チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる -5ページ目

チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる

この世に生まれて間もなく、人は「ものがたり」と出会い、そこで広い世界とのつながりを作ります。このblogでは、「ものがたり」と共にある人の可能性を探求していきます。

 

“元の日常”→“出来事“→”新しい日常“から

「物語」が生まれる、と、書きました。

 

ドラマや映画の様な“劇的な”物語では

“出来事”の発端に困難や脅威が現れ、

 

主人公は様々な試練と戦いながら、

最後は大きなカベを乗り越えて、

メデタシメデタシで収束する、というものが大部分です。

 

一般に「物語」と聞けば、

こうした“劇的な”展開が思い浮かぶかもしれませんが、

私たちの日常やビジネスの場で使う「物語」は、

必ずしも“劇的”内容という訳ではありません。

 

なので、ここでは“劇的”でないものも含む、

広義な意味での「物語」と、

捉えて頂ければと思います。

 

話を戻します。

 

健診で『高血圧』と診断されたところから、

新しい日常が始まり、食事療法を始めたり、

サプリを飲み始めたとしましょう。

 

もしあなたが「聞き手」の立場でそういう話を聞いたなら、

「で?」、「それが何なの?」と突っ込む、

までは行かなくても、少し中途半端な印象を

抱くのではないでしょうか。

 

当事者の中では完結している事柄であっても、

「聞き手」である他人の視点で捉えれば、

出来事の意味が見えてこないからです。

 

つまり他者に向けて“語る”要素が含まれる限り、

それは「聞き手」の視点からみて

“意味のある”内容でなければならない訳です。

 

『高血圧』と診断されて生活が変わった、というなら、

 

「不規則な生活が悪いらしいから、気を付けた方がいいよ」

とか

「これからはお酒も控えるから、あまり誘わないでね」

とか

「やっぱり、睡眠が大切だね」

の様に、

「聞き手」にとって”意味ある“メッセージを

構築する必要がある訳です。

 

”出来事“を「物語」へと”格上げ“するために、

もう一つ必要なことは、文脈情報です。

 

これは「語り手」と「聞き手」の関係で、大きく変わります。

 

『高血圧』と診断された話を、

家族に話すのと初対面の人に話すのとで、

説明する量が全然違ってくるのは

言うまでもないことでしょう。

 

文脈情報は

「時」、「ところ」、「主人公(のキャラクター)」が

3大前提で、

「語り手」と「聞き手」の関係や話の中身によって、

必要となる文脈情報は伸縮します。

 

内容がうんと一般的な場合は、

「昔むかし、ある所に、お爺さんとお婆さんが…」の様に、

具体的な設定が殆ど無いままに、中身に入ることも可能です。

 

文脈情報の中でもとりわけ重要なのが、

主人公のキャラクターです。

 

「聞き手」がある程度の人物像を描けないと、

想像力を喚起することが出来なくなるからです。

 

「昔むかし」「あるところに」までは、これで済んでも、

「お爺さんとお婆さん」という人のイメージを与えてもらえないと、

物語は成立できなくなってしまうわけです。

 

以上を整理すると、日々の“出来事”は、

 

文脈情報

  ↓

元の日常

  ↓

出来事

  ↓

新しい日常

  ↓

メッセージ

 

という5段の形に整える形で

「物語」へと“格上げ”が叶うことが見えてきました。

 

それを更に、“聴かせる”内容にしていくにはどうするか。

 

次回以降に続けます。

 

 

 

「“説明”じゃなくて『物語』で伝えろ!」、

「『物語』を語らないと、うまく届かないよ、等。

 

こうした言説が、昨今は増えてきています。

 

しかし、具体的に何をどう語ればいいのか。

 

「物語」と言われても、

自分に特別な体験は無いし、

人に聞いてもらえるような材料など、持ち合わせていない。

と、困っている人も、多いかもしれません。

 

まず知っておくべきことは、私たちが毎日毎日、

無数の「物語」を生み出していること。

 

そして、

私たちの日常というものが、自ら日々生み出す「物語」と、

過去の「物語」や他者の「物語」との

多様な連携の下で展開している現実です。

 

例えばある人が健康診断を受け、

“高血圧”と診断されたとしましょう。

 

祖父が心臓病で亡くなり、父親も心臓の病で苦しんでいる、

となれば、何か対策しないわけにはいきません。

 

食事に制限を付けたり、毎日サプリを飲み始めるかもしれない。

それまでの“日常”が、高血圧の判定から“新しい日常”へと

変化することになります。

 

周囲との関係とか、家族と交わす会話の内容とかにも、

当然影響が及びます。

 

