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 対談者は、筑紫哲也、雅、澤地久枝、浜美枝、梁英姫、リービ英雄、磯崎新、中井信介、井筒和幸、黒田福美さんの10人。印象深いのは、4人の女性との対談。頭ではなくハートで語っているからだろう。

 

 

【生きることに飽和している日本人】
姜:雅くんは、台湾や韓国へ行って、日本の街と違う何かを感じたことはありましたか?
雅:そうですね。街を歩いていて感じるのは、偏見もあるかもしれないけれど、「生きることに対して飽和していない」 というのは当たり前に感じますね。
姜:あー、うまい表現だね。
雅:それは、さっきおっしゃった日本の学生さんたちがそう。僕らも含めてなんですけど、整備されている現状で、生きることに飽和してしまって。もっと言えば 「飽きちゃってる」。それが、台湾や韓国へ行くと、そこには足りない何かがあるから、それを補おうとするエナジー、ベクトルというのがある。街をぱっと見ても、それが活気となって現われている。 (p.40)
 これは、誰でも同様に感じるはずである。多くの日本人、特に若者達は、確かに飽和してしまっている。
 しかし、そう語っている雅くんは、以下のようにも語っている。

 

 

【欲望に慎みはいらない?】
雅:かつては、欲望に対してつつしみがあったと思うんです。今は、「欲望? いいんじゃない。だって人間なんだもん」 っていう感じ。実際、ミュージックシーンに関しても、ミュージックビデオでセックスしているシーンとか裸の女性が踊っているのは、当たり前(笑)。
 ・・・中略・・・。セックスすることは卑しいことではない。セックスアピールすることは当たり前である。だからこそ、戦うこと、食べること、セックスすることを基盤にして、商業主義が成り立っている。 (p.51)
 この欲望をオープンにするという考えの行き着くところが、飽和なのに、その原因になっていることに全く気づいていない。こういう愚かな知性の輩が、ミュージックシーンを担っているのだから、愚かの上塗りである。
 世界政府を目指す国際的パワーエリート集団が、若者達の政治経済的知性を眠らせるために、3S( Sports , Screen , Sex )政策をフルに活用し、飽和させ愚民化させているのである。
 既に政治的にも経済的にも国際金融パワーエリートにカモられ切っている韓国の状況にすら気づけていない、この雅という青年は、いったい何者なのか。国際金融エリート集団の回し者でないとしたら極限的な愚者である。

 

 

【韓国人にとっての白】
 浜美枝さんは、日本人で唯一のボンド・ガールとかだったかなぁ・・・。
 その後、柳宗悦の 「民藝運動」 に心惹かれて、韓国を何度も訪れている女優さん。
浜:白磁の美は、韓国の人々にとって、特別なものなのだろうと思うんです。・・・中略・・・。白について、韓国の人々は、実に深い思いを抱いていらっしゃいます。民族にはその民族特有の特別な色があって、韓国の人にとってはそれは白だと聞いたことがあります。日本人が、茶とかグレーの色を何種類も見分けることができるように、韓国人は様々な種類の白を見分けると・・・。(p.87)
 「韓国人にとっての白」 というテーマを深く語っている文化論を読んだことはない。端緒とするために、この記述を書き出しておいた。
 ところで、浜さんが、家族ぐるみのお付き合いをしている李さんの自宅に長期滞在していた折。
浜:李さんのお宅のすぐ近くに、偶然なんですけど、忘憂里(マンウーリ)の丘があったんです。忘憂里の共同墓地に実は浅川巧の墓がありまして。それがわかった時には、何か見えない力に導かれたような気がしました。(p.91)
 浅川巧 (1891-1931) は、山梨県出身。1914年、朝鮮半島にわたり植林事業を行う傍ら、朝鮮半島の陶磁器と木工を研究した。1924年4月 朝鮮民族美術館を景福宮内に設立。柳宗悦 (1889-1961) を朝鮮の道具に導き興味をいだかせた人物である。
   《参照》   『日韓交流のさきがけ 浅川巧』 椙村彩 (揺籃社)

