宮川隆泰(1996)『岩崎小彌太―三菱を育てた経営理念』中公新書 | Winterecord

宮川隆泰(1996)『岩崎小彌太―三菱を育てた経営理念』中公新書

 後年は日本を代表する資本家として実業界に名を馳せた岩崎小彌太はその青年時代、政治家志望であったことには驚いた。彼は20世紀の初頭、猛学の末、ケンブリッジ大学ベンブロークカレッジに本科学生として入学する。これは、この時代の留学のほとんどが聴講生としての資格で行われていたことを考えれば、非常に稀なことである。また当時のケンブリッジでは教授としてアルフレッド・マーシャルが、学生としてジョン・メイナード・ケインズが席を置いていたという。そういうケンブリッジの中でも特に恵まれた環境にて、この三菱財閥の御曹司が青年期の思想的基盤を築いたということは、彼の経営観を捉える上でも重要なことであろう。そして約3年間の留学生活後、小彌太は日本に帰国する。しかし英気溢れる政治家志望の小彌太に、時代は否応なく経営者としての道を迫ったのだった。而して、実業家としての小彌太がはじめて誕生することになるのだが、その胸には明治特有ともいうべき、青年の理想主義、すなわち日本国家変革への強い想いがあった。これこそが、後に小彌太が掲げる三綱領の第一、「所期奉公」の原点となったといえそうである。
 本書により、小彌太のもつ思想的背景と「実業」への心意気を学んだ。