ミントティー
どうしてだかとても静かな気持ち。
どうしたんだろうな。
別に何かとても幸せなことがあるわけでもないのに。かといってつらいことは特にないのだけれど。
なぜ満たされてるんだろう?
高いところからたくさんの灯りを見たからかもしれない。
本を読んだからかも。
でも、本当のところはどうしてだかわからないな。
こんな風に静かな気持ちでたくさんのひとの中にいると、とても、この時間や存在がやわらかくてかけがえのないことのように思える。
私がずっと信じてきたものは、ほんの表層のものだったとわかってしまったのに。
ずっとわかっていたのかもしれない。
たぶんわかってたな。
そして変わるのは、もっと別のところかと思っていた。
それともこれはただ、舞台みたいに。お芝居みたいに。
限られた時間、
ほんとうじゃない場所だからなんだろうか。
とおいところでなにかを、
ほんとうは放棄しているのだとしたら。
違うか。
私はたぶんずっとこんなふうだったんだ。
- 石田 衣良
- 娼年