 

 

【アイスランドでは姓がない】
リービ:アイスランドでは姓がないんです。名前しかない。だから、電話帳を見ると、誰々の息子の誰々としか書いてない。それがおもしろい。(p.147)
 断片的ではあるけれど、重要な情報である。

 

 

【伊勢神宮は起源を隠している?】
磯崎:外宮から内宮に向かいお祭りがあるのですが、その並び方は北斗七星の形をとると記録されてもいます。「これ道教じゃないですか」 って伊勢神宮関係の人に聞いたら、シィーッと、口に指を当てる。絶対に言ってはいけないことだったんですね。
 これらをなぜ日本は隠すのか。おそらくその起源に他から伝来したものがあるのではないか。すべてが純血統にしたいとする意図がある。だから隠そうとする。これは私の日本に対する疑問なんですね。(p.164)
 伊勢に北辰に関する祭祀があるからといって、何故それで 「伊勢は道教である」 という即断になるのか?
 伊勢が行っている祭祀の全てが北辰を中心としていると考える方が異常である。
 日本は、様々な天体から降り下る波動を受け取る、ヒモロギの国である。だからこそ八百万の神々によって栄える国柄なのである。
   《参照》  『日本の神々と天皇家のルーツ』 天無神人 (ナチュラルスピリット) 《前編》

             【天照大神のルーツ】

            

 

【日韓をつなぐ人材となった女優さん】
 84年からNHKで始まるラジオの 「ハングル講座」 に夢中で取り組んだのです。 (p.235)
 と言う女優の黒田福美さんは、「日韓をつなぐ人材になる」 と決意していたという。
 そして、88年のソウル・オリンピックの頃には、その志の通りにやり遂げた方。立派。

 

 

【親切の洪水】
黒田:本などの情報で知りえないのが 「人の感触」 です。いくら当時は韓国語を話す日本人が珍しかったとはいえ、・・・中略・・・ 私を取り囲んでにこにこしながら私の様子を見守ったり、持ち物に興味を示したり、抱きしめてくれたり、・・・中略・・・ 学生が御飯を御馳走してくれたり、・・・中略・・・ 一緒に鍋を囲んだり。毎日が親切の洪水で、日本人からは感じたことのない温かさとフランクさを感じました。
 それに韓国語がわかってくると、いかに韓国人のユーモアのセンスが優れているかも実感しました。まさに大阪人の上をいきますね。
姜:本当にそうです。したたかですし、口がわるいところもありますし。(p.238)
 姜さんが、あえてバランスをとるような意見を言っているところが面白い。
 黒田さんが実感していた “親切の洪水” は、大陸系民族が有する “安全保障の知恵” である。
    《参照》   日韓文化比較
               ● 違いの原因は? → “安全保障”

 

 

【「強さ」への意思と 「弱さ」への愛おしさ】
 最後の 「あとがき」 に、姜さんは以下のように書いている。
 いつの頃からか、私は人の思想や感性を、「強さ」 と 「弱さ」 を尺度として判断する習性が身についていた。 「強さ」への意思と 「弱さ」への愛おしさは、人を判断する重要な基準になっていたのである。(p.253)
 大陸民族の中国人は “前者” に傾き、島国民族の日本人は “後者” に傾く。そして、半島民族の韓国人は “両者” がバランスするも、それは分裂気味のバランスであり 「地雷」 を内面に抱えているかのような危うさがあるのだろう。
 地理的に大陸と島を結ぶ半島に住まう人々ならば、それがいかなる民族であれ、そういった “内面に地雷を抱えつつ、分裂気味のバランス状態” という心理的悲哀から決して免れることはできなかったはずである。
 国際金融を支配するパワーエリート達の “分断と統治” 政策の罠に陥っている東アジアの現状が改善されるならば、日本人は最も韓国人の悲哀を理解できる民族として、深い融和を志すのではないかと思っている。

<了>