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 タイトルのシードとは、副題にあるように「人生の目的としあわせが見つかる種」の意味。アメリカの自己啓発書は、ストーリー仕立てのものが少なくないけれど、この本もそれである。ストーリー・テラーでもある主人公の名はジョッシュ。2013年3月初版。

 

 

【解雇予告】
「いいかい、君も知っての通り、我々の仕事に大きな位置を占めるのは情熱だ。情熱があれば、他の誰でも変わり映えはしない ―― 可もなく不可もなく ―― それでは不足なんだ。私にも、我が社にも、お客様にとっても」
「クビですか?」・・・中略・・・。
「いや。・・・中略・・・。まだ君を手放す気にはなれないよ。君には多くのものを投資したからね、すんなり手放すわけにはいかない。君だって、いまあきらめるにはあまりにも多くのものを、我が社につぎ込んだんじゃないかと思う。見たところ、君には休暇が必要だ。そこで、だ」
 マークが言葉を切った。
「君に二週間の休暇を上げよう。これは解雇予告期間だと思ってほしい。私としては、二週間後に解雇するのではなく、君を再雇用したと思っている。再出発と言ってもいい。二週間の有給休暇を使って、本当に、心の底から、情熱を持ってここに残りたいかどうかを決めてほしいんだ。・・・中略・・・。
ここで120パーセントの自分を発揮するか、そうなれる別の場所を見つけるか。できれば、かつての意欲に火がつくような職場をね。いいかい?」
 そういうと、マークは握手のために手を差し出した。
「わかりました」 (p.10-12)
 このような書き出しで、本書の物語は始まっている。
 最高に引き込まれる書き出しである。
 チャンちゃんも「ここは自分の居場所じゃない」と思いつつ、「辞めるまで最低でも3年」と決めていたことがあったけれど、その2年目頃にこの本に出会っていたら、違う決断をしていたかもしれない。

 

 

【とうもろこし畑の迷路の中】
 僕は目を閉じ、どうか行く手をお示しくださいと祈った。
 目を開けると、目の前に、白髪交じりの長い髪に口ひげをはやした、ひょろっとした老農夫がいた。・・・中略・・・。
「もうお手上げです。助けてもらえますか?」
「さあ、どうだろう。まずは、君がどこへ行きたいのか教えてもらえるかな?」
「え? ああ、迷路の出口へ向かっているところです」
答えながら、内心僕は思っていた、変なこときくなあ、そんなの見ればわかるだろう。
「どこへ行くべきかわかっていたら、もうとっくに着いていますよ」
 農夫は大きく息を吸いこむと、微笑んだ。
「ジョッシュ、わしは迷路のことを言っているんじゃない。人生について話しているんだ。君はこの人生でどこへ行くのか、分かっているのかい?」 (p.15-16)
 どこへ行くべきかがわからないからこそ、人生という迷路の中に入っているのに、農夫はややこしい問いかけをしている。
 農夫の意味するところは・・・。

 

 

【目的は、人生を導く究極のナビゲーター】
 農夫が声を張り上げた。
「目的は、人生を導く究極のナビゲーターだ。目的が情熱を呼び、情熱が自信となり、夢を追う力となる。目的のない人生を送るのは、あてどなくさまよう風の中の塵として生きるようなものだ。人生に目的がなければ、君は歩く屍として生者の中をふらつくことになる。だが、目的を見つければ、君はあらゆる力の源を見出すだろう。生きる意味と自分の進むべき道、そして旅路を豊かに彩る情熱が見つかるはずだ」 (p.19)
 チャンちゃんは、農夫の発するこのような回答に既に学生時代に出会っていたけれど、結局のところ、何一つ目的など不明のまま、ダラダラと社会人として生きてしまった。
    《参照》   『本を読む人はなぜ人間的に成長するのか』 ハイブロー武蔵 (総合法令)
              【生きるということは・・・】
              【人生の目的】
 そんな平凡なチャンちゃんと同じ人々は、決して少なくないだろう。

 

 

