ヒュー・ジャックマンイチオシというので 『ジャージーボーイズ』の様なストーリー性を期待した+傑作ミュージカル『ハミルトン』を作った人が脚本書いたってので期待して観た人は酷評書いてるんだろうと思う(涙)
どっちかっつーと
『ストレイト・アウタ・コンプトン』と 『ダンス・ウィズ・ミー』 に無理やり『グレイテスト・ショーマン』のノリをツっこんで
終わりよければ全てよしな感じに仕上げてます。
台詞の8割が歌(半分はラップ)ってのは、映画観る人にとってはキツいだろうなぁ(しみじみ)
…なので公開終了寸前にレビュー書いてたりするんですが(おいこら)
勿論このジャンル好きな人は好きなんだろうと思います、要するに『マニア受け』なのです。
映画に出てくる登場人物のバックグラウンドが、コロナ禍で皆が抱えている漠然とした不安に通じるのではないかという事が判る+ラップにそこそこ興味がある人ならそこそこ面白く観れる映画です。
そんなワケで予告編こちら、あらすじいってみる。
真夏のNY北部マンハッタン・ワシントンハイツ
ハーレムよりまだ先のここは、プエルトリコ系の移民が住民の大半を占め年々家賃の高騰に悩まされるばかりか、電気が止まるのも日常茶飯事。
ドミニカからの移民ウスナビ(アンソニー・ラモス)は母親から受け継いだボデガ(bodega=ヒスパニック系の個人食料品店)を細々とやっている。
ウスナビの、ザ・昭和な個人食料品店は、俗に言われるタバコ屋+コンビニ+商店が合体したようなもの。
お世辞にもウマいと言えないロブスタ種の深煎りコーヒーも出せば、宝くじも売るし、パンもコ〇ドームも生理用品も、食材もビールも売る。
ウスナビの店で街の皆が決まって買うのはコーヒーと宝くじ。
一攫千金を狙い、苦しい暮らしから抜け出そうとする思いは1つ。
今日も夜中に店を開けようと思ったら
夜中に停電(唖然)
店の冷蔵庫に閉まってた売り物の牛乳は全部腐って捨てる羽目に(涙)
また停電か…としょげているとアブエラ(オルガ・メレディス)が宝くじとコーヒーを買いにやってきた。
『牛乳がないならコンデンスミルク入れればいいじゃない?』
彼女はウスナビだけでなく街の若者の母親代わりだ。
次に店に来たのはタクシー会社をやっているロザリオ(ジミー・スミッツ)
いかにも中小企業オジサンなロザリオの目下の悩みは娘のニーナ(レスリー・グレイス)の学費。
だがニーナはこのコミュニティ唯一の才媛でスタンフォード大に合格。
自慢の娘が帰ってくるので顔が緩みっぱなしだ。
店を手伝うウスナビの従弟のソニー(グレゴリー・ディアス4世)は遅刻常習犯。
店の開店時間と同時に起きるので遅刻は当たり前。
今日もウスナビに怒られている。
次に来たのはヘアサロンのダニエラ(ダフネ・ルービン・ベガ)と従業員のカルラ(ステファニ・ベアトリス)、クカ(ダーシャ・ポランコ)の3人組。
酒屋の誰が、どこぞの女性の香水が安物だとかと噂話をサカナにしている。
ロザリオの会社で働く売りあげNo.1のドライバー・ベニー(コーリー・ホーキンズ)がやってきた。
今にみてろ昇進してやるからなとやる気満々だ。
その後に来たのはダニエラのヘアサロンに勤めるヴァネッサ(メリッサ・バレラ)
ヴァネッサはデザイナー志望で、ダウンタウンに敷金も頭金も払い店を持ち独立する予定だった。
スマホ片手に打ち合わせをしながらウスナビの店に入ってくる姿はもはや別の世界の女性。
話しかけられずじまいでモジモジしているウスナビを見つけたヴァネッサは彼に
引っ越し祝いにシャンパンくれるんでしょ?
と声をかける。
本当はヴァネッサに街から出て行ってほしくないウスナビはコーヒーを渡すので精一杯。
ベニーとソニーは、好きなんだろ?早く誘えよとウスナビをけしかけるが、全くダメ。
冒頭の人物紹介をウスナビのラップで語ってしまうあたりがスゴい。
このノリについていけなかったら、この映画のノリについていけん事確定。
ベニーは調子ブっこいて他人様の恋は応援するものの、自分は?というと
ベニーが思いをよせるのはニーナ
だからこそこの街で仕事を頑張ってお金を貯めてキャリアを積んで彼女に相応しい人間になろうとしている。
が
肝心のニーナはというと、勉強三昧の日々+ワシントンハイツに戻ってきても浮いてしまうアフリカ系移民+スタンフォードでもマイノリティというので浮いていしまう…という事で悩み
大学を親に内緒で中退してしまうのです。
ありえへんのですが。
親に言えないからって、噂話をサカナにしているヘアサロンで、それをぶっちゃけるのもナンじゃないかなとも思います。
ワシントンブリッジが見える所で、これから先の人生、親にも名門大学中退したとは言えないし、まさかこんな所でダベってるともいえんしどうしようとニーナは考えるのです。
数日後、暑い日がうだうだ続くのでウスナビとベニーは仕事休んでプール行こうと意気投合します。
そんな時店番してたソニーが『宝くじの当たり出た!』と知らせに来ます。
その額
96000ドル(1600万円)
ベニーはビジネススクールに使うというのだけど、ビジネススクールに通って実業家になって金持ちになったらどうすんの?
