アマヤドリ -370ページ目

『暗いところで待ち合わせ』乙一


著者: 乙一
タイトル: 暗いところで待ち合わせ

目の見えないミチルの部屋へ殺人の容疑で追われ大石が身を潜める。
お互い、存在に気付かれないように、気付いていることに気付かれないようにという探りあいの奇妙な共同生活を続けていくうちに二人は自分の人生について考えてゆく。


これも友人の勧めで知った作家。ちょっと変わった作風だと聞いていたが読みにくいことはまったくなかった。
繊細な心理描写や救いの光がその心理を照らすところなど、どんどん読む手が早くなってしまった。

世間とは無関係に、たった一人で生きてゆこう、一人なら孤独じゃないから。
そう思うことは誰しもあるのかもしれない。私などちょっと寂しかったり心が暗かったりすると一人部屋にたたずみこのままゆっくり崩壊してゆくのだろうかと気持ちが弱くなることもある。
そんな主人公二人の恐れや痛みはいつの間にか自分に重ね合わせられていた。

しかし、その薄闇の向こうには本人たちにも気付かないくらいの切望が燃えている。目が眩んでいる本人たちには気付かないような、繊細で押し隠された輝き。それは脆いみたいに見えるけれど、すごく崇高な精神に守られてる。
その輝きが触れ合い二人を温めてゆく過程が本当に救われるような気持ちだった。

独特な世界観を持った作家なのかもしれない。
他書も読んでみたくなった。



【追記】
すがすがしい作品と重たい作品を書き分けることで“白の乙一”“黒の乙一”と呼び分けられているらしい。あとがきが面白いことでも有名らしいので、後で読んでみよう。


TRACKBACK
にいなさん の言う通り、本当に“優しい物語”。文章も優しい。
友人は“黒の乙一”しか読んだことがないらしく、どろどろしていて怖かったといっていた。そちらも是非読みたい。
maさん にもトラックバックさせていただきました。
こちらのブログ によると、映画化のお話もあるとのこと。ミチルは誰がやるんだろう…。


掌の三日月

私の求めていることはそんなに難しいことではないと思うんだけどなあ。
そんなに高望みをしているつもりもない。
ただひとつ。
ごくごくあたりまえの事。
本当にささやかな事。

それがうまくわかってもらえないと呆然としてしまう。
足元が透明な下敷きにすりかわってしまったみたいに。

何だったんだろう、とまるで目の前の空気に問い掛けるように思う。
私の信じていたものはなんだったんだろう。

そしてまた否定する。

じわじわと足の下から砂が逃げていく。まるでくすぐるかのように。
ちりちりと尖っていく足元を感じながらそれでも私は砂を踏みしめる。

大丈夫。
そうやって、ちゃんと受け止めてゆける。そうしてから判断しよう、と。
露わになったその新しい砂の冷たさに、私は判断力を失っているだけかもしれない。
しっかり踏みしめて、温めてみよう。それから考えても遅くはないんじゃないかな?


そう言い聞かせて、それはうまく機能してきたと思っている。



でもどうしてこんなに掌は強張っているんだろう?

36.7℃

リハーサルの合間にジョナサンでご飯。
…と思ったらお金がないじゃないの…。
たくさん食べたかったけど我慢してハニートーストとオレンジジュースを注文。ちゃんと足りるかなぁ…と少しどきどきしている。

斜め向かいに赤ちゃんを連れたお母さんがいる。
赤ちゃんにヨーグルトを食べさせたり、目を合わせて笑いあったりしていてついこちらも微笑んでしまう。
ヨーグルト、おいしいかい。足をぱたぱたさせる赤ちゃんにアイコンタクト。ぱたぱたがふと止まり、また強くなる。そうか、おいしいのか。
何だか私も満足な気持ちになってしまう。

子供はアイコンタクトが通じやすい。試しにものを食べてる子供と目を合わせて「美味しい?」ってココロの中で話し掛けてみてください。大抵、ウン、と頷いてくれるから。


今度は外を一緒に見ている。
道路に面しているから楽しいだろう。ガラスをぺたぺた叩くから手跡だらけになっている。



こんなに人はたくさんいるのに、視線を交わして微笑みあえる人がどのくらいいるだろう。
一緒にいて心があったかくなったり安心できる人が。

色んなものを求めて生きているけれど、最後に私が思い浮べる本当にほしかったものは一体何だろうか。

片道切符












たくさんのアカリ。
『ラスト・クリスマス』を
口づさむ度に
景色がにじんだっけ。

もう、
それは
私だけの妄想

ピンクのラジオ

終わってしまった恋の夢を見た。
まだなんとかできると、まだ想ってくれていると、甘い希望が消せないでいるのかな。

現実はもっとドライで、砂漠に忘れられた骨のように、もう何の痕跡もないのかもしれない。匂いもなく、味もなく。

それとも逆?
ルソーの密林の絵みたいに湿った息をひそめながら目をきらきらさせているのかしら。
蔦や大型の蝶が舞うジャングル。


それが現実だよとあなたはいったけど、私はまだ夢のなかにいる。
まだ私は特別な場所にいると、まだ私の記憶はあの小さい部屋にあると、

あなたはむりやりそれを違う誰かに明け渡そうとしているだけなのだと…

そう思いたくて仕方がない。



きっとまた夢を見る。