【一粒の種】
「その目的は、どこで見つかるんですか? ・・・中略・・・ 僕は道に迷っています」
「ならば、もう道に迷うことはない」
 そう言うと、農夫はポケットからひと粒の種を取り出し、僕に手渡した。僕は、手のひらに置かれた種をまじまじと見つめた。 (p.19-20)
 農夫が言わんとしたのは、
 この種をまく場所を見つけるんだ。そうすれば、君の人生の目的もおのずと姿を現すだろう。 (p.21)
「君が目的を探したいと願うなら、目的の方も見つけてもらいたがっているということだ。・・・中略・・・。あきらめるな。君の心とサインに従い、種を撒く場所を見つけるんだ」
 そう言うと、農夫はにっこり微笑んだ。 (p.25)
 農夫が、種を渡したのは、「目的探しを、諦めるな」ということのため? 
 謎めいたまま、喰い付こうとするルアー(疑似餌)が、リールに巻かれてビュンビュン逃げて行くようなこういうストーリーって好きじゃないけど、これって、この手の自己啓発系著作の常套手段である。

 

 

【ユニバース】
 農夫のもとを去って、今度は、大学時代にお世話になった教授のもとを訪ねた。
 すると教授は、このようなことを言った。
「たまたま、素晴らしい記事を目にしてね。天体は音楽を奏でているというんだ。(p.64)
 宇宙(ユニバース)という言葉は、文字通り『ひとつの(ユニ)歌(バース)』という意味なんじゃないかと思ったんだ。我々は、ひとつの歌の中に生きている。
 知ってのとおり、音楽はただ生まれるものじゃない。・・・中略・・・。このひとつの歌が、偉大なる創造主の表現なんだ。
 あらゆる音楽はここにはじまる。音楽の歴史は、私が思っていたものよりも重要なものだったんだよ。音楽は、私の想像を超えた遥かに偉大な目的のために存在するものなんだ」 (p.65)
 「それぞれの人生の目的には、宇宙、即ち生死を超えた魂が関与している」と示唆しているように思える記述だけれど、後続にそのような記述はない。
 「宇宙」という単語は「ひとつの歌」という意味になるという記述を読んで、ポリフォニーを想起したので、この本の主題とは直接関係なさそうだけれどリンク。
    《参照》   『音楽を愛する友へ』 フィッシャー 新潮文庫
              【ポリフォニー : カノンとフーガ】

 アセンション系の著作に馴染んでいる方々は、宇宙の波動環境が変化し、それにつれて地球の周波数が上昇しつつある現在のことは百も承知だろう。
 「宇宙=ひとつの歌≒音楽≒波動」なのだから、もう本を読むことなど止めて、音楽鑑賞三昧の生活にした方がいいかも・・・と思ったりもする。

 

 

【自主性と自由】
 大学時代には、自主性と自由があった。でも働いている時に、そんなものがあったとは思えない。(p.70)
 この本の中で最も感じ入ってしまったのがこの一文。
 大学時代は、自由を享受しながら、さらなる自由を心の底から求めていたものだった。
    《参照》   『途中下車』 高橋文樹 (幻冬舎)
              【男だけ】

 しかしながら社会人になってからというもの、自由などという概念は消え失せ、自主性という用語も、会社の売り上げに絡む目的でしか使うことはなかった。そうなってしまうのは「貨幣経済社会」という社会状況下で生きているからなのである。社会がこのような状況下にあり続けるなら、人々がいくら本質的な自由など求めたところで虚しいことなのである。かといって、それで終わってしまうなら、虚しさの二乗である。
 人生の目的が、大学生時代に希求していたように、「本当に自由な人生・社会を実現すること」であるのなら、その目的は、「脱貨幣経済社会の実現を目指すこと」に一致する。脱貨幣経済社会を実現するのなら、“漸変”では無理だろう。地球に住む多くの人々の意識に同時に変容を強いるには、何事かの“急変”が起きなくてはならない。“地球の大掃除”に類することしか実現の可能性はないだろうと思っている。
    《参照》   『東京直下地震 3年以内震度9』 Chiran (三栄書房) 《前編》
              【大掃除の後】

 しかし、宇宙の叡智は、急変による大清掃によらずとも、素晴らしい社会を実現させる別のシナリオを用意しているかもしれない。
    《参照》   『宇宙パラレルワールドの超しくみ』 サアラ (ヒカルランド) 《後編》
              【マネーフリー社会への意識改革】

 本書のストーリーからは、完全に逸脱したことを書いてしまった。

 

 

