先日、立憲民主党が党の基本政策を公開しました。
 


8割がたは良いという印象を持ちました。

以前の立憲に比べればかなり良くなりましたが、ただ、一部の印象としてはまだまだ「第三の道」(ネオリベの亜種)から抜けられていないとも感じます。
立憲の議員や政策立案者の皆さんには、新自由主義が何なのか真に理解できていない問題があるのだろう考えられます。

新自由主義とは、「緊縮財政・規制緩和・グローバリズムの三点セット」を伴いながら推進されていきます。
そのことを意識しながら以下をご覧いただければと思います。

あえて二点だけ指摘します。
(それ以外の特に触れない点は、良いと感じています)

 

 

人間の生産性で価値を判断してはいけない。


ジェンダーやLGBT、またはマイノリティや障碍者どうとかという政策を掲げていれば、人権を尊重する理性的組織だという向きで「記号としての政治的免罪符」が与えられます。

立憲の基本政策にもそのような政策が随所にありますが、しかし、どうもいまだに「生産性の低い分野・人材は切り捨てる」というネオリベの考え方から抜け出ることができていない部分も見受けられました。

人権というのは、生産性が高かろうが低かろうが同等のものを生まれながらに与えられているのだと考えるべきだと思います。(バークの国民国家うんぬんの話と天賦人権説は二律背反になるので議論は捨象します)

 ○希望する人が成長分野への新規就労や転職を実現できるよう個人や企業の取り組みを支援

 ○中小企業の生産性向上と、新事業の創出や起業、事業承継を支援

このあたりは、スガ首相の文化大革命(中小企業淘汰政策)と変わりない印象です。
逆に、成長分野と見なされていない低生産性分野にこそ、特に支援しなきゃダメでしょう。

まだ立憲には「選択と集中」から離れられない意識高い系カイカク脳が多いのでしょうが、そういうのはマクロ経済学的に間違ってると思いますよ。

例えば、「生産性の高い分野だけを伸ばし、企業や新規就労を支援する」というのであれば、下図にあるような生産性の低い分野は成長分野と見なさず潰れるにまかせるのかという疑問が生まれます。
それでは産業の空洞化が進んでしまいます。

「低成長分野」の生産性が低いのは、政府が需要を創出しないからです。


出典:経済産業省・中小企業白書

上図にあるように、生産性の低い宿泊・飲食・娯楽・小売り・福祉関連の分野は、不景気による需要停滞と規制緩和やサプライサイド改革による過当競争化、またはGAFA等の侵略により疲弊した経緯があります。

私のように20余年間音楽業界でプロとしてやってる人間も所得が激減し、本当に苦しめられてきました。

「生産性の高い分野に新規就労すれば良い」という向きで立憲の基本政策では語られていますが、私は音楽を作るしか能力がありませんし、40過ぎで転職なんて身の毛もよだつほどの苦行ですよ。

30年間八百屋を営んできたおじさんが、40年間民宿を営むおばあさんが、他業態に就職できるでしょうか?
生産性の高いIT業や金融業に転職できるでしょうか?

そんなわけはないんです。

だから、立憲には人権の観点からも、経済的な観点からも「生産性の低い分野の人も普通に生きていける経済構造を作ること」をまず第一に考えてもらいたい。
意識高い系カイカク脳は捨て去ってもらいたいです。
供給サイドをいじってもロクなことはありませんので、需要側、労働者の給料を上げる施策だけを考えてください。

・・・・・・・・・・
【参考】
▼ イエレン財務長官「労働生産性上げたいんなら、需要を増やさなあかんで!」とスガ政権を真っ向から否定
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12655638358.html

▼ 生産性を上げるために中小企業を潰し大企業に編入してもGDPは下がるだけ。③
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12655030571.html

▼ 新自由主義の「規制緩和」政策は、なぜやってはダメなのか。
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12637195330.html
・・・・・・・・・・

なお、当該基本政策では、中小企業や低所得者への助成なども謳われていますが、もし本当にボトムアップを目指すというのなら「生産性の高い分野だけを選別する」ような文言を入れてはいけませんね。

 

 

財政健全化を目標にしてはいけない
○確かな税財源の確保や、行政需要の変化に応じた予算配分、適切な執行など歳出・歳入両面の改革を行い、中長期的に財政の健全化を目指す

これも立憲の悪いクセですが、「財政健全化を目指すなんて悪そのものだ」と考えを改めてほしいです。
いまだに税財源を右から左に動かす手法のみに固執するのは、まさに20世紀脳です。

原口副代表が言っているような「機能的財政論」「積極財政」をぜひ取り入れてほしいものです。

 

 

原口副代表が言うような積極財政・機能的財政論的な考え方は、すでにアメリカでは実施されています。
前例があるのだから、何も恐れることはありません。

例えばバイデンは先日議会通過した1.9兆ドルの救済策に続き、第一弾の景気刺激策となる2兆ドルのプランも発表しました。
続いて今月には合計4兆ドル以上にもなる第二弾の景気刺激策も発表される模様です。

 


日本の野党議員の多くは「公共工事が多すぎるので削って社会保障にまわすべき」とセコイ話に落ち着きますが、本当はあっちにもこっちにも支出しなきゃいけません。

ケチケチと、小出しに戦費を逐次投入しては逆効果となります。
大日本帝国がいかにして、戦力の逐次投入を重ねて、まともな兵站も送らない精神力重視戦法で惨敗したかおわかりでしょう?

バイデンらのように、8年とか中期的・恒常的な支出計画を立てることで経済も安定します。

AOCなんかは10年で10兆ドル(1100兆円)が必要だと言っています。

 


日本のこの25年間の失策は「Stop-Go-Stop財政」という、戦力逐次投入のドケチ政策を繰り返していたことです。

 

・・・・・・・・・・
バード大学教授 ランダル・レイ :
日本は景気後退に直面した際には一時的かつ十分ではない財政刺激策を行い、景気が回復し始めると思われるときには必ず緊縮財政を行うという、ストップ・ゴー型の財政措置を一貫して選択してきた。
これを赤字と債務が大きすぎるという信念によって正当化した。

[中略]
日本が大きい赤字と債務を抱えているのは、積極的な財政政策をしたためではなく、積極的な財政政策をしなかったためである。

▼ 少子高齢化は問題じゃない。レイ教授に教わる日本の「Stop-Go-Stop政策(ドケチ財政)」
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12664539224.html
・・・・・・・・・・


だから立憲は、「財政健全化」なんてバカなことを言うのはもうやめて、10年で数百兆円単位の支出計画を出すことです。

全ての人の人権を守るためには、政府が支出しなきゃ叶えられません。
右の税金を左に動かしたり、生産性を上げようとなんかしちゃダメです。


以上。
本日はここまで。

ご覧いただきありがとうございました。

cargo