昨日5月21日の厚労委員会質疑で、国民民主の高井たかし議員がやってくれました。

結果として非常に良い質問で、財務省側もだいぶ揺らいだと思います。

 

我々は、高井議員に二度の陳情を行いましたが、真摯に対応していただき、その我々の陳情も今回の国会質問で一部触れてくれました。

 

自民党や財務省のバックには経団連や経済同友会なんかの金持ち集団がいるが、高井たかしのバックには私たち国民がいる、と言いたいです。

 

高井議員と伊藤副大臣の質疑応答の内容を軸に、以下で、私なりに財務省への反論を考えました。

 

さあ、念仏副大臣との対決です。

▼ 5月21日 衆議院・厚労委員会 

高井議員の質問は7時間50分くらいより

https://youtu.be/UJl_i_zeVaM?t=28456

【発言要旨】

〇高井議員:

(前略) 財務省が予算編成権を握っているということは何よりも大きなこと。その予算を何のために編成するかと言えば、やはり日本経済を良くし、国民の暮らしを良くするためにある。

財務省のなかでは予算編成というものを、本当に日本経済の発展や国民生活のために考えてやっているのでしょうか。とにかく財政健全化やプライマリーバランスの黒字化に向けて、必要な予算も切り刻んでるのではないかと、私はずっと言ってるんです。

世界のGDPを見ると20年間の平均で2.5倍増えている。アメリカだって2.5倍、イギリスで2倍。最も低成長なドイツだって1.3倍です。

そんななかで日本だけが横ばい。まったく増えていない。

その原因を財務省としては何だと考えますか?

 

〇伊藤副大臣:

国会で予算を決めるという財政民主主義に則って財務省はやっている。

日本経済の低迷が長引いたのは、バブル崩壊以降、企業が投資を控え、将来不安から消費が低迷したことに加え、少子高齢化に伴い生産年齢人口の低下、生産性の伸びの鈍化という影響があった。

(中略)2019年にはGDPは名目・実質共に過去最高水準だった。引き続き、日本経済の成長力を高めていく。ポストコロナに向けて、産業構造の見直し、民需主導の経済成長を実現する。

 

財務省のいつもの虚偽答弁とおためごかしですね。

伊藤財務副大臣は「将来不安から消費が低迷」と、リカード=バローの中立命題的なこと言ってますが、もし国民が将来に不安になって消費しないのなら、それは緊縮財政と財政破綻プロパガンダを続けてきた財務省のせいだと言いたいです。

 

そして、経済低迷の理由を「少子高齢化に伴う生産年齢人口の低下」としていますが、事実はこうです。

生産年齢人口とGDP成長率に、相関関係はありません。

 

また、「生産性の伸びの鈍化」も成長率低下の理由として挙げていますが、生産性は上げるものではなく、上がるものと考えたほうが良いです。

賃金や利益が上がって、はじめて労働生産性は上がりますので、労働生産性を上げることを目的とすれば、コストカットや人員削減などが起こります。そうやって効率化しても、マクロでは下請けや負け組の低賃金化が起こるだけでむしろ経済は悪くなります。

労働者の賃金や企業の利益を上げるためには、政府支出を増やし、需要を温めることが大事です。

 

  出所:Tasanさん

上図でわかることは、政府支出の増減が給与の増減を決定するということです。これが下図のように労働生産性にも関係してきます。

 

上図「20年間の政府支出変化率と労働生産性変化率の関係グラフ」でも一目瞭然なように、政府支出が増えたから労働生産性が上がったのです。「労働生産性が上がったから政府支出が増えた」なんて逆読みは不可能です。

「労働生産性が下がって経済成長率が落ちた}との財務省の論理は間違いで、政府支出を絞る緊縮財政をしいたので、企業の利益や賃金が下がり、成長率も労働生産性もさがったのです。自分達の責任を「企業の労働生産性改善の努力が足りないからだ」という向きで責任転嫁してはいけません。

