「百会(ひゃくえ)」 救急療法のツボ | 瑞霊に倣いて

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  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

 “百会または顖会の灸が神経過敏を鎮静するのに奏効することは前述のようであるが、この穴が頭痛・耳鳴・血圧亢進・脳溢血等に著効ある外、救急療法の場合に先ず第一に試用すべき穴であることを忘れてはならない。私はこの穴の応用により昏睡状態に入れる患者を救ったことが幾回もある。

 その一例は、九歳の少女であったが、腎臓炎で尿毒症を起こし、五六時間全く昏睡状態に入って何とも手のつけようがなかった。私は急報に接して直ちに患家へ赴いて、先ず患者の脈を診ると、沈微であって、極めておそい。意識は全く不明である。尿毒症性昏睡であることがわかり、与えるべき薬もなんであるかの見当がいったけれども、薬をのませる方法がないので、急に思いついて百会に灸三壮を試みた。すると患者は昏睡よりさめて、低声ではあるが、泣き出した。そこで大椎の穴へ三壮すえたるに、今度は大声をあげて泣き出し、口が乾くから水をくれろという。すぐ水を与えたところ、よくおさまった。それまでは、水も薬も吐いてしまって受けつけなかったのである。それが、水がおさまったのでその母の悦びは非常であった。それから一時間も様子を見ていると、小便をしたいという。そこで便器を持って来て小便をしろというと、子供ごころで寝床で小便するのをわるいと思ったのであろうか、どうしても出ぬという。抱いて廊下へ出たところ、ようやく小便が出た。そうして元気になって来た。この夜、大便も出て、翌朝はいよいよ元気が出て来た。

 そこで、いま一回百会と大椎に灸し、今日は更に身柱をも加えて、利尿剤として五苓湯をすすめた。かくて、五苓湯をのむこと数日、患児はすっかり恢復し、利尿も普通になって完全に癒えた。

 このようにして、救急療法として百会の用いられることは少なくない。次に記すのは池田千尋氏の治験であるが、ある老婆が脳溢血で昏睡状態に陥り、ただ死を待つばかりであった。池田氏はすぐに百会に灸をすえたところ、およそ十壮ばかりして正気にかえったとの事である。私も脳溢血のため昏睡状態に陥っているものに百会に灸して成功したことがある。だが、重症のものになるといくら百会に灸しても、昏睡状態よりさめぬものもあって、百会の効果は百パーセントとはいえぬが、それでも、救急療法の灸として賞揚すべき穴であると思う。

 序でながら、百会を救急療法に用いて中國の文献を引用すると、

 「虢(かく)の太子、屍厥す。扁鵲、三陽五会(百会)を取りて、しばらく有って太子甦る」と。これは『鍼灸聚英』に記す処であるが、『史記』にこの事がのせられているという。扁鵲伝にもこれと同一のことがあげてある。この場合は、灸したのではなく針したのであるが、救急療法として古来如何にこの穴が重んぜられていたかを証明する文献であると思う。『聚英』にはまた次のような記事もある。

 「唐の高宗、頭痛す。秦の鳴鶴が曰く、宜しく百会を刺して血を出すべしと。武後の曰く、豈に至尊の頭上血を出すの理あらんやと。己にして之を刺して微(すこし)く血を出して立ちどころに愈ゆ」と。

 これは百会に針し血を出して強頭痛を治した記事であって、高血圧や脳充血にて頭痛はげしき場合、百会より瀉血して著効あることは、私も屡々経験している。

 この二つの逸話について、石坂宗哲の言(『鍼灸説約』所載)を記して、大方の参考に供することとしよう。

 「按ずるに扁鵲が虢を起す。秦の鳴鶴が頭風を療する、千古の美談なり。一針の微、効を瞬息に得る者は、手に得、心に識るの妙に非ずんば、いづくんぞ此域に居たるを得んや」と。

 たしかに宗哲のいうが如く、平常からその試用に熟していないと、突差の場合に、全く使用することを忘れていることがあって、あとになって「あの穴を使うのだったのに。」と後悔することがある。「手に得、心に識る」ところまで、平常の間に各自習熟しておくべきである。”

 

(代田文誌「灸療雑話」(医道の日本社)より)

 

*代田文誌先生(1900~1974)は、沢田流鍼灸を正式に継承された方で、以前紹介させていただいた「閃光記」の著者でもあります。この「灸療雑話」も非常に内容が濃く、読み物としても面白くて、値段以上の価値がある本です。脳出血や歯痛、偏頭痛、胆石疝痛、悪阻など50の症状の応急処置のための特効穴も載っており、たとえ薬が無く医者にもかかれない状況であっても、モグサあるいは線香さえあれば取りあえずの処置はできますので、マサカの時のために一冊持っておくとよいと思います。

 

*針を刺して瀉血するやり方は「刺絡」というのですが、近年は何冊も本が出ておりますし、刺絡を治療に取り入れている鍼灸医の方も増えているようです。

 

*頭痛持ちの方は多いと思いますが、偏頭痛については、出口王仁三郎聖師は「冷泉の水を飲んで腹を下せば治る」と言われており、エドガー・ケイシーも主な原因を、排泄不良により血中に毒素が蓄積したためであるとして、食事療法やヒマシ油温熱湿布とともに腸内洗浄(高齢者や子供には下剤の服用)を指示しています。そして鎮痛剤は火に油を注ぐようなもの』とも言っています。頭痛薬を頻繁に使用している方は、いつか薬が効かなくなったときにかなり辛い思いをせねばならなくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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