とっても単純なこと
ここの豆大福はとても人気があるので予約をしないと買えない。事務所でとっておきの手土産にいつも使われる有名なお店みたい。
午前中会社を少し抜け出して予約の電話をし、お昼休みにてくてく歩いて取りに行った。
10コ入りの箱2つで5167円。結構する。お使いの時にはあまり値段を気にしていなかったのでちょっとびっくりしたが、本当にこれは美味しいので喜んでくれたらいいなと思う。
一箱はお礼で、もう一箱は家族へ。
特に父はあんこものが大好きで、前から美味しいんだよーって自慢していたので食べてもらうのだ。
こうやって誰かの喜ぶ顔を想像しながらお土産を持って帰るのって素敵なことだな、と幸せに浸る。
あぁ、
今急に思った。
私は与えたかったんだなぁ。
ずっと出し惜しみをしていたから、私は、今与えたくて仕方がないんだ。
そう思ったら少し涙が出そうになった。
ハザードランプ
ちょっと遅めに起きて、でも洗濯をして干して…でもやっぱり今日はさぼっちゃおう。
そんな感じに始まった今日一日。
あっという間に夕方だ。
今週末からは連休だからそんなに「お休みが終わっちゃった…」っていう寂しさがない。
島田荘司の『サテンのマーメイド』を読んだ。
アメリカのハードボイルド小説のようだった。
低いうなりをたてる車の音を聞くたびに、迎えにきてくれたんじゃないかと耳を澄ます。
そんなわけないのに。
物干し竿にもたれて、少し遠くを眺める。
あそこらへんかな、おうちは。
そこから私を迎えに来てくれる、道筋を想像する。
多分もう、こんな距離どころじゃあないんだろうな。
誰もいないおうちは広すぎて風の音だけが響く。それからこうやってキーを打つ音だけ。
何度もメールを読み返したりすることをもうやめなければいけない。
…いや、やめなくてもいい。好きなだけ私はそれに集中する。
多分感情の触れ幅が大きすぎたのだ。だから、その激しい感情が抜けないだけ。
憎しみも、いとしい気持ちも、私にはもう判別がつかなかったのかもしれない。
でももう伸ばされてしまったゴムのように、それ以上のなにかをきっと心待ちにしてしまう。
それか、もう全く別の。
すごく単純なんだ。
たぶん私の考えているようなことではなくて。
たぶん私の恐れているようなことなのだろう。

- 著者: 島田 荘司
- タイトル: サテンのマーメイド
グアム3日目⑤
夜は今日のツアーに組み込まれているレストランへ。
いかにも南国のレストランという感じ。
コースももうツアーで決まっている。にこにこした店員さんが運んできたスペアリブがすごくおっきくてびっくりする。
おかしくてひとしきり笑う。大きすぎるよ、これ。どんな食欲なの私たち!
写真で分かるだろうか。横の長さは、手をおっきく開いて左右繋げたよりも大きい。雪男の足跡みたいだ。とてもひとり分とは思えない。
それに、ご飯茶碗一杯分くらいあるマッシュド・ポテトがついている。これは少しにんにくの香りがして美味しい。
付け合せにトウモロコシが1本。
こんなにいっぱいを全部食べられる普通の女の子がいるのだろうか。
私はかなり食べられるほうだけれど、ちょっと全部は無理だった。量にも問題があるけれどやっぱり味に飽きてしまってそれ以上食べられなくなる。
お肉は2/3、ポテトは2/5くらいは食べただろうか。
最後にデザートが出る。全部は食べられない。
お店を出て腹ごなしに小さなマーケットに行く。
友達はつるつるの生地のドレスを買う。夕日に似合いそうだね。私は帽子。
友達は婚約者にお土産を探していて、携帯のストラップを選んだ。いいなあ、とちょっと胸が痛む。いちいち、なんなのよと思いながらも。
お米に文字を書いて、それを閉じ込めるもの。店員さんが器用に文字を書いてぴったりと蓋をし、完成。ひとは小さいものが好きだな、何故か。
夜のDFSギャラリア。
たくさん遊びを詰め込んだこの旅。
明日はとうとう帰国なんだ…やっぱりそう考えると寂しかった。
帰るのがこわい気も、やっぱりする。
明日はヘリコプターで恋人岬の真上を飛ぶ。
グアム3日目④
お風呂に入って荷物をまとめる。
何しろ明日は帰るのだ。まだまだと思っていたのに、3日目が過ぎようとしている。
帰れるんだ。でもこの毎日がずうっと続いてもいいな。あの海岸を散歩したりもう日焼けも気にせずに海に浮かんだり草原に座ってフラッペを飲んだり。
そんなのも、いいな。
夕日を二人で眺める。目に焼き付けるようにして。
またこようね。今度はダイビングや…英語も話して、それから浜辺でも遊ばなきゃ。
お互い荷物を整理したら次はアンダーウォーターワールド(水族館)へ。
水のトンネルが長い。大きい。綺麗…品川アクアスタジアムを思い出す。ねえ、もしここに一緒にきたらあなたはどんな話をしてくれるんだろう。
面白い顔のさかな。大きなエイ。
海亀や、シーラカンスみたいな大きな魚。
ゆっくり泳いでいる。水の中の魚の肌は、やっぱり乾いているみたいに見える。飛んでる。薄暗い水の中からこちらはどんな風に見えているの?
