第97回全米アカデミー賞脚色賞を受賞した「教皇選挙」。2回鑑賞しました。
なぜ2回見たかというと、
登場人物の顔が覚えられなかったからです。
出典:CCLV_movie
そしてもう一人忘れてはいけないのが、Ray O'Malley(右)。
概要:
第95回アカデミー賞で国際長編映画賞ほか4部門を受賞した「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。
全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなった。新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票がスタートする。票が割れる中、水面下でさまざまな陰謀、差別、スキャンダルがうごめいていく。選挙を執り仕切ることとなったローレンス枢機卿は、バチカンを震撼させるある秘密を知ることとなる。
ローレンス枢機卿を「シンドラーのリスト」「イングリッシュ・ペイシェント」の名優レイフ・ファインズが演じるほか、「プラダを着た悪魔」のスタンリー・トゥッチ、「スキャンダル」のジョン・リスゴー、「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニらが脇を固める。第97回アカデミー賞で作品、主演男優、助演女優、脚色など計8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞した。
2024年製作/120分/G/アメリカ・イギリス合作
原題または英題:Conclave
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2025年3月20日
出典:教皇選挙 : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 - 映画.com
感想
まず、私の思い出を…。2005年、前々代のヨハネ・パウロ2世 (ローマ教皇) - Wikipediaが逝去されたときの様子です。
当時のセレブが参列。
このときにConclaveが行われてなかなか決まらなかったというのが、ほのかに記憶に残っておりました。そして、この映画「教皇選挙」のタイトルを見たとき、このときのことが思い浮かびました。当時、イタリアに行っていたりしたので、よけい印象に残ったのかもしれません。
2003年8月のバチカン市国
2回目鑑賞したのはTOHOシネマズ日本橋 TCXスクリーン。真ん中の席で鑑賞しましたが、音響がいい映画館だと没入感がすごくて、「Conclave」という場の異常さを肌で感じます。また、システィーナ礼拝堂では収録できず、イタリアのチネチッタにセットを作って撮影したそうですが、美術や撮影もとてもすばらしいです。
題材は地味。普通の俳優さんだとB級の佳作になるところです。が、主演のレイフ・ファインズが、要所要所で光と影を与えているように思いました。また、キャラクターの掘り下げもすごい。冒頭一瞬、とても感情豊かな人物を印象付けますが、首席枢機卿として感情を抑えた演技が光ります。彼が「もちろん Yes,of course」と言うとき、リアルだと見せない泡立つ感情を敢えてみせつつ、微塵とも見せない風に演技をするのが素敵なんですよね〜。
中盤のスピーチは特に素晴らしく、私はimdbにセリフを探しにいっていったほどです。ネタバレの中にありますので、興味のある方はどうぞ。
ここからネタバレ
Conclaveの異常さ
教皇が亡くなった後、レイフ・ファインズ演じるローレンス主席枢機卿はConclaveを執り行うことになります。まず、Conclave前夜には、秘密裡に枢機卿に任命された(イン・ペクトレ)ベニテス枢機卿が到着。そして、いよいよ浮世から隔離されるというときに、Rayがやってきます。
「今 話すのか? もう隔離が始まるのに…」
「お許しを」
それは、「教皇が亡くなる前に、次期教皇候補であるトレンザレ枢機卿が破門された」という晴天の霹靂のニュースでした。
知らせがもたらされたとたん、窓のシャッターがガラガラ…と降りてきて、閂がかけられます。薄暗い闇の中で、選挙を進めることになります。ローレンスは手探りで、選挙を進めなくてはいけません。有力候補はどんな人達だったのか…。
出典:CCLV_movie
アディエミ枢機卿は初のアフリカ出身者の教皇となるのを狙っています。でも、30年前、30歳の頃に19歳の娘を妊娠させて、子供の認知すらしませんでした。故教皇はそれを知っていて、トランブレ枢機卿にその女性を呼び寄せさせていました。
次にトランブレ枢機卿。この枢機卿が破門された原因がシスター・アグネスの助力で、トランブレが他の枢機卿を買収していたことを暴きます。
ローレンス枢機卿が推していたのはベリーニ枢機卿。でも、彼はリーダーシップをとり(れ)ません。選挙のとりまとめのローレンス枢機卿のほうに票が集まっていきます。
ローレンス枢機卿について
ローレンス枢機卿が、Conclaveが始まるときに言った言葉がこの映画のすべてを物語っているように思います。Conclave (2024) - IMDbで探してきました。
