その中に確実に自分もカウントされてしまう。
ティアゴ
「話を戻すが何か追加情報はないか?騎士隊には特に入っていないって先程報告がきたんだが」
イマノル
「巫女の話だと、入国者リストで例の女性をヴェルンヘル陛下は始めから気にしていたようだってね」
さらりと重要な話がイマノルの口から出たのでティアゴは驚いた顔をしたあと不満げな表情でイマノルを睨んだ。
ティアゴ
「それは初耳だ。なんでもっと早くに教えないんだ」
イマノル
「ティアゴさんのことだから知ってるのかと思ったんだよ〜」
イマノルはアホなことばかり言ってるが、聡いところもあればティアゴと違う情報網を持っている。
ガブリエル
「陛下の好みだったから手を出すタイミングを見計らってたんだ」
ガブリエルはあくまで陛下が女性に手を出そうとしてしっぺ返しをくらったのだと信じて疑わないようだった。
ティアゴの女が賊である説になんの証拠もないのでそれを覆すことはできない。
ティアゴ
「……どちらにせよ、陛下は怪我をされた。それも軽くない怪我でお命に関わる大怪我をしていてもおかしくなかった。今後、このような事があってはならない」
ガブリエル
「でもさ、陛下が女性と2人きりになったら俺たちどうしようもないんじゃ…今から陛下に話を聞きにいくとか?それで対策を考える?」
ティアゴ
「陛下はきっと、本当のことをお話にはならないだろうなぁ」
イマノル
「だね。陛下はのほほんとしているように見えて一度決めたことは簡単に変えないよ。それにちゃんと考えがあってのことだと思う」
急に真面目な顔つきになったイマノルは言葉を続けた。
イマノル
「陛下が頑なにその意見を変えないとしたら、それは俺たち国民のための嘘なんだと思う。女に手を出そうとして怪我した情けない国王だなんて言われてるのにそれでも意見を変えないんだからさ」
ガブリエル
「………イマノルがまともなこと言ってる…」
まともなイマノルの姿にガブリエルはなぜか顔を引きつらせた。
イマノル
「俺はいつでも真面目でまともだって」
ガブリエル「えぇ………」
真面目でまともであんなんなのかとガブリエルはドン引きした。
*普段は頭のネジが何本か外れた男と呼ばれている。
イマノル
「俺たちが深読みしすぎて、本当にただのスケベ心の結果、だけってこともあるんだけどさ。俺はこれも大いに"混じって"るんじゃないかって思ってる」
ガブリエル
「いいよなぁ、黙ってても女が寄ってくるなんてさ。陛下なんかよりどりみどりじゃん」
椅子に寄りかかり、恨めしそうに酒場の天井を睨む。
ティアゴ
「ガブリエルの奥さんは綺麗な方なのに、なにが不満なんだ」
ガブリエル
「それとこれは違うんだよ、真面目な導師には分からないかなー」
はぁ〜と盛大なため息をつくガブリエル。
イマノル「ま、真面目っ……」
イマノルが吹き出したので、テーブルの下でティアゴはイマノルの足を蹴っ飛ばした。