イメージ 1

 この著作の前半部分は、同著者の 『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』 の続編のような内容。類書とすれば、『タイゾー化する子供たち』  原田武夫  光文社 があげられる。2007年1月初版。

 

 

【タイトル解題】
 日本のあらゆる領域が、米国資本によって占領されようとしている。それは誰の目にも見えるむき出しの力の行使ではなく、「構造改革」 というスローガンの下で静かに進行するイデオロギー支配、つまり 「姿なき占領」 である。(p.5)
 小泉改革で、アメリカの要求の通り行われた 「構造改革」 は、アメリカによる日本の21世紀型植民地計画の始まりに他ならない。この書籍には、保険や教育などの分野に関する、その進行状況が記述されている。
   《参照》   『そして、日は昇った!』 増田俊男 PHP
             【アメリカの21世紀型植民地主義】

 

 

【医療保険の民営化論】
 実は日本の 「国民皆保険制度」 を、世界各国が採用しようと努力している。しかし、たとえば米国では、「米国医療保険協会」 などの業界圧力による強力な反対運動に遭って、皆保険への試みが挫折しているのである。
  ・・・(中略)・・・ 。
 一人当たりの年間医療費支出額(平均)は、米国が日本に比べて格段に大きい。2001年の統計によれば、日本のそれが2131ドルに対して、米国は5021ドルと倍以上である。しかも、この少ない医療費で日本人の平均寿命は世界一、もっとも負担の重い米国が、もっとも寿命が短い。公的負担が日本では大きいと思われがちだが、実際にはそうではない。日本の医療費で公的な資金が費やされるのは690ドル、米国は2306ドルと日本の3.5倍もある。
 もうお分かりだろう。こうした数値のどこを見ても、医療保険の民営化論議が、日本内部から起こる必然性など全くないのだ。(p.34-35)
 民間の保険業界は、何処までも営利目的の企業だから、これに任せると医療サービスの質は低下し費用は嵩むというのが実態である。
 2週間前オバマ大統領が、米国の保険制度を 「国民皆保険」 へ向けた良き見直しを実現させたばかり。しかし、小泉改革では、米国の保険業界を日本に根付かせるために、外資系企業を優遇する構造改革が行われていたのである。
 アメリカが日本の制度に近づけているのに、日本はアメリカの悪しき制度に近づけているのである! この様な日米で真逆な制度破壊は、実は教育においても行われてきたのである。
   《参照》   『若者のリアル』 波頭亮  日本実業出版社
              【危機に立つ国家】

 

 

【チャールズ・レイク】
「私は現在、アメリカン・ファミリー生命保険会社に勤めておりますが、10年前は米国政府でUSTR(米国通商代表部)に所属し、日米のさまざまな交渉に参加しました」
 つまり日本市場を金梃子でこじ開けようとするUSTRの日本担当者が、このレイクだ。 ・・・(中略)・・・ 。そのURTRの日本担当の最重要人物が、アフラックにスカウトされ、日本支社の社長、副会長に抜擢されたのだ。(p.50)
 世界中の保険業界の企業にとって、日本ほど安定した高収益を確保できる優れた市場はない。911テロを合図にしたかのように、その頃から日本のテレビに外資系保険会社のコマーシャルが目立つようになった。今や日本人にとって “ニャフラック” のCMで好感度ナンバーワンであろうけれど、アフラックにおける総売上の70%は日本支社の業績だという。外資系企業に対する最大の貢献者は、何と言っても小泉純一郎元首相である。

 

 

【郵政民営化を狙ったUSTRの意図】
 レイク氏がUSTR代表として活躍していた頃のターゲットは、以下のようなものだった。
 自己責任による金融行政の具体化とは、つまるところ 「簡保の廃止」 である。 ・・・(中略)・・・ 。その狙いは明白だ。米国の保険会社が日本で本格的に業務展開しようとする限り、簡保は邪魔であると、彼は露骨に指摘したのだ。
 小泉改革が行われている最中、採算を度外視した天下り官僚たちの無駄使いである 「かんぽの宿」 の実体がテレビで頻繁に流れていたけれど、日本国民のために有効に使われないお金は、腐りきった官僚たちから、外資系企業へと移動したわけである。

 

 

