エルヴィス(原題名:Elvis ’22年 大阪ステーションシティシネマ) | Que amor con amor se paga

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映画・本などのネタバレメインのブログです
日常で気になったコトや動画も載せてます。

京都ではMOVIX京都で上映中なので
祇園祭山鉾巡航のついでに観て下され。



ジャンプスーツ着た『キング・オブ・ロックンロール』
世界に○万生業にしてる人がいると言われる『エルヴィスのそっくりさん』のイメージ?

オレは全盛期エルヴィスのガッツリファンなんだあぁ~

…って人には勧められんかも…しれん…

監督+脚本は『華麗なるギャツビー』 のリメイクのバス・ラーマン

『華麗なる~』が、平平凡凡なボクから見た謎だらけの億万長者の主人公(ギャツビー)と、その取り巻き

だったのに対し、今回は

誰もが知る稀代のアーティストを今もなお素性不明の悪徳マネージャーの視点から語る

…という考察が筋書。

音楽映画って難しくて(涙)

『ジェームス・ブラウン~』とか
『ボヘミアン・ラプソディ』とか
『最後のマイウェイ』とかは

どんなガッツリファンにも勧められる映画。


カントリー歌手、グレン・キャンベルの晩年の奥さん+子供の視点から語られる
『アルツハイマーと僕』もマニアなファンに勧められるかな~な良心的なドキュメンタリー

…今回の映画は、賛否両論呼ぶんじゃないか…と思い、観てから書くのが遅くなりました。

エルヴィスを演じるのは『CSI:マイアミ』の傍役から一気にスターダムに上り詰めた新星・オースティン・バトラー

…この間某民放で放映されていた『マイアミ9』の再放送で、この子の顔みたばかりだったんすが、ええええええええ?

○カ月前の民放の再放送でみた『マイアミ9』のバトラー

オヤジの連れ子の整備士って設定で、オヤジが再婚した女に白のベンツ買い与えてるのに自分には何もくれねーのか(激怒)とベンツに傷つけた挙句
義母が殺され(真犯人は父親)第一容疑者あげられるという…役だったと思う。

我ながらよく覚えてたなーqqqq

その頃の写真こちら



で、この子がエルヴィスって?

どういう経緯で??…頭が整理できん?

オースティン・バトラー、エルヴィスというよりも、『サタデー・ナイト・フィーバー』に出てた頃のトラヴォルタに似てない?

左が若いころのトラヴォルタ。
右がバトラー。



バトラーをエルヴィス役に推したのは

監督にツテもない大物俳優デンゼル・ワシントン

…だったそうですよ。

バトラーとミュージカルで共演したから推しなんだけど、という理由だったらしい。

もしかしないでもトラヴォルタの若い頃に似てたから?
デンゼルとトラヴォルタは『サブウェイ123』で共演する前からの友達だったんすが(汗)

ま~監督はプレスリー役をバトラーに決める前は

『トップガン:マーヴェリック』のマイルズ・テラー
『ウェストサイド・ストーリー』のアンセル・エルゴート
ワンダイのハリー・スタイルズの誰かに決めようとしたらしい…から

仕上がった映画を観る限りでは『彼ら3人に決まらなくてよかった』感はありました。

'50年代までの映像では主演のオースティン・バトラー『本人』が歌った声が劇中にそのまま使われています

それ以降は『エルヴィス本人』の声とバトラーの歌った声をミックスしてるそうですが。

マニアなファンから歌声絶賛されたのに『全部吹替』にすり替えられた『最後のマイウェイ』のジェレミー・レニエに比べたら良い待遇だったと思う。



前置き長くなった所で、予告編こちら、あらすじいってみる。



時は'53年のアメリカ

トム・パーカー大佐(トム・ハンクス)は、'20年代後半に母国オランダで殺人容疑をかけられ米国に不法入国。

カーニバルの労働者を経て、'50年代はカントリー歌手のマネージャーに転身した。

『音楽も芸術も判らないが人と金が寄ってくるものだけは判る』

というパーカー大佐。

数年置きにマネジメントする歌手を変える大佐が'50年代初頭に入れこんでいたのはカントリー・ウェスタンのシンガー、ハンク・スノウ(デヴィット・ウェンハム)。

大佐の運命を変えたのがハンクの息子ジミー・ロジャース(コディ・スミット・マクフィー)がドサ周りの時に聞いていたラジオだった。

ラジオから流れてきた歌声の主は『ブルー・ムーン・ボーイズ』という3人組の1人エルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)。
大佐はエルヴィスがルイジアナでライブをやっていて、近々ハンクの前座をつとめることになるのを聞いて興味を示した。

