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川上弘美(2002)『溺レる』文春文庫

溺レる (文春文庫)/川上 弘美

¥420
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 「合意って言葉には、杓子定規な気分が含まれてる」
 「そう?」
 「そうさ」
 「意味がよくわからない」



 決して憧れない、けれどもどこか懐かしい情欲に「溺レ」た恋愛を描いた短篇集。

 「男は30過ぎてからや。」と、サトウくんがぼやいていたことを思い出した。
 人にはそれぞれ生まれもった個性とか才能が存在する。生まれ育った環境の影響とかとは別の部分、いわば先天的な領域で。そういうところからくる他人との違い、自分らしさっていうのは若いうちはあまり分からないし、見付けにくい。でも男も30越え、40を越えてくると、なだらかに流れる空気の中にうまくその自分らしさを調和することができるみたいだ。そしてそういう、完熟期を迎えた大人たちの恋愛って、時代を超越して変わらない気がする。だから、「懐かしい」と感じたのかもしれない。

藤原和彦(2001)『イスラム過激原理主義―なぜテロに走るのか』中公新書

山崎豊子(1983)『不毛地帯(二)』新潮文庫

不毛地帯 (2)/山崎 豊子

¥820
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 業務本部を統括、近畿商事の常務として彼本来の才能を余すことなく発揮する壱岐。その彼の行動には、かつてのような躊躇いはなくなっていた。すべては「国益にのために尽くす」という彼の生涯通じての理念ゆえなのだ。

 しかし、その理念がために支払われる代償は計りしれなく程に大きく、その途は長く厳しいものであった。
 本巻ラストの悲劇的な顛末に胸が疼いた。彼のすべてが音もなく静かに崩れ落ちていく描写が良い。これから壱岐は、どこへいくのだろうか。



 商社マンとして進化した壱岐さん、さらにかっこよす(´・ω・`)

山崎豊子(1983)『不毛地帯(一)』新潮文庫

不毛地帯 (1)/山崎 豊子

¥860
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 シベリアでの抑留生活を回想する主人公、壱岐。

 圧倒的な不条理が日常にあった経験、それが壱岐にとっての抑留生活であった。人間としての尊厳など、とうの昔に奪われている。それでも、彼が守ろうとしたものは、「軍人としての誇り」であった。彼にとって、それは自らの命より重く、彼の生を支えてきた唯一の理由であったのだ。

 ここまでが本巻の主たる内容である。以後、商社マンとして第二の人生を歩みだした壱岐は、先述した「軍人としての誇り」を削られ続け、失い続けるのだと思う。そこで自己矛盾に駆り立てられた彼は、何を思うだろう。

 強固たる体制支配の在る中で、特異な二つの時代・世界を生き抜く男の葛藤をいかに描くのか、これが本作の見所であるように思う。



 壱岐さん、古き良き武士みたいでかっこよす!(´・ω・`)笑 

エルヴィン・シュレーディンガー(2002)『わが世界観』ちくま学芸文庫