【カーライル・ジャパン】
 世界中の著名な政財界人の資金を集め、露骨な政治力で資金運用するカーライル・グループは、アジアでも恣である。韓国IMF危機のおり、優良な財務状況であった韓美銀行を手中に収めている。当然のことながら、既に日本に寄生している。小泉元首相の導きによって。
   《参照》   『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた (下)』 ヴィクター・ソーン  徳間書店
            【カーライル・グループ】
 2002年6月、子ブッシュが来日。小泉首相との会談後、日本政策投資銀行の小林総裁と会っている。そしてその年の秋、日本政策投資銀行は、カーライル・ジャパンに40億円投資をすると発表した。(p.101)
 企業再生のための投資に使われるはずの資金が、カーライル・ジャパンに投資された。
 カーライルは、兵器、通信、航空といった軍事的成長分野に投資する企業であり、倒産寸前企業の再生資金を投資するファンドではない。
 別表に掲げるように、カーライル・ジャパンのウェブサイトによる 「日本上陸後のバイアウト(買収)企業」 を見ると、それがよく分かる。(p.102)
 いくつも掲載されているけれど、分かりやすいところでは、学生援護会を買収して、株式会社インテリジェンスと合併させたと記述 (p.103) されている。インテリジェンスという社名自体が、いかにも軍事関連の投資グループが考えそうな名前である。
 この様な派遣会社を利用すれば、雇用する企業が50万円支払っても、派遣社員自体の受け取り額は30万円程度になるそうである。つまり40%程度はピンはねされてカーライス・ブループが肥えるのである。これで、格差社会にならないわけがない。

 

 

【洗脳国家・米国の国民支配】
 ブラッカイマーは、明らかに子ブッシュの大統領選を応援する映画として 『ナショナル・トレジャー』 をウォルト・ディズニー映画として製作。 ・・・(中略)・・・ そこには、米国を神格化するさまざまなコード(暗号)が埋め込まれている。観客が、神に守られた栄光の米国を賛美するように仕向けられているのだ。
 1ドル紙幣の裏面のピラミッドが、建国の父たちの理念を込めた紋章であり、フリーメーソンの紋章でもあったことがさりげなく語られ、映画では 「独立宣言」 の条文が読まれる。(p.180-181)
 アメリカは、英国人やカナダ人ですらも “違う” と言う宗教国家であるから、このような洗脳は、日本人が思う以上に強烈に刷り込まれているはずである。
   《参照》   『ニューイングランド物語』 加藤恭子 (NHK) 
            【宗教国家アメリカ】
   《参照》   『秘密結社の1ドル札』 デイヴィッド・オーヴァソン (学研)
 
 
アメリカ国璽と琴座
 著者は、アメリカ国璽と琴座の関連を記述してはいないけれど、以下のような興味深い記述が見られる。
 アメリカの国民的人気歌手ジョン・デンバーがミリオンセラーとなった 『ロッキー・マウンテン・ハイ』 を作ったとき、琴座流星群からの力が関与していた。(p.183)
    《参照》   『秘密結社の1ドル札』 デイヴィッド・オーヴァソン (学研)
              【アメリカを象徴する琴座の主星ヴェガ】
              【アメリカ国璽は “聖化される時代の到来の予言” 】

 

 

【米国民を扇動するテレビ伝道師たち】
 日曜礼拝者が2000人を超える教会を 「メガチャーチ」 というのだそうであるけれど、こういったところはケーブルテレビによる専用の番組をもっている。MBA資格をもつ者まで経営に参加するような、実利の大きな “宗教ビジネス” である。
 急成長したのは、レーガン元大統領が福音派教会を政治利用し始めた、1980年代に入っていから。以後、年率5%の水準で、このメガチャーチは増加している。(p.220)
 つまり、戦争ビジネスと連動している。
 下記の記述の中にある “レフトビハインド現象“ とは、宗教と宗教関係のベストセラーの集合的力が、大統領と共和党を支える基盤となっている現象を言う。
 彼らは自分たちの行動力で国際政治を動かし、ハルマゲドン(最終戦争)状態をつくり出そうとする。まずイスラエスを強大な国とし、敵であるイスラムへの攻撃を誘発し、最後に米国とイスラエルの共同戦線によって中東からイスラム勢力を一掃することが、キリスト教徒の責務であるという歴史観に、福音派は浸っている。これこそがイエス・キリストの再臨を促すのだと。
 そんなバカなと思うのが常識だろう。しかし、レフトビハインド現象の蔓延、福音派による露骨なイスラエス支持、さらに米国の権力者がイスラエルを支えることによる米国内福音派の支持、という一連の構造を見るとき、この荒唐無稽なシナリオが、米国民の心の奥底を捉えてしまっているのではないかという恐怖感を抱くのは、考え過ぎだろうか。(p.227-228)
   《参照》   『アメリカ帝国はイランで墓穴を掘る』 桜井春彦 (洋泉社)
            【キリスト教原理主義者とネオコン】

 宗教ビジネスに走る超大国の末路がどうなるのか、アメリカの今後をじっくり観察したいものである。
 
 
<了>