って友達から聞かれても
給料入ったら夜中にネット開いて要らないモノポチポチ買って後から他人に配ってる人じゃーないけど、あの感覚(号泣)
タイガーウッズをキャディに付けられるぐらいになってるかなーとか、 フロドの指輪ぐらい買えちゃうだろー!とか。
まちぎゃーても
ダーク・ピットシリーズを書いたクライブ・カッスラーの様な夢+カネ+ロマンの3つが両立する考えが出てこない(号泣)
ウスナビはバカばっかり言ってるダチ相手に
どーせ税金で持っていかれるんだろ?
シラっとしてしまう。
…オレらは金に縁ひとつないのさってヤツで
これをラップでサラっと歌っちゃってるシーンこちら
…映画の冒頭から何気にカメオ出演的に出てくるかき氷屋台(ヒスパニックコミュではピラグラ売りと言うらしい)のオッサン
演じてるのは映画+原案担当のリン・マニュエル・ミランダ
出演の仕方が『孤独のグルメ』における原作者の久住さんによく似てるqqqq
マニュエル演じるピラグラ売りのおじさん、街が停電になる時や、暑くてかき氷売れそうな時は街を屋台ひいて歩いてるので、当然の事ながらプールにもやってくる。
が、何故だかプールの若者が行列を作ってるのはアイスクリームのキッチンカーのフランチャイズチェーン『Mr・ソフティ』の前。
いつか見返してやるぞと負け惜しみを言うピラグラ売りのオッサン。
…地域のお店で経済成り立っているこうした街にも儲かると思えばフランチャイズのお店が電卓叩いて進出してくるという世界各国に共通する現状を物語るシーン。
プールのシーンもそうですが、猛特訓して挑んだダンスシーンなだけに、サルサ、ラップ、ヒップホップ、レゲトン、ストリートダンスに興味ある人には見ごたえある作りになってます。
ワシントンハイツの住民の大半はヒスパニック系なんですが、数少ないアフリカ系がニーナとベニーなのです。
だからこそニーナの父親ロザリオはニーナだけでも大学に行かせようとし、ベニーは働いて学をつけようとするのです。
ウスナビやソニー、ヴァネッサの様に『戻ってくる所はここだよ』という感じでワシントンハイツをよりどころにしているのではなく
ワシントンハイツに居ても、スタンフォードに居ても、どこか
自分の心の置き場所や居場所はここじゃない
…と思ってしまうニーナとベニー
そんな2人が夕焼けが照らすジョージ・ワシントン・ブリッジをバックにベランダで自分たちの将来を映し出すかの様に『When The Sun Goes Down』を歌うシーンがこちら
『無重力ダンス』と言われたネタバレは、フレッド・アステアの半世紀以上前のダンス映画と全く同じトリックらしい。
あの頃はCGがなかったから無重力で踊ってるかのように『見せる』かはアナログなトリックを使うしかなかったのだけど
デジタルが普及した今取り入れると、かえって新鮮かもしれん。
アステアの映画の時は、床と壁と天井の4面にカメラを付けたセットを作ってド〇フの昭和のコントよろしくセットを回転させて、いかにも無重力でダンス踊っている様にみせていた…んすが。
今回の映画は、巨大サイコロの外側に壁面セットを作って→カメラを固定→セットをコロコロ転がしながら→転がるセットの上を俳優が踊る事で無重力でダンスを踊っている様に見せるというからくり。
撮影『当日』まで、きちんとしたセットが完成してなかったらしく(汗)ベニー役のホーキンスもニーナ役のグレイスも『どうなるのっ?』だったそうで。
話を戻す。
ニーナとベニーが無重力ダンスならぬお互いの胸の内をジョージ・ワシントン・ブリッジをバックに明かしている時
ウスナビはヴァネッサを『やっとのこと』でデートに誘う事が出来たのです、勇気振り絞って。
が、誘った場所がクラブだったので、ヴァネッサはフロアでモテモテ状態。
次々と色んな男性に言い寄られる。
ヴァネッサもヴァネッサで『え?え?デートに誘ったんじゃなかったの(( ゚д゚)ポカーン』状態でウスナビの方を見るのだけど、ウスナビはフロアで ヴァネッサに『一緒に踊ってくれない?』と言い寄る男たちに詰め寄る事すら出来ない
おいこら((-_-メ)
ホレてる女が目の前で他の男に言い寄られてるのに
指くわえて見てるのかよ!
