望ましい医療保険の姿を考えてみた
「比べにくい商品は比べなくても良いだろう」。こんな思いを強くしたのは、先日週刊誌のある記事を目にしたときです。
その記事は週刊ダイヤモンド4月21日号の「医療保険22商品徹底比較」。同誌の保険特集号は、一般の方にとって一読の価値があると思います。ただ私は、「たいへんな労作だ」と比較表を見ながらも、冒頭のような印象を否めませんでした。
関係各位が「ひたすら顧客本位でありたい」と考えて商品を作っているのであれば、比較検討が難しい商品にはならないと考えるからです。
実際、「医療保険」の比較対象となる項目を思いつくままに挙げていくと、入院日額、通院日額、給付金支払限度日数、手術給付金額、解約返戻金の有無、セカンドオピニオンサービスの有無など、すぐに片手では足りなくなってしまいます。
商品の付加価値を追求していった結果かもしれませんが、オプションを足していくと、当然、保険料も高くなります。
現状、売れ筋の医療保険は、保険料の総額にすると200万円程度の買い物です。入院1日当たり1万円、手術の際に10万円等の保障内容にしては、素朴に高額ではないかと感じます。
加えて、比較検討に要する時間もお客様が負担するコストだ、という視点があれば、もっとシンプルな商品が考案されるはずだと思うのです。
では、どんな「医療保険」が望ましいのでしょうか?
現行商品の問題点は、保障範囲の拡大にあります。「成人病」や「女性特有の疾病」での入院に給付額を上乗せする選択肢の存在などが、わかりやすい例でしょう。
給付金の支払い要件が増えるほど、商品は複雑化し単価も高くなります。重要なのは、逆に給付要件を限定することです。私は、たとえば健康保険の「高額療養費制度」を補完する保険があるといいのではないかと思います。
一般的な年収の方が、健康保険が適用される治療を受けた場合、「高額療養費制度」によって、1カ月の医療費が100万円かかっても、自己負担は8万7430円にとどまります。
さらに、1年以内に高額療養費に該当する月が4回以上になった場合には、「多数該当」という制度により、自己負担の上限は4万4400円に下がります。
仮に、この「多数該当」が適用される時点で、月額5万円の給付金が支払われる「医療保険」があったらどうでしょうか。
大病に罹り、闘病生活が数年に及ぶことになり、貯蓄も収入も減った方によると、「多数該当」が適用されたとしても、4万円強の負担感が従前とは全く違うのだそうです。
民間の保険が機能するべきなのは、日帰り入院など、それほど「大事には至らなさそうなケース」ではなく、このように「ある一線を超えるようなケース」でしょう。
「多数該当」を補う保険には次のメリットがある、と思います。
(1)短期間の入院などより発生頻度が低く、1カ月当たりの給付額の上限が決まっているので、保険料もそれなりに抑えられる
(2)70歳以上では、高額療養費の上限が低くなるので、給付金額も連動して下がる設計にすると、保険料も保険会社の負担も抑えられる
(3)商品の機能が一つしかないので、価格競争が進みやすくなる
(4)保険金の「支払事由」がわかりやすい
以上、あえて、現行商品に比べて、給付対象者が大幅に減りそうな商品を想像してみました。
思いつきの域を出ないので、「高額療養費制度が適用されない7万円程度の出費が続く場合はどうする?」「そもそも『ある一線』の線引きが難しいのでは?」「公的制度の変更に伴う問題への対応は?」といった自問には、答が見つからないままです。
それでも、公的な保険との関係を見つめ直すことで、民間の商品が変わる気がします。「わかりやすく安価な医療保険」へのヒントがあるように思うのですが、いかがでしょうか。
その記事は週刊ダイヤモンド4月21日号の「医療保険22商品徹底比較」。同誌の保険特集号は、一般の方にとって一読の価値があると思います。ただ私は、「たいへんな労作だ」と比較表を見ながらも、冒頭のような印象を否めませんでした。
関係各位が「ひたすら顧客本位でありたい」と考えて商品を作っているのであれば、比較検討が難しい商品にはならないと考えるからです。
実際、「医療保険」の比較対象となる項目を思いつくままに挙げていくと、入院日額、通院日額、給付金支払限度日数、手術給付金額、解約返戻金の有無、セカンドオピニオンサービスの有無など、すぐに片手では足りなくなってしまいます。
商品の付加価値を追求していった結果かもしれませんが、オプションを足していくと、当然、保険料も高くなります。
現状、売れ筋の医療保険は、保険料の総額にすると200万円程度の買い物です。入院1日当たり1万円、手術の際に10万円等の保障内容にしては、素朴に高額ではないかと感じます。
加えて、比較検討に要する時間もお客様が負担するコストだ、という視点があれば、もっとシンプルな商品が考案されるはずだと思うのです。
では、どんな「医療保険」が望ましいのでしょうか?
