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 古書店で新書のような状態のこの本を発見。あまり印象的な記述はないけれど、全体が女性特有の優しさに満ちている。2003年11月初版。

 

 

【スローフードとソウルフード】
 スローフード運動は、なにもファーストフードに反対するために生まれたのではありません。
 スローフード運動は、1986年。北イタリアのピエモンテ州トリノ市の近くにあるブラという町から始まりました。提唱者はカルロ・ペトリーニさん。スローフード運動には3つの柱があります。
「その土地の味を大切にしよう。郷土料理と食材を守ろう」
「質の高い素材・食材を提供する小規模農家を守ろう」
「次世代の子どもたちを含めた消費者への食教育を推進していこう」
小さな町ブラで、本当に少人数で始めた運動にもかかわらず、またたくまに世界中に広がりました。(p.35)

 昔ながらの料理こそ、スローフードであり、魂の食べ物「ソウルフード」だと思うのです。ほっとする味。幸せな子ども時代や両親や祖父母の笑顔を思い出す味。故郷の風景が思い浮かぶ味。自分の味の原点を再確認できる味。(p.37)
 スローフードは、地産地消型の昔ながらの食生活文化を維持しようという運動。
 日本人はスローフードなんてそんなに意識していないだろう。なんせカロリーベースでの食料自給率が40%の国である。これじゃあ「地産地消のスローフードを実施しています」なんてとても言えない。チャンちゃん自身も農地をほったらかしにして、1kg138円で買えるオランダ産冷凍ポテトを食べている。手間とコストを計算すると、こうなってしまう。最近は、前からある地元のスーパーより、輸入モノが多い業務スーパーの利用者が増えている。経済が疲弊すると地産地消がかえって成り立ちにくくなってしまう。
 こんな状態でTPPに加入したら、日本の農業は基盤から壊れてしまう。その破壊状況はウルグアイラウンド時の比ではないだろう。国民は政府に抗して自給自足型食生活を確保して自衛するしかないのである。ところが自衛できない(農地がない)人ほどTPPに無関心なんだからどうしようもない。そういう人たちは、戦争や環境異変による食糧問題なんて起こりっこないというノー天気に徹した人生を歩めばいいのである。

 

 

【日本の耕作地面積】
 1960年代に607万ヘクタールあった耕作地も、2010年には442万ヘクタールにまで減少するだろうと予測されています。(p.72)
 上記は2003年時点の予測値だけれど、実際の2010年時点の耕作地面積 は、459万となっている。
 まあ、日本の人口は今後増えないから、この程度の農地で足りるだろう。輸入が途絶えた時は、お米を主食とする本来の日本人に戻ればいいのである。日本人にとってのスローフード、ソウルフード(=米食)は国際的な食糧危機に遭遇した時、漸く実現するだろう。今のうちに「お米パン」なんかを普及させておいた方がいい。

 

 

【水道水】
 味覚や臭覚で感じる違和感だけでなく、水道水の安全性の問題を指摘する声もあります、なかでも、大きな問題だといわれているのは、発がん物質のトリハロメタンです。トリハロメタンは、塩素と、汚れた原水に多く含まれる有機化合物が反応して発生します。日本の水道水の水質基準では、トリハロメタンは1リットル当たり。1ミリグラム以下と定められているのですが、この数値はWHO(世界保健機構)の基準と比べると3倍以上で、基準値が甘いということも不安感をいっそうあおるのでしょう。(p.77)
 関東平野部で供給されている水道水はとんでもなく塩素臭い。あんなのを毎日飲み続けていたら間違いなくアルツハイマーになってしまう。半導体製造の上で必要な超純水を作ることができる日本の工業技術力も、人間を守るためには決して用いられないのである。即ち、飲料水に関することも人口削減計画の一環なのである。自己防衛以外にない。販売されているミネラルウォーターについても、全てが安全と確認されている訳ではない。
   《参照》   『アセンションの準備はできていますか』 中丸薫 (ヒカルランド)
             【生物兵器を用いた人口削減計画】
             【医療の現場もこんなもの】

 

 

【女優業から農政ジャーナリストへ】
 16歳で、ひょんなことから女優になり、東京の真ん中の撮影所やテレビスタジオで日々の大半を過ごすようになると、次第に窒息しそうな息苦しさを感じるようになりました。
「あのころ、撮影所の中庭で、ひとり本を読んでいたね。小さな噴水のある池のある中庭で。あんな新人女優、初めてだったよ」
 大道具を担当していた方から、そういわれたことがあります。 ・・・(中略)・・・ 当時、私は自分がラッキーだと知りつつも、心の奥底ではもうひとりの自分が「私が求めているのは、こんな暮らしじゃない」と叫んでいたように思います。 ・・・(中略)・・・ やがて、女優業の仕事を減らし、全国を旅して歩く取材者の仕事へと切り替えていったのでした。(p.87)
 日本人初のボンド・ガールだったというから相当売れっ子だったんだろうけれど、魂は自然に囲まれた生活を望んでいたらしい。

 

 

