スガ首相やアトキンソンさん、財務省や経産省は、「中小企業の労働生産性が低いから、大企業に合併させれば全体の労働生産性もあがって経済成長するのだ!」として、中小企業を潰し、大企業にM&Aさせようとしています。

コロナ禍で(コロナ禍でなくても)疲弊する企業にそんなことをしたら、余計に不況を深めてしまうことは明白ですが、彼らはこのショックドクトリンを荒療治か何かだと勘違いして完遂させるようです。


出所: 日経新聞 2020/7/21

先日立命館大学の松尾匡教授が「コロナショックドクトリンの歩み(学習会資料)」として薔薇マークのサイトに資料をアップしていました。
スガ政権やレントシーカーの皆さんがこの「中小企業潰し政策」によって何をしようとしているのかが、うまくまとまっていると思います。
ここ数か月、松尾先生と話をしていなかったですが、だいたい私と似たような認識でいてくれていて嬉しく思いました。


先日お伝えしたように、彼らがマクロ経済学的にも完全に間違っている政策を進めるのは、日本をグローバル金融資本の草刈り場にする計画が進行中であるからにほかなりません。

スガ首相のブレインのアトキンソンさんなんかは、元ゴールドマンサックスで、現在は敵対的買収(TOB)を業務とする三田証券の社外取締役ですので、自らが金融資本のエージェントであることを隠そうともしません。

このような外国人のエージェントが政府の中枢で好き勝手に工作活動を行っている事実を、多くの人がちゃんと批判できるようにならないと、亡国まっしぐらです。

よくある二流アニメやハリウッド映画では、頭のおかしい金持ちがガイア論を持ち出して、増えすぎた人間を抹殺しようと大量破壊兵器を使用するというような物語が描かれます。
スガらの集団は、そういう構図そのまんまに(おそらく善意で)人口削減計画を実行しているようにさえ見えます。

生産性の高い大手や外資組織に属する人間のみを救い、それ以外を故意に見捨てようと(殺そうと)しているのですから、いわばまさに(潜在的)大量殺人犯です。

既に彼らの人口削減計画の中、昨年後半は前年比で千人以上の命が犠牲になりましたし、100万人近くの失業者が生まれました。



彼らは人間の優劣を、自らの歪んだ利己的判断により選別する、ヒトラーやスターリンのような優生思想主義者に他なりませんし、その手法は毛沢東の文化大革命そのものです。
反日ならぬ反民主主義者であり、全人類の敵といえるでしょう。

これは、「思想A 対 思想B」の戦いなのではなく、「俺たち人類 対 反民主主義者たち」の戦いと考えることができます。

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さて、本日は、イエレン新財務長官の「労働生産性が落ちるのは需要がないから」という主旨の演説の翻訳をしようと思うのですが、その前に、日本政府がどれだけ誤った認識を持ち続けていたのかもう少しお話しようと思います。

経済産業省は何十年もずーーーっと同じ間違いを持ち続けていて、経済学における「道具」の使い方を誤り続け、経済の下部構造(前提条件)を逆転させてしまっています。


出所:経産省 中小企業白書
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/16/dl/16-1-2.pdf

*追記
上記の労働生産性は名目ではなくマンアワーベース(雇用者数×労働時間)であった。本記事執筆時の筆者は下記説明で「名目」だと勘違いし、混同した表現もあるので注意してほしい。
マンアワーベースの労働生産性は、おもに雇用者一人当たりの労働時間を減らすことによってもたらされると考えられる。
しかし、上記の実質賃金の上昇とマンアワーベースの労働生産性向上の関係は、あくまで相関関係であって、因果関係ではない。政府支出の増加による需要増というもっとも大きな要因が無視されている。これは「ミクロ的基礎づけ」に拘泥するあまりマクロ経済の基本を忘れた結果。


経産省によると、「実質労働生産性が上昇すると実質賃金が上昇する関係がみられる」とのことです。

私たちが何度も証明しているように、ミクロで見たら経産省の言う通りだけど、マクロで見たら労働生産性を無理やり上げるために雇用を流動化させるんだから、「合成の誤謬」の効果によって総雇用者の平均所得が減ることは明らかです。