青い光にてらされたくらげ。
うつぼはちょっと気持ちが悪かった。
ニモもいた。小さくて可愛い。こいつらはイソギンチャクから、一生に何時間と離れて暮らす事はないそうだ。へえ。
水流に一本の指がゆらゆらと折れ曲がっちゃってるひとで。
ハリセンボンは瞳が綺麗だった。割れる寸前のシャボン玉の表面を虹が走るみたいな色。
うっとり見つめた。怒って針を出している所も見たかったけれど。
今日は水三昧だね、と笑う。
水を見ていると気持ちが落ち着く。映しとってくれるみたいに。
グアム3日目③
船は少しまた移動してポイントにくる。そこでしばらく止まり、シュノーケリング体験をする。
友達はやっぱりやれないので、初めひとりで潜るのは寂しく思えて断わろうとした。
だけどみんなあんまり楽しそうに海に入ってゆくのでやっぱりやることにする。
足ヒレをつけて、メガネと口に咥えるやつを付けて貰って海へ。
あったかい。綺麗な水。
ソーセージを貰い、これを魚にやるんだよ、と教えてもらう。
カップルたちは気にならなくなる。
顔を水につけて息をしようとするができない。心臓がどきどきしちゃって、慌てちゃう。
そう、私、水が苦手なのだ。ずっと気づかなかったけれど、息継ぎも上手じゃないみたい。水の中で息が吐けないからだんだん空気が吸えなくなって苦しくなってしまう。だから25mくらいなら息継ぎしないで泳いじゃう。お風呂の時にもシャワーを頭から浴びていると冷静に呼吸をすることができない。なぜか鼓動が激しくなる。
そんなわけで顔に水がついた状態で呼吸をすることに慣れるまで少し時間がかかった。
でもそれに慣れたら最高だった。
沢山の魚達は私の手から餌を食べる。遥か底まで見えるあおい世界。あの水族館で見た水中が今は何も隔てることなく目の前にある。
すごいきれい…ともうそんな普通の感想しか出てこない。ずっとそれをつぶやきながらくまなくそれを目に焼き付けようとする。
きっと水中だから誰にも聞こえないと思っていたそのつぶやきは、シュノーケリングの咥えてる筒から全部漏れていたのだろう。ちょっと恥ずかしいかもしれない。
底に潜りたいくらい綺麗。しかしライフジャケットを着せられてしまったので潜る事が出来ない。
近くの男の子が3mくらい潜ってまた戻ってきていて羨ましかった。
ちょっとでも水中に潜って水面を見てみたかった。でもいくらばたばたしてもラッコみたいに仰向けになることしか出来なくてやっぱり沈む事はできなかった。
そんな私の様子を友達が船から写真に撮ってくれた。
なんだかお尻ばっかりぷかぷか浮いていて変。
水面近くを5匹でずっと泳いでいるあおい魚が綺麗だった。
小さい熱帯魚に混ざって大きい魚が1匹だけいた。足ひれがついている私はそれを一生懸命おいかけた。
なかなか上がりたくなかった。
船から上がる時に、またマーク・ハントみたいな人が足ヒレを外してくれた。
その次はバナナボートに乗る。
またひとりだよ、と思いつつもわくわく。一番後ろに乗り込んだらひとつ前にいるカップルが「バナナボートって後ろのほうが怖いんだって」と話している。
そんな。
不安が襲った途端船はスタート。
すごい揺れ。これ、握力がある私だから落ちないでいられるけど握力20くらいの女の子や子供だったら落ちてしまうんじゃないだろうか。
誰か落ちたりするのかな。私、わああって落ちてみようかな、助けられるの恥ずかしいだろうか。でも、今やらなきゃいつやるんだ、やれ、やってしまえってば。やっぱり誰も落ちないな。どうしよう。落ちる人なんかいないんだろうか。色んな事を考える。そのくらいハイテンションなスピードなのだ。
縦揺れがすごかった。波がびゅんびゅん後ろに走ってゆく。このまま港まで連れて行ってくれたらいいのに、と、掴んでいる手がもう限界なのに思う。
怖いよお。でもすっごい楽しい。
わーとか色々言いたいけど心の中だけで我慢する。
空が高い。ひかりがあふれていてもう全部、吸い込む。
へとへとになりながら海を後にする。
楽しめた?と聞くと友達がうなずく。イルカに逢えたことがやっぱりとても嬉しかったみたいだ。よかった。よかったね。
私も素敵な体験をすることができた。今度グアムに来る時には、と私は友達に言う。今度はあの海に潜って、イルカと一緒に泳ごうね。島巡りも今度は滝を見に行ったりしよう。






