219年 魔女の加護が消えた国。その一戦を知る者は誰もいない | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
更新が遅れました💦

ヴェルンヘル・ラウル
現エルネア王国国王
「女癖が悪くなければいい国王なのに」と一定の評価をされつつ残念に思われている。
彼に擦り寄る女性は数知れず。
国民を大切にし、老若男女に愛される国王。






リンゴ・ラウル
エルネア王国王妃
龍騎士。ガルフィン魔銃師会所属
明るく、そこにいるだけで場が和み華やかになる。


ティアゴ・バーナード
現魔銃導師。ガルフィン魔銃師会所属。
龍騎士。ヴェルンヘルとは仲が悪いが今は休戦しているとかいないとか。



゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――

リンゴ
(さっきティム君と何をコソコソ話をしてたんだろう?)

目の前を歩くティアゴの背中をリンゴを睨んだ。

酒場に入った時の周囲から向けられる憐憫に満ちた目を思い出す。

一度足を止めて酒場を振り返る。その様子に前を歩いていたティアゴがすぐに気付いてリンゴに声をかけた。


ティアゴ
「ヤーノ市場にいったら、キャラバンも付き合ってほしいんだけど」

いつも通り澄ました表情で、片手をポケットに突っ込んで気怠そうにしているティアゴの考えていることがイマイチ分からないが酒場から遠ざけようとしていることをリンゴも察した。


リンゴ「……分かった」

頷いて、大人しくティアゴのあとに続いた。

  