また、上図で、「労働生産性上昇→実質賃金上昇」となっているように見えるのは、実際は「実質賃金上昇→労働生産性上昇」であったからだと思われます。

彼らは、事象をが逆転させて分析してしまっているのです。(*追記:少なくとも因果関係を証明していない)
日本の場合は、実際に無理やり雇用を流動化させ、労働生産性向上に努めてきたこの20年で、実質賃金も10%以上減退しているのですから、これ以上の証拠も必要ないでしょう。


出所:国公労連の雑誌『KOKKO』編集者・井上伸氏

彼らは事実を無視して、既にカビの生えた、誤りが確定した理論を用いて、事象を逆転させて分析してしまっているのです。
これは、マンキューの「経済の10大原則のその8」 や、ワルラスの法則、またはルーカスのリアルビジネスサイクルにおける「代表的エージェント」なんかに影響を受けすぎて、その妄想を肥大化させてしまった結果となるでしょう。
これらのミクロ経済のモデルでは、代表的個人の生産性が高まると実質賃金が上がり、全体も成長するというような結論になっています。

労働生産性の公式(労働生産性=GDP÷雇用者数)は、賃金を含む付加価値額や総生産であるGDPを元に割り出すものです。因果関係を逆転させてはいけません。

経産省は上記のようなバカみたいなことを延々と各年の中小企業白書で語っています。

企業は規模を大きくすれば労働生産性が高まり、IT化して海外に売れば儲かるだとか、みんなで頑張れば日本の再生!だとか…、ただただ意識高い系のグラフや試算をたくさん載せて、無駄の削減を頑張った企業にはちょっと補助金つけますよという話が延々繰り返されているのです。
企業が合理的に行動すれば経済成長する、と間違った下部構造のうえに組み立てられた上部構造だけに焦点を当てるのみです。

下図のように、中小企業の経営者の皆さんが答えを出してくれているのに、彼らは見向きもしません。


出所:経産省・中小企業白書 中小企業経営が直面する問題
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf


賃金や労働生産性、GDPがうまく上がらない理由は、「需要の停滞」なんですよ!

彼ら官僚は、メシを食うのに2時間もかける、非効率的にも見えるフランス人やイタリア人、スペイン人、ギリシャ人の労働生産性が、日本人より高い理由を真剣に考えたことがないのかもしれませんね。



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この官僚の愚かな考えを完膚なきまでに打ち砕くような論説を、イエレン氏が2016年のFRBの基調演説で語っています。

「需要の不足が供給側に悪影響を与えるというヒステリシス効果」と「需要の増大が労働生産性の向上につながる」こと、そして、「代表的エージェント(合理的経済人)の考え方が誤っている」ことを語っているのです。

イエレン氏は現在バイデン政権の財務長官であり、ノーベル経済学者のアカロフの配偶者でもあるバリバリの主流派系学者といえます。

そのイエレンに4年半も前に完全否定された論理を妄信し、誤りを認められず、インパールに前のめりで突っ込んでいってるのがスガ政権とアトキンソン、そして官僚たちです。

以下に抄訳します。
 


▼ 「危機後のマクロ経済研究」
ジャネット・L・イエレン議長  2016年10月14日
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20161014a.htm

【前略】

総需要の持続的な不足が経済の供給側に悪影響を及ぼす可能性があるという考えは、一般的に「ヒステリシス」と呼ばれる効果となりますが、これは目新しいものではありません。

【中略】

最近のいくつかの研究では、深刻で継続的な景気後退が、その大部分が総需要のショックに起因すると思われる景気後退であっても、歴史的にこの種の長期的な影響を及ぼしてきたことを示す国際的な証拠が示されています。

【中略】

この供給側のダメージの多くは、深い不況とそこからの回復の遅さの結果として生じたいくつかの展開に起因しているとされています。

特に、危機後の米国では、移民の減少による労働力供給の減少や、景気循環、人口動態的要因では説明できないほどの労働力参加率の低下、また労働生産性の予測成長率の著しい鈍化が見られました。