【種を撒く場所】
 空港で出会ったジョージとの会話。
「仕事に情熱を注ぎ、目的をもってことを成せば、幸せはおのずとついてくる。探すことはない。幸せの方から君を見つけてくれるんだ」
 信じられない。情熱と目的、ジョージはいまそう言わなかったか? 探していたサイン、これが、それなのか?
 僕は、ポケットの中の種と、農夫の言葉を思い出した。種を撒く場所を見つけるんだ。そうすれば、君の人生の目的もおのずと姿を現すだろう。(p.118)
 再び、農夫との会話。
「言った通り、君の目的は姿を現した。すべてではないが、初めのところはね。
 いいかい、真の目的というものは、玉ねぎの芯のようなものなんだ。いくつもの層に覆われている。君の目的の第一歩は、今いる場所に種を撒き、何であれ定められたものになると決意すること ―― 自分の強みを、資質を、才能を使い、自分よりも大きな何かのために全力を尽くすことだ。
 いまいる場所に種をまくと決めてしまえば、わかるだろう。(p.129)
 “いまいる場所に種をまく”ということは、“自分の心の中に撒く”ということか。
 その上で大切なのは、“自分よりも大きな何かのために全力を尽くすこと”だと言っている。
 これって、“種をまく場所”以上に大切なことかもしれない。
 “自分よりも大きな何か”をどう表現するかは、人それぞれの自由であるけれど、それが“少しだけ大きいもの”より“より大きなもの”であったほうが、その渦動にシンクロした時、より大きなパワーを実感できるはず。
 個々の人間にその認識はなくても、“自分よりも大きな何か”が醸し出すエネルギーは昔も今も未来にも確実に実在する。ディスクロジャー以前の地球の中で、物理的にも認識的にも閉鎖系内で暮らしている状況下にあって、“自分よりも大きな何か”を感受している人々は、そんなに多くはないはずだけれど、地球のアセンション(周波数の上昇)に連れて、これからは急増してゆくだろう。

 

 

【大の前に小】
 大きな目的や人生の意味を探す時には、小さな違いを生み出す小さな目的を生きることから始めなくては。仕事でもそれ以外でも同じこと。仕事をしていてもいなくても、誰もが世の中を変えられる。大切なのは、小さな目的を生き、より大きな目的での役目を果たすと決めること。(p.147)
 最澄の「一隅を照らす、これ国宝なり」は、こういうことをも意味していたのだろう。
   《参照》   『アドベンチャー・ライフ』 高橋歩 (A-Works)
               【この仕事ができて幸せよ】

 
 
【決意】
 この様な気づきを経て、2週間の休暇の後、ジョッシュは、退職ではなく、仕事に戻った。
「スパでリフレッシュでもしてきたの? 元気いっぱいで戻ってきたじゃない」
「そうじゃないよ。決めただけさ。給料のために働くこともできれば、世の中を変えるために働くこともできる。僕は、変化をもたらすと決めたんだ」 ・・・中略・・・。
 僕は、ただ会社のために働いているんじゃない。・・・中略・・・。どこかにいるただひとりの聴衆のために、働くんだ。(p.151)
 この狂った不完全な世界で生きなければならいことに当惑し厭わしく思い悩んだことのある純粋な人々なら、“どこかにいるただひとりの聴衆”っていう表現がとても分かり易く親しみを感じるかもしれない。

 

 

【情熱と目的】
 繰り返しになるけれど、この本のポイントなので繰り返し記述しておいた。
 情熱と目的は、いつも一緒にいる親友のようなものだ。人生と仕事に情熱を注ぐと心を決めれば、それが目的につながっていく。目的の力で、情熱が解き放たれる。情熱と目的を持って生き、働けば、内なる細胞のひとつひとつが輝き出す。(p.174)
 内なる細胞のひとつひとつを輝かせるためには、自分のやっていることに確かな意味付け(フレームの付与)が必要。例えば、私の仕事は結婚生活を救うとことですと語る住宅ローンの融資担当者、「笑顔」を目的としている歯科医院、僕の目的はフィールドで神を称えることだと言ったフットボール選手、など、自分の仕事ややっていることに対する意味付けはなんでもいい。
 終極的なポイントは、“自分自身の心と体(細胞)をその気にさせる”ということだけれど、そのためには、“脳をその気にさせる”ことが重要なのである。下記リンクを読んで、脳の特性を正しく理解すべき。
    《参照》   『マンガでやさしくわかるNLP』 山崎啓支 (JMAM)
              【プログラミング】
              【リフレーム=枠組み(フレーム)を変える】

 

 

<了>