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▼第4回    令和4年11月21日(月)
報告書
「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」報告書(PDF/583KB)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/boueiryoku_kaigi/index.html
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/boueiryoku_kaigi/pdf/20221122_houkokusyo.pdf
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本記事では上記「防衛力有識者の報告書」にツッコミを入れていく。前回の続きだ。

自民党内の反発によって防衛増税は先送りになったが、これは自民党内のプロレスに過ぎないと見るほうが妥当だろう。
あくまで「先送り」であり、増税は必ず執行されると見られる。

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〇防衛力有識者:
⑦歳出改革の取り組みを行う前提として、足らざる部分については国民全体で負担することを視野に入れなければならない。
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これは、行政の無駄を削り増税することで防衛費を捻出するというおバカ計画を示している。

上記に対するツッコミも前回の記事とほぼ同様だ。昭和脳のバカさ加減には「┐(´д`)┌ヤレヤレ」といった具合である。

「歳出改革」とは、財政再建のために緊縮財政政策を講じることだ。

米国の元財務長官でハーバード大学元学長、世界銀行の主席エコノミストでもあるローレンス・サマーズの「THE PERMANENT EFFECTS OF FISCAL CONSOLIDATIONS(財政再建の永続的効果)(2016) 」という論文があるが、そこでは「財政健全化は自滅的だ」と結論づけられている。
特に不況下に増税や緊縮財政をやると経済も財政も悪化するという当たり前のことを説いている。

本文から少し抄訳する。

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「〔GFC=金融危機以降の不況に関して〕 財政健全化によって債務を削減しようとする試みは、GDPに対する長期的な負の影響を与え、『政府債務対GDP比率』を高めた可能性が非常に高い (p.2)」

「債務の持続可能性を回復しようとする政府が、より多く政府支出するべきだという考え方は、ありえない、あるいは "フリーランチ(Rogoff 2015)"と呼ぶ人もいるようだ  (p.26)」

「…この自滅的な財政再建にとって極めて重要なポイントはヒステリシス効果〔*筆者注:負の履歴効果/ 需要の減退が生産力まで毀損する論理〕である。長期的な生産水準の低下は『債務残高対GDP比』を上昇させ、税収の水準も低下させるのだ。
本来、生産高(アウトプット)は常時上昇傾向にあると考えられるので、財政変数も上昇する。
債務が多い政府のレシピは『政府支出対GDP比』を下げることだと思われがちだ。しかし、支出を減らし、その結果GDPも同程度に減らすことは、目的を達成しないばかりか、『債務対GDP比』の上昇を招く。
また、生産高の変化の一部または全部が長期的であることから、緊縮財政は誤った財政政策であると言える。(p.27)」

「…(財政再建に関する)私たちの結果は、GDPへの悪影響が実際に永続的であることを強く示唆している。(p.28)」

ローレンス・サマーズとアントニオ・ファタス「THE PERMANENT EFFECTS OF FISCAL CONSOLIDATIONS(財政再建の永続的効果)(2016) 
https://faculty.insead.edu/fatas/Permanent%20Effects%20Fiscal%20Policy.pdf
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サマーズらによると、債務対GDP比を改善しようと努力すればするほど、逆説的に債務対GDP比は悪化する。
また、緊縮財政(増税や歳出削減)を介した財政再建による「ヒステリシス効果(負の履歴効果=需要の減少が生産力まで毀損する効果)」は、生産水準を低下させ、ついには税収まで減少させる
そのため、景気循環に対抗する財政政策はより積極的でなければならないということだ。


先日論じた「たばこ税」の話と同じで、財務省の「増税したら税収が増える!」という幼稚で短絡的な考えが、1995年以降日本を凋落させてきた原因だ。

防衛力有識者は「足らざる部分については国民全体で負担する」と、国民が負担を分かち合うことをまるで美談かのように表現しているが、マヌケもいいとこである。

年間数兆円分も緊縮財政を行うのだから、サマーズの言う通りGDPも負債額も悪化させるだろう。
このことは、サマーズをはじめ、現財務長官のイエレンやIMF主席エコノミストのブランシャールらの実証研究で同様の結論に達している。

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〇防衛力有識者:
⑧国債発行が前提となることがあってはならない。
戦前、多額の国債が発行され終戦直後にインフレが生じ、どの過程で、国債を保有していた国民の資産が犠牲になった。
国を守るのは国民全体の課題である。
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「国債をいっぱい発行するとハイパーインフレになって財政破綻しちゃう!!」という論理は、幾度となく繰り返されてきた稚拙なデマである。

ハイパーインフレは日本のように「変動相場制を採用し、自国通貨を発行する、情勢の安定した先進国」では起こり得ない。


ハイパーインフレの発生条件

https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12640579954.html
ケイト―研究所のスティーブ・ヘンケ教授によるハイパーインフレに関する論文はこちら。
https://www.cato.org/sites/cato.org/files/pubs/pdf/workingpaper-8_1.pdf

まさか戦争を遂行することが規定事項であるため、戦後のハイパーインフレも見越して国債発行しないとする理屈だろうか(笑)
だとしたら極めて面白い論理展開である。
日本の財政を破綻させようと思ったら、戦争を起こすしかないからだ。

日本のCIA工作員は、中国やロシアとの戦争を起こすために育てられた。
船橋洋一らがそのように考えていたとしても不思議ではない。


デフォルト(財政破綻)と債務残高には関係がないことも示しておこう。
以下はデフォルトした国の当時の債務対GDP比だ。

 