参考 :  

▼ 生産性を上げるために中小企業を潰し大企業に編入してもGDPは下がるだけ。③
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12655030571.html

▼ スガ首相のブレーンのアトキンソン氏に反論します。③ ~詐欺グラフを看破! https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12667976795.html

そして副大臣の言うような「産業構造の見直し、民需主導の経済成長を実現」をしてはいけません。

今のように需要が停滞しているのに、「産業構造を転換」しようと規制緩和してサプライサイドをいじくっても、過当競争に陥ったり、競争に敗れるかたちで失業を増やすだけで、結果は悪くなるだけです。

財務省や経産省の言う「民需主導」とは名ばかりで、これは彼らが財政を出したくないばかりに、僅かな税優遇と助成で「あとは民間で勝手にやってくれ」というものです。この低需要でディスインフレの経済状況下で、民間が需要を拡大させるためには、政府が支出し、企業を支えなければなりません。

参考:  ▼「改革して生産性を上げても給料は増えない」~新自由主義者の間違い【下】
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12612426911.html

 

高井議員の質疑に戻ります。

 

【発言要旨】

〇高井議員:

日本では国会で予算の修正なんてほとんどない。アメリカは国会の予算委員会で半分くらい予算が変わる。日本の仕組みでは財務省が殆ど決めちゃうんです。その責任を担っていただきたい。

 

日本経済の低迷の原因は、やはり消費が落ち込んでるということ。

これには財政出動と消費減税が必要。増税のたびにGDPは落ちてるんだから当然です。 

そして消費してくれる中間層・低所得者層に給付すべきです。 

それから成長分野のITなんかへの投資が必要。

財務省の見解はいかがですか?

 

 

〇伊藤渉・財務副大臣(公明党):

経済成長を維持・促進するために成長戦略を加速させ潜在成長力を高める必要がある。ポストコロナに向け、デジタル・グリーン化をはじめ、産業構造の見直し、民需主導の経済成長を実現する。

これまでも機動的な財政政策を行ってきた。ご存じの通り足元では新型コロナの対応として感染対策や雇用・生活の支援を行うと共に中長期的な成長力の強化も進めている。

 

一方で債務の持続性や財政運営に対する信認が失われれば、悪い金利上昇や過度なインフレを含め国民生活に重大な影響が及ぶ懸念がある。民需主導の経済成長を実現するとともに、歳出歳入改革をつづけ、経済再生と財政健全化の両立を図る。

 

消費減税について。2019年の消費税の引き上げは、全世代型社会保障に転換していくためにどうしても必要だ。消費税率を引き下げることは考えていない。

 

中間層・低所得者層の支援については、新型コロナの影響を受ける方々については、先ほども言ったように、雇用・収入・住まいの確保などの様々な課題に対応したきめ細かな策を引き続き講じる。

そのうえで持続的な消費拡大を実現するために、ポストコロナに向けた成長分野への民間投資を喚起し、生産性を高めるなかで、最低賃金の引き上げなどを通じた賃金上昇を促すことが重要だと考える。

 

IT・デジタル分野には予算を重点配分する。生産性の向上に向けて真に効果的な施策へと、予算を重点化する。令和三年度予算は三次補正予算と合わせて、感染拡大防止に万全を期し、グリーン化・デジタル化など経済成長に資する予算にしている。

 

高井議員の応答は、真正面からの答えで、一切の間違いはありません。

日本経済の低迷の原因は消費の低迷(需要の低迷)がもっとも大きいです。低中間層の消費を喚起するために財政出動・消費減税をしなければなりません。

 

財務省は「これまでも機動的な財政政策を行ってきた。ご存じの通り足元では新型コロナの対応として感染対策や雇用・生活の支援を行うと共に中長期的な成長力の強化も進めている」「雇用・収入・住まいの確保などの様々な課題に対応したきめ細かな策を引き続き講じる」と言っていますが、スガ政権は緊急事態宣言下であっても、持続化給付金や家賃支援給付金、総合支援資金を打ち切りにし、雇用調整助成金も縮減したのによく言うわと、怒りを禁じえません。