…とツっこみたくなったけれど、この後のシーンでツっこむ気持ちすら失せたのが
デートに誘ってきたのに踊りもしない+他の男性に言い寄られているのをだまーってみてたのに、後から
尻軽め
…って吐き捨てる様にヴァネッサに言うウスナビ(涙)
何?デート誘ったの自分だから気が付いて欲しかったの?
リードして欲しいとか言うなよ(怒)
このシーン面倒臭くて寝落ちしそうになった…うん。
ウスナビがヴァネッサをデートに誘った日、
ワシントンハイツはまたもや停電が起き、外では明かりを求め花火が上がる。
扇風機でさえ動かない7月の蒸し暑い夏、アブエラの急に高熱を出し容態が悪化、近所に住む人々がアブエラの周りに集まっていた。
普段は忍耐と信仰を口癖にし街の肝っ玉母さんを演じていたアブエラだったが、空調もない真夏のワシントンハイツでの一人暮らしは年老いたアブエラにはきつすぎた。
ウスナビがアブエラをベットに寝かしつけるが、意識は朦朧としており、彼女は昔の事を思い出すしかなかった。
キューバから米国に渡ってきた時スペイン語しか話せなかった事、仕事は見つからないも同然だった事、口癖にもなっている忍耐と信仰は信条になっていた事…。
真夏の空の下、皆の母親代わりだったアブエラは息を引き取る。
大停電の中迎える独立記念日、ワシントンハイツの皆は出身地の国旗を掲げ踊る。
電気はない何もかもない、でもパワーはあるのだと。
…かといって皆が皆ワシントンハイツをこれからも盛り上げていくのかったら、そうではないのであって。
ウスナビは店をたたんで故郷のドミニカに帰ろうとします。
母親が死んでから一度も帰っていないドミニカに帰る為店じまいをしてしまうのです。
ニーナは大学に復学するのですがベニーと遠距離恋愛で再会を約束します。
ウスナビは引っ越しで荷物整理をしていた所、アブエラの小物入れを見つけるのです。
小物入れの中には
例の96000ドルの当たりくじが(唖然)
ネコババしたら物語にならんので(当たり前)
ウスナビは、ソニーが不法移民になっていた事をずっと気にかけていたので、当たった宝くじをソニー救済の為の弁護士費用に充てる事にします。
ってコトは何だ?
米国の『若年移民に対する国外強制退去の延期措置(PACA)』の弁護士費用+裁判費用全てひっくるめるとそれだけかかるって事をミュージカルの中に盛り込んでいるワケか?これ?
宝くじ一等当たったとしても身近な人、大切な人1人救えるかどうかも判らないんだよ、という現実は世界どこでもそうなのだろうけれど。
でもって、店たたんで引っ越し当日、もうドミニカに戻るよとなったウスナビ部屋をヴァネッサがシャンパンもって訪ねてくる。
ヴァネッサお店開いたの?って感じで、ウスナビはボトルのパッケージを開けるのに必死なんだけど、普段安酒しか飲んでないものだからモタモタしてて開けられない。
もういいわよ、とヴァネッサは彼にそっとキスをしてウスナビを片付けた『はず』の店の跡地に連れていくのです。
そこには彼女が仕立てた服や並んでいて、いつも壁にイタズラ描きをして逃げよる落書き男(ノア・カタラ)がカウンターの壁にウスナビの故郷ドミニカのビーチそっくりの絵を描いてくれたのです。
よっぽどのアフォでなければ、予告覚えていれば察しつくと思うんすが
予告で『子供たち』に海辺のビーチを背景に語るのは『現在』のウスナビ
でもって海辺のビーチに見えるのは『よく出来たグラフィックアート』で、アレはウスナビの店のカウンターの壁の『絵』です。
じゃぁウスナビが語りかけている4人の子供は?つーとヴァネッサとの子供
結局ウスナビは故郷に帰らずワシントンハイツに残り、ヴァネッサの店と自分の店を両立させ、子供も育ててハッピーエンド…つーアレなのです。
ま~、ミュージカルでバッドエンディングだったらおかしいですからね…
こんな中に観に行った映画だったんで、エンドロール中に退場してしまうお客さんも多くいたんすが
エンドロールで立ったらイカんのですよ(爆)
エンドロール後に、アイスクリームのキッチンカーが故障して、ピアグラ売りのかき氷の屋台はバカ売れする様が映し出されます。
ピラグラ売りのおじさんが、キッチンカーのオーナーに、かき氷差し入れする所で映画は終わるのです。
…つーワケで、この映画
コロナ禍でもガンバればハッピーエンドが来るんだって事を信じたい人。
出稼ぎじゃーないすが故郷は遠いけど、自分の人生置かれた場所で咲くのも悪くないよねと思ってる人。
ダンスと音楽が好きな人には向いてるのではないでしょうか。
ブログ主的に、エンドロールの後に映画おわるんじゃないよ、って映画で好みなのは、ハッピーエンドというよりも
『バイス』の様に頭を使うヒネリと予備知識が必要な映画の方でございます。