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 茂木さんは、脳科学者というより、“(人生を)なし得る” とか “(人生に)適合する” という意味の “能(あた)う” という漢字を用いた “能科学者” というべきなのかもしれない。良書である。2009年11月初版。

 

 

【人間を変えてしまう 「劇薬」】
 可能無限を引き出す方法、自分の脳の働きを変える一番いい方法は、「感動する」 ということです。感動することほど、人間を変えることはありません。逆にいうと感動は、人間を変えてしまう 「劇薬」 です。(p.28)
   《参照》   『感動は心の扉を開く』 椋鳩十 (あすなろ書房)
            【劣等感を取り除き、一つのことをやり遂げる、感動】
                 ~【感動】

 

 

【むいていない脳というのは、ない】
 脳は、生まれつき回路が決まっているわけではない。例えば、苦手意識を持っている科目があるとしても、それにむいていない脳というのは、ないのです。
 ただし、ドーパミンが出るまで、その最初のところがやはり難しい。苦手意識がある、なかなかうまくいかないなど、いろいろは抵抗があります。でも、最初の一歩を苦労して踏み出し、喜びを感じて、またやるということを加速度的に回していけば、誰でも、苦手なことを得意にすることができます。(p.83)
 むいていないからドーパミンが分泌されないのではなく、ドーパミンが分泌される状態であればむいているのである。
   《参照》   『脳が若返る30の方法』 米山公啓  中経出版
              【「英雄色を好む」の科学的根拠】
   《参照》   『新世紀を拓くバイオメディア』 志賀一雅  ジュピター出版
              【疲れないコツ】
   《参照》   『運命が変わる未来を変える』 五日市剛・矢山利彦  ビジネス社
              【脳はこのように反応する:矢山】

 

 

【学びを喜びに変える秘訣】
 根拠のない自信を持つ。他人と比較しない。劣等感を持たない。これが学びを喜びに変える秘訣です。(p.93)
 この記述は、グウタラな怠惰を是認する自堕落な解釈の根拠にもなってしまうような気がするけれど、そんなんじゃあ困ってしまう。
 他人と比較した劣等感というのは、人生の偶有性を楽しむ上では、一番邪魔になる。(p.151)
 「人生で何が起こるかわからないこと」 を偶有性という。
「どうしようか」 と迷うような状況の偶有性が、脳の学びを促します。ドーパミンという報酬物質は、この偶有性によって引き出されるのです。(p.150)
 人生で起こったことに、前向きに関わってゆこうとする姿勢こそが、学びの秘訣であるのだし、人生の秘訣でもあるのだろう。

 

 

【どんな人にとっても大切なこと】
 下記にある 「彼」 とは、エリック・シュミットというグーグルのCEOのこと。
 彼は、会議をするときに、自分が何か言った後、誰かが異論を唱えるのをじっと待っているそうです。もし誰かが違うことを言ったら、さらにそれによって、議論が巻き起こるのを待つ。その議論に、ずっと耳を傾けるそうです。 ・・・(中略)・・・ 。
 この 「いろんな人の意見を聞く。最後は自分で決める」 こと。これはグーグルのような大企業の社長だけではなく、どんな人にとっても大切なことです。
 彼は、こんなことを言ってました。
 どんなに賢い一人よりも、多くの人のほうが智恵がある――。 (p.106)
 “意見 = 批判” と解して、全てを権力的に封殺するのは独裁者の性だろう。分配する権力にモノを言わせて、意見を言えない空気を維持しているのは、共産主義の権力者だけではない。永遠に発展しない弱小組織のトップの中にもよくある性である。

 

 

