“林 ずっと脳外の学会や漢方の学会で発表しているのは紫雲膏の治療効果です。紫雲膏は、亡くなった中野先生が神奈川県部会で発表して、実例は出さないで、本人の感想だけで終わっちゃったという発表は初めて見たんですが、ちょっとおもしろそうだから、メーカーさんに試用品をくれと言ったら、くれないので、自腹で1万円だして買いました。放射性皮膚炎に対する塗布を放射線科に頼んだんです。臭いので、やってくれない。しょうがないから、自分のところの患者さんに塗って、あとストマーケアのナースがいますが、あれを取り込んで、ストマ―の人たちの放射性皮膚炎や褥瘡などにも塗ってもらって、非常によく効きました。特に褥瘡が治るというので、うちは赤くなるときから塗っています。安上りなので。
最終的にめざしたところは、頭頚部の化学放射線併用療法、放射線を70㏉かける。そこで抗がん剤を使うと、皮膚がぺろっとむけるんですね。あれがめちゃめちゃ痛い。あの痛みをとるのに、紫雲膏をぺたっと塗ってあげる。ステロイド軟膏は効かないんですが、紫雲膏を塗ると2時間ぐらいでおさまるんです。
室賀 治りもきれいである。
林 中野先生が言うとおりで、きれいに治っています。いま予防で、坊主になった患者さんは放射線当日から塗っています。意外ときれいにいきます。すごい薬だなと。
來村 私はそれについてコメントがあるんですけど、花岡青洲が名医といわれているじゃないですか。世界で初めて全身麻酔で乳がんの手術をしたということで有名になっていますけど、実は華岡青洲は吉益南涯に漢方を習っているんですよ。あの人が名医なのは、手術する前から、自分のところの患者さんを、まず手術できる状態にする。栄養状態の悪いのを漢方などで元気な状態にして、それから手術をする。乳がんの手術だけじゃなくて、痔の手術とか、そういう簡単な外科の手術もいっぱいやったと思うんですけれども、その後に術後の合併症が起こらないように上手に漢方を使って、うまくいったと思うんです。だから、青洲がつくった処方を見たら、十味敗毒湯とか帰耆建中湯とか紫雲膏とか、全部、傷をいかに早く治すかとか、傷をきれいにするかという薬ですね。そういう意味であの人は外科の傷をうまく治すという名医だったと思うんです。林先生も華岡青洲が創製したといわれる紫雲膏を放射線治療前に使って、うまく照射後の傷をきれいに治している。言ってみれば、現代の華岡青洲といっても過言ではないと思うんです。”
(「漢方の臨床」2014年5月号 來村昌紀・中江啓晴・宮上光祐・林明宗・室賀一宏『疾患別座談会 脳神経外科領域の漢方(下)』より)
“後悔先に立たずとか……。先日、甥、姪、我が子を連れ、海水浴に行った。子供らと遊んでいるうちに、時の経つのを忘れ、油をもつけず、そのまま4時間半も日に焼いてしまった。皮膚は火照るし、若干痛みもある。
さっそく、日焼けも火傷の一種と考え、紫雲膏を塗布してみた。その場合も、ものはためしと手足の半分のみに紫雲膏を塗り、後の半分は何も塗らなかった。痛みの消失はみられなかった。しかし、手足共、面白いことに、紫雲膏を塗った方が何も塗らなかった方より早く皮が剥け、その後も肌がきれいで色の褪め方も早かった。密封療法と同様に、皮膜の上を油が被い、成分中の紫根、当帰etc.らが炎症を抑えながら光を吸収し、体表温度を上昇し易くするため、治癒しながら早く皮が剥けるのではないかと思われた。
ただ不思議だったのは、紫根などがあるため、油膜から光を吸収する場合に染みなどが残るのではないか?と思われたが染みは全く見られず、日焼けの後が早く消失してしまったのには驚かされた。そこで痛みが消えなかったのは、炎症部が全体にわたっていたために、十分な水で冷やすことが出来なかったためと思われ、紫雲膏そのものの性状はどうか、もう一度別の見地から考えてみた。”
(「漢方の臨床」1989年10月号 いわき漢方研究会(坂本道哉・佐波古美智子・大内ミツ・斎藤謙一・田畑隆一郎・陣内弘和)『紫雲膏再考』より)
“桂枝去芍薬加蜀漆牡蠣竜骨救逆湯は、単に救逆湯とよんでもよい。この処方の中の蜀漆(しょくしつ)は、日本では本物の入手がむずかしいので、私は入れないで用いているが、それでも結構よく効く。
ある日、私の家の女中が、マッチをすったところ、それが箱に燃え移った。ところが、その箱が徳用の大箱であったので、頭髪に移り、頭髪が燃えながら顔に垂れ下がってきた。そのため顔いっぱいの火傷になった。わたしはその時、診察室にいたが、叫び声を聞きつけて、すぐ火傷の部分に紫雲膏を塗り、救逆湯を飲ました。すると、痛みが二十分くらいでとれ、全然痕がつかないで、きれいに治ってしまった。
その後のことであったが、某家に往診して、応接室で談話中、台所の方で、けたたましい女の声がした。何事が起こったかと耳をそばだててみると、その家の娘さんが、テンプラをあげていて火傷をしたらしいのである。油が顔や手に飛び散って赤くなっている。私は往診カバンの中に入れてあった紫雲膏をとり出して、火傷をうけた部分に塗っておいて帰った。
ところが、これはたいへんよく効いて、少しも痛まず痕にもならないで治ったといって感謝された。”
(大塚敬節「漢方診療三十年」(創元社)より)
*紫雲膏は火傷や褥瘡(床ずれ)、しもやけ、痔などによく効きますが、気をつけないと肌着やシーツに赤い色が付いてしまいます。
・残念ながら、原料調達が困難になったとかでウチダ和漢薬やクラシエなどは既に紫雲膏の生産を中止しています。といっても再開の可能性はあり、また、他にも紫雲膏を製造販売しているメーカーもありますので入手困難になるということはないと思いますが、取りあえず一つ持っていると安心です。
・火傷しても薬が何も無いときは、清浄なお土を塗るとよいと言われています。
・松と土
“大概の病気は、松と土と水さへあつたら治るものである、風邪其他熱のある場合には、雌松を煎じてのむとぢきに熱が引く、神様にお供へしたものならば一層結構である。
お土は傷をした場合にぬりつけるとよい、切瘡、火傷、打身腫物などなんにでもよい、
又、水は万病の薬であって、諸薬、水に越したものはないのである。熱のある場合病人が欲しがれば井戸の汲み立の水をどんどん呑ましてやつたらよい、水道の水はくたぶれて居る、井戸水は生気溌溂として居るから井戸水に限る。私は嘗てひどい熱病患者にどんどん水を呑まして治してやった事がある、医師は一寸も水を呑ましていけないと云って居たが、そんな事はない、水位薬になるものは無いのである。”
(出口王仁三郎述・加藤明子編「如是我聞 水鏡」天声社より)
*あと、出口王仁三郎聖師は、『火鉢の木灰を水に溶かした上澄み液が火傷によく効く』と教えられています。





