任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
「そーいえば、私ティアゴくんが酔っ払ってるところほとんど見たことないなぁ」
みんなとお酒を飲んでもティアゴは平然としていることが多いなぁとふと思って口に出た。ティアゴは意外そうな顔をして酒の入ったグラスを口に運ぶ。
ティアゴ
「・・見たことあるでしょ?バルナバさんが龍騎士になったお祝いの日の帰りに酒場の前で会ったじゃん..」
リンゴ
「えーでも、あんなに酔ってるのにちゃんと会話になってたし、私のこと送ってくれたし、酔っ払ってるってほどじゃなかった..」
ティアゴ
「それをいうなら、俺だってリンゴが酔っ払ってるところ見たことあった?リンゴは飲んでもそんなに飲まないから酔っ払わないよね..」
リンゴ
「じゃあ!今どっちが先にダウンするか勝負しよう!」
面白い事を思いついたという風にリンゴは楽しげに提案した。
ティアゴ
「・・・えー、やめておいた方が・・」
リンゴの提案に難色を示すティアゴ。
リンゴ
「なんで?」
ティアゴ
「だって、、俺とリンゴじゃ、勝負にならないよ。リンゴは普段少ししか飲まないんだから、勝負なんてしたら危ないだろ」
リンゴ
「大丈夫だよー!いつまでも子供扱いしないでよ」
口を尖らせて反論する。
ティアゴ
「子供扱いとか、そーゆーことじゃなくて一般論として..」
リンゴ
「・・そんなこと言って、
ティアゴ君、万が一私に負けて、醜態さらすのが怖いんでしょ?」
リンゴはニヤっと笑った。
ティアゴ
「・・・俺、何年も酒豪の集まる魔銃師会にいるんだよ?後悔しないでね?」
ウィアラさんによって、二人に酒が運ばれてくる。
ティアゴ
「勝負だけど、無理はしないでね。...本当に」
リンゴ
「わかってるよーティアゴ君も無理しないでね」
ティアゴ
「はいはい」
そして。
夜2刻。
泥酔したのは、やはりリンゴだった。上機嫌にお酒を飲み、なぜか椅子をティアゴの席の真横に持ってきて隣に座りティアゴの腕を組んでしゃべっていた。
ティアゴ
「この前のセシィーさんと同じじゃないか..」
リンゴ
「ティアゴ君って優しいよねー」
酔っ払って話があまり通じなくなっている。
ティアゴ
「・・・・・・リンゴ・・ここ酒場だよ・・」
こんな状態で飲んでたら誤解される。セシィーはあんな性格のためか誰も誤解しない。
イマノル
「ティアゴさん、これなんなんですか?」
酒場に用があったらしいイマノルが二人のいる席まできて、ティアゴたちを見下ろしていた。
ティアゴ
(げ、イマノル?!滅多に酒場にこないくせによりによって今日来やがった..)
「見てのとおりだよ、リンゴのやつ、飲みすぎちゃって..」
イマノル
「ティアゴさん、顔にやけてますよ」
ティアゴ「え?!」
イマノル「嘘です」
ティアゴ
「・・・お前しばくぞ」
イマノル
「そんなこと言っていいんですか?あの日のドルム山道での話みんなにしちゃいますよ?」
ティアゴ
「な、なんの話..」
イマノル
「ここで話していいんですか?ティアゴさん、困りませんか?」
ティアゴ
(だからイマノルとは関わりたくなかったんだ.!)
「・・お前、俺を脅してるの?」
ティアゴが険悪な顔になってイマノルを睨んだ。
イマノル
「つまり、ティアゴさん、あの日のこと自覚あるんですね」
イマノルはニヤリと笑った。ティアゴの顔が僅かに悔しそうに歪んだ。
(あの毒舌のティアゴ・バーナードが弱味を握られて困惑してる..あの日からこの人俺と明らかに関わらないようにしてたもんなー)
リンゴ
「ちょっとイマノル!ティアゴ君をいじめないでよ!」
*イマノルとリンゴは親戚関係
ティムとバーニーが酒場に入ってきた。
ティム
「なに?なんの騒ぎ?」
リンゴ
「イマノルがティアゴ君のこといじめるの!」
バーニー
「リンゴちゃんだいぶ酔ってるね..」
ティアゴ
「...リンゴ、もう飲むのやめよう..」
ティアゴはリンゴからグラスを取ろうとするがリンゴは首を横に振り、抵抗した。
リンゴ
「なんで?!私まだ酔いつぶれてないよ!まだ飲めるし!」
バーニー
「でもすごい酔ってるよ..送ってあげようか?」
バーニーは心配そうに言った。
リンゴ
「バーニーさんはやだー!ティアゴ君がいい..」
リンゴはティアゴの腕をぎゅっと抱きしめた。胸があたっていてティアゴは困惑した。
ティアゴ
「〜〜〜〜〜リンゴ、酔いすぎだって..」
人の目もあるし、さすがにティアゴは恥ずかしくなった。
ティム
「ティアゴさん顔赤いですよ」
ティアゴ
「俺もかなり飲んでるからな..」
ティアゴはぶっきらぼうに答えた。
バーニー
「・・リンゴちゃんはティアゴ君がお気に入りなんだね。じゃあ、ティアゴ君最後までお願いね」
ティアゴ
「え、いや、無理です!」
無理だと言ってるのに、みんな散っていく。
イマノル
「送り狼にならないでねーティアゴさん」
ティアゴは無言でイマノルを睨みつけた。
バーニーとティムはティアゴたちから離れた席に座った。イマノルは帰って行った。
ティアゴ
「・・・・」
(面白がってるか、面倒で逃げたなあの人たち)
リンゴ
「ティアゴ君、お酒すすんでないよ」
ティアゴ
「俺まで酔ったら大変なことになる..二人で泥酔したらどうすんだよ..」
(前にバルナバさんとリリーさんがここで酔いつぶれて寝てたけど..あれはあれで面白い光景だったな...)