勿論この新たな現実は

そうした「外面的」な変化に留まらず、

様々な「内面的」変化ももたらします。

 

祖父の死などを見てぼんやりと持っていた懸念が、

急に明瞭な危機となって、

心の中で大きく拡大して来るわけです。

 

「物語」と呼ばれるものの中核にあるものとは、

ここに示した様に、

ある“出来事”を挟んで、

“元の日常”から“新しい日常”へと移行していく、

その際の「外的変化」と「内的変化」を描いたもの、

と言ってよいと思います。

 

そしてその一連の変化の記述が、

聞き手の“共感”を呼んだり、

日頃の節制という教訓を引き出したり、

家族の支えのありがたさを感じさせたり、と、

 

“高血圧の診断”という単独の事象とは直接繋がらない、

多様なテーマに展開していくと、

徐々に“物語らしい”姿になってくる訳です。

 

この様な「元の日常」→「出来事」→「新しい日常」という展開は、

全ての人が毎日の様に体験し、

それらは身近な他者の体験、等とも交錯しながら、

日々の生活や労働を構成している訳です。

 

勿論、それらの話がそのまま“面白い話”、“為になる話”等と

なるかといえば、必ずしもそうではなく、

「聞き手」にとって興味深い中身にしていく為には

「語り手」の解釈や情報の追加、

表現の妙やちょっとした演出なども

求められてくることになります。

 

「物語」の種は、日常の中に無数にある。

 

だから、これらの素材を使って“物語”へと格上げし、

ビジネスや日常会話を

“面白い”、“為になる”、“役に立つ”、等に

することができれば、それは素晴らしいだろう。

 

というところまでは、以上で明らかになったかと思います。

 

その方法について、また続けます。

 

 

 

 

 

“ナラティブ”という言葉が日本でどれくらい

浸透しているかを調べようと大学の図書館で検索したところ、

ナラティブに関連して発刊された書籍が、

2020年以降急速に増えていたことが分かってきました。

 

2004.12までの発刊           22冊

2005.1-2009.12発刊         31冊

2010.1-2014.12発刊         30冊

2015.1-2019.12発刊         30冊

2020.以降の発刊               47冊

(蔵書数ベースなので、実際の発刊数はまだかなりあるはずです)

 

更に判明したのは、2019年以前に出された

関連書籍の多くが医療、福祉、教育関連のもので、

経済やビジネス、社会変革的なテーマの書籍の大部分は、

ここ数年の発刊だったことです。

 

“ナラティブ”は一般にはまだ浸透していると言い難い

ですが、多様なテーマで発刊されている書籍が増えている

ということは、世の中での認知が着実に進んできていると、

考えてよいと思います。ビジネスの世界でも、今後急速に

浸透が進むものと推測されます。

 

では、ビジネスパーソン、とりわけリーダーにとって、

ナラティブスキル(ものがたる力)を高めるメリットは何なのか。

ChatGPTの助けも借りて、私なりの整理をしてみました。

 

中身に入る前に、“ナラティブ”の事例を一つあげておきます。

“軽くて暖かいセーター”を写真、サイズ、重量、素材、

値段などデータで紹介することはできますが、

それだけで買う気にはならないでしょう。

 

ですが、

「薄手だし軽かったので、くるっと丸めてビジネスバッグに

 突っ込めました。朝晩も零℃前後まで冷えたのですが、

 おかげでコートなしで済みました。 これで5,000円は、

 嬉しいですね。」

てな話になると、だったら一つ、となる気持ちは分かりますね。

 

ナラティブスキルとは、様々な場面でこんな感じの“ヒト目線の”

伝え方が出来るスキルという感じで捉えて頂くと良いと思います。

 

では以下、重要度の高いメリットを4つお伝えしましょう。

 

第一は上記の様に、商品とかサービスの価値や魅力をうまく

伝えられる様になることです。この力は、営業パーソンは勿論

ですが、商品開発とか企画担当の方などにも大いに求められて

いるスキルでしょう。

 

第二は、仲間とかお客さんとか同僚とかとの感情的なつながりを

強化し、チームの一体感を高めたり、役割を超えて相互支援の

関係を作っていけるようになることです。心理的な絆が生まれる

ことで、同僚や部下のエンゲージメントは、自然に高まることが

期待できるからです。

 

三つめはメッセージの説得力を高められることです。

売り上げを上げろ、ミスを減らせ、の様なメッセージは

そのまま伝えても効果が無いことは言うまでも無いでしょう。

聞き手に問題をジブンゴトとして捉えてもらい、

それならやれる、とか、だったら頑張ろう、という気持ちに

なってもらうことは、ナラティブを工夫することで可能になって

きます。

 

そして第四は、教訓や知恵の伝承が効果的に出来る様になること

です。特に数値や形で示せない“暗黙知”は個別化、リモート化が

進んだ昨今、伝承が極めて難しくなっているものですが、

先輩・ベテランが個別状況の下で何を考え、どう行動したかを

伝える、ナラティブならではの知識伝達を通じて一定範囲で

その壁を超えることが可能になってきます。

 

以上、ナラティブスキルを高める主なメリットを

ご紹介しました。

如何でしたでしょうか。

 

では、どうやってスキルを高めたらいいのか? 