現行商品の問題点は、保障範囲の拡大にあります。「成人病」や「女性特有の疾病」での入院に給付額を上乗せする選択肢の存在などが、わかりやすい例でしょう。
給付金の支払い要件が増えるほど、商品は複雑化し単価も高くなります。重要なのは、逆に給付要件を限定することです。私は、たとえば健康保険の「高額療養費制度」を補完する保険があるといいのではないかと思います。
一般的な年収の方が、健康保険が適用される治療を受けた場合、「高額療養費制度」によって、1カ月の医療費が100万円かかっても、自己負担は8万7430円にとどまります。
さらに、1年以内に高額療養費に該当する月が4回以上になった場合には、「多数該当」という制度により、自己負担の上限は4万4400円に下がります。
仮に、この「多数該当」が適用される時点で、月額5万円の給付金が支払われる「医療保険」があったらどうでしょうか。
大病に罹り、闘病生活が数年に及ぶことになり、貯蓄も収入も減った方によると、「多数該当」が適用されたとしても、4万円強の負担感が従前とは全く違うのだそうです。
民間の保険が機能するべきなのは、日帰り入院など、それほど「大事には至らなさそうなケース」ではなく、このように「ある一線を超えるようなケース」でしょう。
「多数該当」を補う保険には次のメリットがある、と思います。
(1)短期間の入院などより発生頻度が低く、1カ月当たりの給付額の上限が決まっているので、保険料もそれなりに抑えられる
(2)70歳以上では、高額療養費の上限が低くなるので、給付金額も連動して下がる設計にすると、保険料も保険会社の負担も抑えられる
(3)商品の機能が一つしかないので、価格競争が進みやすくなる
(4)保険金の「支払事由」がわかりやすい
以上、あえて、現行商品に比べて、給付対象者が大幅に減りそうな商品を想像してみました。
思いつきの域を出ないので、「高額療養費制度が適用されない7万円程度の出費が続く場合はどうする?」「そもそも『ある一線』の線引きが難しいのでは?」「公的制度の変更に伴う問題への対応は?」といった自問には、答が見つからないままです。
それでも、公的な保険との関係を見つめ直すことで、民間の商品が変わる気がします。「わかりやすく安価な医療保険」へのヒントがあるように思うのですが、いかがでしょうか。
わからない社会保障改革
野田政権が取りまとめた「社会保障と税の一体改革の素案」の14ページにこういう項目かある。
「高齢者医療の支援金を各被用者健保の総報酬に応じた負担とする措置について検討する。
(注)現在は、平成24年度までの特例として、支援金の三分の一を総報酬に応じた負担とする措置が講じられるとともに、併せて、協会けんぽに対する国庫補助率を13%から16.4%とする措置が講じられている。」
お近くの与党、民主党、国民新党の議員に、これがどういう意味なのか、どういう影響を及ぼすのか、尋ねてみてほしい。はたして、与党議員の何人が答えられるだろうか。
日本総研の西沢和彦主任研究員をはじめ、「政治家が、こうした政策をガバナンスできているのか全く不透明」と疑問を呈している。
現在の健康保険制度の財政、というかキャッシュフローはひどくややこしい。
まず、健康保険制度が四つ。組合健保、協会けんぽ、共済組合、国民健康保険。
収入(保険料 公費) 支出(給付 支援金 介護)
組合健保 6.7 (6.5 0) 7.2 (3.4 2.7 0.5)
協会けんぽ 8.0 (6.5 1.1) 8.1 (4.5 2.9 0.6)
共済組合 2.5 (2.1 0) 2.5 (1.1 0.9 0.2)
