本日は菅首相のブレーンで、中小企業潰し政策の旗振り役であるデービット・アトキンソン工作員に反論していきます。
「高卒の俺がエリートを論破する」シリーズです。

毎回、アトキンソンさんのわけのわからない記事に反論するのは骨の折れる作業ですが、「間違ってるものは間違っている。間違った論理が政府の政策立案に影響を及ぼしてはならない」という思いのもと、ネット空間にアーカイブを残しておかなくてはなりません。

本日はこの記事に反論します。
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仮にMMTが正しくても「特効薬にはならない」訳  積極財政による日本経済再生の可能性と限界
 デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長 
 2021/03/10 10:00
https://toyokeizai.net/articles/-/415139
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アトキンソン氏:
「生産性が低い原因は、需要不足です。そして、その原因は、政府が緊縮財政を長年行ってきたからです」
前回の記事(「デフレだから生産性向上は無理」という勘違い)を読んだ読者から、こういったコメントがありました。

生産性向上は日本経済の最大の課題なので、数回にわたってこの指摘が正しいのか、冷静かつ客観的に検証してみたいと思います。この意見のどこまでを肯定できて、どのような示唆が得られるかを探っていきます。

先ほどの指摘をする人たちは、「デフレは、供給に比べ需要が足りないことが原因で起きているので、需要を増やすべきだ」という理屈を展開しています。そして需要が足りないのは緊縮財政に原因があるので、財政を積極出動し、インフレに持っていけば、経済は復活するという主張をしていると推察できます。
(中略)
日本の政府支出の水準は、高所得の国の中でも高いほうです。世界銀行によると、高所得の国のGDPに対する政府支出が平均17.8%だったのに対して、日本は19.8%でした(2018年)。世界全体で見ると、政府支出はGDPの16.9%(2019年)でした。日本の政府支出の水準は低いわけではないのです。長期で見ても、政府支出は歴史的な高水準で高止まっています。

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これに対して経済評論家の三橋貴明氏が以下のように反論していますが、まったくこの通りなんで付け加えることはないでしょう。

  過去二十数年間、日本のGDPはデフ継続でひたすら横ばい。
 「対GDP比」などと言い出したら、分母が小さいままなのだから、政府支出が大きく見えて当然です。
     https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12661843257.html

というかこんなバカげたグラフを使う人を初めて見ました。

あえて加えるなら、先日私がお伝えした「レイ曲線」が示す通り、高齢化の影響で社会保障費が嵩んだりしたことに対して、戦費を逐次投入した結果、必要以上に赤字支出が増えたことが原因だと言えます。 

 

 

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アトキンソン氏:
理論的には、日本が政府支出を増やした際の経済へのプラス効果は、他の先進国より大きいと考えられます。

なぜならば、GDPに対する税負担の比率が低く、貯蓄性向が低く、GDPに対する輸入率が低い国ほど、政府支出が経済に与える効果が大きくなるからです。事実、日本は主要先進国の中で、輸入の比率と税の負担率が非常に低く、貯蓄性向率も低いほうなので、政府支出の効果は大きいとされています。

一方で、「消費税の凍結や引き下げを行うべきだ」という意見もよく耳にしますし、海外ではコロナ禍で実際に引き下げている国もあります。しかし、日本ではそれらの国ほどプラスの効果は期待できないと思います。

なぜなら、GDPに対する税負担率が低い国の場合、減税の経済に与えるプラス効果は当然小さくなるからです。例えば、フランスのようにGDPに対する税負担率が20%台の国と10%強の日本で同じ程度の減税を実施した場合、当然フランスのほうが経済に大きな好影響が出ます。
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税負担のありかただけを見て国際比較するのはまったくの誤りです。
税金の多寡や、税収対GDP比だけで見るのではなく、広くその国の税制や財政、お国柄、またその国で生きるための費用なんかも見て判断しなければならないと思います。

例えば国民負担率(所得に占める税金+社会保険料など)だけを切り出してみてみましょう。
日本の国民負担率は46%で、スウェーデンは58%。そして日本の平均所得は436万円で、スウェーデンは598万円です。
国民負担率を金額に直すと、日本の負担額は200万円、スウェーデンは347万円。手元に残る額を比較すると、日本は236万円で、スウェーデンは251万円。
使えるお金の額が同程度なのだから、減税による効果もあまり変わらないと考えられるのですが、どうでしょうか。

余談ですが、国民負担率だけで国際比較することもおかしいと思いますよ。
これは、国民には決まって支出する生活費が、税金や社保料以外にもあることからわかります。
例えば日本で一人暮らしすると生きるための費用として、電気代5000円、ガス代3000円、水道代2200円、NHK料金1300円、携帯料金7000円、ネット代3500円くらいは必ずかかります。
一方でスウェーデンでは水光熱費やネット代は家賃に含まれるので無料(家賃に含まれない場合は数千円~2万円ほどで契約できるが、家賃は日本より安い)で携帯料金は5000円くらいです。日本は随分生きるための費用が高い国ですよね。
そう考えると、税や社保料、水光熱・通信費などの生きるための費用を全て足した「リアルな負担率」は北欧と変わらないんじゃないかと感じます。そのうえ低所得のワープアで、享受できる社会保障サービスも薄いわけですから、むしろ暴動が起きない理由がわかりません。
 