その時だった




ヤーノ市場に向かう道中、リンゴとティアゴの背後で何かが壊れる音が響き渡る。


リンゴ「……?!な、なに?!」

爆発音にも似たその音に驚愕しながら背後の酒場を振り返った。酒場から戸惑いの声や悲鳴が聞こえてきた。



ティアゴはきた道引き返し、酒場に飛び込むと、
一階はテーブルと椅子がいくつも吹き飛んでいて、中央には壊れた木片が散乱していた。


ティアゴ
「………こ、これは一体…」


何がどうなってこうなったのかちっとも分からないでいると、ティムが二階を指差して叫んだ。


ティム
「に、二階!!陛下がいた部屋から急に風が吹いて、こんなことに!」

ティムのいた席には木片が散乱し、とても食事どころではない状態だった。

指で示されている二階を見上げると、一番奥の部屋……普段は使われていない部屋の扉や壁が破壊されていた。

一階に散らばる木片の正体はあの部屋のものだった。


リンゴ
「ヴェルンヘルが…?!」

ティアゴのすぐ後ろにいたリンゴがヴェルンヘルが二階にいた、という更なる衝撃を受けて顔を引きつらせた。


ティアゴとリンゴは階段を駆け上がり、扉が破壊された部屋に駆け込んだ。




部屋の中は花瓶やテーブルありとあらゆるものが散乱していた。


リンゴ
「………魔法の気配がある…」

独特の空気が部屋に流れている。強い魔法が使われただろうことが分かりリンゴの表情が強張った。


部屋を注意深く見回していたティアゴの顔色がサッと変わった。


ティアゴ「……!」

足元に血痕が落ちていた。


リンゴ「これはヴェルンヘルの…?!」

ティアゴはヴェルンヘルの居場所を確かめる。


ティアゴ「………」


居場所を確認しただろうティアゴは眉を顰めた。


リンゴ「……ヴェルンヘルはどこにいるの?」

停止しているティアゴにリンゴは不安げに訊ねた。


ティアゴ「それが……バグウェルの森だって」


リンゴ「……なんで、バグウェルの森……」

リンゴは混乱していた。


ティアゴ「そこに逃げ込んだのかもしれない」


上着のポケットから導きの蝶を取り出すと

「いくぞ、バグウェルの森に」

転移魔法で2人はバグウェルの森に向かった。


バグウェルの森は通常、龍騎士しか入れず、入るには1人ずつしか入れない。


バグウェルの森に繋がるゲート前は静寂に包まれていた。




゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――

リリー・フォード
龍騎士。ローゼル騎士隊所属
リンゴの母。ヴェルンヘルの姑。正義感が強い。



事態を知った武術職が酒場の前の噴水広場に集まっていた。


リリー
「陛下が賊に襲われた可能性がある!一刻も早く陛下を保護し、賊を討伐せよ!」

リリーの声が響き渡る。


武術職が物々しい雰囲気で各地に散って行った。




ラナ
「陛下はバグウェルの森なのでは……?」


リリー
「ーー居場所を誤魔化す魔法が使われている可能性がある」

他の人に聞こえないよう、リリーは声をひそめた。


ラナ「そんな魔法があるのですか?」

リリーに身を寄せながら小声で訊ねる。


リリー
「魔法でもあるし、機械で居場所を変換することも出来るの。私はそれを知ってるから」

かつて、レイラの作ったその装置でリリーは身を隠した過去があった。

リリーは直感で、国王の居場所はそこではないと思っていた。

すでにバグウェルの森にはティアゴとリンゴが到着している。

龍騎士の2人がバグウェルの森にいるならば、残りの人員は別にさくべきだと考えた。


ラナ
「陛下と一緒にいたのはどんな人?」

目撃していた夫のティムにヴェルンヘルと部屋に入っていた女性のことを聞く。


ティム
「ーーー金髪碧眼の、色白で綺麗な人だった。肌が見える異国の赤い服を着ていたよ」

リリーとラナ、真面目な2人の女性の顔色を伺いつつ気まずそうに答える。


リリー
(陛下……)

口には出さないものの、それでひょいひょいついて行ったのだと思い内心呆れる。ラナも同じ感想を抱いたようで短いため息をついた。


イマノル「マジかぁ、陛下……」

苦笑しながら、イマノルは陛下を探しに向かった。





゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――




薄暗い森の中に2人の姿はあった。



2人は距離をとりつつ、牽制しながら睨み合っている。


女性
「優しき国王陛下……国民を巻き込みたくないからってこんな場所に移動する意味…わかっているの?」」



ヴェルンヘル
「………承知している」

迷いのない眸で、ジッと女性から目を離さない。


女性
「陛下を過大評価しすぎたかしら?ただただ優しいだけの国王は、愚かなだけ」


ヴェルンヘル
「………」


女性
「私の正体を知ってると言ったけど、それなのに2人きりになったの?国王陛下。」


ヴェルンヘル
「貴方は『風の魔女』ベルメル。風使い……国際的に手配されている」

入国者リストをみて一瞬でベルメルだと気付いた。偽名を使ってはいたが、見目麗しい彼女はすぐにヴェルンヘルの目についた。

ただの観光か、目的地までの通過点か、旅で寄っただけなのか。どれにも当てはまらない場合、最悪の事態が想定された。

彼女は己の魔法のように気まぐれにその力を振るい多くの国を困らせてきた。人殺しを平気で行う非常に危険な人物だった。


ベルメル
「あたり。陛下に知ってもらえてるなんて光栄だわ〜」


ヴェルンヘル
「………なぜ大国ばかりを狙う貴方がこのような小国に…」


ベルメル
「魔女の加護が消えた国」


ヴェルンヘル「魔女の加護?なんのことだ?」


ベルメル
「とぼけないで。この国に、居たでしょう?水使いが」


ヴェルンヘル
「……なるほど。貴方にはお見通しというわけか」

ヴェルンヘルは息を吐いて続けた。

レイラさんは、貴方がいつかくるだろうと危惧していた」


気まぐれな風使いが、自分の死後にこの国を荒らしにくるかもしれない。リンゴでは相性が悪く甚大な被害が出るかもしれないとレイラは自分の命の灯火が僅かだと知った時そうヴェルンヘルに言い残した。


ベルメル
「それは嬉しい。」

心から嬉しそうに笑う。なにが嬉しいのかヴェルンヘルには理解できなかった。そもそも国際手配されるような人間の思考は理解できないのかもしれない。

「あ、そうそう、陛下………もしかして助けがくるって思ってるのかもしれないけど、こないわよ」


ヴェルンヘル「……?!」

僅かに動揺が表情に現れる。その様子にベルメルは更に嬉しそうな顔をする。


ベルメル
「私の魔法で陛下の居場所はバグウェルの森になっている。私は検索できなくなってるの。分かる?この意味が」


ヴェルンヘル「………」


ベルメル
「ヴェルンヘル陛下は女に手を出そうとして、殺される。間抜けな話……
女好きの国王陛下には相応しい末路かしら」


ヴェルンヘル
「………貴方こそ分かっていない。俺の臣下は優秀だ。もしも俺がここで倒れれば、龍騎士3人が貴方の首を刎ねるだろう。この国で死ぬか、ここで去るか、どちらがいい」

