クリーンテック(CleanTech) -28ページ目

エレクトリックカーの超近未来

前出のテスラの戦略を考えたとき、やるなと思わされるのは技術と同時によく練られたそのマーケティング手法です。




MJさんも書いているように、彼らは自分たちの最初の商品を、高額商品であるスポーツカーにしたわけですが、2003年に巷の充電施設も十分でない中で、一台1千万円以上のエレクトリックスポーツカーに乗るなんて、酔狂なお金持ちくらい。そんなニッチマーケットだけでは採算が取れないのだけれど、それは承知の上、つまりはブランド力の構築と、話題性をつくる最初のプロモーションとして位置づけています。だってこれCoolでしょ。今はそれだけで十分なわけです。初期投資が限られている起業家が、その限界を逆手に取ったところが、とてもいいと思うのです。




そんな彼らが照準を当てているのは、これに続くマーケット。昨年MITで行われたテスラのプレゼンによると2009年には500600万円前後の裕福層向けの車種、そしてそれに続く数年後には200万円前後で子育てファミリー世代にも手の届く車種の投入を目指しているとのことでした。




また折しも今月14トヨタがリチウムイオン電池搭載のプラグインハイブリッドの2010年までに北米市場に投入を発表
しました。12年後には未来自動車のイメージだったエレクトリックカーが市場を騒がすことになりそうです。とはいっても、有名なドキュメンタリー映画「Who killed the electric car?
にもあるように、1996年発表のGMのEV1はもとより、100年前にはガソリン車より電気自動車の方が多かったというのですから、これから来るエレクトリックカーの波も何度目かの市場挑戦となるわけですが、今回はかなりの追い風が吹いていると言えるのではないでしょうか。





ちなみに、グーグルの会社の駐車場には、プラグイン用の充電コードを備えた電気自動車用の駐車場があります
。そこで充電される電気は、グーグルの太陽光発電で発電されたもので炭素排出量ゼロというわけです。去年までグーグルが社員向けに行っていた、ハイブリッド車を購入した社員への一律5000ドルのキャッシュバックキャンペーンは、08年からエレクトリックカー購入者のみに対象を変更しました。もう既に、既存のハイブリッドカーを150万円ぐらいの自己負担で、完全プラグインモデルに代えている人もかなりいるとか。スタンフォード大学が学生向けに計画している宿舎も、プラグイン充電設備が完備される予定です。


シリコンバレーは、来たるエレクトリックカー旋風に備えを固めているようです。




デュターム



電気で動くスポーツカー

クリーン・テックがいままでの環境技術と何が違うかというと、僕は哲学だと思っています。環境技術というと、ちょっと不便で高いかもしれないけど地球にやさしい製品を提供する。そんなイメージがあると思います。でもシリコン・バレーの起業家たちは違います。今までどおりの、いや今まで以上の便利な生活を、新しい技術で届ける。

例えば電気自動車を考えて見ます。試しにGoogleでイメージ検索をすると、小型で展示会向けに作られているかわいい電気自動車がたくさんでてきます。もちろん普通の自動車と同じ形をしたものがありますが、まだすごく値段が高い。普通の人が手が届くものではありません。

こういうイメージはテスラ・モーターズ(Tesla Motors) を見ると覆ります。2003年にシリコン・バレーで設立されたこの会社。製品のロードスターはBusinessWeekの2007年の環境デザイン賞を受賞しています。この車、1000万円以上(98000ドルから)しますが、この理由はスポーツカーだから。スタイリッシュなデザインの車は静止状態から時速100kmまでたった4秒しかかからず加速できます。ホームページによると「(助手席に座った人が)ラジオをつけようとした瞬間に全開に加速すると、Gで前にかがめずラジオに届かないと。 」しかもその際ギアを変える必要もなく、オートマ車の変な感覚もなく、ものすごくスムーズに。

日本人の多くの人は、環境対策というと電気をこまめに消したり暖房設定温度を下げたりします。もちろんこれは重要なことですが、テスラの発想は違うようです。人々の欲望を満たすすごいスポーツカーを環境にやさしいようにつくってしまおうと。日本人は「もったいないの精神」に加えてもっと積極的に技術の可能性を信じるべきなのでは、と思います。

ヨセミテのハーフドーム

2008年が明けました。お正月なので今回はTechから少し離れたお話です。


サンフランシスコから車で4時間ほどのヨセミテ国立公園に行ってきました。ヨセミテ渓谷を見渡すグレイシャーポイントという展望エリアに立つと、1000万年前に隆起し100万年前に氷河に削りとられたという高さ1443mの一枚岩山、ハーフドームを側面からはっきり見ることができます。100万年前にこの山を覆っていたという氷河、そしてその氷河が巨大な岩山を少しずつしかし根こそぎ半分削り取っていったという力と時間を考えたとき、今私たちが直面している温暖化による様々な変化も、全て自然界の大きな営みの一部で、それに対して私たちが持つ力はあまりにも小さいと、突き放されたような気持ちになりました。


化石燃料に支えられてここまで発展した私たち人間の文明が、その結果としての自然界の変化を突きつけられている現実も、過去1万年の間に人間が辿った歴史も、地球の営みの中の瞬きのような一部だと。


ところが、その広大な景色の中心にあるハーフドームの垂直に切り立った崖で、二人の男性がロッククライミングによる壁面登頂に成功したという話を聞いたとき、また言いようのない衝撃を受けました。しかもそのうちの一人は、数年前にロッククライミング事故による両足切断を経たのちの前人未到の成果であったというのです。


1443mの垂直な崖にロープで身をくくりつけて身一つでよじ登るのは、まさに素手で自然の猛威に挑む行為。それでも両足切断をした男性が、自分の体でハーフドームを制覇したいという願いを持つこと、そして二人の意思と英知でそれを成し遂げることが可能だと証明したこと。それは、目の前に広がる自然の絶対的な壮大さと奇妙な形で呼応する、何か桁外れのもの、人間の意志の力がなしうる想像を超える可能性の証明のような気がしました。


今夏の北極海の氷が、一年ごとに凍る一年氷になってしまうかもしれないという加速度的な地球の温暖化を前にして、私たちができることは何なのかを考えると、それは、一部の人間だけで問題を解決する技術を探すことではなく、人間に与えられた意思の力を集結して、化石燃料を基盤にした生活から新エネルギーを機軸としたスタイルに少しでも早く変えていくことなのではないかと思わされました。それに許された時間がどれほどあるのかを考えると、ハーフドームの壁面制覇以上に強靭な、意思と英知が必要とされている気がします。


デュターム