つくるものとつくれないもの
久しぶりに、美しさに泣いた。
見ながらずっとしんしんと積もっていた慟哭が、どうしようもなくその瞬間胸を震わせた。それまで気付かなかったくらいに静かに積もっていたのだけれど。
震えて初めて存在に気付いた。
何度か幻をみた。
前に座っているお客さんがぶれてみえたかと思ったら煙みたいな、微かな光の輪郭のだれかが立ち上がって視界から抜けていった。
意識のはしでそれを眺めながら、私は起きながらにして夢をみている、と考えた。
私の思考ではないなにかが空間から降ってきて私の心をとらえ、残像だけのこして去っていった。
次々に。
光の粉をふりまく蝶のように、だけどそれは触れようとすると砕けた。
波に翻弄されるみたいに、だけど私は必死にその光景にしがみつこうとした。さらわれないようにしたのとは違う。揺られてもいいのだから。光り、彷徨う、知らないどこかからわいてきた意識は私の側からはとらえておくことができないのだから。
螢だ、
と思った。
何がそんなにこの心臓を揺さぶったのかわからない。ときどきそういうことがある。
あの、大好きな映画を初めてみたときにも。
そのときと同じだったことを強く意識した。そこにどんなつながりがあるのかわからないまま。
踊り手が、まったくすべてを無垢なまでに燃やしているからかもしれないし、ただ見上げることがそうさせたのかもしれない。
小さな嗚咽がこみあげてきそうになって、だけど体は、まだどこかにつれていかれたままだった。
ほかにもいくつか幻をみた。
ひとつは舞台のまさにそのうえだったと思う。
きっとあの瞬間私はお客さんでもダンサーでもなんでもなくて、ただ生きてるものだった。
どうしてそんなことになっちゃったのかわからない。途中、眠くなりすらしたのに。
眠いのではなかった、と気付いた時に、
あそこに何が君臨していたのかなと、そうつぶやくみたいに思った。
放置プレイ
その性格をかなり幼い頃から発揮していたから私はご飯をあげるとき以外はあまり可愛がらないようにしていた。
つれてきた最初の日は不安で淋しかろうと思ったのでてのひらに包んであげたけど。
なのに、こっちの思惑とはうらはらにだいぶ甘えん坊になってしまった。
まずいな。
今私の部屋がからあげのお部屋だ。
かごには入れないで放っている。糞被害を防ぐために家具やベッドには布をかけて(とはいえ、ご飯を食べた直後くらいにしかしないからあちこち汚れるということはない)。
呼ばれればご飯をあげるけれどそれ以外はほぼ無視。昼間は母がうちにいるがご飯以外ではなるべく顔をみせない。きっと母鳥もそうしていただろうから。
なのに、急に甘えた声を出すし私がしゃべっているとごにょごにょ言う。
今朝なんかご飯をあげようとしたら肩に飛んできてとまった。
あー。
本当にまずいよ。
逃がしてあげたあとも人間の肩にとまったりしたら…
大丈夫かな?
このこはひとりだちできるのかな…?
発表会/キミホ・ハルバートさん
友人のバレエの舞台を見に行った。
わりと強めで個性的な踊りが好きなのだけれど彼女もそういうひとで、併せて醸し出す雰囲気が素敵。動きはわりとさっぱりしているのに空気が少し低いところを流れている。そこが好き。足がきれいだし。
強い瞳も好きだなあ。
ライモンダがとても似合っていた。
バレエスタジオの発表会だったのだけれどそのレベルの高さに驚いた。この年からあんなに踊れて、この先は一体どうなっちゃうの?というくらいだった。
とても気持ち良さそうに踊る。アラベスクがきれい!魅せられた。ドラマティックにみせるやり方も、あの技術をもってすればちっとも目障りじゃない。…と言ってももともと私はある種類のドラマティックさは大好きだし。
バレエ…頑張らなきゃなぁ。最近全然ポアント履いてないや。バーでも履こう。
と、影響される。
バレエもよかったけれど、コンテの作品が本当に素敵だった。
キミホ・ハルバートさんの作品。
前からキミホさんの作品はいいよ、と友達に聞いていたのだけれど、実際見てとても好きだと思った。
なんて高度な振り付けだろう。踊れるひとばかりだからここまでさらりと見ることができるけど…。
さまざまなパターンがステージのうえでまるでパズルみたいに飛びかう。でもそのパターンは決して退屈さを感じさせない。生まれては消え、またいつか押し寄せてくる。はっと心を掴まれた瞬間に次の、別の形が音をつれてくる。
規則が不規則を呼び、いつのまにか終息してる。
新しいかたち。
新しい動きの流れ。
見たことないものがいっぱいあった。
すごい。
シンプルな装置や明かりもよかった。明かりのことは実はあまりよく覚えていない。そのくらいずっと動きを追っていたんだな。
友人の動きとキミホさんのオーラにずっと酔っていたが突然、目に飛び込んできた男性のダンサー。キミホさんのパートナーだったのだけどはじめてみるひと。背が高いひと。かたさがまったくない。粘るみたいな動き。関節がしなって、長くながく軌跡を引く。
誰なのだろう。
バレエのひとではない。
モダンやコンテのひとの動き。もしかしたら…もっとアクロバティックで和っぽい下地の人かも。もしかして韓国とかの舞踊に近いのかな。
男性的な強さにしなやかさを備えたら、最強だなあ…
NDTの時もそう感じて何だか焦ったけど。
あのひとが誰か、今度訊こう。
キミホさん。
気になる。
KATANA
とても好きなダンサー、森山開次さんの舞台があります。
エディンバラの演劇祭で絶賛された作品。
開次さんの真骨頂なかんじの踊りだと思います。
私は金曜に行くのですが、とっても楽しみ。ぞくぞくしてこよう。
東京公演 会場:スパイラルホール
9月1日(金)19:00
9月2日(土)14:00 アフタートークあり
9月2日(土)19:00
9月3日(日)14:00
料金:5000円(全席指定)
名古屋公演 会場:愛知県芸術劇場小ホール
9月6日(水)19:00 アフタートークあり
料金:前売り3800円 当日4000円(全席自由)
広島公演 会場:アステールプラザ多目的スタジオ
9月8日(金)19:00 アフタートークあり
料金:前売り3800円 当日4000円(全席自由)
大阪公演 会場:HEP HALL
9月10日(日)14:00 アフタートークあり
9月11日(月)14:00 アフタートークあり ※追加公演
料金:前売り3800円 当日4000円(全席自由)
札幌公演 会場:札幌市教育文化会館小ホール
9月13日(水)19:00 アフタートークあり
料金:前売り3800円 当日4000円(全席自由)