私自身もコロナ禍で所得を7割も失い、各種給付金事業に申請しましたが、家賃支援金は「申請書の自署の項が直筆ではなかった」ことを理由として、申請を落とされました。

彼らはなるべく多くの困窮者を蹴落とそうとしているとしか思えません。

集団訴訟を計画しているので、必ず財務省・経産省・厚労省を追い詰めます。

 

また、「債務の持続性や財政運営に対する信認が失われれば、悪い金利上昇や過度なインフレを含め国民生活に重大な影響が及ぶ懸念がある。民需主導の経済成長を実現するとともに、歳出歳入改革をつづけ、経済再生と財政健全化の両立を図る」とのことですが、財務省は「財政の信認」について、それが一体何なのかいっこうに答えることができません。

高井議員がこの後に指摘するように「金利はコントロールできる」ので、高騰することはありませんし、インフレに関しては、30年近くデフレ/ディスインフレ経済を続け、財務省自身がインフレを抑える財政運営を完璧にこなしてきたのに何を言ってるんだか理解不能です。インフレを抑えたいのなら、財務省がやってきたように増税・緊縮をすれば良いのです。

財務省は同じウソを念仏のように唱える似非宗教者まがいの非科学的姿勢をやめたほうがいいですよ。

 

さらに「成長分野への民間投資を喚起し、生産性を高めるなかで、最低賃金の引き上げなどを通じた賃金上昇を促す」と、先ほどと同じような念仏を唱えていますが、「成長分野への投資」は「選択と集中」という企業経営者や投資家の典型的スタンスそのものです。

クリーン化・デジタル化もやるべきですが、行政が、儲かるとか儲からないで投資先を判断するのはもってのほかです。潜在的需要はあるけど成長しない分野、低生産性分野とされる介護や教育、小売りや娯楽、サービス分野を中心に、中小企業や地方なんかにこそ投資して、国民生活を支えるべきです。そうすれば必ず消費が増えて、自然と好景気や税収増としてバックが返ってきます。

下図のように、中小企業は「需要が停滞してるから商売あがったりだ」と言っています。そういう分野を自助・共助で済まして見捨てるなんてもってのほかです。

 

参考 ▼ イエレン財務長官「労働生産性上げたいんなら、需要を増やさなあかんで!」とスガ政権を真っ向から否定
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12655638358.html

上図:成長しそうな分野にだけ投資するのは愚策です。教育・医療・介護のような低生産性分野とされる分野にも投資すれば、波及効果は高く出るのです。

 

財務省・経産省を中心に、サプライサイド改革の一環として労働生産性を無理やり上げようとしていますが、それはまったくの間違いです。

労働生産性を向上させるためには、利益を上げるか、材料費等のコストを下げるか、人員を削るかでしか実現できません。利益を上げるということは、銀行貸し出しによる信用創造を伴わなければ他人から何かを奪うことにほかならず、材料コストを下げるということは下請けの買い叩きにしかなりません。また、言わずもがなですが人員を削れば負け組の低賃金化でマクロの需要が減退します。

つまり、労働生産性を無理に上げようとしても、殆どの場合「合成の誤謬」が起こり、悪い結果に繋がるだけなのです。

 

そして「最低賃金の引き上げなどを通じた賃金上昇を促す」ともっともらしいことを言っていますが、財務省は最賃上げに伴う中小企業の不利益を考えず、助成をすることなくこの施策を進めようとしています。まったく愚かなことですが、スガ政権とアトキンソン氏の計画を鑑みれば、「最低賃金を上げることで、低生産性分野の中小企業を潰す」という目論見があらわになります。これは、中小企業を疲弊させれば、大企業にM&Aさせやすくなるという計画のための布石であるとわかります。

