グアム3日目②
海は綺麗だった。友達がおとなしく座っているから、私もおとなしく波を眺める。
海の上を滑り出すとその静かな事にほっとする。
入り江を少し出たところで船はかなり揺れ、気持ちが悪くなるんじゃないかと怖くなった。
座っていられないから立ってうろうろする。なるべく水平を保とうと挙動不審になるが人の目は気にしていられない。
船にはカップルがいっぱいだった。
その中にとても可愛い女の子がいた。可愛いというか、私が好きな感じの。髪は真っ直ぐで短くて、印象的な瞳をしている。遠い水平線を映しているような…でも凛としてる。
彼は山崎トオルをとても男らしくした感じで、たまに彼女の頭をくしゃっと撫でるしぐさが微笑ましい。
水面を見て、遠ざかる港や入り江や近づく崖を見て、ずっともの思いにふけっていた。
時折友達が私を見る。
きっと、ばれているのだ。
イルカポイントに着くと船はエンジンを止めて漂う。
静かだ。波が船底に当たってぴちゃぴちゃいう音が聞こえる。あとは風の音。二人で目を凝らしてイルカを探す。
やがて誰かが騒ぎ、前方にイルカの背びれが見えるようになる。二人でたまらずに船首に駆け寄る。
イルカは6頭くらいいたんだろうか。お互い戯れながら波間を見え隠れする。背びれが見えるたびに船からは歓声があがる。いつのまにかもう一隻船が近くにいた。
イルカって笑ってるみたいに見える。ふざけて、私達を喜ばそうとしてくれていたずらっこのように笑ってる。太陽を浴びてつるつるに光ってる。
友達はすこし涙ぐみながら一生懸命写真を撮っている。
イルカは次第に近づいてきて私達の船の真下を通って、どこかに行ってしまった。
毎日こうして人がくる事を分かっていて、イルカもここに来てくれているんだろうか。ただのテリトリー内の巡回の時間なんだろうか。
でもやっぱりちゃんと逢いに…姿を見せに来てくれているように見えた。
余韻にひたって何も話さない友達の隣に座って私も色々考える。
日本はどっちだろう。
日本からすごく離れた所にいて、今すぐそこにかけつけられないっていうことを考えた。
海があんなに広くて、あの雲よりも大分高い所をぐんぐん飛んでここに来た事を思った。
グアム3日目①
夢を見た。あのひとの夢。
グアムから帰ると、相談していた友達から沢山メールが入っている。
彼が泣きながら弁解していたとか、綺麗な人だから手元に置いておきたいけど、と私のことを言っていたとか(“綺麗なひと”って…我ながら冷や汗が出る。夢だから許してください)。
そして私が年をとってゆくことについてゆけない、という内容らしい。
どうしてそれを私と話せないのだろうと悲しく思う。
彼の家に行き、話を聞いたよ、というと彼は泣き出す。
次第に彼は母になる。
あなたはまだ若いからいいけれど、お母さんはこれからやりたいこともなくて満足な生活はないんだ、と言う。
それは八つ当たりであって理由にはならないんじゃないの?自分を変えることはできるでしょうと私は言う。
お客さんがきて邪魔をされ最後まで話すことは出来なかった。
少し目が醒め、夢を反芻しながらうとうとしたらまた夢を見る。
友達から私の友達があなたの彼に合コンに誘われたからお知らせしておくね、という内容。
なんて短絡的…というか。安直なこころなんだ。
7:30に起床。爽やかだけれどくもり空が広がっている。
友達が朝ご飯を作ってくれる。私もスープを温めたりパンを焼いたりミルクティーを淹れたり。
朝ご飯を食べながら軽いスコールを眺める。静かに、いつのまにか始まったスコール。
10時にDFSギャラリアへチケットを取りに行く。今日の受付の人とは英語でお話をする。単語しか出てこないけれど。
DFSギャラリアで買い物。開店前は軽く列が出来ている。
友達はレスポの鞄を一生懸命見ていたけれど結局買うのはやめたみたい。昨日の大きなマーケットにあったグアム限定の柄のものが欲しかったらしいのだが、どうやらグアム限定というよりはあのお店の限定品だったらしい。ここにはなかった。残念そう。
私も友達も高いブランド品やお化粧品には興味がなかったし頼まれ事もなかったのでこまごまとしたものを見て回る。
雑貨屋さんでハイビスカスティーや、薄い木で作った鍋敷きとかバスソルトを買う。
3日目にしてやっと硬貨の使い方も分かってくる。
友達とおそろいのTシャツを選んで買い、私はもうひとつTシャツを買った。日本で買うより少し安い。
12:50分のイルカツアーの集合のためにバスに乗り、DFSギャラリアを後にする。
でも乗り込んだバスが全く逆方向に走り始める。ちゃんとガイドのお兄さんの言ったとおりのバスに乗ったのに。日本人のガイドさんだから聞き間違いという事もない。
おかしいね、と不安になってドライバーに訊ねると私達のホテルには行かないとの事。またDFSギャラリアに舞い戻る。