国保 12.0 (3.5 5.2) 12.0 (9.1 1.9 0.7)
単位は兆円
*介護とあるのは介護保険への「介護納付金」
**国保は、保険料と公費の他に、他の三つの制度からの前期高齢者交付金2.7兆円と療養給付費等交付金0.6兆円を受け取っている。
***支援金とあるのは、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、退職者拠出金の三つで、それぞれの保険制度が負担をして、支援金は後期高齢者交付金として後期高齢者医療制度へ納められ、納付金と拠出金は国保に納められる。
****収入と支出の項目は主なものだけをあげている。
このなかの後期高齢者支援金は、本来、各保険制度の加入者数に応じて拠出する(加入者割)ことになっていたが、2010年度から2012年度までは1/3を総報酬割、2/3を加入者割で拠出することになっている。
政府は、2013年度以降を、まず国保とその他の被用者保険制度間で加入者数に応じて負担を割り振り、三つの被用者保険制度の間では報酬に応じて割り振ろうとしている。
もし現行制度が続くならば2015年度におけるそれぞれの負担額は
組合健保 1兆7300億円
協会けんぽ 1兆8100億円
共済組合 5700億円
となるはずだが、政府の見直し案によると
組合健保 1兆8500億円
協会けんぽ 1兆6000億円
共済組合 6500億円
になる。
これは、組合健保の被保険者の平均月収が36.2万円に対して、協会けんぽの被保険者の平均月収が27.9万円であることから、加入者割をやめ総報酬割にすると、給与の高い組合健保の負担が増えることによる変化だ。
まず、組合健保の負担が1000億円を超えて増えることになるのに、与党議員がどれだけ気がついているのだろうか。厚労省の役人と役所となあなあの審議会のメンバー、それに厚労族議員だけで決めてしまっていないだろうか。
政治主導といいながら、役所の小手先の改正のお先棒を知らずに担いでいるのではないか。
もう一つは、この改正により、協会けんぽの負担が2100億円減ることになるのだが、そっくりその分、協会けんぽに対する公費の投入を減らすこととしている。
この国庫負担の削減の理由として厚労省があげているのは「反射的な効果」。なんだそれは!?
つまり、「財政健全化のために組合健保の負担を増やします」といえばわかりやすいところを「高齢者医療の支援金を各被用者健保の総報酬に応じた負担とする措置について検討する。」などというから、さっぱりわからなくなるのだ。
実はこの一体改革では、被用者保険制度が負担している介護納付金についても加入者割から総報酬割へ変更しようとしている。
しかし、その素案に書かれているのは「今後の急速な高齢化の進行に伴って増加する介護費用を公平に負担する観点から、介護納付金の負担を医療保険者の総報酬に応じた按分方法とすること(総報酬割の導入)を検討する」
これにより、組合健保と共済組合の負担が1600億円増え、協会けんぽの負担がその分減る。そして厚労省は、その分、協会けんぽに対する公費負担を減らそうとしている。
日本総研の西沢主任研究員は
「総報酬割導入は、実態は、一般会計の歳出削減分の組合健保への付け替え。しかし、政府の説明では公平や重点化・効率化といった説明のオブラートに包まれている」
と鋭く指摘している。
まず、こういうインチキな説明をやめて、国民にわかりやすい説明をするところから社会保障改革を始めるべきだ。
与党議員の何人が、この総報酬割の導入の問題に気がついているだろうか。