スガ政権の「中小企業潰しという火事場泥棒」に関しては、以下ツイートでも少しまとめています。

 

 

そして、財務副大臣は「賃金を上げる」とか言ってるけど、結局、財務省が緊縮財政を続けた結果、賃金は駄々下がりじゃないですか

なぜ25年以上も間違え続けた反省をしないで、民需主導とか労働生産性を上げるとかっていう、過去の過ちを繰り返すのですか。

 

出典:藤井聡教授

http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/02/PB_pptx/PB.pdf

 

最後に「生産性の向上に向けて真に効果的な施策へと、予算を重点化する。令和三年度予算は三次補正予算と合わせて、感染拡大防止に万全を期し、グリーン化・デジタル化など経済成長に資する予算にしている」と、再び同じ念仏を唱えていますが、三次補正予算の中身を見れば、彼らがどれだけレントシーカーへの利益誘導のみを考え、体力のない中小企業は置き去りにしようとしているのかが見えてきます。

参考:

▼ 「中小企業潰し」を進める財務金融委員へのプロレタリアート攻勢
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12660771437.html

▼ IMFが警告!!スガ政権の「中小企業潰し政策」を完全否定!逆にM&A規制しろと警鐘を鳴らす!
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12663371158.html

次で終わり。

高井議員と伊藤副大臣のやりとりの最後です。

 

【発言要旨】

〇高井議員: 

反論したいことはいっぱいあるが、時間がないので、お渡しした資料にあるように最後に二問だけ質問したい。

 

2019年四月に財務省の財政制度審議会が配った資料には、嫌がらせじゃないかという感じで、経済学者のMMTへの批判コメントを連ねていた。

でも、その中の経済学者たちは、それから二年経たないうちに、コメントを翻している。

全部は読みませんが、例えばクルーグマンは二年前の財制審資料では「債務が雪だるま式に増える可能性がある」と言ってたのが、その発言後は「政府の負債は雪だるま式に増えるのではなく、逆に溶けていく。政府は借りた金を返す必要なんてない」と翻している。他の方たちも同様です。

 

なぜそうなっているのか。このコロナ禍で、本来上がるはずの金利が全然上がらないんです。つまり、金利はコントロールされていると。そういう状況を見て多くの専門家が意見を変えているんです。

 

日本でも伊藤元重さんという緊縮財政の代表格のような方でさえ、「過激な財政政策を多くの専門家が支持していることには注目すべきだ。長期構造的な不況を解消するためには次元の違う大胆な財政支出が必要となる。そう考える専門家が増えてきたのだ。コロナ危機はそうした財政政策の転換の大きなきっかけを提供することになった」と考えを変えている。

 

そして、統合政府論に関して。財務金融調査室が作った資料では、統合政府に賛成の人が24,反対の人が17です。

この結果をどう受け止めるのか、財務省にお聞きしたいです。

 

 

〇伊藤副大臣:

資料は拝見しました。(財制審資料にあったMMT批判コメントを投じた)数々の経済学者の最近のコメントは「新型コロナへの回答として積極的に財政出動すべき」という議論をしたものであって、そもそもMMTを論評したものではないと理解しています。

例えばイエレン財務長官は、公聴会で「持続可能で責任ある政策を立案するためにも、金利上昇リスクを考慮する必要がある」等と述べている。

 

いずれにしても政府としては、財政運営に対する信認が失われることになれば、過度なインフレや金利上昇が起こる可能性を否定できないので、国民生活にも悪影響を与えかねないと考えて、財政運営を行う必要があると考えている。

 

統合政府論に関しては、日銀は政府から独立して金融政策を決めているのにも関わらず、政府は日銀が永久に国債を購入・保有し続けることを念頭においているのではないか。したがって結果的に財政ファイナンスを狙っているのではないかとの誤解を招きかねず、やはり適当ではないと考えています。

仮に政府と日銀のバランスシートを統合し、日銀の保有する国債、つまり資産でその分の政府の債務、つまり国債を相殺する場合、確かに日銀の保有する国債の額だけ、政府の債務は見かけ上減少するとこにはなる。

