渡辺達彦さんには、Cheer Up!にも創刊時から何度もご登場いただいています。
久しぶりの新作は4曲の配信『Hypnotized and More』です。
いつも英語詞の楽曲がメインであるThe Penelopesですが、今回は一曲日本語詞の「徒花の世」が印象的。
今回はお久しぶりいうこともあり、いくつか質問させていただき渡辺さんからコメントをいただきました。
~渡辺達彦コメント~
…久しぶりのリリースのきっかけは?
前作(「パシフィック・アンプリファイアー」2019年11月)から6年ほど経ってしまいました。かなり時間がかかったという印象になると思いますが、時間がかかった一番の理由は、両親の介護です。家で介護しながら前作と並行してアルバムを作っていたのですが、大変すぎて、とうとう何も出来ない状態になってしまいまして。それで、録音はおろかギターさえ触れない時期が5年ぐらい続いたんです。
それで、これじゃあかん、立て直さないと、となって、親父が徘徊しなくなって来たのを機に、ショートステイ(数日介護施設に預けること)の期間を長くして、アルバムは一旦脇に置いて、4曲ぐらいのミニアルバムを作ることに目標を切り替えたんです。でもそこにアルバム用の曲を持って行くのは避けたかったんですね。フレッシュな気持ちで、最新の自分の音楽を少しでも入れたかったので。
それで、2024年半ばぐらいから録音を頑張って、25年の夏前に何とか完成に漕ぎ着けたんです。でも、リリースを予定してた時期に親父が亡くなり、それでまた延びて。落ち込んで、リリースする気持ちさえ消えかけていたんですが、去年の秋以降に政治が大きく動いて。これで火がついたんです。これはアカンと。
…「徒花の世」が日本語詞で意外でした。今回このような曲を書こうということになさった経緯は?
あの曲が最新の自分の心境ですね。
方向転換、というのではないんです。新しい扉を開けた、という感じです。歌の内容も別に変わってなくて・・・というか、歌詞自体は、実は30年以上前の1stアルバムや2ndアルバムとそんなに変わりはないんですよ(またどこかに歌詞を載せるつもりです)。歳をとって観察眼が多少深くなったかも知れませんが、言いたいこと、書きたいことの根っこは何も変わってないんです。
このような曲を日本語で書こうと思ったのは、やはり日本の政治情勢が非常に危険な状態になって来たからだと思います。平和憲法を改悪して、戦争出来る国にしたいという動きがさらに露骨になって来ましたので。それをお伝えしないと、さすがにもう・・・というところです。
ツイッター(Xとは呼びたくないです)にも最近書きましたが、政治と音楽は地続きだと思ってるんです。いや、音楽は政治から離れたところで鳴らされるべきだ、という考え方もよく目にしますけど、そうやって音楽だけ選り分けて、楽園で鳴ってる風にして行っても、作り手の人としての生き方が顕になるだけで、誰も政治から逃げる事は出来ない、ってことが分かるだけに思えるんです。政治を避けて非政治的になろうとする姿勢も、結局は国民にとっては事態を悪くする政治的なポジションの一つに過ぎないんですよ。生活のあらゆる局面に影響を与える政治というものを、なんでわざわざ丁寧に選り分けて見ない/見せないようにしてるのか、それって好き勝手したい政治家達の思う壺なんじゃない?って思うんですよ。民主主義社会で生きてる訳です。子供じゃないんだから、見てもらいたくないと政治家が思ってることほどしっかり見て行かないと、暮らしが良くならない、平和を保てないと思うんですよ。
だから、こんな危険な時代になってしまって、平和な世界を破壊しようとしてるのは誰か?酷い世の中にして行ってるのは誰?ってところをしっかり見て行こうよ、っていう内容を、今出さないと、って直感的に感じてました。言及しているのは10数年前の時代のことでしたが、リリース寸前に更に酷いことになりましたので、タイムリーだったかも知れません。
社会について書く時はたいてい、権力を持つ者たちに騙されたらあかん、騙されないように常に彼らを警戒・監視して行こうな、というテーマの強調になります。それはやっぱり、戦争体験者の両親を持った人間の宿命で、伝えるのが義務だと考えてるからなんです。父親の生涯を振り返っても、軍国少年が国に騙され、戦争を憎み、国家権力にずっと懐疑的に生きた。そして、一方で平和な時代を享受しつつも、一方では結局、生涯大日本帝国の亡霊から逃げることが出来なかった。それぐらい物凄い軍国主義の洗脳だった訳で。そんな酷い時代に戻しちゃいけないでしょう?
もちろん、そんな歌ばっかり歌いたい訳じゃないんです。今回の4曲に関して言えば、「徒花の世」と「インヴィジブル・ファイアー(Invisible Fire)」は政治に言及してますけど、「ヒプノタイズド(Hypnotized)」と「キープ・イット・シンプル(Keep It Simple)」はラブソングというか、すごくプライベートな内容ですし。それら全部をひっくるめて、The Penelopesの音楽です。英語で歌って来た曲が大半ですが、生まれ育って来た戦後、昭和後期からの日本が凝縮されてると思うんですよ。
…今後の予定や抱負について教えて下さい。
アルバムリリースに向けて頑張りたい、というのが当面の目標ですが、その前に今回のように何曲かずつ出すことになるかも知れません。還暦を迎えて、もうあとどれだけ生きられるか分からないなと実感するようになったので、出来るうちに新しい扉をどんどん開けていきたい、という思いがありまして。数曲ずつ出していく方が、そんな今の自分には合っているのかも知れないです。
実はリリース後、また身内の不幸がありました。最初期のThe Penelopesでギターを弾いてた弟の聡("Evergreen"のリードギターです)がつい先日亡くなったのです。また、伯母もほぼ同時期に亡くなってしまい、正直、また気持ちが沈んでいるのは事実です。ただ、父が亡くなった経験がありましたし、心の準備もなくはなかったので、より決意が固くなったというところでもあります。
ですので、しばらくしたら追悼の意を込めた作品を出すことになるかも知れません。日本語詞の歌も増えると思いますし、コラボとかも出せたらと思っています。
生きている限り作品を作りたい、より良い作品を出して行きたいという気持ち自体は萎えてはいません。

『Hypnotized and More』The Penelopes
01. Hypnotized
02. Invisible Fire
03. Keep It Simple
04. 徒花の世(The World Of Abortive Flowers)
配信開始日:2026年2月1日
配信リンク
https://linkco.re/DeBZs5F3
◆The Penelopes プロフィール
1990年から活動する、ソングライター渡辺達彦を核とするプロジェクト。1992年にポルスプエストレコードによるオムニバスCD”The Birth Of The True”に参加後、93年にデビューアルバム”In A Big Golden Cage”を発表。 以後、国内外のコンピレーションに参加しつつ、アルバムを多数リリース。2010年代以降は音源配信に切り替えて精力的に活動中。本作は2019年11月リリースの”Pacific Amplifier”以来、約6年ぶりの作品となる。
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連載コラム:"Twee Pop A Lula" (トゥイーポップ・ア・ルーラ) - 徒然と綴れ(つれづれとつづれ)(2013年)
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特集 Cheer Up!がお薦めするシンガーソングライター:The Penelopes(2013年)
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