国会議員自身がわからないことを、どうやって国民に伝えるのだろうか。
「高齢者医療の支援金を各被用者健保の総報酬に応じた負担とする措置について検討する。
(注)現在は、平成24年度までの特例として、支援金の三分の一を総報酬に応じた負担とする措置が講じられるとともに、併せて、協会けんぽに対する国庫補助率を13%から16.4%とする措置が講じられている。」
お近くの与党、民主党、国民新党の議員に、これがどういう意味なのか、どういう影響を及ぼすのか、尋ねてみてほしい。はたして、与党議員の何人が答えられるだろうか。
日本総研の西沢和彦主任研究員をはじめ、「政治家が、こうした政策をガバナンスできているのか全く不透明」と疑問を呈している。
現在の健康保険制度の財政、というかキャッシュフローはひどくややこしい。
まず、健康保険制度が四つ。組合健保、協会けんぽ、共済組合、国民健康保険。
収入(保険料 公費) 支出(給付 支援金 介護)
組合健保 6.7 (6.5 0) 7.2 (3.4 2.7 0.5)
協会けんぽ 8.0 (6.5 1.1) 8.1 (4.5 2.9 0.6)
共済組合 2.5 (2.1 0) 2.5 (1.1 0.9 0.2)
国保 12.0 (3.5 5.2) 12.0 (9.1 1.9 0.7)
単位は兆円
*介護とあるのは介護保険への「介護納付金」
**国保は、保険料と公費の他に、他の三つの制度からの前期高齢者交付金2.7兆円と療養給付費等交付金0.6兆円を受け取っている。
***支援金とあるのは、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、退職者拠出金の三つで、それぞれの保険制度が負担をして、支援金は後期高齢者交付金として後期高齢者医療制度へ納められ、納付金と拠出金は国保に納められる。
****収入と支出の項目は主なものだけをあげている。
このなかの後期高齢者支援金は、本来、各保険制度の加入者数に応じて拠出する(加入者割)ことになっていたが、2010年度から2012年度までは1/3を総報酬割、2/3を加入者割で拠出することになっている。
政府は、2013年度以降を、まず国保とその他の被用者保険制度間で加入者数に応じて負担を割り振り、三つの被用者保険制度の間では報酬に応じて割り振ろうとしている。
もし現行制度が続くならば2015年度におけるそれぞれの負担額は
組合健保 1兆7300億円
協会けんぽ 1兆8100億円
共済組合 5700億円
となるはずだが、政府の見直し案によると
組合健保 1兆8500億円
協会けんぽ 1兆6000億円
共済組合 6500億円
になる。
これは、組合健保の被保険者の平均月収が36.2万円に対して、協会けんぽの被保険者の平均月収が27.9万円であることから、加入者割をやめ総報酬割にすると、給与の高い組合健保の負担が増えることによる変化だ。
まず、組合健保の負担が1000億円を超えて増えることになるのに、与党議員がどれだけ気がついているのだろうか。厚労省の役人と役所となあなあの審議会のメンバー、それに厚労族議員だけで決めてしまっていないだろうか。
政治主導といいながら、役所の小手先の改正のお先棒を知らずに担いでいるのではないか。
もう一つは、この改正により、協会けんぽの負担が2100億円減ることになるのだが、そっくりその分、協会けんぽに対する公費の投入を減らすこととしている。
この国庫負担の削減の理由として厚労省があげているのは「反射的な効果」。なんだそれは!?