【1969年制定のアメリカ国家環境政策法】
 皮肉にも、日本がコンクリートによる大規模な護岸工事、水面埋め立てに走りはじめた1960年代後半、アメリカでは「ミティゲーション」という環境対策がスタートしました。(p.89)
 日本は、国土面積に対してコンクリートの体積率が異常に高いことから、世界の行政研究者から「コンクリート行政」と揶揄されているのだけれど、日本がコンクリート行政まっしぐらだった1960年代に、アメリカでは生態系に配慮された環境政策が策定されていたことになる。
 諸外国では社会の経済格差を是正するために、地域にあった方法を個別に考えるのに、日本の地方行政では今でも予算を土木工事に投入するという「時代錯誤的な“馬鹿の一つ覚え”」のようなことが依然として行われている。

 

 

【ストレスに土いじり】
 自殺をする人が、日本全国で年間3万人を越えたといわれます。 ・・・(中略)・・・ 。
 第二次世界大戦後、自殺者の急増は2度ありました。1度目は「なべ底不況」の1958年前後、2度目は「円高不況」の1986年前後です。(p.108)
 2度目の1986年という数字を意外に思ってしまった。バブル崩壊後なら分かるけれどそれ以前である。1985年はプラザ合意の年だった。これによって1ドル240円から一挙に200円になった「円高不況」は、多くの中小企業経営者を追いつめたのだろう。
 リーマンショック以降の現在は、中小企業経営者のみならず、一般中高年サラリーマンも大変である。
 中高年は、これまでの人生を日本経済の成長と共に生きてきた世代です。・・・(中略)・・・。生真面目で責任感の強い人にとっては、自分の存在を脅かすほどの大きなストレスになっても不思議ではないでしょう。
「ローンを抱えているのに、ボーナスがなくなって大変だ」
「子どもの学費に、お金がまわらなくなった」
 私のまわりでも、そんな話をよく聞くようになりました。
 けれども、不思議なことに、それでも土をいじっている人は意外なくらい元気なのです。(p.110)
 土いじりがストレスにいいだけではなく、野外で活動している時、太陽光線を浴びることがストレスに良いのではないかと思うことがある。実体験上のことを書けば、土いじりはそんなに楽しくない。大抵の人は1年やってみたところで嫌になるんじゃないだろうか。チャンちゃんは1年で嫌になった。(根性ないかも・・・)
 室内でできる日向ぼっこはストレスにいいはずである。夏は暑過ぎるけれど、11月末の今でも温度計を直射日光に当てるとお昼頃はなんと50度を超えるからお風呂に入っているのよりはるかに暑い。

 

 

【グリーンツーリズム】
 各県で、グリーンツーリズムをスタートさせるために、さまざまな制度を創設したりといった前進は見られるのですが、民家をグリーンツーリズムに使うためには宿泊者を会員制にしなくてはいけないなどの規制がまだまだたくさんあるのです。ヨーロッパのような税制面での優遇措置も我が国にはありません。
 また、グリーンツーリズムという新しいビジネスに取り組むに際して、ノウハウを教え、さまざまなアドバイスをしてくれる機関もありません。ヨーロッパではそうしたサポート体制が整っています。(p.138)
 この本が書かれてからおよそ10年経った今日でもグリーンツーリズムの実状は、ここに書かれているままなのだろう。農耕地のある地方自治体なら本気で取り組めばいいのに、なぜ進展しないのだろう。どうせお役所間の縦割り利権が障害になっているんだろう。

 

 

【沖縄県民の平均寿命】
 沖縄の食が変わってきて、その影響がはっきりと数字に出はじめたのです。ついこのあいだまで、沖縄県といえば、長寿県として知られていました。ところが、最新のデータによりますと、女性の平均寿命は相変わらず日本一であるものの、男性は4位から、なんと26位まで下がってしまいました。(p.196)
 凄い急落。その原因は、
 浦添総合病院検査センターの久田友一郎センター長は、脂肪量の多い食事内容と、食べる量の多さをあげていらっしゃいます。・・・(中略)・・・。
 沖縄国際大学教授の鈴木信氏は、「沖縄の55歳以下の男性は全国でも短命。食が変化し、肥満、糖尿病が増加した。今こそ高齢者の伝統的なライフスタイルに学ぶべきだ」(「琉球新報ニュース」より)と訴えています。素晴らしい伝統料理を持つ沖縄でも、残念なことに、食が揺らいでいるのです。(p.196-197)
 1980年代頃までの沖縄には、シーサーが乗った赤い瓦屋根の家が多かったらしいけれど、近年はそんな家もまばらである。多くの沖縄人男性も、本土の男性と同様に、住宅ローンを抱えて、焼け食い短命になってしまったんだろう。食が揺らぐ前に、大抵は経済が揺らいでいるのである。

 

 

【日常生活の中にある美】
 著者は、自然に囲まれた昔ながらの日常生活の中にある美をもとめて柳宗悦の民芸運動にも心を惹かれていたらしい。下記リンクには、その関連のことが書かれている。
   《参照》   『姜尚中対談集 それぞれの韓国そして朝鮮』   角川学芸出版
             【韓国人にとっての白】

 

 

<了>