生命保険各社の四半期ごとの「苦情受付状況」
生命保険協会のホームページにアクセスすると、各社の四半期ごとの「苦情受付状況」を知ることが出来ます。
興味深い情報開示だと感じます。ただ、消費者が素朴に気になるのは、「苦情の発生頻度が高い会社はどこだろう?」といったことではないかとも思います。
そこで、今回、平成20(2008)年度から22(2010)年度まで3年間の数字を集計してみることにしました。
具体的には、
各年度の苦情発生件数÷{(年初保有契約件数+年度末保有契約件数)÷2}=苦情発生率
という式を用い計算しました。
あらかじめお断りしておきますが、集計結果から「○○社はダメだ」などと決めつける気は、毛頭ありません。
生命保険協会の当該ページには、「『苦情件数が多い=お客様への対応に問題がある』とは、一概には言えません」と書かれていますが、そのとおりだと思うからです。
理由をいくつかあげます。まず、苦情の「質」は見えません。たとえば、「知らない担当者から契約内容の変更を勧める電話がかかってきた」という苦情と「勧められて加入した貯蓄商品が元本保証ではなく、退職金が半分になってしまった」という苦情では、同じ1件でも、お客様が受ける痛みは全く違うはずです。
また、苦情発生率が少ない会社ほど、加入者の「納得度」「満足度」が高い、とすることも出来ない気がします。ひょっとしたら「比較情報を与えない販売手法」が奏功して、不満が生じないケースもあるかもしれない、などと想像してみることも大切だと思うのです。
それでも、苦情件数には、お客様がそれなりの時間と労力をかけて「行動」に訴えた回数が反映されているのも事実でしょう。たとえば、各社のコールセンターに、雑誌の記者が一度だけ電話して書かれた「覆面対応品質調査および評価」といった記事などよりは参考になるのではないか、と考えます。
結果は次の通りでした。平成22年度末現在で、保有契約が100万件を超える会社を20社掲載しています。
年度ごとに全40数社のデータを調べたところ、苦情発生率が1%を超えるのは、毎年10社程度でしたが、保有契約件数が5万件に届かない会社が6社含まれていたからです。
また、苦情発生率が高い順に並べた時、上位20社中、13社の保有件数が100万件未満だったことも、やはり母数が小さいことと関係しているかもしれないと推察しました。
そこで、かんぽ生命をのぞく20社に絞りました。結果的に、一般の方にも比較的に認知度が高い会社が網羅されることになったのではないか、と感じています。(AIGグループの会社など、現在は他社の傘下に入っている会社も、当時の社名のまま掲載しています。ご了承ください)
この3年間、相対的に低い発生率を保っているのは、三井住友海上きらめき生命、太陽生命、オリックス生命、朝日生命、ソニー生命、アフラックといったところです。
800万件を超える保有がある朝日生命の発生率が0.2%以下、500万件超のソニー生命が0.4%未満、2000万件超と最も契約件数が多いアフラックが0.4%台で安定しているのは、良い意味で目立つのではないでしょうか(ちなみに、今回、調べた3年間では、業界全体の苦情件数は例年90万件前後、発生率は0.7%前後です)。
各社が公表している苦情の内訳は、「新契約関係」「収納関係」「保全関係」「保険金関係」「その他」に分けられていますが、概ね「保全関係」が多い傾向が見られます。つまりアフターサービスについての苦情が多いようです(詳しくは、また来週、とりあげたいと思います)。
人材の入れ替わりも関係しているのかもしれません。この辺りは、また別の機会に、時間をかけて考察する必要を感じます。
以上、あくまで私見を書きました。違う見方をしなければならない部分もあると思います。
興味深い情報開示だと感じます。ただ、消費者が素朴に気になるのは、「苦情の発生頻度が高い会社はどこだろう?」といったことではないかとも思います。
そこで、今回、平成20(2008)年度から22(2010)年度まで3年間の数字を集計してみることにしました。
具体的には、
各年度の苦情発生件数÷{(年初保有契約件数+年度末保有契約件数)÷2}=苦情発生率
という式を用い計算しました。
あらかじめお断りしておきますが、集計結果から「○○社はダメだ」などと決めつける気は、毛頭ありません。