戻るとそのバスには他にも間違えて乗せられた女の子がいてガイドのお兄さんに詰め寄っている。だってその女の子とはかなり仲良くしていて、バスのステップにその子を送り出したのは自分なのだ。
「なんであっちに乗っちゃったんですか?」とお兄さんは完全に責任逃れ。
私達も次の時間が迫っているのでお兄さんをちょっと怒ると「ここのバスはほら、似てるから間違えやすいんですよね」と謝る気配はまったくない。
「それを間違えなく乗せるのがお兄さんの仕事でしょう」と言うと黙っちゃった。言い訳するから怒られちゃうんだよ、と思う。
10分前にホテルに着き、大慌てで準備、待ち合わせにはぎりぎり間に合った。
待ちに待ったイルカツアー。
友達は何年か前にやはりグアムにイルカを見に来たのに逢えず、それ以来ずっと私に「イルカを見にグアムに行こう」としつこく(?)言っていたのだ。
だから今回の旅の主目的はこのイルカツアー。
本当ならイルカと一緒に泳ぎたいのだが…結婚を控え、しかも肌の弱い友人は日焼けをすることができないので船からのイルカウォッチングツアーに参加する事にした。
船は不安だった。乗り物には弱いし、船酔いをした経験があったから。大きな船でも気持ちが悪くなるのにイルカウォッチングの小さな船はきっととても揺れるだろう。
酔い止めの薬を飲んで出かける。
足元におちるまちの灯
フラフラになりながら家路につく。
途中の電車では何度も目覚めながら深く眠った。
ハナミズキが咲いているな、と思いながら家へ。
午後1時ごろから今まで寝る。
目覚めたから少し有意義にすごそう。
シャワーを浴びてすっきりして…
木曜日も金曜日もひとに会った。そして今日土曜日はひとと別れてあとは寝ていた。
明日は自分のための何かをしよう。
レッスンに行き映画を見たり…そういえばTSUTAYAのカード更新にも行かなきゃいけないしグアムの写真をプリントアウトして友人に渡さなければいけないし。
少し動こう。
ものすごい集中力だよね、と友達に言われた。私の踊りに対するなにか上り詰めたものもそうだけれど、恋愛やなにもかもについて、一点に注ぎ込むその思い入れのことを。昇華させないと少し恐い気がするな、と言われた。
自分でも感じていたことだったのですこしひやりとした。
私のこのどこかで絶えずぼんぼんもえている激しさのことを、たぶんこの友人が一番よく知っているだろう。
ピン・スポット
教えの前にはいつもここで気持ちを落ち着ける。
子供たちに会う準備。
精一杯の前の静けさみたいなものを取り戻す。
一日に2つ仕事があると一つ目がもうギリギリになる。気持ち的にも時間的にも。でも自分がそうしてやり繰りしていきたいんだから頑張るしかない。もう一分一秒を争って仕事を仕上げ、事務所をでると早足で駅に向かう。
こんなふうにあたたかい日には汗をかいてしまうくらい。
だからこんな風に一息つかないとせかせかを子供の場所に持ち込んでしまうことになる。
小休止。
ぼおっとしたりレッスンを組み立てたり他のことを想ったり。
昨日は前の職場でお世話になった人と食事をした。またそばクレープを食べた。昨日は原宿じゃなくて新宿だったけれど。
色んな話をして、少し毒気が抜けたかな。水曜日一日うちにいて煮詰まっていた自分が軽くなった。
浮上したりまた墜落したり、それを繰り返すよ、とその人も言った。でも一緒に頑張ろうって笑って約束する。
ごくまともな自分でいられることが自然に感じた。
でもそこに私の幸せのすべてがあるわけじゃない。わかっているから求めてしまう。これに決着がつかなければ私は進むわけにはいかない。自分が納得したいのだ。
何だかサムライみたいだね、と言われた。にこにこ可愛く笑っているけどあなたは武士みたいだ、と。
自分でも少しそう思う。
私はあのひとに、というよりは自分のこの気持ちに忠義を尽くしているのだ。それが私の大切なひととのかかわり方だから。
だから、それはひとりで十分なのだ。
相反するとても流動的で自由で手のつけられない私もいる。
これは血だ。
孤高から見下ろしたりもう泥にはいつくばってどうしようもなくもがいたり。
痛いくらい無垢だったりこうしてサムライみたいに曲がらなかったり。
高潔だったり自堕落だったり。
手におえない私の手綱を握りながら私は世間にもちゃんと目を配らなきゃいけないことにたまにあっぷあっぷする。
やれやれ。
この技術はいつ身につけるべきものだったんだろうな?本当にこれが致命傷にならずに済んだのは私が踊りをみつけたからだ、きっと。
もっと胸いっぱい吸い込まなきゃ。
ふかく、ふかく。
ジェットコースター電車
つまりジェットコースターのようになっている。
スピードがないせいか怖くはない。ただがくがく首が揺られるしいちいち上下に備えて心構えをするから疲れる。
天井がかなり暗かった。
低いから前の人の頭で前方は見えない。狭い。
電車の中にはほのかな連帯感がある。