双剣を構え落ち着き払った様子でベルメルに問う。


ベルメル
(ーー龍騎士が私と戦うにしても、かなりの犠牲が出る……それを分かってるからこの場所で交渉にでたわけか…) 


ベルメル
「信頼してるのね、臣下を」



ヴェルンヘル
「当然だ。俺にはもったいないほどに、有能な者ばかりだ。」

真っ直ぐな眸で、力強く言い切った。ベルメルは一瞬面白くなさそうな顔をした。


ベルメル
「……でも、陛下のピンチには駆けつけられない」

ベルメルは腕を上げ、振り下ろした。空気を切り裂くように風塵がヴェルンヘルに向かう。ヴェルンヘルは間一髪で避ける。ベルメルの指先が動くと竜巻が起こる。

ヴェルンヘルの身体が風に煽られて地面に転がる。


ベルメル
「この場所に気づいたところで、戦いは終わっている」

先程より威力を上げた風の刃がヴェルンヘルに向かう。

ヴェルンヘルは走り出し、風の刃はヴェルンヘルの身体スレスレを通り過ぎて、地面を抉った。

抉られた地面に咲いていた花々が無残に細切れになっていた。



空中で空気が弾丸を形成され、ヴェルンヘルを襲う。

風を伴った特殊な魔法弾は着弾すると大きな爆発音をならしながら、ヴェルンヘルの顔や腕を切り裂いた。


ベルメル
「カッコいい顔に傷がついちゃったわね……もう終わらせてあげる」

ベルメルが片手剣を手に走りこんできて跳躍、ヴェルンヘルの頭上から一気に振り落とした。


ヴェルンヘル
「……本当は使いたくはないが」


ベルメルが迫ってきたところでヴェルンヘルは懐に隠してあった魔銃を抜き、狙いを定めて放った。

銀色の閃光を放ちながら、ベルメルの身体を貫いた。


ベルメル「……!」

ドサリとベルメルの身体が地面に打ち付けられる。

ベルメルの身体が触れた地面の色が青紫色に変色していく。


ヴェルンヘル
「レイラさんは貴方がくるだろうと察していたと言っただろう」

魔銃を下ろすとヴェルンヘルは立ち上がり苦悶の表情を浮かべるベルメルを見下ろした。



ベルメル
「あの女……死んだのに…」

息も絶え絶えに、恨みのこもった声をだす。


ヴェルンヘル
「レイラさんの魔法が込められた特製の弾だ。酒場で放つわけにはいかなかった」


魔銃は、魔法をカートリッジに込めて戦う。

レイラは生前、何かあった時のためにとヴェルンヘルに自らの力を注入したカートリッジを渡していた。回数は限られているため、外さない射程に女が入るのをヴェルンヘルは待っていた。
対人間……特に魔法使い相手に特化された特性の魔法弾。