つまり、「財政健全化のために組合健保の負担を増やします」といえばわかりやすいところを「高齢者医療の支援金を各被用者健保の総報酬に応じた負担とする措置について検討する。」などというから、さっぱりわからなくなるのだ。
実はこの一体改革では、被用者保険制度が負担している介護納付金についても加入者割から総報酬割へ変更しようとしている。
しかし、その素案に書かれているのは「今後の急速な高齢化の進行に伴って増加する介護費用を公平に負担する観点から、介護納付金の負担を医療保険者の総報酬に応じた按分方法とすること(総報酬割の導入)を検討する」
これにより、組合健保と共済組合の負担が1600億円増え、協会けんぽの負担がその分減る。そして厚労省は、その分、協会けんぽに対する公費負担を減らそうとしている。
日本総研の西沢主任研究員は
「総報酬割導入は、実態は、一般会計の歳出削減分の組合健保への付け替え。しかし、政府の説明では公平や重点化・効率化といった説明のオブラートに包まれている」
と鋭く指摘している。
まず、こういうインチキな説明をやめて、国民にわかりやすい説明をするところから社会保障改革を始めるべきだ。
与党議員の何人が、この総報酬割の導入の問題に気がついているだろうか。
国会議員自身がわからないことを、どうやって国民に伝えるのだろうか。
税金と保険料
厚労省は、社会保障の財源の議論で、よく公助、共助、自助などという。
公助は税金による公費負担、共助は保険料、自助は例えば窓口負担だ。
厚労省は、年金も医療保険も保険なのだから、公助、つまり公費負担が半分を超えてはいけないなどという理屈を言う。だが現状は、公助も共助も関係ないというところまで来ている。
健康保険のキャッシュフローをみると、例えば健保組合は収入6兆7000億円のうち、被保険者が負担する保険料が6兆5000億円だ。
しかし、健保組合の支出を見ると、支出7兆2000億円のうち、被保険者に対する保険給付はわずか3兆4000億円しかない。この他に出産一時金などの支出が5000億円ある。
その他は、保険料を負担している健保組合の被保険者とは関係ない後期高齢者制度への支援金が1兆3000億円、前期高齢者納付金として国保に1兆1000億円、退職者拠出金としてこれも国保に3000億円、それに加えて介護保険制度への納付金として5000億円。合計して3兆2000億円は他の制度への拠出になっている。
つまり、保険料という名目で被保険者が支払ったお金の半分ちかくが、他の制度の財政の穴埋めに使われている。
これは税による所得再配分に加えて、保険料でも再配分が行われていることになる。
本来、税金は(特定財源など一部のものを除いて)負担と受益の関係がないのに対して(だから再分配に使われる)、保険料は負担と受益の関係がはっきりしているもののはずだ。
だから、「受益が明確なので負担にも納得する」、「負担と受益の関係が明確なので給付を効率化しやすい」という税金と比較して、二つの明確な保険料の特徴がある、はずだ。(これも日本総研の西沢研究員などが力説している)
それが厚労省の勝手な制度間の拠出金制度のいじり回しで、保険料負担と受益の関係がどんどん希薄になってきた。もはや、税金と保険料という名前の違いぐらいしか、この二つの性格の違いがなくなりつつある。
今回の社会保障改革の大きなポイントは、本来、ここの改善にあるはずだ。
支援金等という名目で、健保組合の被保険者から強制的に奪い取られているこのお金はどういう意味を持つものなのか。保険料は、きちんと負担と給付の関係がわかるようにして、再分配は税で行うようにすべきだ。
そして、最も大切なことは、被用者保険から高齢者の医療に拠出をするという現在のやり方が、果たして公平で、持続可能なものなのかきちんと見直すということだろう。
保険料は、賃金だけが課税ベースになっているということから、賃金以外の収入がある者とサラリーマンとの間の公平性の観点からも問題は存在する。
協会けんぽの保険料負担は、日本年金機構の保険料集めの能力が低く、格差が生じていることも事実だ。
また、協会けんぽや国保への公費の投入は、制度に対して税金が投入されているので、その制度に加入している高所得者も公費の恩恵を受け、組合健保のなかでも所得の低い者は公費の恩恵を受けないというつじつまが合わないことになっている。
