イメージ 1

 著者は、日本語学校でいろんな国の外国人に日本語を教えている先生。 第一弾 に次いで、ゲラゲラないしヒクヒク笑える内容が多い。2010年2月初版。

 

 

【畳化】
 Tatamiser (タタミゼ)フランスの新語。 外国人の「日本化」 を指す。 (p.20)
 畳化したと思うとき ―― ということで、それぞれの学生の思いがいくつも記述されている。
①  母国に帰っているのに、タクシーのドアが開くのを待ってしまったとき (p.20)
②  肩がこったから、シップを貼ろうと思ったとき (p.34)
③  本にカバーをかけてもらうのが、当たり前になったとき (p.48)
④  母国語での会話に、日本語で相槌を打つとき (p.62)
⑤  餃子といえば、焼き餃子だと思うとき (p.76)
⑥  自販機にお札を入れるとき (p.90)
⑦  あいまいな回答をしてしまうとき (p.118)
⑧  黒い大きなムシをやっつけられるようになったとき
   (キンチョールでムシ退治すること・・・韓国は寒いからゴキブリはいないらしい) (p.132)

 

 

【知らないなら聞かないでください】
 あるとき、「ドラマ」 という言葉が出てきたので、「好きなドラマは何ですか」 と質問してみました。そこはアジア系の学生ばかりのクラスで、日本の芸能情報は私よりも詳しいくらいです。日本のドラマもしっかり見ています。(p.46-47)
 しかし、著者の知らないことが多いのだという。
 そのようなやり取りを繰り返すうちに、クラスが 「知らないなら聞かないでください」 という冷たーい雰囲気に。(p.47)
 このようなことは外国人と接する機会のある日本人なら少なからず経験しているはず。著者は、対策として 「インターネットで出演者とあらすじくらい調べておくようになった」、とあるけれど普通の人はそこまでしない。
 最近はドラマばかりではなく、『クール・ジャパン』 として認知されているアニメが引き金になって日本に興味をもつようになった若者が多いから、オジさんやオバさんたちが、一般的な日本文化を説明したがっても、それらは来日間もない彼らにとっては100%興味の対象外なのである。

 

 

【忍者】
生徒  地下鉄半蔵門線に乗って半蔵門に行ってみたい
生徒  一緒に行く? 半蔵門
生徒  私も行きたいでーす
先生  何をしに?
生徒  服部半蔵のお墓参りに
先生  服部半蔵!?って半蔵門にお墓が!?
生徒  知らなかったんですか?
先生  知りませんでした・・・
生徒  半蔵門・伊賀忍者組頭の半蔵の屋敷があったため
先生  先生は今、かしこさが1上がりました
 とにかくどの国の学生も忍者が大好き (p.68)
 これは、「忍者ハットリ君」 というアニメの影響ではなく、外国人製作者によって作られた 様々なニンジャ映画の影響らしい。若者って根本(生理?)的にスピーディーでダイナミックなアクション系が好きで、しかも忍者たちは日本独特の衣装を付けているから、日本認識にはもってこいなのである。

 

 

【外来語】
 ほとんどの外国人にとってカタカナ語は厄介な言葉のようです。(p.102)
 カタカナ語の殆どは外来語なのだけれど、日本人はネイティブとはちがった日本語語感に置き換えたカタカナ語に変換してしまっているから、アメリカ人や英国人であっても分からないのである。
 韓国人に道を教えようとして看板を指差しながら 「マクドナルド」 と言ったら、 「それはメガドです」 と教えてもらったことがある。だから 「ありがとね」 と言っておいた。
 中国語表記の外来語だって、日本人には想像もつかないものが少なくない。
 次の言葉は中国の外来語です。意味(日本語の外来語)は何でしょう。
  迷你   ミィニィ → ミニ
  巧克力  チャオクゥァゥリー → チョコレート
  T恤   Tシャツ  「恤」 は見た目は怖いのですが、「心配する、あわれむ」という意味です。(p.103)
 男として平均的に邪(よこしま)なチャンちゃんは、「T恤って、旗日なのにナプキン付け忘れてTバックで外出してしまったオネエちゃんの、心も血も凍りつくような事態」 だと思ってしまう。(猫の親分に、「バカッ」 って、ひっぱたかれる)
   《参照》   『台湾網路』 渡邉ゆきこ (ボーダインク)
               【用語あれこれ】
   《参照》   『中国「戯れ歌」ウォッチング』 南雲智 論創社
               【日本企業名】
 カタカナのテストで空欄に共通して入る言葉を考えさせた
 〈問い〉 ・好きな人に○○○○○をわたした。
      ・誕生日に○○○○○をもらった。
 〈答え〉 プレゼント
  学生の答え
  オミヤーゲ     (p.114)
 チャンちゃんは、≪学生の答えの方が “絶対に正しい”≫ と思う。

 

 

【干支 : 豚年】
 「猪」 じゃなくて豚がいます
  豚は金運の象徴 豚年はいい年です。(p.79)
 中国も韓国もタイもベトナムも干支は、「亥」 ではなく 「豚」。東アジア一帯はすべてそうだろう。
 日本人が 「豚年」 なんて言われたら凹むだろうけれど、東アジアでは良いイメージなのである。
   《参照》   『中国人のまっかなホント』 J・C・ヤン (マクミラン・ランゲージハウス)
             【豚文化が基本の中国の華南文化圏】

 吉本芸人・次長課長の河本くんは、豚さん系なので台湾でデビューしたら “幸運な顔” としてそこそこ人気が出ることだろう。でも最近の台湾人の若者の好みは、だんだん日本人と似てきているから確約はできない。

 

 

【フィンランド人の名前】
学生  フィンランド人の名前は、日本人には変に聞こえるものが多いです
先生  ああ・・・「アホネン」 さんってスキーの選手いましたね
学生  パーヤネンさんもミンナ・アホさんもいます
    私の友だちの名前は 「ヘンナ・パンツ」 さんです(美人♡) (p.95)
 アホネンとパーヤネンがいるんならアホヤネンがいてもよさそう。
 『大阪暮色』 の曲に合わせて 「騙してないのに~~~アホヤネン」 って歌える。
 フィンランド人は、関西圏に住めばすぐに受け入れてもらえて住みやすいことだろう。
 因みに、かつての職場に、富山県出身の阿保(あぼ)さんという先輩がいた。
 「“越中富山のアンポンタン”って阿保さんのことなんですか」 と聞いたら、周りにバカ受けしていた。

 

 

<了>
 

  蛇蔵&海野凪子・著の読書記録

     『日本人の知らない日本語』

     『日本人の知らない日本語2』