ハンクのショーの当日、大佐はプレスリーがどんな人物が気になり舞台裏に見に行くと、彼は ギタリストのスコティ(エクゼビア・サミュエル)やベースのビル(アダム・ダン)、母親グラディス(ヘレン・トムソン)に囲まれ、
冷や汗をかいていた。

緊張で震えている息子に母グラディスは『ジェシーが見守ってくれているわ』と生まれてすぐ亡くなった彼の双子の兄ジェシーのことを言い聞かせ、ステージに送り出した。

仲間に支えられやっとのことで舞台に立つエルヴィスは、ブカブカのピンクのスーツに、メイクをした顔、
あまりにか弱さに失笑し、罵詈雑言を浴びせる客も出てきた。

ところが歌いだすと場は騒然。

エルヴィスは足を小刻みに震わせる独特の踊りを披露し、声を張り上げ歌いだした。

保守的な町で悲鳴をあげ熱狂する女性客が続出。
普段物静かな女性たちがステージに手を伸ばし半狂乱になりエルヴィスのジャケットを剥ごうとしていった。

あまりの熱狂ぶりに驚いたエルヴィスは思わず手を引いてしまう。

カーニバルの巡業やカントリー歌手のドサ周りと比べものにならない観客の熱狂ぶりに、新しい時代の風を感じた大佐は、エルヴィスの契約していたレコード会社や身辺を調べ、マネージャーとして独占契約を結ぼうと動き出した。

エルヴィスが今まで契約していたサン・レコードの社長社長サム・フィリップス(ジョシュ・マッコンヴィル)と助手のマリオン(ケイト・マルヴァニー)にはエルヴィスが売れる前に手切れ金を渡し、大手レーベルRCAに彼を移籍させた。

金銭管理に疎いエルヴィスの両親は、最初は大佐を胡散臭い人物と勘繰りつつも最後は弱味を握られ丸め込まれてしまった。

ハンクは大佐が自分をマネジメントする前にカントリー歌手のエディ・アーノルドから解雇されたこと、
アーノルドが大佐を解雇する際に3万ドルの大金を要求されたことを思い出し、自分がエルヴィスの前座に使われるのを嫌がるようになっていった。

その一方で彼の息子ジミー・ロジャースは『これからはプレスリーの音楽が流行る』と父親の元から離れていった。

大佐のマネジメントに疑問を抱くようになったハンクは大佐の元を離れ、'54年にはエルヴィスのツアーから離脱。

すると大佐はエルヴィスを母親以外誰とも合わせないようにし、周りから孤立させた。

エルヴィスは母親が頑固で自分にファンの女の子すら寄せないようにしているのは、 見栄っ張りで逃げ腰の父ヴァーナン(リチャード・ロクスバーグ)が犯罪を繰り返したせいで、母親は貧しい生活を強いられたからだと大佐に 打ち明けた。

自分は母親を楽させてあげたい、母親が夢見た豪邸とピンクのキャデラックを買ってあげたいと大佐に話すエルヴィス。

私と組めばいくらでも買える
お母さんの夢はかなえられるさ


その言葉に乗ってしまったエルヴィスが辿った道は、死ぬまで飛び続けるしかない鳥と同じものだった…

以下ネタバレです

ものすげー早いんですが、ネタバレいきます。



映画は'72年ベガスのホテルでショーの直前にブっ倒れたエルヴィスを

氷水入った洗面器に顔ブっこんで薬打って無理やりステージに立たせようとする大佐

…の絵面から始まります。

その次の場面が、'97年のベガス。

大佐は87歳のジジイになっててメディアでは大佐は素性がほぼ暴かれていて『詐欺師』と呼ばれているのです。

病院を抜け出してフラフラフラ~と老いをさらした大佐はカジノのテーブルに行くのですが、ここら辺は大佐の哀れな晩年を彷彿とさせます。

メディアは私がエルヴィスを殺したと言っているが違う

エルヴィスを殺したのはファンだ


…意識もうろうとした大佐が、こんなコトをのたまっているシーンがあるんすが

これって半分は当たって、半分はハズれてるかな…とも思うのですね
エルヴィスだけじゃーなく
人気商売、客商売、ファンという名の客に自分の明日が左右される職業、業界は、シビアな事 言う様ですが当てはまるのではないかと思います