知りたくなりますね。

 

それは次回以降に、お伝えしたいと思います。

先月から始めたばかりの企画、

 

『“人生立て直しストーリー”インタビュー』

としていたテーマ名を

『ライフ・トランジッション・ストーリー』

 

へと変更いたしました。

 

ストーリーの語り手によっては、

 

“建て直し”というイメージよりむしろ、

・環境の変化に合わせていたら、そうなっちゃった

とか、

 

・立て直しというより、ステップアップの方が実態、

などのご指摘もあり、

 

これらを包含出来る表現が相応しいだろう、

との判断からです。

 

インタビューは

3月は時間の都合で出来ませんでしたが、

お二人目以降も着々と進めております。

 

よろしくお願いいたします。

 

『ライフ・トランジッション・インタビュー』の第一回目は、

昨年10月からTBS Podcast 「聞けば見えてくるラジオ」の

パーソナリティーを担当されている石井健介さん(44歳)。

 

8年前のある日、朝起きたら目が見えなくなっていた、という

衝撃的な体験を経て、

現在はCalm セッションという独自のセラピスト活動をしつつ、

ラジオのお仕事等、幅広く活動されておられます。

 

今回インタビューでは、まずこのCalm セッションを

体験させてもらい、続けてお話を伺いました。

 

■Calmセッションはどんなきっかけで始めたのですか?

 

セッションの基盤となるのは

クラニアルセイクラルセラピー「頭蓋仙骨療法」ですが、

これとマインドフルネス瞑想、ロッキング・テクニックを

組み合わせて僕独自のメニューにしたのが

Calm セッションです。

 

30歳になる少し前頃に、

仕事繋がりでクラニオセイクラルセラピーと出会い、

体験したその日にプロのセラピストさんから、

あなたは出来るからやってごらん、と言われました。

 

えーっていう感じでしたが、やってみたらできた。

その後ちゃんと講座も受けて、知り合いにやってあげていたら、

じゃあ、ウチのお客さんにもやってあげてよ、

みたいな展開になって、

その後もずっと続けて今日に至っています。

 

■マインドフルネスも前から関心があったのですか?

 

元々ファッションの勉強をして

アパレルブランドの会社に就職し、

そこで自分が企画した服が

メチャメチャ売れたりしたこともありました。

 

ですがシーズンオフに大量の服が焼却されていく構造を見て、

自分の内側では徐々に???が拡大していきました。

“ここに居たら後々後悔するかも”と思い27歳くらいで退職。

 

丁度そのころ、日本でもエコブームが起きて、自分の中で

エコやエシカル、フェアネスといった発想が

クローズアップされ、

心と体を大事にする志向性を自覚するようになってきました。

 

スピリチュアルなものにも関心が向き、

瞑想、マインドフルネスにも

自然に興味が向くようになっていきました。 

それらへの学びを深めていく中で、

精神的にも徐々に強くなってきたと感じています。

 

■その頃は、どんな仕事をしていたのですか?

 

そんな経緯もあったので、

主にエコロジーを指向する形でいくつかアパレル関連等の

仕事を経験していました。

オーガニックコットンを扱ったり、心と体のケアを

テーマとするメディアの発行を手伝ったり、

占い関連の会社の営業を手伝ったりしていました。

 

クラニオセイクラルセラピーとの出会いもその時期で、

本業を持ちつつも、場をもってセラピーを行いながら、

スピリチュアルやマインドフルネス、

NVC(Non Violence Communication)などに

興味を広げていました。

 

■そして2016年4月、“その日”がやってきた。

 

始めの3日3晩は我を見失って、死のうかとまで考えました。

見えないという事実がとにかく悲しい。

悲しみが怒りとなり、怒りが絶望となり、

苦しくてどうしょうも無くて泣いていました。

 

そんな中で、自分がやり始めていたのは、

机に両手を置いて、その感触を確かめること。

 

また、自分の太ももをつねって痛みを感じることで

“自分をその場に留める”ということを、

あまり明確な自覚はなくやっていました。

 

