FEDが銀行以外の企業の短期債務まで購入するという緊急手段に出た。中央銀行が一般事業法人に資金の融通することは、日本においても、2000年頃に当時の速水日銀総裁が企業のCPを買ったように記憶している。資金繰りだけの問題でつぶさなくてもよい企業を存続させるという意味では、あくまでも緊急避難的措置として有効であろう。しかし、こうした奇策は中央銀行の動揺をマーケットに見透かされる恐れがある。そうした意味では劇薬である。

CPの購入にはいろいろな問題が付きまとう。FED購入の基準はどうするのか?購入される企業とされない企業の線引きは、されなかった企業にとって即死刑を宣告するようなものである。そうかといって、むやみやたらと購入すれば、FED自体の資産の劣化が進み、最終的には連邦政府の負担が増える結果となりかねない。難しい舵取りが必要とされる。しかも本質的な解決にはつながらない。

問題の根本は住宅価格の下落と不良資産の処理ができない過小資本にあり、金融機関どうしでの不信の連鎖である。そこに焦点を当てた対策の1日も早い実施が望まれる。

ここ数日のマーケットのクラッシュは、危ない金融機関への公的資金の導入催促への警告であろう。りそなを国営化したようなインパクトある対策が打たれない限り、相場の反転は望み薄と思われる。
金融安定化法案が成立してホッとした矢先に、アジアのマーケットは更なる危機を予想して指数が暴落した。金融安定化法はすでに最後の砦でも何でもなく、この1週間の混乱でただのステップの一つとしての認識でしかなくなってしまった。下院が先週月曜日に予想外の否決をして後、金融危機はヨーロッパへと飛び火し、デクシアやフォルティスは国有化され、アメリカ以上に深刻なダメージを与えつつある。問題はアメリカ1国では止めることのできないほどの事態にまで拡大してしまった。

マーケットは、金融安定化法案の$7、000億を、ほとんど効果がないものと見切っているものと思われる。すでに新聞等でも指摘されているように、

1、リバースオークションでは安値で叩き売ることになり、経営陣の想定以上の損失が発生する恐れがある。
2、損失が発生する以上、その損失に耐えられるだけの自己資本の厚みがなければならない。そんな金融機関はほとんどなくなってしまった。
3、となると、増資を行う必要があるが、巨額の投資が可能な引き受け先もほとんどない。オイルマネー、中国などのGSFも今回の株価下落で大損し、そんな余裕もなく、日本の金融機関は投資済み、バフェットもGSとGEで打ち止めの状況では、新たな出し手がいない。
4、RMBS、CDO、CDSなどの時価評価を一時的にペンディングしてくれる特例も作った。
5、不良資産を政府に売れば、報酬は制限され、ワラントも取得される。将来にわたって、政府にうるさく干渉される危険性が高い。
6、したがって、ぎりぎりまで不良資産を抱え込んで、何とか今回の嵐が収まるのをやり過ごそうという誘因が働く。
7、いつまで経っても不良資産の処理は進まない。
8、そうこうしているうちにますます住宅価格が下落し、サブプライムはおろか、オルトA、プライムも不良資産化。景気も減速し貸出債権も不良債券化し、傷口がどんどん大きくなる。
9、危ない金融機関がどこかが誰もわからなくなり、お互いに疑心暗鬼がますます広がる。危ないと噂の立つところには誰も資金を出さないため、ある日突然破綻する。
10、サドンデスが数件発生すると、健全な金融機関にも資金を出さない出し惜しみが連鎖的に発生し、破綻の連鎖となる。
11、金融危機を引き金とする世界的な恐慌に陥る・・・

というシナリオが現実のものとなりつつある。

各国中央銀行連携での資金繰り支援は、確かに当面の危機を乗り切るためには絶対に必要な手ではあるが、あくまでも対処療法であり、抜本的な対策ではない。ヨーロッパでは実質国有化や政府支援による資本増強がいち早く実現しているが、マーケットの目は不良資産ではなく、金融機関自体の自己資本の脆弱性に向いている。その意味では、欧州各国の対策は抜本策と言えよう。

