通算29枚目のオリジナル・アルバム『Hello! Hello!』の最後に収録されている。このアルバムも、同タイトルのツアーも、タイトル・チューンの「Hello! Hello!」の「♪ とびきりの朝に 笑顔でおはよう」で幕を開け、この「栞」の「♪ おやすみ 心に栞を挿みましょう」がラストだ。アルバムやコンサートを締め括るにふさわしい、珠玉のバラードである。

 

 作詞・作曲はUZAで、次のアルバムには「栞」と真逆のアッパー・チューン「ずっとずっと」を提供している。編曲はいつもの上杉洋史さんだ。

 

 休息や睡眠を「心に栞を挿む」という言葉で表現した素敵な歌である。傷ついた心を癒してあげたい、二人ならまた新しいページを描ける。今は束の間、眠りましょうーーー本当に心が安まる、優しく温かな歌である。

 

 この歌は、DVD『Hello! Hello! -ダイジェスト-』に映像が、CD『LIVE BEST SELECTION 2012-2020 太陽が笑ってる』に音源が収録され、リリースされている(収録はいずれも2018年4月の東京国際フォーラム)。今日このブログを書こうと思い、ツアーダイジェスト映像のこの曲の部分を観ただけで、涙が出た。宏美さんの澄んだ歌声が、乾いた心の隅々まで沁み入り、潤っていくような心地がした。

 

 宏美さんのオリジナルで、コンサートのアンコールラストにふさわしい「おやすみ」ソングの系譜としては、「この広い空の下」「グッド・ナイト」「おやすみ」「ARIGATO〜未来を信じて」、そしてこの「栞」辺りが挙げられるだろうか。コンサートで高鳴った胸(『Hello! Hello!』ツアーでは、アンコール1曲目は会場も大合唱する「Thank You !」)がスーッと静かに収まってゆく。

 

 スタジオ録音の音源は、上杉クンのローズピアノ一本で静かに始まる。A’のパートからはベースとドラムスが入って来るが、あくまでムダを削ぎ落とした最小限の音。宏美さんの囁くような声が、ひと声ひと声聴く者の心に直に響く。

 

 サビからはストリングスが静かに加わって来る。「♪ ゆーっくり ゆーっくり」のところが、何度聴いても素晴らしい。伸ばす音はファルセットで入るのだが、クレッシェンドするように徐々に力強い声に切り替わってゆく。本当に歌詞の通り、聴いている私たちが、ゆっくり ゆっくりと癒され、少しずつ 少しずつ痛みが夜に溶け、力を取り戻していける気がするのだ。

 

「♪ そのままでいい あなたのままでいて欲しい//新しい朝がページめくるまで 眠りましょう」

 

 最後のフレーズを宏美さんの声で歌われると、自分のすべてが受け容れられ、赦された気がする。そして、心地よい眠りに落ち、また明日への活力が湧くのである。

 

 ライナーノーツの宏美さんの言葉を、最後にお届けしよう。

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新しいことへの挑戦は、新鮮で身も心も高鳴ります。でも、休息は誰にだって必要ですね。この「栞」はデモを聴いた瞬間に「絶対歌いたい」って思った1曲です。大きな荷物を、ふう〜っと下ろして、安らぐ眠りにつくまでの一番心地良い時間に聴いてほしいなぁ〜。今日もおつかれさまでした。おやすみなさい。

 

 

(2017.8.16 アルバム『Hello! Hello!』収録)