1812.夕暮れ
世界中の何処へ行っても、等しく美しいのは夕暮れの空。その美しさに人はしばし時を忘れるだろう。世の中、確かに美しい物で溢れているが、誰しも心惹かれるのは夕暮れの空だと思う。人生の夕暮れも、実に魅力的である。美しいという範囲を超えて、さまざまな物事が凝縮され、その人を際立たせているのかも知れない。歳をとってみて、想像をはるかに超えた喜びが待っていた。その一つにピアノに向かったときに味わうことのできる、若い時とは違った、とても落ち着いてはいるが、ある種の躍動感に満たされる。音の少ない、小さな音量、しかもゆっくりと。これが、なかなか悪くないのだ。同じ作品でも、全く違う作品の顔が見えて来る。この時を迎えたから知ることが出来た醍醐味なのだろう。