使われることがないことを願っていた。


ヴェルンヘル
「この魔法弾の存在を、知られるわけにはいかなかった。ーーだから、国民のほとんどの者が知らぬこの場所に転移した。」


最初から、助太刀がないことは分かっていた。


助太刀があるとヴェルンヘルにとって都合が悪かった。




だからこの場所で………


本当はこの場所を、汚したくはなかった。




ヴェルンヘル
「ーーこれで俺も、ガノスには逝けないか…」


女の姿は跡形もなく消えていた。



……最低限の責務は果たした


「ありがとう、レイラさん…」


空を見上げる。


澄み切った青い空が広がっていた。


辺りを見回すと、美しい花畑がベルメルの攻撃によって荒らされていた。ヴェルンヘルはスキルを発動する。

元どおりというわけにはいかないが、先程の荒れように比べればいからかマシになった。



ヴェルンヘル「ごめんね」

元には戻せない原型の留めていない花に向かって呟くと、ヴェルンヘルは転移魔法でエルネア城に戻った。




゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


ティアゴとリンゴはバグウェルの森に入り、陛下を探したがやはりその姿はなく、バグウェルは陛下は今日来ていないと証言した。


いつまでもその場所に留まるわけにも行かず、2人はバグウェルの森から離脱した。


リンゴ
「バグウェルは、妙な気配の女が入り込んだようだ、気をつけてろって……」


ティアゴ「………それが陛下と一緒にいた女…」

気まずそうに言うとリンゴの表情が僅かに曇る。


バグウェルの森の前の転送装置の前で話し込んでいると、ティアゴがヴェルンヘルの居場所が変わったことに気づいた。


ティアゴ
「……!陛下が王家の居室にいる!」


リンゴ「えええ?!」


2人は慌ててエルネア城に入り、王家の居室に駆け込んだ。


奥の部屋でヴェルンヘルが着替えようとしているところだった。

着ている服があちこち斬られて血が滲み痛々しい姿だった。


ティアゴ「陛下!!」


リンゴ「ヴェルンヘル……!」


2人は慌ててヴェルンヘルに駆け寄った。2人の姿を見てヴェルンヘルは内心動揺した。

人が来る前に着替えを終えたかったがそれは叶わなかった。



ヴェルンヘル
「どうしたの、二人とも……何か用かな?」

いつものように笑顔を浮かべ、さりげなく片手で傷口を押さえ酷い怪我を隠した。


ティアゴ
「ーー何か用って陛下を探していたんですよ!」

のんびりとした様子のヴェルンヘルを訝しげに思いながらティアゴはヴェルンヘルの身体を見る。


リンゴ
「その怪我!!一体何があったの?!」


ヴェルンヘル
「…えっと……酒場で意気投合した女性と部屋で飲んでたら、怒らせちゃって!気づいたらこんなことに」

笑いながら頭を掻くヴェルンヘル。


リンゴ「は?!」


ヴェルンヘル
「何もしてないよ?!ただ楽しくお酒を飲んで異国の話をしていただけなんだけどーー」

パァン!っとヴェルンヘルの頰でリンゴの平手打ちが炸裂した。


リンゴ「最低…!」


怒ったリンゴはプイっと背を向けて行ってしまった。ヴェルンヘルはそれを無言で見送った。


ティアゴ「陛下………」

ティアゴはなんともいえない表情を浮かべてヴェルンヘルに視線を向ける。


ヴェルンヘル
「着替えるので隣の部屋に行っててもらえますか」

平手打ちされた事を特に気にしていない様子で、着替えを片手に持つと、部屋で突っ立っているティアゴに言った。


ティアゴ
「……怪我の治療をしましょう」

一国の国王が痛々しい姿のまま放置するわけにもいかないと、上着から軟膏を取り出した。


ヴェルンヘル「必要ない」

ヴェルンヘルはティアゴの提案に応じようとしなかった。


ティアゴ
「俺が嫌なら、ギオルギーやアスセナ、セシィーさんたちに治療させますが」


適当に魔銃師会メンバーの名前を出すとヴェルンヘルは少し困った顔をした。ティアゴはギオルギーの名前に反応していると感じた。


ヴェルンヘル
「……いつ誰が、ティアゴさんを嫌だと言いましたか」

ふぅと息を吐くと、ベッドに腰を下ろした。治療しろということだろう。


ティアゴ「ーー少し染みますが我慢して下さい」


顔の傷に軟膏を塗りながら

「相手の女性は今どちらに?」
と、国王に怪我をさせた張本人のことを聞いた。


ヴェルンヘル
