オムニバスつながりで、最近U-Nextが配信し始めたので…何かが終わる、何かの終わりが始まる、何かが始まる、そんな人の世の悲喜劇を柔らかく描いて優れたオムニバス…「フランス映画のように」

 

【Ep.1 タイム・トゥ・リーブ】美しい自然の中に建つ瀟洒なリゾート・コンドミニアムに、母親は疎遠な四人の娘を呼び寄せる。母と娘、娘同士、それぞれに確執を抱え、雰囲気は妙によそよそしい。そんな中、母親が口を開く。自分は末期がんなので、すべての財産を四人の娘に分け与えて、そして…【Ep.2 ビールを売る女】紫煙漂う仄暗いバー。客は、既にかなり酔った三人組男と一組のカップル。三人組の一人28歳の自称詩人は朗々と詩を読み始める。美しい女マスターへの愛の告白だが、彼女は冷たい反応しか見せない。やがてドアが開き、四肢に麻痺を抱える一人の男が入って来て、やはり女マスターに言い寄るが…【Ep.3 リメイニング・タイム】ソヨンが実家から出てくる。アメリカで知り合った韓国系米国人スティーブとの付き合いを父親に報告するが父親は猛反対だったようだ。スティーブにろくな定職がないためだろう。肩を落とす二人が歩いていると、道端の女占い師が二人を呼び止め、そして、とんでもない未来を告げる…【Ep.4 フランス映画のように】スミンの話はいつもある女の話ばかりだ。妹スビンは「単に自分勝手なだけの女だ」と辛らつだ。午前3時の今も、その女ギホンが「雨が降ってるので、家に来てほしい」と電話を寄越す。スミンは「すぐ行く」と応える。妹スビンは兄に「そんな風に”フランス映画みたい”に生きてろ」と呆れ果てる。スミンはこれまでのギホンとの出来事を思い出しなら彼女の住む恵化門(エファムン)に向かうが…

 

【Ep.1 タイム・トゥ・リーブ】母親に、「サヨナラの伝え方」で猫を好演イ・ヨンナン、長女ジソに、「愛の刺」「ノリゲ(玩具)」など妖艶系美形イ・ドア、次女ウンソに、「鬼」で魅力的だったシン・ジス、末妹ユンソに、ガールズグループ<4Minute>歌の上手い二人の“ユン”の一人チョン・ジユン。【Ep.2 ビールを売る女】美しい女マスターに、ガールズグループ<sistar>キム・ダソム、酔客には、お馴染みキム・ジョンソク、ウ・ジョングク。【Ep.3 リメイニング・タイム】無職二枚目スティーブに、「ミナリ」「バーニング」で名演スティーブン・ヨン、恋人ソヨンに、90年代のガールズグループ<T.T.MA>出身「解剖学教室」美形キム・ソイ。【Ep.4 フランス映画のように】謎の女ギホンに、Ep.2でも主演キム・ダソム、頼りないスミンに、モデル出身二枚目シン・ミンチョル、辛らつな妹スビンに、「人質」でファン・ジョンミンと誘拐されたイ・ユミ、家庭教師の美少女生徒に、ガールズグループ<宇宙少女(WJSN)>イム・ダヨン。特別出演では、Ep.2のキム先生に、「欲望Lovers」など韓国映画界で最も猥褻な監督ポン・マンデ、Ep.1の補助者1に、結構ファンだった『駐在刑事』シリーズ、キム・ギドク「人間の時間」などの藤井美菜。

 

余りの心地良さに思わず五つ星にした「フェア・ラブ(邦題:不器用なふたりの恋)」シン・ヨンシク監督作ですが、本作もかなり波長が合う作品に仕上がっています。これといった共通主題があるわけではない4編なので少し散漫な組み合わせに見え、それぞれに好き嫌いが分かれる可能性は高いですが、強いていえば、別れ、始まらない出会い、別れの始まり、出会い、みたいな関係の様々な側面をくっきりと、或いは、柔らかく描いていて好感です。個人的には、韓国語と英語が万華鏡のように入り乱れる痴話喧嘩で描く【Ep.3 リメイニング・タイム】、モノクロで全く人も車も見えないソウルの深夜とカラーで人と車が溢れるソウルの昼間が交互に現れながら謎の女ギホンを不可思議に描く【Ep.4 フランス映画のように】が大の好物です。さらに役者でいえば、<4Minute> <sistar> <T.T.MA> <宇宙少女(WJSN)>といったガールズグループ出身女優たちの、演技巧者とまではまだいえないながら、その独特の存在感を巧く引き出していて、曖昧な物語に活かしているのも魅力の一つだと感じます。

 

大上段に振りかぶる系の作品ではないので、映画的に物足りなさを感じる所もありますが、もやもやしながらも、あるよなぁ、みたいな共感を引き出す職人監督らしい逸品だといえるでしょう。個人的には、良い映画だと思います。