それだけに、何で?何で?という疑問点幾つも出てきます。

大佐がいきなり家に訪ねてきてエルヴィスの両親に対し『お宅の坊ちゃんは才能ありますからね~qqqq
プレスリーエンタープライズつーの作って貴方たちも会社の役員になっちゃえばどうですかぁ?』って インチキ臭い書面とボールペン持ってきて
『ほぼ強引』に書面にサインさせるシーンあるんすよ(爆)

あれってアヤシイ保険商品じゃーないけど、中には後々トラブルになる様な書類沢山あったんじゃないの?
って思うし、大佐も エルヴィスの両親が金銭面に疎いのを知ってて、この手の悪徳やりやがったなqqqqってのが丸わかりのシーン。

…演じているのが『今までいい人しか演じたことありません』なトム・ハンクスなだけに不気味度MAX

勿論物販も作るんですが

アンチ・プレスリーってのも作っちゃいました~
アンチからも金取らなきゃね~wwww
ってあの時代から、わっざわざ作ってやるかぁ?

プレスリーのお母さんが露骨に嫌な顔するんですが、そりゃそうだわな。

ピンクのキャデラックも買い、グレイスランドに真っ白な邸宅も建てたのですが
屋敷は気が付くと

自分の身内と大佐の取り巻きだらけ(涙)


エルヴィス死後、問題になった『メンフィスマフィア』と呼ばれるゴロツキもこの頃から屋敷に住み着きます。

ホラ、よく言うじゃないですか。
宝くじ当たったら親戚増えたとか、有名になったり、特定の特技や趣味だけでゴロゴロ友人出来るってアレ(涙)

それがエルヴィスにおけるメンフィスマフィア。

自称お抱え運転手で後にエルヴィスの暴露本を書いたソニー・ウェスト(マイク・ビンガマン)、
ソニーの兄でエルヴィスの駄作映画のスタントをやっていたレッド(クリスチャン・マッカーシー)

エルヴィス以外にもビーチボーイズとか、金銭にだらしなさそうな歌手にサブマネとしてくっついていた ジェリー・シュリング(ルーク・ブレイシー)

…この辺りは後に駄作凡作として知られるエルヴィスの映画にも出まくってお金を貰っているのです。

他人様にぶら下がってたのしめりゃー、まーえーかー…って人たちは時代問わずいるんであって…。

前座で歌ってくれたジミー・ロジャースも屋敷に出入りしてるんすが、彼はまだ良心的な方。

エルヴィスが大佐以外に心を開ける相手といえば、父ヴァーナンがムショに入ってる間、身を寄せていた叔父の家の息子=従兄のアール(ジェイミー・マーティン・ダンカン)​ぐらいで、
母親グラディスは

エルヴィス、しっかり稼いでワタシを幸せにしてねオーラぱねぇので(涙)

…エルヴィスは何も相談出来ない…。

すげぇ毒親、毒マネ、毒子分(号泣)…そりゃエルヴィス、○ぬ前あんな風になるはずだわ…。

…本人自身『周りは何の自覚もないんだろうけど、毒ぽく自分に依存してるんだろうな(涙)』というのが判るのか
心の逃げ場?がなくなってしまうのです。
それも大佐の策略の1つだという所が怖いんすが。

それでエルヴィスは今でいう所の『お忍び』で屋敷から逃げちゃうのです。

父親の犯罪歴のせいでメンフィスの黒人街のプロジェクト(公団)住んでいたエルヴィスの音楽のルーツは カントリーじゃなくて黒人音楽。

幼いころのエルヴィス(クレイトン・ジェイ)は黒人教会の巡業テントに忍び込んで音楽を聴いていたので、大佐に『ああすれば売れる、こうすれば売れる』 …と指示されると、作りたい曲のインスピレーションが得られなくなってしまう。

言いようによったら『アフリカ系アメリカ人音楽をパクった』とも言えるんすが。

ビールストリートをブラブラブラ~と歩いてビック・ママ・ソーントン(ションカ・デュクレ)が『ハウンド・ドック』を歌うのを耳にし

あ~、これBPMアップして長調にすればヒットするんじゃないか→売れたとか。

数々のエルヴィスの曲は『いかにも白人でござい』という曲でなく、自分とは住んでいる世界が違う人から 影響を受けていて、定期的にそういう人たちに逢いに行かないと、心の中の何かが浄化されないエルヴィスの姿がこの映画ではよく描かれていたと思います。



