《前編》 より

 

 

【台湾 そして 日本 と 韓国・中国】
 台湾人には、韓国人があまり好きでない人が多い。
 戦前同じく日本の植民地だったときに 「被支配民族」 どうしで共闘してもよさそうなものだったが、共闘したことは稀である。多くの場合は台湾人が嫌っていた。それは戦後台湾人が外省人を嫌ったのと同じ部分が、韓国人にあてはまるからではないかと思う。(p.28-29)
 中国人と韓国人に似たところがあると台湾人が感じるのは、もっぱら儒教文化に起因しているらしい。
 他人に土下座をする、中国人、韓国人、日本人の 「北方トリオ」 は、感覚的に台湾人と違っているそうである。
 価値観の違いというのは、・・・(中略)・・・、日本と韓国・中国には、父系社会、男性優位原理が共通している点である。台湾は違う。(p.200)
    《参照》  『韓国人の私が韓国をキライになった48の理由』 李鍾学 (ザ・マサダ)
              【韓・日・台の男性比較】
 日本では、フェミニズムは保守的な人たちから不評で、とかく 「ブスのひがみ」 のように受け取られがちである。しかし、台湾ではそうではない。普通に 「若くてかわいい女性」 も、フェミニズム的な考え方をもっている。歴史的にも中華帝国の辺境だった台湾では、儒教的な観念はあまり浸透していなかった。(p.202-203)
 このような違いの原因を、著者は南北の違いで解いている。

 

 

【食料乏しき北方と豊かな南方】
 現在の中国や韓国の支配原理である儒教を説いた孔子は山東省で生まれた。黄河の北である。作物が豊富とはいえない寒冷な地域では、食物の獲得ないし略奪という重大な作業は男の腕力がものを言うのである。ゆえに必然的に男性優位社会になってしまう。
 儒教はそれを思想的に肯定したので、支配原理として政治的に利用されてきたのである。ゆえに、日本も韓国も、中国同様、政権担当者や学問の権威を担う人々は、普通に家父長的な傾向(儒教精神)を有している。
 台湾のように亜熱帯の地域では食物が豊富で男が腕力を自慢する機会などさしてないはずである。だから、家父長的な儒教は、漢字文献と共にもたらされても、台湾にはそれほど浸透しなかった。
 日本においても、温暖な地域には台湾に似た文化が残っていた。
 高知県や鹿児島県などでは、戦後のある時期まで 「若衆宿」 というものがあった。若い男が女性のところに夜這いをかけて、女性の歓心を得ようと競う風習である。平安時代にも平安京の貴族の間では 「婿入り婚」 が普通だった。いずれも、台湾の平埔族などと共通するもので、どちらかというと女性優位で、母系社会の部分があったということである。(p.204)
 平安時代の貴族社会から、鎌倉時代の武家社会へ移行した背景には、地球全体の寒冷化が関与していたという説もある。食料に欠乏すると、やはり腕力社会・男性社会にならざるを得ないのである。
 

 

【大陸国家と海洋国家】
 北方と南方という区分因子以外に、この著作には書かれていないけれど、大陸国家と海洋国家という区分因子を考えることも不可能ではない。
 台湾人の中には、ポリネシア系の顔をした人々が少なからずいる。台湾人の中に海洋民族としてのDNAが残っているのではないか、という点である。
    《参照》  『海のモンゴロイド』 片山一道 (吉川弘文館)
              【ラピタ人のルーツ】

 古代の漁法では男たちが海へ出かけそのまま帰ってこないことなど頻繁にあったはず。必然的に代々家と財産を守るのは女性の役割となっていたはずである。

 

 

【女性の社会進出は、世界の情勢次第】
 チャンちゃん自身は世界全体が政治的に安定し、食料が世界全体に均等に行き渡るような社会になるならば、女性優位社会であっても何ら問題ないと思っている。しかし、世界の現状は、まだまだ様々な危険含みである。女性が社会の政治や経済の前面に出るようなことでは、国が危うくなるのである。
 それでも、日本は台湾のフェミニズム的社会から今のうちに吸収して、有効活用すべきものがあると思っている。
 
<了>


 

   《関連参照》   『めざせ!海外ビジネス』 酒井猛夫 (社会思想社)
               【台湾と韓国の比較】
 

  酒井亨・著の読書記録

     『台湾人には、ご用心!』

     『台湾海峡から見たニッポン』