問題はアメリカの状況である。下院での否決も驚きだが、それ以上にアメリカの納税者の反対の声が想像以上に大きいことがより深刻であると考える。経済の中核であり、血液の循環の役割を担う心臓の機能が金融である。金融が病めば企業も個人も資金を借りられなくなり、景気も落ち込み、国民すべて、世界中の人すべてがダメージを受ける危険性が高いことを、もっと広く知らせる必要がある。
その部分が全く理解されていないように思われる。

幸いなことにアメリカは選挙の年である。両大統領候補も、下院議員候補も、そうした状況を丁寧に説明し、理解を得る必要がある。

今回の金融危機に際してはオバマ候補に1票を入れたい。危機に際しては民間では対処できないことが必ずあり、今回の危機はまさにその手腕が試された問題だったと思う。ブッシュ政権の法案であるにもかかわらず、党派を超えて一貫して賛成し、尚且つ上下両院の民主党議員団をまとめた手腕は文句なしの対処であるといってもよい。逆にマケイン候補はディベートの延期提案、与党サイドであるにもかかわらず最終調整時の反旗、採決時には共和党議員団をまとめきることができず、多数の造反を許す始末・・・ 残念ながら危機対応がまるでできていない。このまま政権を握ればフーバー同様、恐慌へと背中を押しかねない危険性が高い。

今回の危機以降世論調査ではオバマ候補が数ポイントリードしているようである、願わくばこのまま本選挙にも勝利し、危機を一刻も早く食い止めてほしいものである。
アメリカの金融危機は、いよいよ実体経済へと波及の段階に突入した。米の9月の非農業部門雇用者数が15.9万人減少、5年半ぶりの大幅悪化となった。新車販売も前年同月比26%減、さらにGEまでもがウォーレン・バフェットに$150億の増資を要請。超優良企業までもがいざという危機に備えて資本を積みます姿は、異常としか言いようがない。

バリバがファンドの解約を突然停止してからまだ1年と1ヶ月しか経っていない。その間にベアー、リーマンは破綻、投資銀行は消滅、AIGも破綻、大手の銀行も救済合併・・・と、バブル崩壊後、日本で10年ほどの間に徐々に起こった出来事がここ1年に集約されるという恐ろしいスピードで、事態の悪化が広がっている。当初のアメリカの対応は日本の対応と異なり、すばやいものと映った。しかし、危機の深刻化のスピードは当事者たちの予想をはるかに超えるものである。現在ではその対応が推移から大幅に遅れてしまった。

今回の金融安定化法案も成立しなければ困るが、根本的な問題の解決にはまだ程遠い内容である。コールマーケットから締め出された金融機関は、資金が取れずにある日突然死というのが危機の際のパターンである。すでにワコビアは、規模は小さいがより健全なウェルズファーゴに吸収された。欧州では次々と国有化されアメリカ以上に影響が大きくなってしまった。ウェルズファーゴのように体力のある金融機関に吸収されるのであればまだいいが、そうした銀行はもうほとんど残っていない。仮に残っていたとしても、このまま不動産価格の下落が続けば、他行を吸収するような余裕もなくなってしまう。FDICのファンドで破たん処理される銀行が出てくるのはもう時間の問題である。

特にシティのような大銀行が破綻すればFDICのファンドだけでは預金者の保護はできず、更なる税金の投入は避けられない。ましてや、恐慌を世界中にばら撒くことにもなり、世界経済の崩壊につながる。ワコビアの吸収にシティがウェルズファーゴに競り負けたことは、事態の深刻さを証明しているのではあるまいか。数百億ドル規模の増資を繰り返してもなお、自己資本の毀損が進んでいると考えるのが妥当であろう。

97年に日本は大手行に無理やり公的資金を突っ込んで資本増強を行ったが、今となってみればあれは正しい選択であったと思う。一度破綻すれば、資本増強の数倍から数十倍もの費用負担が発生する。破綻回避のコストは事故処理のコストの比ではない。米当局は日本のバブル崩壊の事例をわかりやすく有権者に示すことにより、早くかつ強制的に税金による銀行の増資を行うべきである。
金融安定化法案が上院を何とか通過した。実効性に疑問のある修正案ではあるが、通過して何よりである。明日の下院の採決に注目が集まるところであるが、よもや再度否決ということにはならないだろう。

