パリバのアーバンコーポレーションに対するCBの購入が、インサイダー取引に該当する可能性があると外部委員会が公表した。当初の公表情報では300億円の資金調達を、パリバから行っていたはずであったが、実際にはスワップ条項が効いて92億しか調達できなかった。しかも、アーバンサイドからは、「公表すべきか?」という問い合わせに対し、「公表しないでほしい」との教唆がパリバからあった模様である。

これが事実であれば、明らかに既存の投資家に対する背信行為である。誤った情報により投資家を誘導したのであれば、インサイダー取引のみならず、詐欺と言われても仕方がないであろう。私はこのケースは、刑事罰が妥当であると考える。

インサイダーの可能性が高いと判断されたのであれば、おそらくMSCBと同様、引き受けと同時にアーバン株の売りを立てていたのであろう。結果パリバはアーバンの破綻により、莫大な利益を得たものと考えられる。事前に破綻の可能性を知って取引したのであれば、間違いなくインサイダー取引である。

スワップ契約を意図的に隠蔽した行為は、虚偽情報の公表、風説の流布、に該当する。担当者は当初から騙して利益を確保しようという意図が見え見えである。
マーケットの信用を吹き飛ばすような行為は、実刑が相当であろう。到底許されるべき行為ではない。

これを契機に、適切な情報が適切なタイミングで公表され、誰もが投資判断を誤ることのないようなマーケットにしたいと、強く思う。
13日のマーケットオープン前にMUFGが9,000億円の出資をMSに実行した。営業時間中でもなく、振込みでもない小切手での出資という異例の方法は、MSの必死さが伝わってくるようで、感慨深いものがある。10日には$6.84まで売り込まれたMSとしては、公的資金注入が決まっているとはいえ、MUFGの機嫌を損ねれば、注入前に資金繰りが付かなくなる恐れがある。出資分全部を優先株とし、公的資金が入っても希薄化を避けるという条件を飲まざるを得なかった。

今回の出資はMSの救助要請によって実現したものであるため、常識的に考えればMUFGに優位性がある。しかし、利益に対する姿勢は、Merchant bankを農耕民族とすれば、Investment bankは狩猟民族、実際にはカルチャーは180度逆といっても過言ではないであろう。「儲けのためには母親でも売る」、「血のにおいがすれば食い尽くす」・・・ 良くも悪くも知恵を絞って競争相手を徹底的に追い落とし利益を貪欲に追い求める姿勢で、生き馬の目を抜くWall Streetで勝ち残ってきたMSが、のんびりとした邦銀の軍門におとなしく下るとは思えない。80年代にGSに出資した住友が何もさせてもらえなかったように、指をくわえて見ているだけならまだ良いほうであろう。ぼやぼやしていると、庇を貸して母屋を取られる事態にもなりかねない。業務提携のスキームなどで、落とし穴を避けるような慎重さが必要となろう。

MUFGにとって若干有利な点は、FEDの規制がMSに入ることであろう。銀行持ち株会社になったため、自己資本の数十倍のレバをかけての高リスク経営はできない。もちろんコンプライアンスも厳しく求められ、グレーな取引も基本的には不可となる。そうした分野でのコントロールを発揮しつつ、徐々に主導権を握るという戦略を取るものと思われる。

しかし、高リスク経営ができないということは、すなわち、高リターン経営ではなくなってしまうことでもある。過去に上げたような高収益を得る機会は、おそらく今後数十年にわたってないものと考えられる。したがって、現在の株価水準は、一見割安のようにも感じるが、意外に妥当、または割高なのかもしれない。

今日もダウはすでに4%ダウンで$9,000を割り込んでいる。実体経済への影響が悪くなることを見越して推移しているようである。そう見ると、まだまだMSへの投資も、高値掴みだったのかもしれない。この9,000億円をどう活かすのか? 今後が見ものである。

G7の緊急対策のおかげで、13日のNYダウ、14日の日経平均ともに過去最大の上げ幅を記録した。世界各国のほとんどの市場でも10%以上の値上がり率を示し、14日のダウも10時ET現在1.58%上昇と、マーケットはパニックから一応の落ち着きを取り戻したようにも見える。

しかしながら、問題は金融業界だけに留まらず、実体経済へと波及しているため、それに引きずられて株価も徐々に下落していく可能性が高い。特に、米国経済の7割を占める個人消費は大きく落ち込むであろう。年末のクリスマス商戦の落ち込みで今後の消費動向はある程度推定することができる。

消費の中で大きな割合を占める自動車は、不調の米国車、好調だった日本車ともに20~30%の落ち込みようである。トヨタでさえ在庫処分のために0%金利キャンペーンを行うほど状況は深刻である。今まで20%程度の増加で推移していた薄型テレビも、この年末では大幅なダウンが予想されている。すでにウォルマートではそうした状況をも見越して、クリスマスのディスカウントを始めているとのことである。

また、金融危機の本質である住宅価格の下落は、未だに底を打ってはいない。確かに金融機関をつぶさないという決意で税金を資本に投入することは、パニックを抑えるという意味においては正しい選択である。しかし、銀行の資本が厚くなったとしても、住宅価格は下げ止まらない。不良資産の処理による過小資本や債務超過は避けられるが、住宅価格が下げ止まらない限り、不良資産は増え続け銀行の資本を蝕むことは変わらない。