 

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アトキンソン氏:
政府支出さえ増やせば、総需要が戻って、生産性が上がり、日本経済は復活する。そんなことは夢物語にうつります。

積極財政が特効薬にならない理由を考えるうえで、1つ明確にしておかなくてはいけないポイントがあります。それは政府支出が生産性と労働生産性に与える影響の違いです。

政府支出を増やすと、一般的に仕事が増えます。企業はその仕事をこなすため、人を雇います。すると労働参加率が上がり、生産性も上がります(生産性=労働参加率×労働生産性)。重要なのは、政府支出を増やしても、必ずしも労働生産性が上がるとはかぎらないということです。次回、そのメカニズムを説明します。
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何が言いたいのかよくわからない文章ですね。
朴勝俊教授にこてんぱんに論破されて、論点ずらしに苦心しているようにしか見えません。
そもそも「生産性=労働参加率×労働生産性」とする謎の数式の出所がわかりませんが、「政府支出を増やしても、必ずしも労働生産性が上がるとはかぎらない」のはその通りで、朴教授が指摘したとおりです。
アトキンソン氏は「労働生産性を上げれば給与もGDP上がる」という”間違った信念”をベースに論理を構築しているので、わけのわからない文章になるのでしょう。
参考:
▼ 「改革して生産性を上げても給料は増えない」~新自由主義者の間違い【下】
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12612426911.html
 (朴教授のアトキンソン氏への反論をベースにまとめた記事)

▼ 生産性を上げるために中小企業を潰し大企業に編入してもGDPは下がるだけ。③
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12655030571.html
 (朴教授のアトキンソン氏への反論をベースにまとめた記事)

▼ イエレン財務長官「労働生産性上げたいんなら、需要を増やさなあかんで!」とスガ政権を真っ向から否定
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12655638358.html

 

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アトキンソン氏:
財政出動は税金や国債の発行上限に制限される必要がないと主張するMMTを論じているアメリカのエコノミストでも、完全雇用が達成されるまで財政支出をするべきだと主張しています。一方、完全雇用が達成された後は、財政出動の効果が減免するか、インフレになる可能性があるとしています。逆に、インフレになるまで、政府は支出を増やしてもいいとも言われます。

ということは、MMTの効果に関しても、財政出動は、労働生産性ではなく、労働参加率を上昇させることによって、全体の生産性を押し上げるということを意味しています。
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前半はまあ理解できるのですが、そこから導きだされる後半の「ということは、MMTの効果に関しても、財政出動は、労働生産性ではなく、労働参加率を上昇させることによって、全体の生産性を押し上げるということを意味しています」が、よく意味がわかりません。

MMTのJGPでは、完全雇用に向けて失業者を公的に雇うべきだという主張がなされていますが、ただ労働参加率を上げるなどいう論理展開をすることはありませn。
現在の低需要下での労働参加率の上昇は、本来働く必要のなかった高齢者や女性に低賃金で労働を強いる悪い状態にあると考えられます。
仮に労働参加率を上昇させても、労働分配率が変わらず賃金が上がらない状態になることだってありえるので、益々そんな主張をすることがないとわかります。

アトキンソン氏の世界観はこの画像の通りなので、とにかく労働参加率を上げれば生産性が上がると勘違いしているのはよくわかります。

 

 

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アトキンソン氏:
IMFは、高齢化が進んでいる国ほど、政府支出増加の効果は小さくなると分析しています。OECD加盟の17カ国を分析したところ、政府支出の増加から4年後の経済効果は、高齢化の進んでいる国では、高齢化が進んでいない国の3分の1しかなかったそうです(Aging Economies May Benefit Less from Fiscal Stimulus, August 2020)。

こうなる理由は、高齢化が進むほど、政府支出の増加が個人消費と設備投資を喚起する効果が小さくなるからです。政府支出の増加は生産年齢人口が最も大きな恩恵を受けるので、生産年齢人口の比率が小さくなるほど、その効果は薄れるのです。

高齢化が進んでいる日本にとって、経済を成長させるための政府支出はかなり巨額とならざるをえないので、MMTの活用は必要となります。しかし、労働参加率もかなり高くなっています。すでに説明したように、MMTの理論には完全雇用の制限が存在するので、適切に運用するのは相当難易度が高くなることが予想されます。
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高齢者ほど消費性向(所得に対して消費する割合)が低いので、政府支出しても高齢者が貯め込んでしまって需要が起こらないということですが、これは事実です。

しかし、需要の減退は高齢化だけが原因ではありません。
世代限らず可処分所得が減って需要が減退しているからです。

そして例えば、もし少子化を脱したいのなら、子供が増えるようにもっとその分野に政府支出を増やして、労働者の給料を上げて子供を産み育てられる環境を作りましょう、という話にしかなりません。
また高齢者が多いということは介護・医療分野に需要があるということに他なりませんので、そこにも政府支出できる財政的スペースがあることがわかります。そこに支出すれば雇用も増え賃金も上がるでしょう。

つまり、「高齢者が多いから政府支出しても無意味だ」というような論調は、チェリーピッキングでしかないということですね。


今回は以上となります。

次回もアトキンソン氏の別の記事に反論します。

長文におつきあいくださりありがとうございました。

また次回。

cargo