「さあ……相当怒っていたので、もう出国されていると思います」


ティアゴ
「何をして女性を怒らせたのですか?」


ヴェルンヘル
「……ちょっと事の運びが早かったようで」

気まずそうに答えた。


ティアゴ
「女性の扱いがお上手な陛下が珍しい…」

ティアゴから呆れと驚きの混じった声が出た。


ヴェルンヘル
「ティアゴさんには負けます」


ティアゴ
「毎日女性に囲まれている陛下が何を仰いますか」


ティアゴの言葉にヴェルンヘルは曖昧に笑った。




ティアゴ
「その女性ですが騎士隊に追わせましょう」


ヴェルンヘル「その必要はない」


ティアゴ
「……なぜですか?国王にこれだけ怪我をさせてお咎めなしというわけにはいきません」

ティアゴの声に怒りが滲んでいた。

臣下として国王に怪我を負わせる相手を見逃すのは我慢ならなかった。



ヴェルンヘル
「ーー情事の最中の出来事なので……大事にするとリンゴにも迷惑がかかります」

そう言って困った表情を浮かべた。

ティアゴはその様子に言葉を詰まらせ、黙って薬をヴェルンヘルの身体に塗る。

ヴェルンヘルはティアゴの性格をよく理解している。

リンゴに迷惑がかかるいえばティアゴが黙るだろうと思っていた。

治療が終わり、ヴェルンヘルは身支度を整えた。

国王が身に纏う白と緑の装束は新品で、顔の傷に当てられたガーゼだけが争いの痕跡を残していた。

正確にはガーゼをしていない方のほっぺたはリンゴに平手打ちされて赤くなっていた。


ヴェルンヘル
「……ウィアラさんに謝ってこよう」

ため息をつきながら歩き出すヴェルンヘルに、


ティアゴ「陛下」

再びティアゴが呼び止める。


ヴェルンヘル「何でしょう?」


立ち止まり、半身を捻ってティアゴを振り返る。



ティアゴ
「酒場のあの部屋はウィアラさんから借りる転移石で転移魔法で移動できる部屋のはず……皆に例の女性と入るところを見せたのは、わざとですよね?自分に何かあった時、あの女の仕業だと分かるように」


ヴェルンヘル
「…何が言いたいのか……据え膳食わぬは男の恥というではないですか。その最中に揉めただけです。」


ティアゴ「……陛下」

まだ何か言いたそうなティアゴにヴェルンヘルは、


ヴェルンヘル
「あの部屋の使い方をよくご存じのようですね」



ティアゴ
「知識として人から聞いていただけです」

ティアゴは表情を変えず淀みなく答える。


ヴェルンヘルは意味深な笑みを浮かべると酒場に向かって歩き出した。






ーーウィアラさんに国王が叱られたのはいうまでもない……






彼が暖かな眼差しを向けるのは愛しい家族と自国民と、敵意を持たない旅人たち


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――

ーその後酒場にてー



リリー
「………で?陛下、何の最中に揉めたんでしたっけ?ティアゴから説明を受けましたが、私は一ミクロンも理解できませんでした。私にも分かるように説明していただけます?」

酒場の空き部屋に連れてこられたヴェルンヘルは、堅物のリリーに追求されていた。


ヴェルンヘル
「えー、えーーっと……それは、まぁ、なんというか……ただ、飲んでいただけっていうか、ほら、分かりますよね?」


リリー「何も分かりません」

リリーは険しい顔でヴェルンヘルを睨んでいた。


姑のリリーにヴェルンヘルはたじたじになった。







国際手配されていた風使いを倒したっていうことを何故黙っているのか。その存在すら、リンゴたちに言わないのは、ついこの前魔獣討伐戦があったばかりで魔女の襲撃があったとなれば国民に動揺が広がること、ティアゴさんはティアゴさんで多忙なため煩わせたくない、リンゴには心配をかけさせたくない、万が一があると被害が甚大になりリンゴの立場がなくなることを陛下は危惧していたんだとおもう。
風使いを倒したことは小国であるエルネア王国が目立つことを危惧して「なかったことに」ヴェルンヘル陛下はしようとしている。

俺はきちんと経緯を説明するべきだと思うけど、

何が正しいのかは立場によって人それぞれ。陛下は考えたのち、この結論にでたんだな。




ん?
なんで俺が知ってるのかって?

んなこと俺にも分かんないよ〜




あとがき
リリーはヴェルンヘルが小さい時から仲良くしてるからか、今もヴェルンヘルから採取や釣りなど誘うほど仲良しさんです。