事故を防ぐのは、心の安全から。
心の安全設計室
心の安全コンサルタント
安田伸也です。

わたし達はつい「大丈夫そうだな」とか「元気だな」と相手の表情から判断してしまいます。
でも、本当にそうでしょうか。
潜水士時代、わたしはその思い込みで、仲間を危うく見殺しにするところでした。
今回は、海上保安庁の潜水士として行っていた「磯波訓練」で経験した出来事から、人の心を表情だけで判断する怖さと、普段からコミュニケーションを取る大切さについてお伝えします。
この記事の目次
潜水士時代に行っていた「磯波訓練」
わたしが潜水士時代「磯波訓練」というのをやっていました。
当時、磯釣り客の孤立や磯釣り客が波にさらわれる事故が多く発生しいたんですよね。
磯釣りとは、海辺の岩や島に渡って釣りをすること。
その釣り人が、荒天で波が高くなり、瀬渡し船が迎えに行けなかったり、乗ってきたボートが流されたりして磯場に取り残される事故です。
海上保安庁では「磯釣り海難」とか「孤立者救助」と読んでいました。
その釣り人を救助するための訓練です。
高波の中で行う救助訓練
救助方法は、主にヘリコプターでの吊り上げ救助ですが、安全に救助するためには潜水士が補助する必要があります。
そのため、潜水士が高波の中、磯場に取り付き上陸する。
そんな訓練をしていました。
当時潜水班長だったわたしは、仲間の潜水士数名とボートで岩場へ訓練に向かいました。
その日は、ほどほどのうねりが沖合から入ってきていて、高低差が約3メートルほどのそこそこの磯波がありました。
磯波訓練にはうってつけです。
何度か岩場に取り付き上まで登り、また海上に戻る。
そんな訓練を何度か終えた頃、段々天候が悪化してきました。
波が一段と高くなってきたのです。
仲間の潜水士が渦に巻き込まれた
わたしは、これ以上の訓練は危険と判断して引き上げようとした時の事。
潜水士のひとりが、岩場の下にできた渦に巻き込まれてたのです。
とっさに助けに行こうとしたところ、その潜水士が、渦の中心で笑いながら沈んでいくのが見えたのです。
その潜水士は、私たちの中でも一番素潜りが得意な潜水士です。
その笑い顔を見たわたしは、「さすが余裕だな」と感心して救助に行かずに上がってくるのを待ちました。
しばらくすると、その潜水士が海面に顔を出しこう叫んだのです。
「どうして助けに来てくれなかったんですか!死ぬところだったじゃないですか!」
もう少しで、見殺しにするところでした。
「笑っていたから大丈夫」という思い込み
わたしは、ごめんごめんと謝りながら、
「笑っていたから余裕だと思って助けに行かなかったんだ」
と伝えたところ彼はこう言いました。
「わたしは、怖くなると笑ってしまうんです」
人は表情だけでは分からない
このことから、学んだ事。
人は、その表情からは解らないということ。
悲しそうに見えたからといって、必ずしも落ち込んでいるわけでもない。
逆に、笑っているからといって、元気なわけでもないということです。
見かけだけで判断せずに、相手とコミュニケーションをしっかり取ってケアする。
大切だと思います。
話しやすい人間関係が職場の安全につながる
人は、簡単に心の底にあることは話してくれませんからね。
「こんな事を言うと迷惑になるかもしれない」
「今さらこんな事を訊いたらバカにされるかもしれない」
と気を遣うあまりに、隠してしまうことがあります。
余計な気を遣わず普段から話しやすい人間関係を作る。
それが、より良い職場を作ることに繋がる。
わたしは、そう信じています。
まとめ|「大丈夫そう」に見えても分からない
人の気持ちは、表情だけでは分かりません。
笑っているから大丈夫。
いつもと変わらないから問題ない。
そう決めつけるのではなく、普段から声を掛け、話を聴き、何かあった時に「助けて」「分からない」と言える関係を作っておく。
それは、メンタルヘルスだけではなく、事故を防ぐためにも大切な「心の安全」だと思います。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、身近な人の「大丈夫そう」という見た目だけで判断せず、もう一歩声を掛けてみる切っ掛けになれば嬉しく思います。
筆者プロフィール|安田伸也
心の安全設計室代表・心の安全コンサルタント。元海上保安官・潜水士。海上保安庁に約35年間勤務し、潜水士、巡視船航海士、巡視艇船長などを経験。海難救助、転覆船や沈没船の捜索、領海警備など、3,000件以上の事件・事故に関わってきました。一方、在職中には職場の人間関係やコミュニケーションに悩み、約20年間メンタル不調を繰り返しました。退職後に心理学やコーチングを学び、現在は心の安全コンサルタントとして、安全大会や企業研修で事故防止、心理的安全性、メンタルヘルス、職場コミュニケーションなどをお伝えしています。「自死ゼロ・事故ゼロの世界を創り、笑顔で働く人を増やす」ことを使命に活動しています。