生命保険協会の当該ページには、「『苦情件数が多い=お客様への対応に問題がある』とは、一概には言えません」と書かれていますが、そのとおりだと思うからです。
理由をいくつかあげます。まず、苦情の「質」は見えません。たとえば、「知らない担当者から契約内容の変更を勧める電話がかかってきた」という苦情と「勧められて加入した貯蓄商品が元本保証ではなく、退職金が半分になってしまった」という苦情では、同じ1件でも、お客様が受ける痛みは全く違うはずです。
また、苦情発生率が少ない会社ほど、加入者の「納得度」「満足度」が高い、とすることも出来ない気がします。ひょっとしたら「比較情報を与えない販売手法」が奏功して、不満が生じないケースもあるかもしれない、などと想像してみることも大切だと思うのです。
それでも、苦情件数には、お客様がそれなりの時間と労力をかけて「行動」に訴えた回数が反映されているのも事実でしょう。たとえば、各社のコールセンターに、雑誌の記者が一度だけ電話して書かれた「覆面対応品質調査および評価」といった記事などよりは参考になるのではないか、と考えます。
結果は次の通りでした。平成22年度末現在で、保有契約が100万件を超える会社を20社掲載しています。
年度ごとに全40数社のデータを調べたところ、苦情発生率が1%を超えるのは、毎年10社程度でしたが、保有契約件数が5万件に届かない会社が6社含まれていたからです。
また、苦情発生率が高い順に並べた時、上位20社中、13社の保有件数が100万件未満だったことも、やはり母数が小さいことと関係しているかもしれないと推察しました。
そこで、かんぽ生命をのぞく20社に絞りました。結果的に、一般の方にも比較的に認知度が高い会社が網羅されることになったのではないか、と感じています。(AIGグループの会社など、現在は他社の傘下に入っている会社も、当時の社名のまま掲載しています。ご了承ください)
この3年間、相対的に低い発生率を保っているのは、三井住友海上きらめき生命、太陽生命、オリックス生命、朝日生命、ソニー生命、アフラックといったところです。
800万件を超える保有がある朝日生命の発生率が0.2%以下、500万件超のソニー生命が0.4%未満、2000万件超と最も契約件数が多いアフラックが0.4%台で安定しているのは、良い意味で目立つのではないでしょうか(ちなみに、今回、調べた3年間では、業界全体の苦情件数は例年90万件前後、発生率は0.7%前後です)。
各社が公表している苦情の内訳は、「新契約関係」「収納関係」「保全関係」「保険金関係」「その他」に分けられていますが、概ね「保全関係」が多い傾向が見られます。つまりアフターサービスについての苦情が多いようです(詳しくは、また来週、とりあげたいと思います)。
人材の入れ替わりも関係しているのかもしれません。この辺りは、また別の機会に、時間をかけて考察する必要を感じます。
以上、あくまで私見を書きました。違う見方をしなければならない部分もあると思います。
コチニール色素とアレルギー
消費者庁のホームページに、5月11日付で、コチニール色素に関する注意喚起が載りました。
コチニール色素とは、エンジムシという昆虫からとれる赤色の色素で、主成分はカルミン酸です。食品から飲料水、薬品、化粧品まで幅広く使用されています。
この注意喚起には「コチニール色素を原因とするアレルギー症状」とありますが、カルミン酸そのものはアレルギー反応を起こしません。
エンジムシがカルミン酸を作り出すときに一緒につくられるある種のタンパク質がアレルギー反応を引き起こします。
現在、販売されているコチニール色素には、最大2.2%までタンパク質が含まれていてもよいことになっています。そして、この2.2%のタンパク質の中にアレルギーを引き起こすタンパク質が含まれている可能性があります。
ですから正確にはコチニール色素に混ざっているタンパク質が引き起こすアレルギー反応に対する注意喚起です。
もし、コチニール色素を含む食品や化粧品でアレルギー反応を起こしたら、成分表示にコチニール色素が含まれているものは避けなければなりません。
しかし、コ チニール色素そのものが悪さをしているのではないことも、理解してください。
消費者庁は、こうしたことをもっと丁寧に説明するべきだと思います。
