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 著者はミシガン大学大学院を修了した後、留学カウンセラーを長年しておられる方。2008年9月初版。

 

 

【これで「英語をモノにした」と言えるのか?】
 私は仕事柄、たくさん「ネイティブ並み」の発音で英語を操る日本人の若者を見てきました。
 こうした日本人のなかには親の海外赴任について小さいころからアメリカで暮らしていた人もいれば、「語学留学」とやらでアメリカで暮らしていた人もいます。
 確かに目をつぶって聞いていれば、彼らの話す英語は日本人とは分からないくらいの流暢な話しぶりです。
 ところが、問題はその内容。
「あのコ、チョーイケてるじゃん」「なにそれウザイ」「だりー。やってらんねー」
 日本語に直せば、このくらいのことしか話していないという例がどれほど多いのか、みなさんはご存知なのでしょうか。
 流暢な英語を操っても、こんな彼らは「アメリカと日本の政治史」「環境問題について」「日本文化について」などを話すことはできませんし、論じ合うこともできません。
 高度な会話はできないけれど、発音だけは英米人と同じくらいきれい―――これで「英語をモノにした」と言えるのでしょうか。(p.34)
 こういう話はよく耳にする。発音だけよくたって話に内容がなさすぎるのである。さらには内容がないどころか、長年外国に住んでいたって英語の読解力がない人が多いのだという。
   《参照》   『大学入試合格の秘密』 半田晴久 たちばな出版
             【英語教育について】

 海外に住んでいて日本文化に関して不勉強だったことを後悔しつつ、手許に日本語の本がなくって手を拱いていたような人が、たまたまチャンちゃんのこのブログにヒットしていたら、「ちょっとは役立つ内容があるブログかも」と思ってもらえるかもしれない。そうであるなら、時間がある時に端から読んでみてください。

 

 

【外国語は母語以上のレベルにはならない】
 “外国語の習得には母語の力がベースになる”とは、言い換えると「外国語は母語以上のレベルにはならない」ということ。
 ベースになる母語もしっかりしないうちに外国語を教えることは、実は非常に大きな危険性をはらんでいます。
 英語を使いこなし、バイリンガルになるためには、まず母語の力を伸ばし、幅広い知識と語彙、コミュニケーション能力を身につけることが、まず第一に必要なことだと私は常々思っています。
 私は脳科学の専門家ではありませんが、言語はおそらく思考力にまで影響を与えるであろうことは経験上想像がつきます。二兎を追ったがゆえに、どちらの言語も中途半端、ひいては思考力の乏しい大人になってしまうという悲劇は避けるべきです。(p.40)
   《参照》   『日本は世界で一番夢も希望もある国です』 金美齢 (PHP)
             【日本語一本】

 バイリンガルで高度な内容を語りうるこの本の著者さんや金美齢さんのような人々は、大抵上述のような見解を示している。ところが、自分自身ろくに本も読まずさしたる教養もない人ほど、
 「いや、やはり正しい発音は小さいうちからはじめるからこそ身につくのだから、早いうちから英語教育を始めたい。外国語を母国語と同時に使っているうち、両方の言語能力が高まるはずだ」
 こう反論する方もいることでしょう。
 しかし、これに対しては、「残念ですが、なかなかそううまくいきません」 とお答えするしかありません。(p.40)
 留学カウンセラーとして数多の事例を見て知っているからこそ、著者さんはこのように言っているのである。
 F君のように、小学生からイギリスの寮制小学校に留学したものの、成績不振で大学受験資格が得られない、という日本人はとても多いのです。
 親にしてみれば、「こんなに英語ができるのに!」「小学生から留学しているのに!」といったところでしょうが、言葉ができるのと成績がいいのはまったく別の話だということを忘れているか、そもそも理解していないかのどちらかだとしか思えません。(p.43-44)

 

 

【英語を学ぶのではなく、英語で何かを学びなさい】
 「英語で“何か”を学びなさい」「『英語を』勉強するのではなく、『英語で』勉強しなさい」とは私が繰り返し、相談に来た生徒・学生に伝えることです。先ほど申し上げた通り、英語を目的にしているうちは、簡単な英会話以上に英語はうまくなりません。しかし、英語で何かを学ぶと、驚くほど英語のレベルが上がるのです。(p.83)
 語学留学してから正式に大学に入るとなると、費用面でも親は大変。今どきは情報機器や語学教材が発達しているから、留学以前に国内で大学入学レベルの語学力を実につけることは容易だろう。単に「英語が話せるようになる」ことが目的であるなら、留学など何ら必要はないはずである。
 

 

【「悲劇と喜劇」の積み重ね】

 「私は日本人なんだから、英語が苦手なのは当たり前じゃないの!」と相手に言い切る強さを持てば、怖いものなどありません。
 ジャパニーズ・イングリッシュだと笑われても言いたいことを伝え、おしゃべりの輪に入り、「ねぇねぇ、こんなとき、なんて言えばいいの?」と聞きまくる。
 こうしたコミュニケーションを重ねるうち、「日常会話レベル以上」の会話力がつくものです。
 外国語を学ぶとは、本来そうしたものではないでしょうか。
 恥ずかしい思いを重ね、悔しい思いを重ね、そして開き直ってさらに恥をかき・・・と、まさに「悲劇と喜劇」の積み重ねで獲得するのが、外国語なのです。
 日本で活躍する外国人タレントの姿を、思い浮かべてください。
 彼らは「つたない日本語、間違った日本語」で笑いを取ったりしますよね。あの姿が、本来の「外国語を学ぶ姿」ではないでしょうか。(p.91)
 これって、上達の王道だろう。
 上記に続いて、
 それに、日本人がやけにこだわる「正しい発音・流暢な英語」とは、何でしょう。いまや “正当な英語” と言われたイギリスのクイーンズ・イングリッシュを、ほかならぬイギリス人が「こだわるのはやめよう」と言い出しているのです。その理由は、増え続ける移民が操る各国のなまりのきつい英語です。(p.91)
   《参照》   『即戦力の磨き方』 大前研一 (PHP新書)
             【語学力(英語力)】
   《参照》   『英語コンプレックス脱出』 中島義道 NTT出版 (後編)
             【英語コンプレックスを解く鍵、それは “誠実” 】