孫のために貯めた預金の悲劇 | あなたの保険大丈夫ですか?将来の年金支給額知ってますか?直ぐに計算出来ますよ

孫のために貯めた預金の悲劇

 「郵便局や銀行で、子や孫名義で口座を作ってあげてお金を貯め、子や孫が必要になった時にまとまったお金を使えるようにしてあげたい」。そんな親心や祖父母の愛情が、残念ながら裏目に出てしまうことがあります。本人に代わって積み立てをし、かわいい子供や孫を喜ばせてやりたいというのは決して悪い動機とはいえないように思いますが、いったい何が問題となるのでしょうか。

 姉「亡くなった父さんの預金は、この通帳に記帳されているとおりの残高だから、基本的には、これを半分ずつに分けることでいいわよね?」
 弟「親父の遺品を整理したときに、貸金庫からこれ以外の通帳がたくさん出てきたっておふくろが言ってたけど、他の残りの通帳はどこにいったんだ?」
 姉「ああ。ん~、あっ、他の通帳ねぇ。ええっと、あれはうちの子供たちの名前で、父さんが貯金してくれてたものだったのよ。だから今回の遺産分けの話とは関係ないから、私の家に置いてきたわよ」
 弟「俺の家の子供たちの分はあったのか?」
 姉「いや、あなたの子供たちの通帳はなかったけど……」
 弟「だいたい、金庫から出てくるまで親父以外の誰もそんな金の存在は知らなかったんじゃないか。おふくろですら知らなかったんだから。だったら、実際には親父の金だろう。今回の遺産分けにはそのお金も入れてくれよ、ちゃんと」
 姉「何言ってるのよ。通帳の名義がうちの子たちになっているって言ってるじゃない。父さんは何かとかわいがってくれたうちの子にくれたのよ。決まっているじゃない」
 弟「親父がそう決めていたという証拠でもあるのか? とにかく、話はそう単純じゃないぞ。おれも少し考えさせてもらうからな」

 かつては、金融機関などで口座開設をするときの本人確認の制度は、いまほど厳格なものではありませんでした。子や孫など、親族のうちの誰かの名義を借りて口座を開くのは、さほど難しい話ではなかったのです。また、窓口での本人確認が厳しくなったいまでも、未成年者が銀行口座や証券口座を作成すること自体、できないことではありません。親権者が同意したうえで正式な申し込みを行い、預け入れをする資金などの出どころが本人のものであるということが確認できれば、原則として手続きを進めることができます。

 ところで、たとえば過去、規制が緩やかだった時代に、祖父が孫の名義を借りて人知れず作った銀行口座があったとしましょう。そこに祖父が500万円の預金を積み立てていたとして、その500万円はいったい誰のものになるのでしょうか。とりあえず、口座の名義人は孫となっているのは間違いありません。文字通り「名義人」なわけですから、それはすなわち孫のものだろう、と考えることもできそうです。

 しかし、もともとその500万円の現金を持っていたのは祖父です。そして、銀行にそれを預け入れたのもまた祖父です。祖父は何のために預金していたのでしょうか? 孫の名前で通帳を作っていることを考えると、もしかしたら孫にあげるつもりだったのかもしれません。しかし、その証拠があるかといわれると、どうやら明確なものはなさそうです。しかも疑ってかかれば、もしかしたら祖父は、自分の財産を隠すつもりで孫の名義を拝借していた可能性だってあるかもしれません。または、妻に知られたくない秘密のお金の出入りを、こっそりと他人の口座で行おうとしていたのかも知れません。ただし確かな証拠は何もありません。事実として判明しているのは、祖父のお金が、祖父によって、孫の口座に預けられていたということだけです。

 このような預金の形は、いわゆる「名義預金(めいぎよきん)」や「借名預金(しゃくめいよきん)」と呼ばれている状態のお金となり、基本的にそのお金は本当の預金者である祖父のものであるとみなされることになります。つまり、原資を用意して、それを預金していたのは祖父であって、たまたま置き場所として孫の名義の口座を借りていたにすぎない、と解釈されるわけです。祖父のお金ですから、祖父が亡くなれば、当然ながら遺産として分けるべきものに含まれます。たとえ孫の名義の口座だったとしても、真の預金者が祖父だったのならば、それが孫のものになるとは限りません。

 名義預金の問題は、相続の場ではよくあるトラブルのひとつです。こうした状態で放置される預金が多い背景には、財産の贈与に対する大きな誤解が挙げられるでしょう。孫の名前でお金を用意しておくことで、祖父母の側は「孫にあげた」という認識でいるのかもしれません。しかし、実は贈与とは、あげる側からの「あげます」という一方的なアクションだけでは成立しないのです。もらう側からの「もらいます」というリアクションも伴わないと、残念ながら財産を贈与したことになりません。ですから、孫に黙って預金通帳にお金を貯めたとしても、孫からの「もらいます」という意思表示がまったくないままに進めているわけですから、そのお金は孫にあげたことにはならないのです。

 また、名義預金の存在は、相続税の申告の際にも厄介な問題となります。子や孫の名義を借りているだけで、実際には預金した故人のお金であるということになれば、いくら子や孫の名義といえども、故人の遺産としてカウントして申告しなければなりません。家族の別の名義に分散しているから大丈夫だろう、というのは残念ながら大きな間違いです。家族の名義で残されている預金は調べればすぐに目星がつくでしょうし、そこに説明のできないお金の流れがあれば、当然故人の財産ではないのか、と問題になります。家族が存在すら知らず、通帳も印鑑も故人が管理していたような口座を、家族のものだと主張するのはかなり無理があるでしょう。

 「うちは、あえて贈与税がかかる程度の金額を贈与することで、税務署にきちんと毎年申告をして税金を払っているから絶対に安心だ」「うちは贈与契約書も作成していて、贈与の事実をきちんと証明することができるから大丈夫だ」と考えても、そうはいかないケースの可能性は留意すべきでしょう。

 子や孫のためにこっそり貯めている、という方。あるいは、自分のために親や祖父母がこっそりお金を貯めてくれている可能性がある方。そのお金が名義預金とみなされて不本意な結果にならないよう、いま一度その状態を確認していただきたいと思います。