宮川隆泰(1996)『岩崎小彌太―三菱を育てた経営理念』中公新書
後年は日本を代表する資本家として実業界に名を馳せた岩崎小彌太はその青年時代、政治家志望であったことには驚いた。彼は20世紀の初頭、猛学の末、ケンブリッジ大学ベンブロークカレッジに本科学生として入学する。これは、この時代の留学のほとんどが聴講生としての資格で行われていたことを考えれば、非常に稀なことである。また当時のケンブリッジでは教授としてアルフレッド・マーシャルが、学生としてジョン・メイナード・ケインズが席を置いていたという。そういうケンブリッジの中でも特に恵まれた環境にて、この三菱財閥の御曹司が青年期の思想的基盤を築いたということは、彼の経営観を捉える上でも重要なことであろう。そして約3年間の留学生活後、小彌太は日本に帰国する。しかし英気溢れる政治家志望の小彌太に、時代は否応なく経営者としての道を迫ったのだった。而して、実業家としての小彌太がはじめて誕生することになるのだが、その胸には明治特有ともいうべき、青年の理想主義、すなわち日本国家変革への強い想いがあった。これこそが、後に小彌太が掲げる三綱領の第一、「所期奉公」の原点となったといえそうである。
本書により、小彌太のもつ思想的背景と「実業」への心意気を学んだ。
本書により、小彌太のもつ思想的背景と「実業」への心意気を学んだ。
日本歴史を点検する
日本歴史を点検する 新装版 (講談社文庫 し 1-53)/海音寺 潮五郎

¥520
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司馬遼太郎が大先輩の海音寺さんと会談する。
小村寿太郎が当時の政党と藩閥をもって「日本の政治はフィクションとイリュージョンの喧嘩に過ぎない」と評したという。百年経っても大差ない…笑 官僚がんばれ!

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司馬遼太郎(1997)『最後の将軍―徳川慶喜』文春文庫
最後の将軍―徳川慶喜 (文春文庫)/司馬 遼太郎

¥530
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嫌いではないな、と。
生まれながらの貴族で、物の理に通じること誰よりも優れ、その弁たるや四賢候すら凌ぐ。そんな彼が、すべての武士の棟梁たる「将軍職」に就いた。まっとうな時代なら、誰もが彼を賢帝と呼び讃えただろう。だが、その時勢だけが彼の味方をしなかった。時代はもはや幕府の存在を否定しつつあった。そのため、彼はその才能を、世間からみれば卑怯と思えるような権謀術数でしか発揮することができなかった。誰もが彼の才を正等に評価することがなかった。それでもたった一つ、後年にも残る歴史的事業を成し得た。それが大政奉還という史上稀に見る武力闘争のなかった革命事業である。だがそれも、後年に彼の名を轟かすには至らなかった。誰よりも史実に残る自分の名を気にしていた人だったのに…。幸が薄い、といえばそれまでだが、そんな彼を嫌いではないな、と思った。

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嫌いではないな、と。
生まれながらの貴族で、物の理に通じること誰よりも優れ、その弁たるや四賢候すら凌ぐ。そんな彼が、すべての武士の棟梁たる「将軍職」に就いた。まっとうな時代なら、誰もが彼を賢帝と呼び讃えただろう。だが、その時勢だけが彼の味方をしなかった。時代はもはや幕府の存在を否定しつつあった。そのため、彼はその才能を、世間からみれば卑怯と思えるような権謀術数でしか発揮することができなかった。誰もが彼の才を正等に評価することがなかった。それでもたった一つ、後年にも残る歴史的事業を成し得た。それが大政奉還という史上稀に見る武力闘争のなかった革命事業である。だがそれも、後年に彼の名を轟かすには至らなかった。誰よりも史実に残る自分の名を気にしていた人だったのに…。幸が薄い、といえばそれまでだが、そんな彼を嫌いではないな、と思った。
司馬遼太郎(2002)『翔ぶが如く(六)(七)(八)』文春文庫
翔ぶが如く〈6〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

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翔ぶが如く〈7〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

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翔ぶが如く〈8〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

¥570
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ここにきて政府軍・薩軍間における価値観の相違が極値に達している。
価値観ということで考えてみると、薩摩人の精神の根本には「武士道」という価値観がある。古来、日本的封建風土の中で多くの武士の中で「武士道」に生きることこそが美しいとされてきたのだが、それは明治初頭の薩摩人の精神において、「宗教的」といえるまでに大成を見ているようにみえる。その一方、明治政府側の大久保、川路、伊藤らが築かんとする価値観は、日本においては珍奇で新しく、未成熟なものだ。だが、彼らはその新しい価値観こそが日本を国際的な意味での「近代国家」として引き上げる、と確信している。フーシェに対する川路の傾倒もみても明らかであるように、その確信もまた宗教的であるといえる。
このように両者ともに、宗教性すら漂わせた価値観への傾倒がみられる。これにまず驚かされる。更にいえばその彼らの信心深さがもたらした衝突が西南戦争であるのだが、その戦いの序章として本巻で描かれるのは、あまりにも愚鈍な薩軍の姿だ。同情の余地などどこにもないほどに愚直な薩摩人たち。彼らをこれほどまでに鮮烈に描ききった筆者の思いはどこにあるのだろうか。次巻、この長い物語はいよいよ終幕を迎える。

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翔ぶが如く〈7〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

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翔ぶが如く〈8〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

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ここにきて政府軍・薩軍間における価値観の相違が極値に達している。
価値観ということで考えてみると、薩摩人の精神の根本には「武士道」という価値観がある。古来、日本的封建風土の中で多くの武士の中で「武士道」に生きることこそが美しいとされてきたのだが、それは明治初頭の薩摩人の精神において、「宗教的」といえるまでに大成を見ているようにみえる。その一方、明治政府側の大久保、川路、伊藤らが築かんとする価値観は、日本においては珍奇で新しく、未成熟なものだ。だが、彼らはその新しい価値観こそが日本を国際的な意味での「近代国家」として引き上げる、と確信している。フーシェに対する川路の傾倒もみても明らかであるように、その確信もまた宗教的であるといえる。
このように両者ともに、宗教性すら漂わせた価値観への傾倒がみられる。これにまず驚かされる。更にいえばその彼らの信心深さがもたらした衝突が西南戦争であるのだが、その戦いの序章として本巻で描かれるのは、あまりにも愚鈍な薩軍の姿だ。同情の余地などどこにもないほどに愚直な薩摩人たち。彼らをこれほどまでに鮮烈に描ききった筆者の思いはどこにあるのだろうか。次巻、この長い物語はいよいよ終幕を迎える。
