ヨセミテのハーフドーム
2008年が明けました。お正月なので今回はTechから少し離れたお話です。
サンフランシスコから車で4時間ほどのヨセミテ国立公園に行ってきました。ヨセミテ渓谷を見渡すグレイシャーポイントという展望エリアに立つと、1000万年前に隆起し100万年前に氷河に削りとられたという高さ1443mの一枚岩山、ハーフドームを側面からはっきり見ることができます。100万年前にこの山を覆っていたという氷河、そしてその氷河が巨大な岩山を少しずつしかし根こそぎ半分削り取っていったという力と時間を考えたとき、今私たちが直面している温暖化による様々な変化も、全て自然界の大きな営みの一部で、それに対して私たちが持つ力はあまりにも小さいと、突き放されたような気持ちになりました。
化石燃料に支えられてここまで発展した私たち人間の文明が、その結果としての自然界の変化を突きつけられている現実も、過去1万年の間に人間が辿った歴史も、地球の営みの中の瞬きのような一部だと。
ところが、その広大な景色の中心にあるハーフドームの垂直に切り立った崖で、二人の男性がロッククライミングによる壁面登頂に成功したという話を聞いたとき、また言いようのない衝撃を受けました。しかもそのうちの一人は、数年前にロッククライミング事故による両足切断を経たのちの前人未到の成果であったというのです。
1443mの垂直な崖にロープで身をくくりつけて身一つでよじ登るのは、まさに素手で自然の猛威に挑む行為。それでも両足切断をした男性が、自分の体でハーフドームを制覇したいという願いを持つこと、そして二人の意思と英知でそれを成し遂げることが可能だと証明したこと。それは、目の前に広がる自然の絶対的な壮大さと奇妙な形で呼応する、何か桁外れのもの、人間の意志の力がなしうる想像を超える可能性の証明のような気がしました。
今夏の北極海の氷が、一年ごとに凍る一年氷になってしまうかもしれないという加速度的な地球の温暖化を前にして、私たちができることは何なのかを考えると、それは、一部の人間だけで問題を解決する技術を探すことではなく、人間に与えられた意思の力を集結して、化石燃料を基盤にした生活から新エネルギーを機軸としたスタイルに少しでも早く変えていくことなのではないかと思わされました。それに許された時間がどれほどあるのかを考えると、ハーフドームの壁面制覇以上に強靭な、意思と英知が必要とされている気がします。
デュターム