コチニール色素とは、エンジムシという昆虫からとれる赤色の色素で、主成分はカルミン酸です。食品から飲料水、薬品、化粧品まで幅広く使用されています。
この注意喚起には「コチニール色素を原因とするアレルギー症状」とありますが、カルミン酸そのものはアレルギー反応を起こしません。
エンジムシがカルミン酸を作り出すときに一緒につくられるある種のタンパク質がアレルギー反応を引き起こします。
現在、販売されているコチニール色素には、最大2.2%までタンパク質が含まれていてもよいことになっています。そして、この2.2%のタンパク質の中にアレルギーを引き起こすタンパク質が含まれている可能性があります。
ですから正確にはコチニール色素に混ざっているタンパク質が引き起こすアレルギー反応に対する注意喚起です。
もし、コチニール色素を含む食品や化粧品でアレルギー反応を起こしたら、成分表示にコチニール色素が含まれているものは避けなければなりません。
しかし、コ チニール色素そのものが悪さをしているのではないことも、理解してください。
消費者庁は、こうしたことをもっと丁寧に説明するべきだと思います。
孫のために貯めた預金の悲劇
「郵便局や銀行で、子や孫名義で口座を作ってあげてお金を貯め、子や孫が必要になった時にまとまったお金を使えるようにしてあげたい」。そんな親心や祖父母の愛情が、残念ながら裏目に出てしまうことがあります。本人に代わって積み立てをし、かわいい子供や孫を喜ばせてやりたいというのは決して悪い動機とはいえないように思いますが、いったい何が問題となるのでしょうか。
姉「亡くなった父さんの預金は、この通帳に記帳されているとおりの残高だから、基本的には、これを半分ずつに分けることでいいわよね?」
弟「親父の遺品を整理したときに、貸金庫からこれ以外の通帳がたくさん出てきたっておふくろが言ってたけど、他の残りの通帳はどこにいったんだ?」
姉「ああ。ん~、あっ、他の通帳ねぇ。ええっと、あれはうちの子供たちの名前で、父さんが貯金してくれてたものだったのよ。だから今回の遺産分けの話とは関係ないから、私の家に置いてきたわよ」
弟「俺の家の子供たちの分はあったのか?」
姉「いや、あなたの子供たちの通帳はなかったけど……」
弟「だいたい、金庫から出てくるまで親父以外の誰もそんな金の存在は知らなかったんじゃないか。おふくろですら知らなかったんだから。だったら、実際には親父の金だろう。今回の遺産分けにはそのお金も入れてくれよ、ちゃんと」
姉「何言ってるのよ。通帳の名義がうちの子たちになっているって言ってるじゃない。父さんは何かとかわいがってくれたうちの子にくれたのよ。決まっているじゃない」
弟「親父がそう決めていたという証拠でもあるのか? とにかく、話はそう単純じゃないぞ。おれも少し考えさせてもらうからな」
かつては、金融機関などで口座開設をするときの本人確認の制度は、いまほど厳格なものではありませんでした。子や孫など、親族のうちの誰かの名義を借りて口座を開くのは、さほど難しい話ではなかったのです。また、窓口での本人確認が厳しくなったいまでも、未成年者が銀行口座や証券口座を作成すること自体、できないことではありません。親権者が同意したうえで正式な申し込みを行い、預け入れをする資金などの出どころが本人のものであるということが確認できれば、原則として手続きを進めることができます。
ところで、たとえば過去、規制が緩やかだった時代に、祖父が孫の名義を借りて人知れず作った銀行口座があったとしましょう。そこに祖父が500万円の預金を積み立てていたとして、その500万円はいったい誰のものになるのでしょうか。とりあえず、口座の名義人は孫となっているのは間違いありません。文字通り「名義人」なわけですから、それはすなわち孫のものだろう、と考えることもできそうです。
しかし、もともとその500万円の現金を持っていたのは祖父です。そして、銀行にそれを預け入れたのもまた祖父です。祖父は何のために預金していたのでしょうか? 孫の名前で通帳を作っていることを考えると、もしかしたら孫にあげるつもりだったのかもしれません。しかし、その証拠があるかといわれると、どうやら明確なものはなさそうです。しかも疑ってかかれば、もしかしたら祖父は、自分の財産を隠すつもりで孫の名義を拝借していた可能性だってあるかもしれません。または、妻に知られたくない秘密のお金の出入りを、こっそりと他人の口座で行おうとしていたのかも知れません。ただし確かな証拠は何もありません。事実として判明しているのは、祖父のお金が、祖父によって、孫の口座に預けられていたということだけです。
