つくるものとつくれないもの
久しぶりに、美しさに泣いた。
見ながらずっとしんしんと積もっていた慟哭が、どうしようもなくその瞬間胸を震わせた。それまで気付かなかったくらいに静かに積もっていたのだけれど。
震えて初めて存在に気付いた。
何度か幻をみた。
前に座っているお客さんがぶれてみえたかと思ったら煙みたいな、微かな光の輪郭のだれかが立ち上がって視界から抜けていった。
意識のはしでそれを眺めながら、私は起きながらにして夢をみている、と考えた。
私の思考ではないなにかが空間から降ってきて私の心をとらえ、残像だけのこして去っていった。
次々に。
光の粉をふりまく蝶のように、だけどそれは触れようとすると砕けた。
波に翻弄されるみたいに、だけど私は必死にその光景にしがみつこうとした。さらわれないようにしたのとは違う。揺られてもいいのだから。光り、彷徨う、知らないどこかからわいてきた意識は私の側からはとらえておくことができないのだから。
螢だ、
と思った。
何がそんなにこの心臓を揺さぶったのかわからない。ときどきそういうことがある。
あの、大好きな映画を初めてみたときにも。
そのときと同じだったことを強く意識した。そこにどんなつながりがあるのかわからないまま。
踊り手が、まったくすべてを無垢なまでに燃やしているからかもしれないし、ただ見上げることがそうさせたのかもしれない。
小さな嗚咽がこみあげてきそうになって、だけど体は、まだどこかにつれていかれたままだった。
ほかにもいくつか幻をみた。
ひとつは舞台のまさにそのうえだったと思う。
きっとあの瞬間私はお客さんでもダンサーでもなんでもなくて、ただ生きてるものだった。
どうしてそんなことになっちゃったのかわからない。途中、眠くなりすらしたのに。
眠いのではなかった、と気付いた時に、
あそこに何が君臨していたのかなと、そうつぶやくみたいに思った。