昨年までの住宅価格は、証券化によるリスクの分散のおかげで、実際以上に買い進まれたバブルの状態にあった。実需を無視した価格を前提にしたCDOなどの商品がどこまで下落するかは、依然として不透明なままである。実需の価格水準も、どの程度なのかは、おそらく誰にもわからないであろう。いずれにしても景気の回復があり、個人の所得が増え、住宅を買おうという余裕が家計に発生しない限り、下げ止まることはない。

こうした経済・消費の状況から見れば、株価がクラッシュ前の水準に戻るのには早くても2~3年程度はかかるものと思われる。今はクラッシュの後の一時的なリバウンドであって、決して本格的な回復の予兆ではない。今後はファンダメンタルズの悪さに注目が集まり、世界の株価は徐々に切り下がっていくものと思われる。

1929年の大恐慌の際、32年に底を打つまで約3年、直前のダウの高値の$380を超えるのが54年と実に25年もの歳月が経過している。さすがに29年とは異なり、保護主義に傾斜し、第二次世界大戦に突入するようなことはなさそうなので、もっと早く回復するかとは思うが、それでも今後3~5年程度は深刻な不況を覚悟しておいたほうがよさそうである。


政府から$850億の融資を得て救済されたAIGに、さらに$378億の緊急融資が追加で行われた。当初想定された$850億の資金でも巨額であるにもかかわらず、その想定を超えて資金繰りが付かなくなったというところに、今回の金融危機の深刻さと終わりの見えない恐ろしさを見て取れる。

8日にはAIGの前CEOの議会公聴会があったが、そこで驚くべきあきれた実態が明らかになった。 優績代理店の慰安のためにカリフォルニアのリッツカールトンで、宿泊、スパ、ネイルなどの利用料として$44万もの費用を浪費する予定であることが糾弾されていた。$1、200億の税金を使いながら、そんなことに資金を使うことに躊躇がない神経をどう理解すればよいのか?議員の怒りはもっともである。

もっとも、そんなお金の使い方しか知らない破綻後のAIGの経営陣も顔負けなのが前CEOたちである。サリバンなどは破綻後に$500万のボーナスを受け取っていることが明らかになり、尚且つ$1,500万ものゴールデン・パラシュートまで用意されているという。おそらく、契約書には合併、吸収、破綻などのどんな原因であっても、辞任時にはゴールデン・パラシュートを受け取れるという条項になっているものと思われる。しかし、税金を投入して救済した企業にゴールデン・パラシュートを支払わせるというのは、アメリカ国民でなくとも納得がいかない。しかも、破綻の責任を金融危機の「津波」のせいだと強弁し、自分の責任については一切触れていない。議員からは「恥を知れ!」と罵られていたが、私も全く同感である。

さらに追い討ちをかけるように、AIGの破綻の引き金を引いたFinancial productsのコンサルタント Cassanoに、税金投入後であるにもかかわらず、毎月$100万のコンサルティングフィーを支払い続けていることも明らかになった。過去8年間に$2.8億も受け取りながら、まだボーナスの権利が$3,400万も残っているそうである。過去最高益のパフォーマンスを上げた成果といえば、聞こえはいいが、CDSへの傾斜が$1、200億の税金投入につながってるのである。個人的な感情からいえば、そんなものは全て没収すべきである。財産権の侵害に該当するが、bailout actにでも追加すべきであろう。

一方破綻したリーマンの前CEOのFuldは在任期間中に$3.42億の報酬を受け取り、マンハッタンには$2,100万の高級アパート、コネティカットに800万の邸宅、フロリダには$1、300万の別荘を所有しているにもかかわらず、私財での保障はしなさそうである。リーマンの自社株で大半の財産は失ったと証言していたが、それでさえ、報酬の半額程度である。

彼らには責任感やモラルというものがないのであろうか?その強欲さを見るに付け、理不尽な思いを禁じえない。

日経平均が1日で952円も下落して、9,000円割れも目前となった。英国の大手銀行には公的資金を注入し、米欧中央銀行が協調利下げを行ったにもかかわらず、リスクマネーの逃避はとまる気配がない。

震源地の米国は大統領選挙による権力の空白で、大胆かつ有効な対策が取れないでいる。欧州の政府が日本の銀行への公的資金投入を見習って、同じアプローチを取ることは正しい選択かと思われる。しかし、米国の対策がなければ、せっかく用意した傘に大きな穴が空いているようなものである。マーケットのクラッシュはパニックの段階に突入してしまったため、小出しの対策では資金の逃げ足を早め、より大量の資金の逃避の手助けをするようなものである。

政府の介入を極力避ける米経済界の中にも、公的資金の投入仕方なし、との意見も出てきているようである。問題がここまで大きくなった以上、銀行に政府保証が付かなければ、どこも資金を取れないr可能性が高い。税金の資本への投入は避けられないし、マーケットもそうした対策を織り込みつつあるように思われる。

しかしながら相場の回復は来年1月以降までは難しい。大統領選挙が来月上旬。政権交代は来年1月。実際に新政権の政策が実施し、効果が現れるのは、そこから半年程度はかかるのではないか・・・

そうした要因を考慮すると、来年の底を打つまでは相場は下落が続くであろう。ダウは$8,000を切るかどうか。日経平均はバブル後最安値の¥7,900を切るかどうかが山となる。

今後も下落が続くとして、私の場合はとりあえず現物を処分したくないため、日系先物の売り、ダウ先物の売り、ベアETFでのヘッジをしているため、少しは冷静でいられるが、果たしてどうなるのか・・・

おそらく神のみぞ知るところなのであろう。