今回の危機はすでに金融から飛び火して、実体経済に大きなダメージを与えている。失業者も増え、製造業の受注も落ち、個人消費は低迷、住宅の価格は下げ止まらず、自動車販売も大きく落ち込んでいる。金融の危機はウォールストリートの救済のためだけではなく、メインストリートの救済にもつながっていることを、より明確に有権者に示す必要があるだろう。

実際に危機の影響は、普通の人々にとっても大きな影響を与えている。個人においても、クレジットの利用額の削減やローンの審査が下りなかったり。401Kの資産は悪化の一途をたどっている。今後地域に密着したS&Lに取り付け騒ぎや破綻が多発すれば、間違いなく世界同時恐慌となるであろう。

銀行が短期の資金を取れなくなっている。誰もが「次はどこか・・・」と思っている。こんな状況下ではリターンも小さく、リスクの高い運用を一体誰がするのであろう。日本で97年、98年に起こった現象を忠実に再現しているように思われてならない。

今後は資金の取れなくなったS&Lがバタバタと潰れることになろう。金融危機第2幕の始まりである。恐慌の種が人為的にまかれ、自分の預金がFDICに頼らざるを得なくなったとき、今回の下院の
決定を後悔することとなろう。この2,3日の時間の浪費が取り返しの付かない事態に結びつかなければよいのだか。
誰もが予想をしなかったアメリカの金融安定化法案の否決によって、世界中の金融機関にクレジット・クランチが広がってしまった。デクシアをはじめとする危ないと思われている金融機関は、どこからも資金を取れなくなり、ある日急に破綻するという現象が日常茶飯事となった。

アメリカに比べると、ヨーロッパのほうがより根本的な問題にすばやく対処しているように見受けられる。日本の金融危機と同様、今回のサブプライムを契機とする金融危機は、不良資産の切り離しだけでは問題解決にはならないステージに突入してしまった。CDOなどを保有している金融機関は、悉く自己資本の不足、もしくは債務超過を疑われているため、誰も短期金融市場に資金を出さなくなってしまった。こうした不安を解消する唯一の方法は、資本の増強以外にあり得ない。

半年前までは気前の良かったオイルマネーや中国などのソブリン・ウェルス・ファンドも、含み損の拡大により出し手の立場から消え、日本の金融機関も、とりあえず出すべきところには出した状況で、増資に応じるような出し手はマーケットからほとんどいなくなってしまった。したがって、ラスト・リゾートとして、政府が公的資金を投じる以外には方法がない。

アメリカでは、不良資産の買取にすら税金の投入が難しい状況になってしまった。上院に提案される修正案では、預金保険の上限の増額と、ワラントなどの積み増しや買取価格の制限など、より厳しい条件が検討されているようである。否決案ですら金融機関が売却するかどうか疑問であったものが、より厳しくなれば、誰も積極的には応じるはずがない。使われなければ問題解決にはつながらず、先送りとなった不良資産の山はますます大きくなるだけであろう。

折りしもSECでは、CDOなどの証券化商品の時価評価を緩和するなどの彌縫策を検討中のようであるが、これこそ日本が不良債権を隠し続けた方法の焼き直しでしかない。こうした方法では問題の根がいつまでも金融機関の中に残り、お互いの疑心暗鬼が続くだけの先送り策でしかない。

問題がここまで深刻になってしまったからには、まさに日本と同様、つぶすべき銀行、つぶせない銀行の線引きを行い、つぶせない銀行には公的資金を投入するしかない。マーケットは金融安定化法案の効果を待たないし、危ない銀行には一切資金を出さない。バタバタと潰れだす前に一刻も早く税金を資本に投入すべきである。

90年代前半にグリーンスパン元FRB議長は当時の宮沢首相に、「問題が深刻になる前に、一刻も早く税金を金融機関に注入すべき」と進言している。今は立場を変えて同じ言葉を日本からアメリカに進言すべきであろう。