『ジェームス・ブラウン~』で描かれていたリトル・リチャード(アルトン・メイソン)や、B.Bキング(ケルヴィン・ハリソンJr)の話が描かれている所も、良かったです。

大佐がエルヴィスを孤立させ5割もマージンを取っていることに驚き、何故そんな奴と手を切らないんだ?とB.Bキングや後に『エルヴィスカムバック』をプロデュースするスティーヴ・ビンダーは何度も説得を試みるのですが、
幼い頃の両親との関係が不安定だったエルヴィスは大佐を切ることが出来ない所以が描かれています。

エルヴィスのパフォーマンスは白人至上主義で公民権運動に反対するジェームス・イーストランド上院議員(ニコラス・ベル)に知れ、メディアへの活動を制限されてしまうのです。

不思議な話なんすが、イーストランドがエルヴィスを知ったのはお茶の間のテレビ。

奥さんと娘さんがテレビに向かって『キャー!エルヴィスマジカッコいー!』と言ってると
旦那であるイーストランド上院議員が『けしからん!米国の風土を乱す悪魔の歌を歌う男だ!』って(爆)

ま、まぁステージに観客の女の子がパ〇ツ投げ込んでる映像もバッチリ出てくるので(汗)
'50年代後半のガチガチ保守派の上院議員でなくてもビックリするわなー

上院議員に睨まれたエルヴィスは大佐の指示でタキシードを着て超絶つまらんカントリーソングばかり歌わされる羽目になります。
歌唱力はあるので歌手生命を絶たれたのではないんですが、歌いたい歌を歌わせて貰えないというのは表現者として苦痛以外何者でもありません。

大佐も大佐で、以前から身元が怪しいというので査察が入り、不法移民であること。

本名はアンドレアス=コルネリス=ファン=カイックで、オランダ・ブレダ市生まれ、
パスポートもなければ軍歴もない


…ことが暴かれます。

…エルヴィスは海外ツアーができなかったのですが、これは大佐が不法移民でパスポートがなかったからだったんですよね。

保守派の議員に対するイメージをあげるために大佐は『エド・サリバンショー』にエルヴィスをブッキングします。
実際の映像こちら



…映画の中では移動する度にファンに『前のエルヴィスに戻って』と取り巻かれるシーンが出てきますが、'57年末?に 故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムでライブをすることになるのです。

指一本動かせば逮捕

…とトンデモな条件つきつけられるんですが、当然ながら反抗します



誰に何を言われようと、自分の心に従え

で『トラブル』を歌うのです。

観客は暴徒と化し、大佐は自分の元を離れていくエルヴィスの姿に憤慨。
エルヴィス自身は暴徒に巻き込まれる母に『護衛の車に乗って逃げて!』と言うのが精一杯。

ラスウッドパークの映像は記録に残ってないそうなんすが、ファンが暴徒化してしまい記録映像がズダボロ化+再現不可能になった…ことは考えられるよね…

そういうの考えるとファンというモノのマナー?そういうのを考えさせられる。

ファンを暴徒化させた罪の収監逃れのためエルヴィスは、芸能活動を一時期停止し、徴兵に応じることに。

’58年3月米陸軍に入隊したものの、息子が有名になることに耐えられなかった母グラディスは深刻なアルコール中毒に陥り肺炎をこじらせ帰らぬ人になってしまう。

母親の服にしがみついてオイオイなく世界のスーパースターの姿というのは正直みたくない(涙)

…当時エルヴィス、24?ぐらいだろうと思うんすが、いくら『事実』だったとしても、これは描かない方がよかったかな…と思うのです。
ちなみにエルヴィスの父ヴァーノンは何してるかってと、もっと酷くて大佐に『貴方が遺族の代表として挨拶しないとどうしようもないですよ』と言われているのに

『そんなのムリだから大佐、貴方が全部やってください』って???

世間の目からしてみたら『悪徳マネージャー』である大佐なんですが、大佐、こういう『どうしようもない人からお金を巻き上げる才能』があったという、 それだけの話なんじゃないの??

