次の世代に仕事の知を伝えなければいけない。
そんな了解は、ほとんどの職場に共通しているものです。
しかし、じゃあどうやっていこうか、となると、
色々問題が出てきて、実際に中々進まないのが実情です。
時間がない、というのは共通している永遠の課題ですが、
研修の場で無記名で上げてもらうと、大方以下の4つにまとまります。
1.何を伝承すればいいのか分からない
2.場を共有できずに経験知を伝えることは難しい
3.自分と後輩とで仕事の内容が変わってしまった
4.教えてしまうと、自分の存在価値が無くなってしまう
実際に組織で“伝承”を進めようとするなら、
掛け声だけではダメです。
こうした問いに答えていかなければ、前に進めることはできません。
ではまず、一つ目から。
“何を伝承すればいいのか分からない“
あいつを一人前にしろ、
お前のKHを“伝承せよ”、“教えよ”と言われて大抵陥る問題です。
“伝承せよ”と言われるものだから、ついつい自分から“発信”
しなければいけない気持ちになるのですが、
それが間違いです。
やるべきことは実は逆。
まずは部下、後輩の話をしっかりと聞くこと。
彼(女)らの文脈に自分を入り込ませ、
彼(女)らのストーリーを完成させるまで、
じっくりと聞くことが大切です。
必要なら言葉を促し、分からなければ問いを入れて、
可能なところまで語りきらせることが大事です。
実はそこで伝承は一区切り。
納得のいくストーリーを語らせることが、伝承になるからです。
二つ目。 ”どうやって伝えればいいのか”という疑問。
暗黙知は、伝承の最重要かつ最難関のテーマです。
いくつかのアプローチを組み合わせる必要がありますが、
その代表はストーリーの語り。 経験を物語で伝える方法です。
他の方法としては、部下・後輩の経験に共感を向けつつ、
そこに問いを入れたり、フィードバック(アイメッセージ、という
スキルを使います)を行って、思考を進めさせる。
このやり取りの中で、ここでも“伝承”が進みます。
3つ目は、昨今IT開発現場などで急増している問題です。
自分がやってきた仕事の知は既に陳腐化したり、現場で使われなく
なったりして、知識・経験を伝えてもそのままでは意味を成さない。
こういう場合に、伝承すべきことは2つの方向に分かれます。
ひとつは「考え方」の伝承。
自分の持つ知を、概念的なレベルに上げて、そのエッセンスを伝える。
これをする上では概念化のスキルを鍛える必要があります。
もうひとつは、仕事体系全体を捉えて、その回し方、マネジメントの
方法を伝える。 しくみが変わってしまうと、全部変わってしまった
感覚になりがちですが、実は全体の一部に過ぎず、実際に重要なのは
人や組織の動かし方、だったりするものです。
そして4つ目。
”教えてしまうと自分の存在価値がなくなるかもしれない”というのは、
いま、多くの中堅社員に切実なところでしょう。
研修の中で私は「覚悟して前に進め」と、言うことにしています。
今の時代、自分が持っているスキルがどこで陳腐化し、無用化するかなど、
分かりません。 生涯〇〇、という時代は、もう望めないのです。
とはいえ一方で、ある領域で得られた知識や経験が別の領域で役に立つ
時代でもあります。
重要なのは、自分が蓄積してきた知識や経験を活かしていける
応用力、他者に分かりやすく伝えたり、全く異なる価値を
そこに見つけたりできる力です。
その力が、陳腐化した自分の知を踏み台にして、次のキャリアを
開いていく真の力になるのです。
“伝承“という機会は、自分の持つ知と経験を客観化していく
またとないチャンスです。
そこはしたたかに活用する意識を持ってください。
そんな風に、私は勧めることにしています。
【仕事知セミナーのお知らせ】
上にあげた”仕事知の伝承力”が、今回セミナーのテーマです。
日時: 7月26日(火) 19:15 -
場所: 東京ハートカフェー(メトロ西早稲田駅より徒歩5分)
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をご覧ください。