労働生産性の鈍化は、危機以降の企業の資本蓄積のペースが異常に遅いことに加え、近年の研究開発費の急激な減少や新規企業の設立のペースが非常に遅いことを反映している可能性が高いといいます。

仮に、深刻な景気後退の後に、ある程度のヒステリシスが存在すると仮定した場合、当然のことながら次の疑問は、総需要が堅調で労働市場がタイトな「高圧経済」を一時的に運営することによって、こうした供給サイドの悪影響を反転させることが可能かどうかということになります。

これが起こる可能性は確実に特定することができます。企業の売上高の増加は、将来の見通しに関する不確実性の低下を伴う場合は特に、追加の設備投資を促すことによって、経済の生産能力を高めることがほぼ確実となります。

さらに、労働市場がタイトになれば、それまで傍観的であった潜在的労働者が引き込まれ、より効率的な、ひいてはより生産的な仕事のマッチングにつながる可能性もある。

最後に、投機的ではありますが、強い需要は、とりわけ研究開発支出の水準を高め、新しく革新的な事業を始めるインセンティブを高めることによって、生産性の大幅な向上をもたらす可能性もあります。

ヒステリシス効果(およびそれらが逆転する可能性)は、金融・財政政策の運営に重要な影響を与える可能性があります。

例えば、ヒステリシスの存在は、政策立案者が迅速かつ積極的に景気後退に対応することをさらに重要にします。なぜなら、そうすることは、景気後退の深さとその持続性を減少させ、それによって、引き起こされるであろう供給サイドのダメージを抑えるのに役立つからです。

【中略】

多くのマクロ経済学者は、家計や企業といった個々のプレイヤーのグループが、グループ全体の行動を代表する単一の 「代表的エージェント」として扱われるモデルを用いています。例えば、マクロモデルは、多数の異なる世帯の個別の行動を明示的にモデル化してから合計するのではなく、その代わりに、単一の 「平均的な」世帯の行動がすべての世帯の集合的な行動を表すことができると想定する場合があります。

金融危機以前は、これらのいわゆる代表的エージェントモデルは、多くのマクロ経済問題を分析するための支配的なパラダイムでした。

しかし、大不況のいくつかの重要な側面を理解するには、細分化されたアプローチが必要と思われます。

一例として、住宅資本のマイナスが消費に与える影響を考えてみましょう。一般的に、家計は富の減少に対応して支出を削減しますが、実際には住宅価格の低下によって家計の持ち分がマイナスになった多くの世帯は、借入能力が著しく低下したために支出をさらに大幅に抑制した可能性があります。このような動きは、住宅エクイティ(全体としては堅調に推移していた)と経済全体の個人消費との関係を変化させることになります。

このような集約された関係における変化は、分解されたデータとモデルを使用することなく理解・予測することは困難となります。

【後略】
  この演説の存在を教えてくれたちぃさんに感謝します。

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結局、イエレンの言ってることに沿うと、今の日本は以下のようになります。

日本政府は「労働生産性向上 → 賃金上昇 → GDP増加」と、誤った前提(下部構造)を置いてしまっている。

でも、正しい前提(下部構造)は「政府支出 → 需要増加 → 賃金上昇 ≒ GDP増加 ≒ 労働生産性向上」となる。

*注:需要を増やしただけでも賃金は上がりません。労働組合の価格交渉や政府の労働規制強化などの変数の追加が必要です。

イエレンに「需要の減退が供給サイドの破壊や労働生産性の減少をもたらしているので、景気低迷期は政策立案者の迅速で積極的な金融・財政政策が重要だ」と4年半も前に言われているのに、日本政府は、「ヒヨコに卵を産ませること」を前提としてしまっているということです。

「ヒヨコに餌をやってニワトリに育てる」前提が抜け落ちているのです。

前提が抜けているばかりか、ロクに餌を与えず、無理やり卵を産ませようとして虐待し続けられたヒヨコは、不健康で栄養失調のニワトリに育ってしまい、もう卵が産めるような身体ではありませんでした。

それが、この25年間の日本国民です。




本日はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございます。

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