「Certainty is the great enemy of unity. Certainty is the deadly enemy of tolerance. When Christ was not certain at the end, Dio mio, Dio mio, perché mi hai ab- bandonato, he cried out in his agony at the ninth hour on the cross. Our faith is a living thing precisely because it walks hand in hand with doubt. Our faith is a living thing precisely because it walks hand-in-hand with doubt. If there was only certainty and no doubt, there would be no mystery. And therefore no need for faith. Let us pray that God will grant us a Pope who doubts. And let him grant us a Pope who sins and asks for forgiveness and who carries on.」
(Google翻訳)
確信は団結の最大の敵であり、寛容の致命的な敵でもある。キリストは最期に確信を持てず、「わが神、わが神、なぜ私を見捨てたのですか?」と、十字架上で9時間の苦しみの中で叫んだ。私たちの信仰は、疑いと共に歩むからこそ、生きているのだ。私たちの信仰は、疑いと手を取り合って歩むからこそ、生きたものです。もし確信だけがあり、疑いがなければ、神の御業は存在しなくなります。 ですから、信仰は必要なくなります。神が私たちに、疑う教皇を与えてくださるように祈りましょう。そして、罪を犯し、赦しを請い、そして歩み続ける教皇を与えてくださいますように。
ローレンスは本当に前教皇のことを全幅の信頼を寄せていたんだと思います。
このチェス盤の隣には、教皇の眼鏡がおいてありました。その眼鏡を見て、うっと涙をこらえるローレンス枢機卿の姿には共感。私も松本零士先生の眼鏡をみたとき、涙が止まらなかったです。
撮影日:2023年6月4日
ローレンス枢機卿は、教皇のために働くことが生きがいだったのだと思います。だから、教皇は彼を「農地の管理人」と呼んだのだと思います。親友のベリーニから「お前、教皇の名前を考えたほうがいい。どうするつもりだ」と言われて、答えた名前は「ヨハネ」。イエスに洗礼を授けたヨハネ…ということは、「推しが輝くとうれしい」性質の人だなんだろうな…と。
ローレンスが意を決して、自分の名前を書いて投票したとたん、爆発が…。
ここで、初めて下界の様子が伝えられます。このConclaveをどう進めるのでしょうか。この構図、まるで宗教画のように見えました。そして、自分の投票が否定されたローレンス枢機卿の落胆が背中から感じられます。
ベニテス枢機卿
一番暗いところに今回のダークホース、ベニテス枢機卿がいます。テデスコ枢機卿が原典への回帰を叫ぶ中で、諫めるのはベニテス枢機卿。
「戦うとおっしゃるが、
何と戦うのです?」
まさに異教徒との戦争の地にいたからこそ、説得力がある言葉。
で、【静かに】啖呵を切ります。
私は、彼の言葉をこんなふうに受け取りました。
「枢機卿がこんなに低俗な人間だと思わなかった!!みんな自分のことしか考えていないじゃないか!!もうこの選挙には2度とくるもんか!!」
私には、彼のふつふつとした静かな怒りがぐさぐさと心に刺さりました。最も痛かったのは、自分の名前を投票用紙に書いてしまたローレンス枢機卿でしょう。あの名前を書いた時点で彼は自分の宗教を失っていたように思うのです。
「The church is not the past. It is what we do next.」
教会は過去ではない。次に我々が何をするかだ
そして、ベニテスは「権力争いは止めて、教会の教えを周縁の人々にまで届けるべき」と主張します。このスピーチは現教皇が枢機卿だったとき、選挙前のスピーチ「権力争いは止めて、教会の報せを周縁の人々にまで届けるべき」に酷似しているとのこと。
選挙が再開されたとき、窓の割れた隙間から、一陣の風が吹いて、鳥の鳴き声が聞こえてきます。その鳴き声におされるかのように全員がペンをとります。鳥が天からのメッセージをもってきたようです。
そして、戸惑う彼が新しい教皇の名前として挙げたのはインノケンティウス。innocence(純粋)の語源になっている教皇の名前です。インノケンティウスを名乗った最後の教皇は、インノケンティウス13世 (ローマ教皇) - Wikipediaで、それも1721年~1724年、300年前の人です。
ですが、またRayから突然の知らせが。ベニテス神父が選挙の前にクリニックに行ったのですが、彼は、インターセックスで子宮をとる手術を取る予定だったというのです。
カトリック教会で、【女性】の性器を持つ人が教皇になるのは異例中の異例というか、司祭以上の職に就くことは認めていないそうです。
けれども、選挙が始まる前に自分自身の言葉として語っていた、「信仰とは確信ではなく、迷いながら進むこと」という言葉を思い出し、この事実を自分の胸にしまうのでした。
ここまでは、前教皇の思惑のとおりにことは運んだのだと思うのですが、それでも、ローレンス枢機卿は、肚落ちしなかったのだと思います。そこで見つけたのは、前教皇がかわいがっていた亀。
出典:CCLV_movie
この亀を見たときのベニテス枢機卿との会話。
ローレンス:
「その亀たちは 教皇が可愛がり アンゴラから贈られた」
ベニテス:
「私も大好きです とても賢い」
その亀は、バチカンの中で迷っていたようです。亀って歩みは遅いけど、とんでもなく遠いところにいたりしますよね。
大広間を抜け、
出典:CCLV_movie
庭を抜け、
出典:CCLV_movie
ようやく泉に戻し、立ち上がった彼の顔は晴れ晴れとしています。もしかすると、彼は教皇の気配を感じたのかもしれません。
出典:CCLV_movie
関連サイト
映画『教皇選挙』公式サイト|2025年3月20日(木・祝)全国公開
教皇選挙 : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 - 映画.com
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