リンゴ
「ティアゴ君、後悔するなよって言ってたのに、もう終わりなのー?」
ティアゴ
「・・ったく、手のかかる後輩だな・・」
リンゴ
「・・・だって・・」
ティアゴ
「・・ん?」
リンゴ
「これから、あんまり来れなくなっちゃうかもしれないじゃない?」
ティアゴ
「・・・・・」
リンゴ
「・・・・・」
ティアゴは無言でグラスに入った酒を飲み干した。
ティアゴ
「今日は、飲もうか...」
(殿下は最近、指輪を持ってウロついてるもんな..)
リンゴ
「さすが先輩だね♪」
ティアゴ
「..リンゴは少しペース落として..」
しばらく飲みながら、しんみりした様子のリンゴにティアゴは聞いた。
ティアゴ
「・・殿下と、無理して付き合ってるの?」
リンゴ
「・・・・そんなことはないよ」
答えるまでの間が、ティアゴを不安にさせた。
ティアゴ
「俺が、けしかけたから無理矢理だったならごめん。
リンゴはどうしたいの?」
ーーーどうしたいの?
問いかけがあたまの中を木霊する。
その問いかけの答えは、今のリンゴの中には存在しないのかもしれない。
存在していたとしても
それは口にしていいことではないことをリンゴ自身よく分かっている。
ない答えの代わりにに、リンゴはぽつりぽつりと話をはじめた。
リンゴ
「・・・私、レッドと戦って死ぬんだと思ってたから、まさか生きて帰ってこれると思わなかったの。でも、みんなに会いたいと思っちゃった..
ティアゴ君にもまた会いたいって思っちゃって..」
リンゴは力のない笑みを浮かべ、ティアゴは驚いてリンゴを見つめた。
「そう思ったら、必死に戦って私は勝ってた。国に帰ってきた時、1番最初にティアゴ君に会えて、本当はすごくホッとした..」
(着替えを見られたけど..)
ティアゴ
「..リンゴが生きて帰ってきてくれて俺もみんなホッとしたよ」
リンゴ
「.....私、フォード家で一人だけ何の取り柄もない役立たずだし、王家入りすることがフォード家のためになるならって..」
なんでこんな話をするのか、自分自身でもよく分からなかった。相手がティアゴ君だからだろうか。
ティアゴ
「何の取り柄もないって?誰がそんなこと言った?」
リンゴ
「今は誰かに言われたりはしないけど..お母さんは騎士隊長だし、お父さんは立派な騎士だし、セイとモモは天賦の才もち。私だけ、何にもない..」
ティアゴ
「(今は?)天賦の才なんて、滅多に授からないんだよ。リリーさんもジェレマイアさんだって普通の人だろ。リンゴは、これからじゃないか。まだ魔銃師会入ったばかりでしょ?
っていうか、無理して殿下と付き合うことは..」
リンゴ
「無理してないよ。ーーー 殿下はカッコいいし優しいし..」
リンゴはティアゴの腕をギュッと掴んだ。お酒の匂いと、リンゴの甘い匂いでティアゴはクラッとした。
ティアゴ
(・・酒も入ってるし、理性飛びそう..ここが酒場で良かった..)
バーニー
(話してる内容は聞こえないけど、二人の雰囲気が普通じゃないな...)
ティム
(なんだろう、ティアゴさんの様子もいつもと違う..)
ティムとバーニーは不安そうに顔を見合わせた。
ティアゴ
「・・・天賦の才があってもなくても、今のリンゴがいいよ」
リンゴ「........本当?」
ティアゴ
「だから、俺も殿下も、ティム君もバーニーさんも、ラナちゃんたちもリンゴと仲良くしてるでしょ」
リンゴ「そうかな..」
ティアゴ
「そんな事言ったら俺も俺の家族も両親も天賦の才持ってないよ。聞くけど、なんでそんな俺と一緒に飲んたり話したりしてくれるの?」
リンゴ
「え?!そ、それは..ティアゴ君とは昔から仲がいいからだよ..」
ティアゴ
「そうでしょ、天賦の才持ちとかあんまり関係ないよね?」
リンゴ「うん..」
(なんか少し気持ちが楽になった..)