求めない手も
本当にどん底のところにいても、必ずなんとかなる。必ず誰かが手を差し伸べてくれて浮かぶことができる。
と、友達は4年前を思い返しながら言った。
私には会ったこともないのにとても懐かしいひとであり、会ったこともないのに私の踊りを楽しみにしていてくれたひと。
今でも舞台の前にはそのひとのことばを大切に噛み締める。呪文みたいに、お守りみたいに身体に纏ってゆく。
彼女にとっては、私のような甘い感傷いっぱいの思い出ではなく、しんと重みを持ち生身で生きている、現実。時間すら狂わせるような。
逆に、
彼女は言った。
逆に、誰もそこから持ち上げてくれなかったら私はたぶん今どこにもいないよね。
うん。
そのことばを聞いて、体が少し冷えた。
どれだけぎりぎりのところにいたのか、私は知らない。
私の想像の範囲はものすごく狭くて、現実の入り込む隙間すらほかの甘い妄想に侵食されてる。
だから。
私にはその本当の意味はわからないのかもしれない、
と、
正直に言うしかなかった。
今はまだ。
でも
その時私はどんなふうに
世界をみるようになるんだろう。
そこに、何か糸のようなものはちゃんと降りてくるのかな。
ミントティー
どうしてだかとても静かな気持ち。
どうしたんだろうな。
別に何かとても幸せなことがあるわけでもないのに。かといってつらいことは特にないのだけれど。
なぜ満たされてるんだろう?
高いところからたくさんの灯りを見たからかもしれない。
本を読んだからかも。
でも、本当のところはどうしてだかわからないな。
こんな風に静かな気持ちでたくさんのひとの中にいると、とても、この時間や存在がやわらかくてかけがえのないことのように思える。
私がずっと信じてきたものは、ほんの表層のものだったとわかってしまったのに。
ずっとわかっていたのかもしれない。
たぶんわかってたな。
そして変わるのは、もっと別のところかと思っていた。
それともこれはただ、舞台みたいに。お芝居みたいに。
限られた時間、
ほんとうじゃない場所だからなんだろうか。
とおいところでなにかを、
ほんとうは放棄しているのだとしたら。
違うか。
私はたぶんずっとこんなふうだったんだ。
- 石田 衣良
- 娼年
ちりばめる。
昨日は高いところから東京を見渡した。
湿気が高いせいか遠くまでみることはできなかった。
遠くの東京タワーを目安に六本木ヒルズを探す。
蒼い照明が見えなかったからなかなか探すことが出来なかった。
日が落ちるとともに街の電気が明るく灯ってきて風景は少しはっきりする。
車の長い列。
タワークレーンが変な位置についてるね、と笑ったり。
空がひくい。
街の明かりが直接映ってる。
ガラスのぎりぎりに立って外に渦巻く風の音を想像する。
そしてそれとともに、ブランコのことをまた想う。
好奇心にかられて、光に近づいてしまうんじゃないかというおそれ。
そんなこと、あるわけないのに。
こんなにたくさんの建物、
いつのまに建てたんだろう。
もし今ここが全部更地になってしまったとしたら、
ここまでに復興する元気が今の私たちにあるかな。
小さな虫がガラスの外にとまった。
こんな小さいのに、どれだけ長い旅をしてここまできたんだろうね、と話す。
それとも部屋にいて、初めて外に出てみたのかもしれないね、と。
やばいよ。高すぎるって、って。
あんまり高くて、
湿度も高くて、
ほんとうのことじゃないみたいだった。
ぶらんこ乗り
いしいしんじの『ぶらんこ乗り』を読んだ。
本当は『ポーの話』を読んでみたかったのだけれどまだそれは文庫本になっていなくて、そのときの私は文庫本が読みたかったから。
最近仲良くなったひとが小さい頃にぶらんこをこぐのが上手だったと言った。
ぶらんこのくさりに腕をからませて、揺られながらくるくると他の方向に体をよじったり、でんぐり返しをする。
友達に、あれやってよ、って言われてぶらんこの技を見せながらきっといつかサーカスとかのひとからスカウトが来ると信じていたそうだ。
私はぶらんこが恐かった。
自分でこぐ分にはいい。
でも背中を押されることが物凄く恐かった。
箱ぶらんこもそう。
友達がこぐ箱ぶらんこには、もう恐くてこわくて乗っていられなかった。
少しでも友達がぐん、と加速をつけるとかならず途中で飛び降りた。
こわい、なんて知られたくなかった。
その当時の私は男の子みんなに恐がられているような、女の子みんなに頼られているような、おてんばな子供だったから。恐いよ、って冗談にしか聞こえないようにわざと言って飛び降りた。
本当は心臓がどくんと痛いくらいだった。
恐いなんていやだったからひとりきりになった時に箱ぶらんこにのる練習をした。やっぱり恐くはなかった。がちゃん、と箱ぶらんこが潰れちゃいそうに勢いをつけても。
きっと私はすべてを自分で把握したいのだろう。
ジェットコースターが恐いのもたぶん同じ理由。
ぶらんこをこいでいると、とてつもなく高く自分の体が跳ね上がっていくことにどきどきする。
振れ幅がどんどん増して、両端の点で止まる一瞬が長くなる。
私が呼吸をしなおすのを待って。
ふたたび空が遠退く。
空気に放り出されて私は世界でひとり、自由になる。
そのうち自分がつくりだした風のなかを往復しながら、私はだんだん恐くなる。
ほかでもないこの足が空気をかいて空にのぼってゆく繰り返しは、まるで誰かに急かされているみたいに。
まるで誰かに引き寄せられていくみたいに。
脅迫されているみたいにやめられなくなる。
どきどきのその際限まで、意志とは裏腹に挑戦してしまいそうで。
どうしてかこの、真っ白くなるくらいくさりをぎゅっと握った手を簡単に離してみようと思いついてしまいそうで、
恐くなる。
いまでもそうだ。
ときどき色んなことが。
- いしい しんじ
- ぶらんこ乗り
- いしい しんじ
- ポーの話
クロアチア戦
なんだろ?
こないだより熱気が低かったような…
終電に間に合うように途中退散したんだけど、友達が結果をメールしてくれた。
引き分け。
残念だなぁ。
何が残念って、ちょっとやはり日本のプレーはあやしすぎる、あやうすぎる、というところ。
世界の上位チームのレベルに近づくのはもうちょっと先なのかな…何が悪いんだろう。もっと選手たちが世界でもまれたらいいのかな。
クロアチアもあの刺すような鋭さがなかった。その隙をつけたらよかったのになぁ。あたふたしすぎ。
でも今日はちょっとサントスが頑張ってた。
ブラジル戦は胸を借りるつもりで頑張って燃え尽きてほしい。そこにしか結果はついてこないもんね!
日本、頑張って!