このような預金の形は、いわゆる「名義預金(めいぎよきん)」や「借名預金(しゃくめいよきん)」と呼ばれている状態のお金となり、基本的にそのお金は本当の預金者である祖父のものであるとみなされることになります。つまり、原資を用意して、それを預金していたのは祖父であって、たまたま置き場所として孫の名義の口座を借りていたにすぎない、と解釈されるわけです。祖父のお金ですから、祖父が亡くなれば、当然ながら遺産として分けるべきものに含まれます。たとえ孫の名義の口座だったとしても、真の預金者が祖父だったのならば、それが孫のものになるとは限りません。
名義預金の問題は、相続の場ではよくあるトラブルのひとつです。こうした状態で放置される預金が多い背景には、財産の贈与に対する大きな誤解が挙げられるでしょう。孫の名前でお金を用意しておくことで、祖父母の側は「孫にあげた」という認識でいるのかもしれません。しかし、実は贈与とは、あげる側からの「あげます」という一方的なアクションだけでは成立しないのです。もらう側からの「もらいます」というリアクションも伴わないと、残念ながら財産を贈与したことになりません。ですから、孫に黙って預金通帳にお金を貯めたとしても、孫からの「もらいます」という意思表示がまったくないままに進めているわけですから、そのお金は孫にあげたことにはならないのです。
また、名義預金の存在は、相続税の申告の際にも厄介な問題となります。子や孫の名義を借りているだけで、実際には預金した故人のお金であるということになれば、いくら子や孫の名義といえども、故人の遺産としてカウントして申告しなければなりません。家族の別の名義に分散しているから大丈夫だろう、というのは残念ながら大きな間違いです。家族の名義で残されている預金は調べればすぐに目星がつくでしょうし、そこに説明のできないお金の流れがあれば、当然故人の財産ではないのか、と問題になります。家族が存在すら知らず、通帳も印鑑も故人が管理していたような口座を、家族のものだと主張するのはかなり無理があるでしょう。
「うちは、あえて贈与税がかかる程度の金額を贈与することで、税務署にきちんと毎年申告をして税金を払っているから絶対に安心だ」「うちは贈与契約書も作成していて、贈与の事実をきちんと証明することができるから大丈夫だ」と考えても、そうはいかないケースの可能性は留意すべきでしょう。
子や孫のためにこっそり貯めている、という方。あるいは、自分のために親や祖父母がこっそりお金を貯めてくれている可能性がある方。そのお金が名義預金とみなされて不本意な結果にならないよう、いま一度その状態を確認していただきたいと思います。
姉「亡くなった父さんの預金は、この通帳に記帳されているとおりの残高だから、基本的には、これを半分ずつに分けることでいいわよね?」
弟「親父の遺品を整理したときに、貸金庫からこれ以外の通帳がたくさん出てきたっておふくろが言ってたけど、他の残りの通帳はどこにいったんだ?」
姉「ああ。ん~、あっ、他の通帳ねぇ。ええっと、あれはうちの子供たちの名前で、父さんが貯金してくれてたものだったのよ。だから今回の遺産分けの話とは関係ないから、私の家に置いてきたわよ」
弟「俺の家の子供たちの分はあったのか?」
姉「いや、あなたの子供たちの通帳はなかったけど……」
弟「だいたい、金庫から出てくるまで親父以外の誰もそんな金の存在は知らなかったんじゃないか。おふくろですら知らなかったんだから。だったら、実際には親父の金だろう。今回の遺産分けにはそのお金も入れてくれよ、ちゃんと」
姉「何言ってるのよ。通帳の名義がうちの子たちになっているって言ってるじゃない。父さんは何かとかわいがってくれたうちの子にくれたのよ。決まっているじゃない」
弟「親父がそう決めていたという証拠でもあるのか? とにかく、話はそう単純じゃないぞ。おれも少し考えさせてもらうからな」