しかし銀行券や当座預金といった日銀の負債もバランスシートの統合により、負債に計上されることになるため、トータルとして、ネットの負債超過の状況は変化しない、というふうに理解しています。

大事なことは、統合という会計処理によって見かけ上債務を減少させることではなく、財政健全化に取り組み、しっかりと財政を持続可能にすることが重要です。

 

〇高井議員: 

副大臣も財務省に洗脳されてしまっているようで大変残念ですけど、政治家しか変えれませんからね。

財務官僚のなかでは変わりませんから、ぜひ財務大臣、副大臣に頑張っていただきたいと思います。

 

 

「クルーグマンは二年前の財制審資料では「債務が雪だるま式に増える可能性がある」と言ってたのが、その発言後は「政府の負債は雪だるま式に増えるのではなく、逆に溶けていく。政府は借りた金を返す必要なんてない」と翻している。他の方たちも同様です」

このコロナ禍で、本来上がるはずの金利が全然上がらないんです。つまり、金利はコントロールされていると。そういう状況を見て多くの専門家が意見を変えているんです」との高井議員の応答は完璧ですね。

 

クルーグマンの発言は以下の通りです。

他にも財制審資料のときから、意見を翻した学者が多数いるので、一部の比較発言も少し貼ります。

手のひらがクルっと返ってますので、面白いですよ。

 

 

伊藤副大臣は「(財制審資料にあったMMT批判コメントを投じた)数々の経済学者の最近のコメントは「新型コロナへの回答として積極的に財政出動すべき」という議論をしたものであって、そもそもMMTを論評したものではない」と言っていますが、議論を矮小化させ誤魔化していますし、これはコロナ禍だけを限定しての議論ではありません。

重要なのは、世界の有名学者が、「金利が低ければ赤字支出できる」としていることで、金利が中銀のコントロール下にあることを認めていることです。そしてその金利は、100年に一度の災害のコロナ禍でもコントロールできるんだから、平時でもコントロールできるということです。

MMTこそが「金利は政策変数である」ことを主張し続けてきたんですよ。

 

高井議員が触れた伊藤元重氏の発言を抜き出しましょう。

伊藤元重(東京大学名誉教授):

 主要国の経済成長率は低迷を続け、長期金利は下がり続けている。日本でいえば1990年に7%を超えていた10年物国債の利回りがその後ずっと下がり続け、最近ではゼロ近傍で推移している。米欧も同じような状況だ。コロナ危機の有無に関係なくこうした長期構造的な不況を解消するためには次元の違う大胆な財政支出が必要となる。そう考える専門家が増えてきたのだ。コロナ危機はそうした財政政策の転換の大きなきっかけを提供することになった。

伊藤教授の言うように、コロナ危機の有無に関係なく、金利が低く抑えられているのだから財政出動できる」のです。

 

ドーマー条件やMMTに関して述べた、浜田宏一(元内閣参与・イェール大学名誉教授)氏の発言に注目してみましょう。

財務省の言う「MMTに関する議論じゃない」が、話を矮小化していることがわかりますね。

世界の主流学者たちは、予算制約が債務の大きさに限られるものではないことに気づいて、主張がMMTに近づいてきたのです。

(浜田氏の言う「経済に過剰な貯蓄がある場合」というのは、民間銀行預金のことではないですよ。新発債は民銀預金ではファイナンスされませんので)

 

また、財務副大臣は、「例えばイエレン財務長官は、公聴会で「持続可能で責任ある政策を立案するためにも、金利上昇リスクを考慮する必要がある」等と述べている」としていますが、財務省はイエレン財務長官の発言から、自らの念仏に沿う都合の良い部分だけを切り取っています。

最近のイエレン氏の発言を見てみましょう。

 