【「どんな人と入れ替わっても、その人の人生を幸せな形で生きてみせる」】
 一人ひとりを見ていて、「この人と私が入れ替わったらどうだろうか」 と考えていたときに、「どんな人と入れ替わっても、その人の人生を幸せな形で生きてみせる」 と思ったことが、偶有性を考えるきっかけだったと、説明しました。
 南さんは、「そうですか、茂木さんはもう、終わっていますね」「たいへんな人ですね」 と言う。(p.127)
「どんな人と入れ替わっても、その人の人生を幸せな形で生きてみせる」
 素晴らしいというか凄い発言である。この記述を読んだ瞬間、チャンちゃんは清冽な波動に打たれた感じだった。
 その後の、南さんの発言が意図する処も、よく分かる。
   《参照》   『人は死ぬから生きられる』  茂木健一郎・南直哉  新潮新書
              【生を引き受け、世界を引き受ける】

 この本と上記の共著は、相互補完的である。

 

 

【無意識の垂れ流し】
 石田純一さんが言っていました。石田純一におばさんが街で会うと、「まあ~、あんた。テレビで見るより若いわね。皮膚も思ったよりもきれいじゃないの」。これが無意識の垂れ流しです。自分が思ったことをすべて言ってしまう。これはよくないことです。
 それは、化粧もしないで、あるいは白粉を適当に塗りたくって、街に出るのと同じぐらい恥ずかしいことです。おじさんも同じです。(p.139)
   《参照》   『化粧する脳』 茂木健一郎 (集英社)
              【顔と言葉】

 

 

【わかるはずがない】
 どこに行ったら幸せになれるかなんて、わかるはずがありません。何の仕事が自分に向いているかなんて、わかるはずがない。これが、脳科学を15年やっていて、一番伝えたいことです。(p.161)

 

 

【直観を磨く方法】
 直観を磨くためには、体を動かすしかありません。 ・・・(中略)・・・ 。イギリス人がサッカーやラグビーをやるのは、瞬時の直感力や判断力を磨くためです。体を動かすことがいかに大事かを、彼らは知っています。(p.163)
 直感が働かないのは、繊細なエネルギー(気)が巡らなくなっているからだろう。体を動かすことで気の巡りを改善することはできるけれど、それが肉体の鍛錬へと過剰に傾斜してしまうのであるなら、本末転倒である。日本の武道や芸道は、動的ではなく静的な動きの中ですさまじいまでのエネルギーを循環させる技を有している。

 

 

【とにかく出力してみる】
 何か書くことがわかっていて、書くわけではない。書いたらそのときはじめて、自分の考えていることがわかる。脳は、そういうふうにできている。とにかく、出力してみろということです。(p.164)
 これは、書いてみないことには経験できないことである。
 この読書記録に関しても、何といって書きようもなくパスしようと思ってしまう時でも、とりあえず抜き書きから書き始めてみると、漠然と感じていた読後の印象とは違い、自分なりの明確な体系になっていることが時々ある。自分自身では全く意図していなかった体系になってしまうこともしばしばあるのである。
 

 

【決めつけない】

 自分が何者であるか決めつけない、ということです。「自分なんてこんなものだ」 とか 「私はこういうものだ」 と決めつけた瞬間に、脳は発展することをやめてしまいます。
 脳には、オープンエンドという性質があります。「自分はこうだ」 と決めつけなければ、いつまでも発展し続けることができる。逆に決めつけてしまうと、もうそこでおしまいなのです。(p.158)

 

 

 制限惑星地球の中で生きていると、必然的に、自他を決めつけるようになってしまう。地表に肉体を係留する重力の様子に倣ってしまうからだろう。 しかし、意識は重力に束縛されるものではない。何万光年先の星に行けないと思いこまされてるのは、人類進化を阻む意図をもってなされている学術的洗脳である。意識に制限はない。制限なき意識を有するあなたがあなた自身を決めつけているという、その愚かさに気づけばいいだけのことである。

 

 

【答えはない】
 いろいろと勉強して、知識も身につけなくてはいけません。でも、最後の最後は、答えはないということが、どれくらいわかっているか。これがわかっているかどうかで、人生は変わります。(p.165)
 そう、脳はオープンエンドだから無限に発展する可能性を秘めている。答えがあるならオープンエンドに矛盾するのである。決めつけている人は、決めつけている時点が答えである。
 世界は、ひとそれぞれの脳に則して展開しているのである。