公費を投入するならば、制度に何兆円を投入するのではなく、所得をきちんと捕捉して、世帯ごとに公費を投入するべきだ。そのためには、厚労省が保険料で云々するのではなく、税と一体化して対応しなければならない。
今回の一体改革で政府が提案しようとしている変更は、保険料で再配分するやり方をより強めようとしているものばかり。ますます、保険料の負担と受益の関係がなくなり、「保険料の税化」が進む。
まず、医療にいくらかかるのかということを明確に国民に伝えるためにも医療費を保険料で負担してもらう方向に変えていき、とてもそれを負担しきれない低所得者の家計に公費を投入するという改革が望ましいはずだ。
公助は税金による公費負担、共助は保険料、自助は例えば窓口負担だ。
厚労省は、年金も医療保険も保険なのだから、公助、つまり公費負担が半分を超えてはいけないなどという理屈を言う。だが現状は、公助も共助も関係ないというところまで来ている。
健康保険のキャッシュフローをみると、例えば健保組合は収入6兆7000億円のうち、被保険者が負担する保険料が6兆5000億円だ。
しかし、健保組合の支出を見ると、支出7兆2000億円のうち、被保険者に対する保険給付はわずか3兆4000億円しかない。この他に出産一時金などの支出が5000億円ある。
その他は、保険料を負担している健保組合の被保険者とは関係ない後期高齢者制度への支援金が1兆3000億円、前期高齢者納付金として国保に1兆1000億円、退職者拠出金としてこれも国保に3000億円、それに加えて介護保険制度への納付金として5000億円。合計して3兆2000億円は他の制度への拠出になっている。
つまり、保険料という名目で被保険者が支払ったお金の半分ちかくが、他の制度の財政の穴埋めに使われている。
これは税による所得再配分に加えて、保険料でも再配分が行われていることになる。
本来、税金は(特定財源など一部のものを除いて)負担と受益の関係がないのに対して(だから再分配に使われる)、保険料は負担と受益の関係がはっきりしているもののはずだ。
だから、「受益が明確なので負担にも納得する」、「負担と受益の関係が明確なので給付を効率化しやすい」という税金と比較して、二つの明確な保険料の特徴がある、はずだ。(これも日本総研の西沢研究員などが力説している)
それが厚労省の勝手な制度間の拠出金制度のいじり回しで、保険料負担と受益の関係がどんどん希薄になってきた。もはや、税金と保険料という名前の違いぐらいしか、この二つの性格の違いがなくなりつつある。
今回の社会保障改革の大きなポイントは、本来、ここの改善にあるはずだ。
支援金等という名目で、健保組合の被保険者から強制的に奪い取られているこのお金はどういう意味を持つものなのか。保険料は、きちんと負担と給付の関係がわかるようにして、再分配は税で行うようにすべきだ。
そして、最も大切なことは、被用者保険から高齢者の医療に拠出をするという現在のやり方が、果たして公平で、持続可能なものなのかきちんと見直すということだろう。
保険料は、賃金だけが課税ベースになっているということから、賃金以外の収入がある者とサラリーマンとの間の公平性の観点からも問題は存在する。
協会けんぽの保険料負担は、日本年金機構の保険料集めの能力が低く、格差が生じていることも事実だ。
また、協会けんぽや国保への公費の投入は、制度に対して税金が投入されているので、その制度に加入している高所得者も公費の恩恵を受け、組合健保のなかでも所得の低い者は公費の恩恵を受けないというつじつまが合わないことになっている。
公費を投入するならば、制度に何兆円を投入するのではなく、所得をきちんと捕捉して、世帯ごとに公費を投入するべきだ。そのためには、厚労省が保険料で云々するのではなく、税と一体化して対応しなければならない。
今回の一体改革で政府が提案しようとしている変更は、保険料で再配分するやり方をより強めようとしているものばかり。ますます、保険料の負担と受益の関係がなくなり、「保険料の税化」が進む。
まず、医療にいくらかかるのかということを明確に国民に伝えるためにも医療費を保険料で負担してもらう方向に変えていき、とてもそれを負担しきれない低所得者の家計に公費を投入するという改革が望ましいはずだ。