イエレンは、「インフレを抑制するための利上げを予測していない」、「例え金利が上昇したとしても経済に純利益をもたらす」のことです。

財務省のチェリーピッキングした「持続可能で責任ある政策を立案するためにも、金利上昇リスクを考慮する必要がある」なんて発言はお題目みたいなもんですよ。 逆に「金利上昇リスクを考慮しない」なんて公聴会で言えるわけないでしょうが(笑)

 

国家の財政運営をまかされる財務省は、各方面の識者の、あらゆる発言を点検し、国民経済を浮揚させるための方策を考えなければいけません。なのになぜ決まりきった古代の念仏に沿うものだけを切り取って採用するのでしょうか。

主流派が信仰するマンキューの教科書「マクロ経済学」の序文にもこうあります。経済の全側面を説明できる一つの完全なモデルがあるかのように書くのではなく、重要な諸モデルを使いこなしかつ比較できるように学ぶことを勧める。(中略) 経済学者は、経済現象や公共政策を分析するにあたって、つねにいろいろなモデルを頭の中に持っているものなのである

財務省は、スキさえあれば「財政運営に対する信認が失われることになれば、過度なインフレや金利上昇が起こる可能性を否定できない」との念仏を繰り返しますが、あなたたちは壊れたBotなんでしょうか? 

「財政の信認」というご本尊を拝んでるだけで、財政民主主義に則った議員からの指摘に耳を貸さないような姿勢であるのなら、財務省に予算編成を任せることはあまりに不毛であり、逆に危険であると言わざるを得ません。

 

そして統合政府論に関してですが、副大臣は「日銀は政府から独立して金融政策を決めているのにも関わらず、政府は日銀が永久に国債を購入・保有し続けることを念頭においているのではないか。したがって結果的に財政ファイナンスを狙っているのではないかとの誤解を招きかねず…」と言っています。

 

まず、「日銀の独立」は賞賛されるべきではありません。なぜ選挙という民主主義的な手続きを踏まずに選定された総裁や理事が日本の金融政策のかじ取りを勝手に行っているのでしょうか。私たち国民は彼らに信託した覚えはありません。

そして、伊藤副大臣は、中央銀行というものが『最後の貸し手 (Last Lender of Resort)』の任務を請け負っている事実をご存じないようです。中央銀行が政府の債務をどこまでも引き受けることは世界中の国で常識です。バカなことを言うものではありません。

 

 

日本銀行法第1条と第4条に明記してあるように、日銀は、「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的」とし、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう」にしなければならないのです。

 

さらに伊藤副大臣は、何やら「財政ファイナンス」をいけないことかのように語っていますが、日銀法34条をご存じないようです。日銀による政府債務の直受けは、実際に行われています。

 

https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exseifu01.htm/

 

日銀の直受けなくして、どうやって国庫短期証券を発行し借り換えを行っていたのか、説明していただきたいですね。伊藤渉氏のような無知な人物が財務副大臣を務めていることに、いち国民として大きな不安を覚えます。

 

 

加えて伊藤副大臣は「仮に政府と日銀のバランスシートを統合し、日銀の保有する国債、つまり資産でその分の政府の債務、つまり国債を相殺する場合、確かに日銀の保有する国債の額だけ、政府の債務は見かけ上減少するとこにはなる。

しかし銀行券や当座預金といった日銀の負債もバランスシートの統合により、負債に計上されることになるため、トータルとして、ネットの負債超過の状況は変化しない、というふうに理解しています。

大事なことは、統合という会計処理によって見かけ上債務を減少させることではなく、財政健全化に取り組み、しっかりと財政を持続可能にすることが重要です」と続けています。

 

このくだりもいつもの聞き飽きた念仏です。例の19年の財制審資料のP.14にも同じ文言がバカの一つ覚えのように出てきます。

彼は「BSの日銀の負債の部にあるお金が多い!」と畏怖していますが、そのお金は民間銀行の日銀当座預金であり、我々国民が手にする紙幣なのですよ。「国民がいっぱいお金を持ってて怖い!」と言ってるようなものです。ヤバい奴だろそれ。

