By midorisyu
無印良品が、大規模な値下げを行うそうです。
良品計画の値下げは2010年12月以来、2年ぶり。対象は同社の全取扱品7500品目中、食器や雑貨など約200品目。「磁器ベージュ マグカップ」は従来より2割安の400円、「歯ブラシ ラウンドタイプ」は同12%安の220円にする。
3月以降にはさらに値下げ品目を広げる計画だ。ニトリホールディングスなど競合に比べ消費者には割高に映っていると判断。12年4月以降、前年割れが続 く既存店客数の回復につなげたい考えで「利益を削ってでも新規客を増やしたい」(同社)という。(2013年2月7日付 日経新聞朝刊より)
そ の後の続報によると、2月15日から値下げを行うようです。買い物客として、無印の商品はこれまでかなり価格が高くなったという実感があります。例えば、 半袖の肌着でも、以前は3着1000円ぐらいだったと思うのですが、今では1500円ほどでしょうか。念のため、通販サイトで調べてみると、945円に なっていました。ということは、在庫処分として値下げされているのでしょうか。(「1500円」というのは、あくまで私の記憶であり、もともと「945 円」だったかもしれません)
肌着だけでなく、ユニクロで言うシルキードライやヒートテックと競合する商品も、昨年よりは値上がりした、というのが実感。無印商品の値上がりは、月次実績 か らも読み取れます。直営既存店の客単価は、2012年3月から一貫して前年比プラスで推移しています。ユニクロやスーパーの値下げ方針と比較すると、客単 価の上昇トレンドは、小売店としてかなり成功している部類に入るのではないでしょうか。客単価のプラストレンドのおかげで、第一四半期・第三四半期の既存 店売上高はプラスを達成。第二四半期は前年比99.4%なので、ほぼ横ばいと考えていいでしょう。値上げしても、売上は維持・増加させていることになり、 値上げが成功したと言っても過言ではありません。
では、なぜ値下げを行うのか。その理由は、2012年12月・2013年1月の既存店売上高にあります。まとめると、次のようになります。
【良品計画直営既存店の2012年12月・2013年1月既存店売上】
[2012年12月]
既存店売上→94.5%=2012年3月以後で最悪
既存店客数→91.6%=2012年3月以後で二番目の悪さ
既存店客単価→103.2%=2012年3月以後で二番目の悪さ
[2013年1月]
既存店売上→2012年3月以後で二番目の悪さ
既存店客数→2012年3月以後で最悪
既存店客単価→2012年3月以後で三番目の悪さ
客 単価は先述の通り、すべて前年比プラスなので、悪いといっても問題ではありません。問題なのは、客数の大幅な減少。これが要因で、既存店売上が振るわなく なりました。ちなみに、既存店売上が前年比マイナスになったのは、4・6・10月そして12月・1月です。2ヶ月連続は、2012年3月以降初めてなので す。深刻さが増す前に、客数を増加させるために、値下げに踏み切ったのです。
無印の値下げは、先ほどの日経記事のように、さほど驚きではありません。ダイエーなどのスーパーやニトリでは、すでに値下げを行なっているからです。ただ、無印には、価格設定において、スーパーや家具屋さんと大きく異なる点があります。それは、
無印の大部分の商品に価格が印字されている
と いうことです。価格が印字された商品を値下げするには、各商品に値下げシールを貼付しなければなりません。この作業は、大変な手間です。スーパーなどの小 売店では、プライスカード(値札)を取り替えるだけでいいので、この作業量の差は歴然としています。もちろん、セール時期のように、一部の商品だけ%割引 することも可能ですが、それでも大きなPOPや売場の移動が必要になります。無印の値下げは、他の小売店にはない大きな作業が伴うのです。
こ こまでして無印が値下げに踏み切るのは、客数を増やす方法が他に見当たらないと判断したからに他なりません。ただ、もともと値段の安さがウリのチェーンで ないだけに、この値下げが客数増・売上増につながるかは疑問。さらに、無印週間という存在も、購入を思いとどまらせる恐れがあります。この値下げにより客 数が思うように伸びなかったら、無印の業績は大きく悪化する恐れがあります。
☆ 今日のまとめ☆
値段が印字された商品がほとんどの無印で、値下げを行うには、各商品に値下げシールを貼る必要がある。
そのような大きな手間を掛けてまで値下げを行うのは、客数減がそれだけ深刻なことの証だろう。
マーケティング・ビジネスのヒントに関するブログも書いています
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
無印は、10%オフの無印週間・クリアランスの値下げが大きいので、この機会に買おうと考える人が多いのではないでしょうか。
ならば、値下げが客数増につながるかは疑問ですね。
☆サムシンググッド創業者 坂本桂一さんの言葉☆
「つ まり、倒産や撤退というのは不名誉でもなければ、致命傷というわけでもないということだ。だから、社長になりたいという気持ちを失いさえしなければ、チャ ンスは何度でもあるのである。孫氏のように、失敗にもまるで動じない境地にはなかなかなれないかもしれないが、失ったのがカネとプライドぐらいのものな ら、そんなものいくらでも取り返しがきく。」
(『頭の良い人が儲からない理由』 より)
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