後々金の事でエルヴィスは大佐を『金ばかりむしり取りやがって』と罵るですが、母親が死んだときは『あなたは僕の父だ』というのだから、どんだけ コロコロ発言が変わるのだqqqqとあきれて映画観ておりました。
生活基盤という大事な部分を大佐に握られてどんだけ 哀れなスーパースターだったんだろう。

そんな大佐でも『全く予期できなかった』のがエルヴィスの従軍中の恋だったのです。

後に結婚して離婚するプリシラ(オリヴィア・デヨング)との出逢いなんすが
エルヴィス24歳、プリシラ14歳って???
今でも当時でも犯罪だろうがよ、犯罪qqqq

…エルヴィスは母親のグラディスが寄ってくるファンを片っ端から追い払っていた…らしく
噂になっていた 女優のナタリー・ウッドでさえグラディスに追い払われた1人…だったそうなのだ…
パフォーマンスセクシーなのに『見た目もしくは中身エロ系の女性がムリな人』になってしまったらしい。

何というか、母親+大佐に慕ってくる人選別されて自分で付き合う人を選べない+付き合う人を探そうと思ったらコソコソコソ~と ファンが全然いない黒人街までいかなきゃーいけないって映像が描かれる度に、孤独だったんだろうな、と。

'59年に除隊後、エルヴィスは大佐の勧めでハリウッド映画に出るのですが、エルヴィスの映画は本数だけ多くて凡作駄作まみれなのは 映画ファンじゃーなくても知られている所で。

量産された駄作の映画とビートルズの台頭でエルヴィスの音楽やパフィーマンスは流行おくれになっていきます。

'68年、大佐はNBCとクリスマス特番としてエルヴィスにクリスマスソングを歌わせる契約を取り付けましたが、その年、エルヴィスの心を揺るがす出来事が起きます。

4月にマーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺され、6月にはロバート・ケネディが暗殺されたのです。

アンバサターホテルはエルヴィスがリハーサルをしている会場の近くで、プロデューサーたちの表情も凍り付いています。

大きなショックを受けるエルヴィスに『昨年も陽気にクリスマスソングを歌ったじゃないか。』と言われたことだけやればいいと強要する大佐。
疑問を持ったエルヴィスは、ハリウッドの文字盤の所にプロデューサーたちを呼び出します。

今、オレのキャリアはどこにある?

うーん…トイレの中なんじゃぁないスかね?

プレスリーにこう聞かれたTVプロデューサーのスティーブ・ビンダー(ティカ・モンゴメリ)がズバっと本音言っちゃうシーンが良い

横には同じくプロデューサーのボーンズ・ハウ(ギャレス・ハウ)が居て、本音の所、エルヴィスは大佐と縁を切ったほうがいいんじゃないかと思っているのだけど、 なかなか言い出せない。

誰からも注目されないを通り越してドツボなキャリアを何とかする為には、全然違うことするのもアリなんじゃないの?

…というので、Elvis68と銘打った'68年12月のクリスマスショーの企画が始まります。

大佐はエルヴィスがクリスマスソングを歌ってくれるんだな~と思ってスポンサー呼んで、ちゃんちゃんこみたいな赤いセーター着て
古き良き時代のクリスマスでございを演出してるのです。

が!

実際にはじまったらエルヴィスお馴染みの監獄ロック、ハートブレイクホテル、ハウンドドックと来るのだから
大佐は『オイ!いつになったらクリスマスソング歌うんだよ!』とブチきれまくり
しかも編集画面でエルヴィスの趣味のカンフー入れたり、 NBCの役員が保守派なのを知っててわざとアフリカ系、アジア系人種のダンサー起用して間奏入れたり、
大佐の意向と正反対

とどめがエルヴィスがこの日の為に作ったオリジナルソング『明日への誓い』
これだけはスポンサーが納得してくれたのですが、何も知らされていなかった大佐は怒りを露わにします。



これを機会にエルヴィスは大佐をクビにして海外ツアーに乗り出そうとしてたのです。
B.Bキングの助言をうけて 新しいマネージャーも雇って。

が、大佐はギャンブル依存症で

エルヴィスの稼ぎを全部ギャンブルに使っていた(汗)