しかも話を誤魔化すために意図的に「統合政府のネットの負債超過は変わらない」と言っていますが、その統合政府の負債超過分が誰の資産なのかには触れません。何か国全体の負債が増えたかのような印象操作を行っています。

伊藤副大臣は自分の答弁の内容も理解できず、財務官僚の書いたペーパーを読むだけの無能な念仏ラジコンという様相で、ほんとうに情けない限りです。

 

以下で統合政府の超過負債は、誰の資産なのかについて説明します。

まず絶対的な鉄則として「誰かの負債は誰かの資産」であることをイメージください。必ずペアになって(見合いとして)この世に創造されます。

お金の正体は、中央銀行の「負債」です。

日銀券も兌換紙幣だった時代は米ドルや英ポンドと同じような文言が書いてありましたが、現在の不換紙幣となった「日本銀行券」からは、紙幣が中央銀行の負債であることを示す記述は消えてしまいました。

しかし中央銀行の賃借対照表(バランスシート)には、紙幣(中央銀行券)が中央銀行の「負債」であることがちゃんと明記されています。

そして政府+日銀を連結した統合政府のBSを見た場合、以下のように資産(この場合は純負債のみ)と負債(国債や準備預金、日銀券)でバランスします。これを世の中全体(図の右側)と合わせて総合的なBSとして見れば、統合政府の負債である準備預金や国債は民間銀行の資産であり、また、民間非金融部門、つまり私達国民の銀行預金という資産になっていることがわかります。

赤い丸は赤い丸とペアになっていて、青い丸同士はペアに、そしてオレンジの丸同士はペアです。

 

  *朴先生のBS図に、私が下部の文字と赤丸等を加筆しました。

  *上図では統合政府がすごい負債超過で、資産の部が全て負債になってしまっているように表されていますが、実際はこんな感じです。

  *BSのルールでは資産が超過したら負債の部に、負債が超過したら資産の部に記します。参考 

 

そして民間非金融部門の負債の部に「純資産」と記入されているように、我々の家計は「資産超過」です。その純資産はどこから来たのか? そう、統合政府の資産の部にある「純負債」という負債超過です。(青い丸のペア)

つまり、財務省が恐れ、「減らさなければいけない!」と言っていた「統合政府の負債」の正体とは、「私たち民間の資産(貨幣)」というわけです。 え、ひょっとして財務省は民間の資産を減らそうとしてるんですか??

 

統合政府がお金を作る(国債も広義でお金です)と、我々の資産が増える。 ただそれだけのことです。

 

誰かの負債が生まれるとき、誰かの資産が生まれます。

だから「統合政府の負債超過がーー!!!」と言ってる伊藤財務副大臣のような人がいたら、「それって俺たちが持ってる資産(お金)のことなんだけど」と返答してあげてください。

 

上記の状態を、先に触れた浜田宏一氏はこう表現しています。

 

 

「借金は返さずに将来世代に繰り延べる」とは、国債が満期を迎えたときに借り換える行為のことです。

満期到来債は永遠に借り換えるだけです。(上述した財政ファイナンスを介して)

 

バランスシートが苦手な人のために、もっと簡潔に図にするとこうなります。

 

 

さて、反論は以上です。

念仏ラジコン・伊藤渉副大臣(公明党)とその操縦者・財務官僚の見え透いたトリックは、すべてお見通しです。

 

高井議員は最後に「副大臣も財務省に洗脳されてしまっているようで大変残念ですけど、政治家しか変えられませんから頑張ってほしい」と激励しますが、彼の心には届いたのでしょうか。

私は、彼が魂と引き換えに、財務省から何かを貰って、ラジコンになったのだと思っています。

 

これからも高井議員には鋭い質問を通して経世済民のためにご尽力いただきたいと思います。

 

長文を最後までお読みいただきありがとうございました。

では、また次回。

 

cargo