今思うと、当時学んでいたNVCとマインドフルネスを、

無意識に実践していたことになります。

 

そして自分がやったのは「とことん嘆き切ること」。

つまり、悲しみが怒りとなって、絶望となって泣きじゃくる、

この苦しい時間を逃げずに受け入れること。

 

無論苦しい時間だったけれども、これを繰り返した結果

出てきたものは ー これを言葉にするととても陳腐だけれど

ー 愛すること、そして愛されること。

 

その言葉が出てきた時に

「それって、見えないとできないこと?」という問いが現れ、

「それなら出来るじゃん」となって、ひとつ吹っ切れました。

 

■当時どんな出来事が力になりましたか?

 

視覚を失って直後の入院中、

色々な方が「大丈夫だよ」といった

メッセージを送ってくれました。

勿論嬉しかったけれど、言われてどこか腑に落ちない。

 

そんな中、先輩であり、鍼灸師でもある鈴木康弦さん(康さん)が

お見舞いに来てくれて開口一番

「石井君、いやー、可哀そうだね」と一言。

思わず「そうですよね、僕可哀そうですよね。」

 

そう答えて、初めて共感してもらえたと思いました。

「これから石井君がどうやって命を輝かせるか、それが大事」 

康さんのその言葉にも、大いに勇気づけられました。

 

他にも何組か訪問してくれましたが、

「石井君、さなぎになったね」

「これでfacebookで誰かがUPしてる

“たこ焼き食べました”みたいな写真見なくてよくなったね」

の様な、現実を受容した本音トークが、

その時の自分には腹落ちできるものでした。

 

■改めて、見えなくなったことで何が変わったと思いますか?

 

元々あったスピリチュアルな要素が強まった気がします。

人前に出てもラジオでも緊張しない。

何かのサインや流れを敏感にキャッチでき、

その場が絶対的に安心できる場所になる。

 

自分の感覚を信じ、委ねればなるようになる、そういう感覚を

以前より強く持てるようになってきました。 

 

目が見えなくなったことで、

ある意味自分の役割も見えてきています。

見える世界と見えない世界を繋ぐメッセンジャーとしての役割、

 

自分が発信するブラインドジョークもその一つで、

二つの世界の間にあるギャップを可視化していく、

これを発信してみて何が起きるのかを楽しむ、

その発信点という役割。

 

色々とやっていく中で、

そういう役割も段々見えてきていると感じます。

 

■どんなことを大事にしていますか?

 

見えなくなった直後、

これからの仕事や生活はどうなるのだろうと

絶望をしている時に、

 

看護師をしていた妻から

“(あなたが稼がなくっても)何とかなるよ”と言われ、

ある意味(稼がなきゃという縛りから)外されました。(笑) 

 

だったら、とそこで自分が決めたのは、

「楽しい、嬉しい、大好き」をやっていく、ということ。

 

それから1年くらい経った頃に

今度は夢で ”Joy enlighten your body and mind”という

英語のメッセージを聞き、さらに意を強めました。 

 

楽しいと思うことは無償でもやっていく。

Calmセッションはまさにそれ。

やっていくうちに、価値が生まれて、

そこにお金を払ってくださる方が現れてくる。

 

大事なことは自分の直観に疑いを持たないこと。

そして打算、計算を手放すこと。 

 

そういうものを手放していても、前に道が出来てくるのが、

自分には感覚的に分かっている。 

色々と展開するのは不思議だけれども、

だけども当たり前だよね、という、それが僕の感覚ですね。

 

 

 

<インタビューを終えての所感>

ある朝起きたら目が見えなくなっていた、その時の衝撃は想像を超えるものです。その苦しみを石井さんがどう乗り越えたのか、なぜ立て直すことができたのか、そこが聞き取りのポイントでした。実は以前に本人の講演会で失明後のストーリーを聞いていたのですが、その時に石井さんが語っていない何か、石井さんの強さの源泉みたいなものが他にあるような気がしていました。 今回Calmセッションを切り口に聞き進めてみたところ、そこのところに納得いく話を聞くことが出来ました。

 

本文中に書ききれなかったところですが、石井さんは5-6回の転職経験があり、色々な仕事を経験する中で心と体の健康という一貫したテーマ、そして嬉しい、楽しい、大好き、の自分流アプローチを自覚し始め、これがご自身の逞しさにつながっている様に感じられます。 行く先で得た繋がり、人間関係を資産としながら、直観や自身の価値観を大事にして、心の向く領域で自分づくりを進めてこられたことが、運命の転換点で発揮された強さの基盤を作っていたのだと感じました。(依田)