ある日突然、貴方エルヴィスのマネージャーからハズされたから、ここで遊べなくなりましたよ、と肩たたきされてしまう大佐

大佐も大佐で強かで、転んでもタダでは起きない、というか全然かわいくない。

建設中のホテルの大広間にエルヴィス『だけ←ここがミソ』を呼び出して
実に巧い話をもちかけるのです。

一日だけショーをしないか?オープンセレモニーだから経費はホテル持ちだ、という。

その後なら海外にいくらでも出れるみたいな口ぶりなんですが、

大佐はホテルの支配人と相談し、エルヴィスのライブ権を このホテルと結び、ホテル側から無期限融資をうけ、借金帳消しにして貰うという、おいしい契約を結ぶ

…のです

こんな紙切れでいいんか、と思うのですが。



映画ではホテルで知らない女と一夜を共にしていた所をブチきれられたエルヴィスは、
堪忍袋の尾が切れたプリシラから 娘リサ・マリーを連れて逃げられます。

この頃には昼夜逆転した生活を送り薬漬けの生活になっていたエルヴィスは、日に日に体調が悪化。
移動の時もグラサンが手放せず、 ホテルのガラスにはアルミ箔をはる程でした。

史実では奥さんがエルヴィスの空手コーチと不倫して逃げたそうなんですが、10年上の憧れの地位の旦那が蓋をあけたら体たらくだったら、 そりゃー逃げたくなるわなー…。

別れ際にヨヨヨとすがりつくエルヴィスにプリシラは

大佐とは縁をきるべきよ

…というのです。

薬の乱用も全て大佐の指示なので、このままじゃぁ大佐に殺される、と判っていたのではないでしょうか。

エルヴィスが出来ることと言えば、よっぱらったフリをしてステージ上からどさくさに紛れて大佐をボロクソいうことだけ。

今度こそ大佐をクビに出来ると思ったエルヴィスでしたが、大佐の口からトンデモな事実発覚

お前の家で借金や散財をする奴はいても誰も貯金している奴はいない

大佐は『私をクビにする前にお前の父親に貸し付けていた数百万の金を返せ』というがエルヴィスは、無駄金を使った覚えがない。

父ヴァーノンに聞くと『稼いだ金はお前が散財した、だから大佐から借金した』という。

エルヴィスにお金の管理の仕方を教えていなかった両親+わざと教えなかった大佐+集ったメンフィスマフィアが原因だというのは 客観的にみれば判る話なんすが。

忠告してもムダだろうな~エルヴィスには大佐という名のラスボスマネージャーいるもんな~…

…という感じで普通の人が離れていったのは考えられるんじゃないでしょうか。

大佐を解雇しようとしたエルヴィスに対し『あいつらをみろ』と言わんがばかりに指をさしたのがメンフィスマフィアたち。

今の今まで自分の懐が寂しくなった原因が何故判らない?
あいつらに小遣い配っているとそれなりの金も要るだろうといい、エルヴィスは 大佐をクビにできなくなってしまいます。

で、映画の冒頭の場面、顔も浮腫み、体調が悪化し、ステージの直前ブっ倒れたエルヴィスが氷水の洗面器に顔をブっこまれるシーンが出てきます。

1人の女医が

私がこの子の母親なら薬は持ってこないわ

…というのです、薬を打ってまで無理やりステージに立たせる真似はしないというのですが、大佐は女医の意見を一蹴し、自分が選んだ もぐりの医者ニック(トニー・ニクソン)に注射を打たせます。

映画のエンディングは本物のエルヴィスのラストライブの動画が流れます。

'77年のものなんですが

椅子に座るのも歌うのもやっと?という状態。



もう椅子に座るのもやっとのエルヴィス。

太りやすい食べ物が好きだったのは知られていますが、エルヴィスは後のDNA鑑定で慢性片頭痛と緑内障があったことが判ったそうです。

いずれにしても長生きできなかったかもしれません。

その一方で悪徳マネージャーとして世に知られた大佐は、残った裁判でプレスリー家の不動産や著作権は全て取り上げられ、
メンフィスマフィアも解雇。
残った僅かな財産をスロットマシンにつぎ込む哀れな末路を辿ったと言います。

この映画のクランクイン直前に大佐役のトム・ハンクスがコロナに罹った上、40~80代を病み上がりの体に5時間の特殊メイクと演技力で乗り切った…んだそうな。

今まで『いい人』を演じていたハンクスなだけに、不気味な悪役は体当たりだったんだろうと思いました。

主演のオースティン・バトラーは2年かけて役作りに挑み、クランクアップ直後、虫垂炎に(汗)

これから良い役が貰えるといいです。

『CSI9』の時は食べるのにも困っていたそうなので。