かつては、金融機関などで口座開設をするときの本人確認の制度は、いまほど厳格なものではありませんでした。子や孫など、親族のうちの誰かの名義を借りて口座を開くのは、さほど難しい話ではなかったのです。また、窓口での本人確認が厳しくなったいまでも、未成年者が銀行口座や証券口座を作成すること自体、できないことではありません。親権者が同意したうえで正式な申し込みを行い、預け入れをする資金などの出どころが本人のものであるということが確認できれば、原則として手続きを進めることができます。
ところで、たとえば過去、規制が緩やかだった時代に、祖父が孫の名義を借りて人知れず作った銀行口座があったとしましょう。そこに祖父が500万円の預金を積み立てていたとして、その500万円はいったい誰のものになるのでしょうか。とりあえず、口座の名義人は孫となっているのは間違いありません。文字通り「名義人」なわけですから、それはすなわち孫のものだろう、と考えることもできそうです。
しかし、もともとその500万円の現金を持っていたのは祖父です。そして、銀行にそれを預け入れたのもまた祖父です。祖父は何のために預金していたのでしょうか? 孫の名前で通帳を作っていることを考えると、もしかしたら孫にあげるつもりだったのかもしれません。しかし、その証拠があるかといわれると、どうやら明確なものはなさそうです。しかも疑ってかかれば、もしかしたら祖父は、自分の財産を隠すつもりで孫の名義を拝借していた可能性だってあるかもしれません。または、妻に知られたくない秘密のお金の出入りを、こっそりと他人の口座で行おうとしていたのかも知れません。ただし確かな証拠は何もありません。事実として判明しているのは、祖父のお金が、祖父によって、孫の口座に預けられていたということだけです。
このような預金の形は、いわゆる「名義預金(めいぎよきん)」や「借名預金(しゃくめいよきん)」と呼ばれている状態のお金となり、基本的にそのお金は本当の預金者である祖父のものであるとみなされることになります。つまり、原資を用意して、それを預金していたのは祖父であって、たまたま置き場所として孫の名義の口座を借りていたにすぎない、と解釈されるわけです。祖父のお金ですから、祖父が亡くなれば、当然ながら遺産として分けるべきものに含まれます。たとえ孫の名義の口座だったとしても、真の預金者が祖父だったのならば、それが孫のものになるとは限りません。
名義預金の問題は、相続の場ではよくあるトラブルのひとつです。こうした状態で放置される預金が多い背景には、財産の贈与に対する大きな誤解が挙げられるでしょう。孫の名前でお金を用意しておくことで、祖父母の側は「孫にあげた」という認識でいるのかもしれません。しかし、実は贈与とは、あげる側からの「あげます」という一方的なアクションだけでは成立しないのです。もらう側からの「もらいます」というリアクションも伴わないと、残念ながら財産を贈与したことになりません。ですから、孫に黙って預金通帳にお金を貯めたとしても、孫からの「もらいます」という意思表示がまったくないままに進めているわけですから、そのお金は孫にあげたことにはならないのです。
また、名義預金の存在は、相続税の申告の際にも厄介な問題となります。子や孫の名義を借りているだけで、実際には預金した故人のお金であるということになれば、いくら子や孫の名義といえども、故人の遺産としてカウントして申告しなければなりません。家族の別の名義に分散しているから大丈夫だろう、というのは残念ながら大きな間違いです。家族の名義で残されている預金は調べればすぐに目星がつくでしょうし、そこに説明のできないお金の流れがあれば、当然故人の財産ではないのか、と問題になります。家族が存在すら知らず、通帳も印鑑も故人が管理していたような口座を、家族のものだと主張するのはかなり無理があるでしょう。
「うちは、あえて贈与税がかかる程度の金額を贈与することで、税務署にきちんと毎年申告をして税金を払っているから絶対に安心だ」「うちは贈与契約書も作成していて、贈与の事実をきちんと証明することができるから大丈夫だ」と考えても、そうはいかないケースの可能性は留意すべきでしょう。
子や孫のためにこっそり貯めている、という方。あるいは、自分のために親や祖父母がこっそりお金を貯めてくれている可能性がある方。そのお金が名義預金とみなされて不本意な結果にならないよう、いま一度その状態を確認していただきたいと思います。