怪女優イ・ボンリョンつながりでもう一本…面白くなさそう、薄っぺらそう、というオーラ全開のタイトル(まぁ原題通りです)に警戒しましたが、意外にもこれが拾い物、とある日本生れの小説を元に作られたハートウォーミング・ファンタジーの佳編…「サヨナラの伝え方」

 

寿司職人見習いナム・ナビが新しいアパートに引っ越して片付けている。傍らでは引っ越し業者の荷ほどき担当のオバサンがゴロゴロしているが、ナビの携帯が鳴って荷ほどき担当が遅れると言う。ナビは驚いてオバサンをよく見ると、それは隣から紛れ込んだ猫で、ヤンマと名乗る。ナビはヤンマに魚を焼いて振る舞う。ナビは、幼い頃から猫の体を借りて暮らす死者の魂が見え話すことが出来るのだ。まもなく隣に住む若いイジョンが猫を探しにやって来る。イジョンにはナビが猫を可愛がっているようにしか見えない。そして、ナビがイジョンの取材出張の間ヤンマを預かったりして、二人は次第に距離を縮めていき、猫のヤンマも二人の仲を応援する。しかしヤンマの体に異変が生じて…

 

寿司屋鮨丁(スシチョン)見習いナム・ナビに、「Bleak Night」などの爽やか系二枚目ソ・ジュニョン、旅行雑誌グルメ担当記者イジョンに、かつて熱狂したガールズグループ<KARA>の美形パク・キュリ、猫のヤンマに、「ハン・ゴンジュ」などのイ・ヨンナン、イジョンの同僚記者チョンミンに、この後「金子文子と朴烈」「アワ・ボディ」など主演作が続く個性派美形チェ・ヒソ、イジョンの上司編集長に、お馴染みペク・トビン、イ・ボンリョンは寿司屋大将の娘。

 

まずはこの作品の出自から。エンドロールの最後に「처음 이 영화를 만든 수 있게 영감을 준 "오기가미 나오코"와 그녀의 소설 <에우와 사초>에 특별한 감사의 마음 전함니다 (最初にこの映画を作ることができるようインスピレーションを与えてくれた”荻上直子”と彼女の小説<エウとシャチョウ>に特別な感謝の気持ちを伝えます)」とのテロップがあります。調べると、「かもめ食堂」などの女流監督荻上直子が出版した初の連作小説集「モリオ」に収録される「エウとシャチョウ」のことで、Amazonサイトの解説では「人間の魂が入った怪しい猫と猫の中に入った魂と対話できる変な能力者、猫の主人である魅力的な女性が家族になって愛して別れる感性ドラマ」とあるので、原作ではないとしても原案くらいの意味だと想像されます。確かに、いかにも小林聡美や片桐はいりが出てきてもおかしくない穏やかでちょっと切ない波長が快い物語だと気づきます。役者では、余り見た記憶はありませんが、青年と猫を演じるソ・ジュニョンとイ・ヨンナンが物語に良く溶け込んでいると思います。

 

全般に絵作りに深みがなく平板な感じがあったりして惜しい面もありますが、荻上ワールドの実写化としては悪くないと思います。タイトルから痴話げんかを想像して嫌な予感がしてましたが、そんなものとは無縁のハートウォーミング・ファンタジーとして評価できるでしょう。

 

ちなみに、2007年の4人組の頃から応援する<KARA>ですが、一旦脱退したニコル、チヨン(知英)も再参加して5人組として11月29日新アルバムを引っ提げてカムバック、12月には日本語バージョンも出すとのことです。久しぶりの再会が楽しみです。