債務対GDP比が10%台でもデフォルトしていることがわかる。(アルバニア:16.6%)
債務対GDP比が高かろうと低かろうと関係はなく、上記で示した戦争や政変が起因となりハイパーインフレ等の原因でデフォルトする。
財務省は国民を脅すために、よくこの債務対GDP比の指標を利用するが、この数字にはほとんど意味はないのである。

次で防衛力有識者会議の報告書は最後だ。引き続きツッコミを入れる。

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〇防衛力有識者:
⑨高齢化が進むなかで、社会保険料等の負担が増すことを踏まえるとともに、成長と分配の好循環の実現に向け…議論を深めていくべきである。
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労働人口が減って高齢化が進むと社保料負担が増すため、GDPが成長し増えた税収分からバランスよく分配しなければならない、というような理屈のようだ。
社保料を増やして(可処分所得の減少)おいてどうGDP成長させようというのかわからないが、とにかく高齢化が進むと成長が抑えられると考えているのだろう。

まず、下図で一目瞭然であるように、労働人口とGDP成長率には相関関係は見られない
人口オーナス論を完全否定はしないが、労働人口が減ってもGDPは成長するのが事実だ。



作成:cargo,Create Common

日本の場合は、本当にどうしようもなくなるターニングポイント(供給能力の崩壊)が来る前に、積極財政により経済を好循環させ少子化に歯止めをかけなければならない。

作成:cargo
金融危機等による不況に対し、増税や緊縮でさらに企業を潰し、供給能力を毀損してきたのが日本政府である。

GDPに最も影響を与える変数が、政府支出額である。

出所:シェイブテイル氏
 
出所:Tasan氏
GDPと政府支出の関係。
*小さすぎて目視できないだろうが、上図の一番左端、つまり世界でもっとも政府支出していないのが日本である。
当然ながら支出しないので成長もしない。

官僚や自称有識者たちは「成長してから分配する」と考えているようだが、事実は逆だ。
「分配(政府支出)しないと成長しない」のだ。



これは1930年代にケインズらによって開発された「有効需要の原理」が「分配が先で成長は後」であることを証明している。
「信用創造によりマネーを作り投資する」ことが最初の起点となる。
貯蓄(税収)から投資(分配)するのではないのだ。

そして「分配」とは、まず政府支出することだ。
政府が支出をして需要(購買力)を民間側に創出しなくては、国民は所得を伸ばすことができず、消費もできない。
お金がなければ誰も消費や投資をしないということだ。
【参考】
▼なぜ、日本人は新自由主義に魅了されるのか?⑤「経営者目線と合成の誤謬」Pt.1
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12725080119.html

▼なぜ、日本人は新自由主義に魅了されるのか?⑥「経営者目線と合成の誤謬」Pt.2
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12728194375.html

▼なぜ日本人は新自由主義に魅了されるのか?④ 「自己責任と弱者排斥」下 ~経済同友会の経済破壊工作
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12721922111.html
「成長してから分配だ!」などとトリクルダウン論を言ってる自称有識者らは、病院に隔離したほうが良いレベルである。
このような倒錯しきった病人まがいの者たちが政府のかじ取りをしてきたからこそ、我が国は発展途上国まっしぐらに凋落したのだ。



防衛力有識者会議や上級官僚、自民党議員の面々が、モノホンのバカなのか外国の工作員なのかは判断できないが、緊縮と増税で国民生活を破壊し、防衛費を倍増させてまで、アメリカの尖兵となって中国との戦争に突き進むことは絶対に阻止しなければならない。

関西学院大学の朴勝俊教授による戦前のドイツや日本に関する研究がある。

1920年代後半~30年代前半に怒った世界恐慌と緊縮財政、金本位制の導入により国民生活が木っ端みじんに破壊され、人心が荒廃、そこに強力な専制政治を掲げる政権が現れ、国民を戦争へと導いていった。
その間、独日政府は経済低迷と国民生活の困窮を他国のせいにし、国民を騙し続けた。

戦前の日本
 
戦前のドイツ


もし、防衛力有識者会議や上級官僚、自民党議員の面々が、「意図的に戦争を起こそうとしている」と仮定するのならば、ここに実に大きな符合があると感じる。
現在の日本政府がド緊縮を貫く理由がわからない。


出所:京都大学大学院教授・藤井聡


我々はウク露戦争において、米英の支援でウクライナのナチスが増長し、ロシア側に対し挑発や戦闘行為(14000人以上が殺害)を繰り返し、防衛費を3倍にして、最後には先制攻撃によってロシアと戦争を始めたことを見てきた。
ウクライナでもその背景に経済的困窮があった。


ウクライナのGDP
https://ecodb.net/country/UA/imf_gdp.html
【参考】 ▼ウ露戦争に学ぶ「戦争の作り方」 日本人の53%が防衛費増額に賛成
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12778173321.html
 *ロシアではなくウクライナが戦争を始めたことは、OSCE(欧州安全保障協力機構)報告から確認できる事実だ。
アメリカのネオコンは同様のことを台湾・日本で起こそうと画策していることは殆ど疑いがない。
「台湾有事に日本を参戦させる」想定がポンぺオ元国務大臣周辺により語られている。
https://cigs.canon/article/20220621_6852.html

中国との戦争を遂行させるミッションがあったため、日本政府や大本営メディアは「ロシアがいきなりウクライナに攻め込んできた!!」とする虚言を宣伝することに必死だったと考えることもできる。
 

 


日本人は本当に世間知らずである。
大本営メディアのプロパガンダに騙されて上記事実を知ることなく、白人のケツばかり舐め続け、いつの間にかナチス陣営に取り込まれようとしている。


本日はここまで。
本シリーズもここでおしまい。

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